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Withコロナ時代のPRについて話そう(全6記事)

これからは「ミッションドリブン」でなく「強みドリブン」 いま、プロのPRパーソンに期待される役割とは?

新型コロナウイルスの蔓延により、企業と個人のコミュニケーションのあり方に再編が求められる、昨今。テレワークを始めとする日常生活のオンライン化、企業のDX推進などが加速するなかで、PRパーソンには今後どのような役割が求められるのでしょうか。4月27日に開催された、PR Table Community主宰のイベント「Withコロナ時代のPRについて話そう」にて、4名の有識者が「コロナ禍真っ只中の今こそ考える、Withコロナ時代のパブリックリレーションズとは」についての考えを語りました。本パートでは登壇者が、 多様性をマーケティングに取り入れる意味などについて話します。

クソリプしてくる人間にも「それぞれの正義」がある

菅原弘暁氏(以下、菅原):PRの考え方もそうだと思うんですけれども、じゃあその今まで当たり前にいた他者がいなくなっちゃうかもしれない中で、企業ないし人は何を他者と思えばいいのか。

人の話だとキリがない部分もあるので、あえて企業としたいんですけれども。どういうふうに他者を感じ、彼らからフィードバックを得て、自己修正をしていけばいいのかって。これちょっと河さんに聞いてみたいなと。

河炅珍氏(以下、河):あ、私に?(笑)。でもおそらく具体的な例は三浦さんとか松原さんのほうが、私よりよくわかってらっしゃると思うんですけれども。

菅原:あぁ、確かにそうですね。

:じゃあまずお二人の話を聞いてから。私はたぶんちょっと抽象的な話をすると思うので。

菅原:了解です。お二人とも経営者じゃないですか。ご自身も発信されると思うし、自分の意に沿わないものもたくさんあると思うんですよね。

その中でここ最近、とくに他者として……何だろうな。自分が望まない他者だったりとか、もしくは良いけど思いもしなかった他者と感じられるものってあります? クソリプがつくとか、そんなのは当たり前だと思うんですけれども(笑)。

松原佳代氏(以下、松原):(笑)。

三浦崇宏氏(以下、三浦):でもさ、クソリプって言ってしまえばクソリプだけど、その人たちも世の中にいるわけよ。例えば僕だったら、立場のある、名前を出してる人に実際攻撃されたり、批判されることもあるしさ。それって俺の視点からすると、俺は正しいと思ってるからぜんぜん気にならないわけ。だけど「こういうふうに見えるんだな」ということは、気にする必要はないが把握しておく必要はあるなと思ってるんですよ。

菅原:その視点があるってことは理解したい。

三浦:そう。だから宇垣アナウンサーは「人には人の地獄がある」と言って、これはこれで素晴らしい言葉で。裕福な人や外見が美しい人とか、得してるように見えるけど、それぞれ悲しいこと・つらいことを背負って生きてると。

一方で「人には人の正しさがある」わけよ。俺にクソリプつけて絡んでくる変な経営者とかも、みんなそれぞれ自分の正義があって「自分はこう思っている」と。そういう視点があることを忘れてはいけないな、と思っています。

複数の視点の存在自体が「マーケティングの可能性」

三浦:で、企業のマーケティングの話に戻すと、あらゆる複数の視点があること自体が、マーケティングの可能性だと思うんですよ。

菅原:はい。

三浦:日本の7割を取ることよりも、世界の2割を取ったほうがいいわけですよね。日本の支配的なマーケットを取りに行くよりも、グローバルニッチを取りに行くことが、多様性をマーケティングに取り入れることの極めて大きな意味なんじゃないかなと思ってる。

菅原:今まで見えなかった他者を発見することにもつながりますね。

三浦:そう。そしてそれは単なるソーシャルグッドとか、きれいごとじゃなくて、ビジネスチャンスでもあるわけよ。

:もちろん。

菅原:そう思うと多様性を取り入れる意味っていろいろあるんですけど、今の話で言うと、多様性を取り入れるのは「見つけられる他者を増やす」ためですよね。

三浦:そう。まさにそのとおりで。虹って7つの色があるってわかっていれば7色に見えるし、3色しか色の言葉を知らなければ3色に見えるわけよ。だから複数の視点を持つということ、他者が複数いるということを想像できることが、そのままマーケティングのセンスなのかもしれない。

