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Withコロナ時代のPRについて話そう(全6記事)

消費・欲求を「本質的に必要か否か」で判断することが大切 Withコロナ時代のPRの役割とは?

新型コロナウイルスの蔓延により、企業と個人のコミュニケーションのあり方に再編が求められる、昨今。テレワークを始めとする日常生活のオンライン化、企業のDX推進などが加速するなかで、PRパーソンには今後どのような役割が求められるのでしょうか。4月27日に開催された、PR Table Community主宰のイベント「Withコロナ時代のPRについて話そう」にて、4名の有識者が「コロナ禍真っ只中の今こそ考える、Withコロナ時代のパブリックリレーションズとは」についての考えを語りました。本パートでは登壇者が、必要・不必要の捉え方などについて話します。

個人がトレンドを作れるようになる

菅原弘暁氏(以下、菅原):マイナスの話が多くなっちゃったのでプラスの話もしたいんですけど、この「ファッショントレンド」というところ。フェイクニュースとかの話もあったんですけど、要は個人の裁量でいろんな人を騙せてしまう。逆に言うと、個人がトレンドを作れるようになるんじゃないかなということでもあるなぁと思っていて。

きのう、ワンメディアの明石ガクトさんがNewsPicksに寄稿していた記事を読んだんですけど、いよいよもって個の時代が来ると。雑誌を見て何かを買うんじゃなくて、例えば「ゆうこすさんがこれを勧めているから買う」というのが、いよいよ加速するんじゃないかと。それは確かにと思っていて。そういう意味でも、個人がトレンドを作るという可能性も出てきたなと思うんですね。

おそらくこの「ファッショントレンド」って、松原さんから挙げていただいたと思うんですが。そこらへん、このテーマを挙げた理由なども交えてお話しいただければと思います。

松原佳代氏(以下、松原):まずちょっと、メディアと情報リテラシーのところから話をしたいです。まず三浦さんが言ったスタンスの話は本当にいいキーワードだなと思っていて。嶋さんが挙げた、情報をいっぱい取得するようになったというのは、私もすごく感じています。

「PRパーソンの未来」というお題をいただいた時に、やっぱりメディアが変わるところからPRパーソンって変わっていくだろうなと私も思っていて。先ほど河さんが言った「世論がメディアと相対するものだ」というところも、すごく納得できるなと思って聞いていました。

まず、メディアがどうなるかというところなんですが、私は情報をすっごく収集するようになったのを肌で感じていて。ポートランドに来て、自粛になってから、英語で会話することがまったくなくなったんですよ。

菅原:あぁ〜。

松原:なぜかというと、家にいるから。家族としか会話しないから(笑)。まさかの。ただ、すごい量で英語のニュースを読むようになった。もう、自分の身を守らなければいけないから、読む量が増えたら英語がわかるようになった、という出来事があったんですね。

菅原:命かかってますからね。

松原:はい。そうなった時に、どこから情報を収集するかなんですけど、やっぱり国と地域……私はオレゴンとポートランドなんですけど、オレゴン州のサイトを見にいくようになって。やっぱり自分が発信者になる可能性があるとしたら、どれだけ的確にちゃんと一次ソースを見にいくかが大事な時代になるんじゃないか。

つまり一次ソース以外は、先ほどお話にもあったように、SNSもマスメディアもわり一緒で。その一次ソースをちゃんと取得しにいくという習慣をつける。それがメディアリテラシーの1つ目かもしれないとは思うんですよね。そこがすごく重要になるなと。

おそらくなんですけど、政治とか、国とか、自治体のPR力・発信力が重要になる時代が、これから間違いなくやってくると思ってます。

洋服の購買意欲はガタ落ちしている

松原:ファッショントレンドについて、ファッションはわりとオンライン環境になった時にトレンドが変わるものは少なくなるんじゃないかなと思ったんですよ。服装も含めて。

三浦崇宏氏(以下、三浦):これ、下半身ズボン履いてないかもしれないですもんね。

松原:そうそう(笑)。そういう話。

三浦:このあいだ僕、全社のすごい大事なミーティングで、試験的にちょっとパンツを脱げっていう話をしたんですよ。思い切った提案をしていこうと。

菅原:自分たちの?