菅原:おもしろいですね。

松原:なるほど。

菅原:この話置いておいたんですけども「いろんなコミュニティがあっていい」とかって話したじゃないですか。それも正しい話だと思っていて。

一人の人間の中にも多様性があるという話だと思うんですよね。PRの話が大好きな菅原はたぶんこのコミュニティに属するんですけれども、別のものが好きな菅原って当然いるわけで。それはみなさんとは違うコミュニティにすると思うんですよね。というのが、さっきの他者の発見の話。

松原:他者の話で言うと、私「他者」って言われたときに、わからなかったんですよ。今質問を受けたときに。その理由が、私がマッチングのプラットフォーム型の事業をずっとやってるんですね。だから常に他者に囲まれている。他者がいることがハッピーなことで、それをいかにオープンにして、いろんな他者を見える空間を作り続けるかということを、10年くらいやっていて。

だから違う意見が来ることとか、ユーザーとのコミュニケーションにおいて、日常茶飯事であるわけですよ。そのときにまずは「ありがとう」と思って。その存在に「ありがとう」と思って運営して、それをいつでも言ってくれるように間口を開いておくのを、ずっとスタンスとしてやってきていて。

企業としてコミュニケーションのあり方とかも、他者が多ければ多いほどハッピーというか。そういう感覚で私自身はずっと来ていて、ポリシーみたいなものですね。それを持っているから、他者はみんな仲間、って思っています。

PRは“必要だから生まれたもの”

:お二人のお話を聞いて、私からは具体例というよりかはおそらく、ちょっとまとめる感じの話が求められるかなと思って。三浦さんもおっしゃっていましたけれども、世間でよく誤解されるのは「PRってホワイト・プロパガンダでしょ」と。いわゆる黒魔術みたいな(笑)。

(一同笑)

「人間の思考とか行動とかを操作したり、支配することができるんでしょ」という意見がある。また、その真逆で「PRって慈善事業、フィランソロピーとか、社会をもっと良くする・したいっていう、経営者個々人の強い想いから生まれるものでしょ」という意見もあって。けっこう極端なんですけど。

歴史研究をやっている私から見ると、実はPRって“必要だから生まれたもの”なんですよね。そういう意味で嶋さんがおっしゃった「テクノロジー」という言葉がピッタリかな、とも感じるんですよね。

菅原さんは「他者をどうやって見つければいいか」を気になさってると思うんですけれども。それはやっぱりそれぞれの組織、企業でもいいですし、政府でも自治体でも市民団体でも学校でもいいんですけど、今回みたいに明確な問題的状況に置かれているときに、初めて自然と「私にとって他者って誰だったんだろう」という、この本質的な問いと向き合うことになるんですよね。そこから他者への必要性が生まれてくるわけなんですよね。

なので今まさに、PRの力が発揮できるのはコロナ禍という問題的状況であるからなんだと。各組織が……もちろん共通の問題も抱えてるんですけど、それぞれの問題もまた抱えていて。そこからそれぞれの他者を見つけにいく可能性が、すごく開かれてる状況だと思ってるんですよね。

自分の問題的状況とつながらないのに無理して他者を見つけるんじゃなくて、自分の問題的状況からアプローチしていく。そうすると自ずと見えてくるんじゃないかと思っています。

菅原:なるほどね。本当はこういう状況にならずして、それができたら一番いいと思うんですけど。こういう状況になったから見えてくるものは当然あると。で、企業にとっても個人にとってもそうだと思うんですけど、個人で言えばよくあるのが「この状況だから、本当に大事にしなきゃいけない人がわかった」という方もいらっしゃるじゃないですか。

それって自分にとっての他者、さっきの松原さんがいう仲間ですよね、それを見つけることだし。企業にとっても新しくマスクを作る会社さんって、自分たちの技術で助けられる他者を見つけたわけですよね、いわば。

:そうですね。

菅原:やっぱりこの状況だから、自分たちが幸せにできる人・したい人っていう再定義をできるし、そういうタイミングなんだろうなと改めて思います。

三浦:まさにそのとおりなんだけど、一般の企業はそれでもいいと思うんだよね。本当に大事にしなきゃいけない他者が何かわかった。あるいは一般の生活者はそう。

だけど我々PRのプロフェッショナルは、今まで大事にしてこなかった人を大事にしなきゃいけないってことを、再発見しなきゃいけないタイミングでもあると。

:そうですね。企業や多くの組織が、自分が置かれている問題と実は非常に密接に関わっている他者、あるいはその問題を突破するために必ず必要な他者の存在にうまく気づいていない可能性もあるんですよね。それはおそらく三浦さんとか松原さんのほうがよくご存知かなと思うんですけれども。

なので今三浦さんがおっしゃったように、PRパーソンはこのズレを見抜いてマッチングをしていく必要がある。これがおそらくPRパーソンに期待される才能というか、素質ではないかなと思いますね。

「ミッションドリブン」ではなく「強みドリブン」

菅原:僕最近、とある会社が「明らかに自分たちの会社のミッションじゃない新規事業を始めたな」と思ったときがあったんですよね。

三浦:それ、うちじゃないよね?(笑)。

菅原:違います(笑)。三浦さんの話はけっこう前から聞いてし、昔から言ってたことを実現して素晴らしいなって思ってますよ。褒めすぎちゃった。これはちょっと横に置いといて。

でもその会社のこと「これアリだな」と思った。そのとき、この数年がミッションドリブン・ビジョンドリブンすぎたのかもしれない、と思ったんですよ。それっていわば、自分たちが助けたい人、自分たちが叶えたい世界をがんばって見て、そこに仲間たちみんなで行くぜ、みたいなのが良くも悪くもあったと。そこで他者を見落としたと思うんですよね。

それで、その会社がやったのが、ミッションドリブンじゃなくて「強みドリブン」なんですよ。自分たちができることで誰を助けられるか。そういう発想だったんじゃないかなと思っていて。その会社の人とは話していないから、本当のところはわからないんですけど。

これから企業が「やりたいこと」じゃなくて「できること」で世の中に貢献していくって考え方も、持っていいんじゃないかなって。その結果、見逃していた他者を発見できる。

松原:違う社会を見るとまたそこから新しい他者が見つかるっていうことがあって、そことのミッション・バリューすべてを構築し直す。どうやって今までと変えていくのか、そのスピードが企業にはすごく問われていて。経営者に対して社会の状況を伝えるっていうのが、PRの役割でもあると思いますね。経営者はミッションドリブンになりやすいから。

菅原:でもやっぱり、コアコンピテンシーってあるじゃないですか。それはGOで言ったら「言葉」だと思うんですよね。

三浦:我々は言葉によって概念や思想をデザインすることが強みだからね。

菅原:コアコンピテンシーを持って、じゃあどういう事業をやろうっていうのも、ぜんぜんあっていい話ですよね。必ずしもミッションドリブン・ビジョンドリブンじゃなくても。ちょっと話は逸れましたけど、他者って意味ではそう思いました。

新たな発見と学び

菅原:残り3分ですね。まとめていきたいなと思ってるんですけれども。

三浦:質問とか拾わなくて平気なの? 大丈夫?

菅原:大変申し訳ないんですけど、いろんな機材トラブルもあって、ごめんなさい。僕まったく余裕がなくて(笑)。

三浦:まぁまぁ、1回目だから。

菅原:そうですね。ぜひ次回以降、なにかしらできればと思ってるんですが。ちょっと最後はみなさんに一言ずつ話していただきたいんですけど、どういう問いかけをするのがいいのかと。

今日それこそ「他者」っていうキーワードが出たんですけれども、お三方がそれぞれ、自分だけだと思いつかなかったこと。今日この場において、嶋さんも含めて、改めて見えた世界がもしあれば、お話しいただいて。それは全員あると思うんですよね。

僕は本当に数年前まで、このライブ配信をいわば聴講している側だったので。三浦さんとか「悩みとかないんじゃないか」と思ったんですけど。

三浦:悩みしかないわ。悩みが服着て歩いとるわ。

菅原:(笑)。そう、常に悩まれているわけじゃないですか。みんなやっぱり毎日発見があるということを知るのが、僕はすごく大事だと思っていて。お三方それぞれの今日の発見・学びというのを最後、教えていただければと思います。

じゃあ、松原さんから教えていただいてもよろしいでしょうか。

松原:私はやっぱり、最後の他者の話がすごく学びでした。他者の存在に気づくことが、これからwithコロナの時代において、自分たちがどうあるべきか。PRパーソン個人がどうあるべきか、所属する企業がどうあるべきか、私たちの社会がどうあるべきかを、見つけていく。

だからこの「他者」というキーワードを大事にしていきたいなと、みなさんのお話を聞いて思いました。

菅原:ありがとうございます。そしたら、河さん。

:いやもう、松原さんが素晴らしくまとめてくださってるので(笑)。本当にそのとおりだと思っているんですけれども。

みなさんとのお話を通じて、研究者と実践者ってけっこう通じているなと。とくにPRという概念・現象においてはまさに両輪的な関係ですよね。お互い問題意識を共有してきたんだなっていうのが、個人的な発見としてあって。

今まで私はどっちかというとPRの歴史、過去について考えてきたんですけれども。「これからのPR」を考えていく上でもキーワードとなるのはやっぱり「他者」であることが、松原さん・三浦さん・嶋さんのさまざまな言葉からもすごく共通しているように感じたんですよね。

変わらないのも他者だし、変わっていくのも他者なんだなっていうことが、自分の中であらためて実感できる時間でしたね。

菅原:ありがとうございます。じゃあ最後、三浦さん。

三浦:えぇー、これ荷が重いよ……。

(一同笑)

順番逆だったよ(笑)。すいません、時間もないんでアレですけど、3つあります。

1個はもう本当お二人の言うとおりで、やっぱり他者という概念ですね。他者への想像力って、これはおそらく見城徹氏が初めてビジネス業界で口にした言葉だと思うんですけれども。それは得てして口説きたい相手、ビジネスの相手、恋愛の相手、大切な特定の相手ということだったと思うんですね。その人のことをどれだけ深く考えられるか。

でも今求められてるのは「他者への想像力2.0」で、他者というものが自分の知ってる他者だけじゃない、世界にある無数の他者をどれだけ平行に想像できるか。この解像度を上げることがPRパーソンの役割であり、その解像度を上げること自体がマーケティング的にはビジネスチャンスである。それが今回のコロナという“世界一律同時危機”によって可視化されたんじゃないかというのが、1つ目です。

2つ目は、今回話してたことと違うんですけれども、イベントの概念が変わると思ったんですよ。これまでは場所を共有してみんなで大騒ぎすることだったのが、こうやって今時間を共有していること。これたぶんYouTubeで見ても、動画であとで録画したものを見ても、そんなにテンション上がらないんじゃないかと。

菅原:今この時間であることが大事ですよね。

三浦:なんかこう悩みながら、僕たち4人、嶋さん入れて5人が悩みながら議論して、途中で小林君(イベントの運営スタッフ)が機材トラブルを起こして配信ストップしたりして……。

(一同笑)

小林君がトラブル起こしたわけじゃないけどね! 小林君がトラブル対応して、それをみんなが応援するとかも含めて、時間の共有自体が大きいイベントとしての価値を持つものになっていくんだろうなということを、改めてすごく実感しました。本当に時間共有していただいて、ありがとうございます。

最後3つ目は、たぶん嶋さんが抜けたのは、眠くなったからなんじゃないかなと思います。以上です。

(一同笑)

菅原:じゃあ最後、僕なりにまとめさせていただきますと。先ほどの「自分が見えない他者をおもんばかることが大事である」というときに、今僕らが絶対にすべきことは、不要不急の外出は避ける、三密は避けると。自分が見えていないところでやっぱり、感染してしまう方もいらっしゃるかもしれないので。そこは想像力をはたらかせて自制しましょう、というところです。

本日みなさん、ありがとうございました。いろいろ機材の不具合などもございましたが、また何かさせていただく際には周知をいたしますので。聞いてくださいというよりかは、みなさんもぜひ考えて参加していただきたいなと思っております。また次回を楽しみにお待ちください。

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