三浦:そう。メンタルにおいて、パンツを脱いで話さなきゃいけない。「こういう時代だからこそ、思い切った提案をしていこう」っていう話をした時に、試験的に上半身だけちゃんとした服を着て、下半身はパンツを脱いで……逆ですね、ズボンを脱いでパンツだけで話してたんですよ。

やっぱりすごい、全員の納得感が違ったというか、オンラインでもやっぱりみんなの目がギラッと本気になる感じがすごい伝わったんですよねぇ。

嶋浩一郎氏(以下、嶋):ノーベル賞取れるかもね。

松原:(笑)。

三浦:イグノーベル賞でいいです。

:論文書いて。

松原:それぐらい変わりますよね。

三浦:洋服に関しては、もう、超買う気なくなりますよね。

松原:あぁ、なくなる。

三浦:2月か3月ぐらいに、当時まだここまで深刻に受け止めてなくて。「経済を止めるな」というのが僕のマインドだった時期があって、ヴィトンとルブタンの10万円のサンダルを2足買ったんですよ。それ、1回も履いてねぇ(笑)。

松原:(笑)。春に履こうと思って買った靴、履いてない。

三浦:だから、ファッションに関しては本当に、ラグジュアリーカルチャーは大きくラグジュアリーの意味を見直さなきゃいけない時期になっているなということは、かなり思いますね。

松原:それを身につけることが、自分の精神的充足みたいなものとつながっていない消費っていうのは、少なくなるんじゃないかなと思っていて。

こちらへ来てからこうやってオンライン会議をすると、日本人のトレンドへの敏感さを感じるんですよ。女性はちゃんと髪の色が四季に応じて変わったりとか、口紅の色も変わるし、服の色も変わるし。こうやってオンライン会議するだけで「日本人っておしゃれだったんだ」ということに気づいて。

逆に言えば、それだけトレンドを消費しているということだと思うんですよ。そういう日本においてトレンドは、これからコミュニケーションの仕方が変わり、人と会う様式も変わるから、きっとどこか違う方向に行くんじゃないかなと思って、「ファッショントレンド」っていう言葉を挙げました。

菅原:なるほどね。だいぶ変わりますよね。だって、ファッションメディアの雑誌の編集の方の悲壮感がすごいという話をこのあいだ聞いたんですよね。

三浦:ファッション誌によくある特集で「1ヵ月着回しコーデ」といっても、30日全部家の中ですもんね。

松原:(笑)。

三浦:ユニクロの部屋着とか、ジェラートピケとか、あとルルレモン、エコアルフとか、屋内ですね。家の中で過ごす時間というのは、そもそも自動運転っていうものが部屋が動くというふうに考えたらそうだし、部屋着のトレンドはけっこう大きくなるでしょうね。

松原:うん。そう。

菅原:確かに。

松原:私、リモートワーク始めてから半年経っているじゃないですか。実はぶっちゃけて話すと、2コーデの着回しですね、もう。

三浦:マジっすか。

松原:本当にそう(笑)。だって、ずっと家にいるから。

:雑誌の編集者が盗みたいテーマだろうね。

三浦:「リモートワークは2コーデで済む」っていう見出しが作れますね。

松原:ははは(笑)。

菅原:でも服よりも、僕自分の変化で感じるのが、コンビニで選ぶ紅茶が「昨日これだったから、今日これにしよう」とか、普段こういうことはぜんぜん選ばなかったんですけど、やっぱり意識が変わるんですよね。

服とか、もう見た目じゃなくなっちゃうから。家の中で楽しめるものってなんだって思った時に、そうなっちゃう。だからそういう生活情報雑誌みたいなのがもしかしたら出てくるのかもしれないですね。

「本当にいるものと、本当にいらないもの」が分化していく

菅原:嶋さん、さっきのファッション誌の変化とかどう思います? いわばモテコーデとか、人間の欲望をそそりまくるようなものが今まで雑誌のやり方だったと思うんですけど、それが人間の欲望が変わってしまうんじゃないかと。

:いらないものはいらないって思うことと、やっぱり移動できなくて閉じ込められてもやっぱり必要だって思うことと、2つに分かれると思うんですよ。だから、本当にいるものと本当にいらないものが分化していって。

この状況下で、それこそトヨタの豊田章男社長がおっしゃっているように。「移動したい」という欲求は生まれると思うし「ここに食べに行きたい」「人に会いに行きたい」ということのすっごく本質的な欲求は、このあと開花すると思うんですよ。だからそういう時こそPRパーソンの出番だし、どう実現するかみたいなことをいろいろやっていくのはPRの仕事だと思うけど。

「あっ、いらなかった」というのもいっぱいあって。でも一番おもしろいのは、さっきの個人がメディアだという話でいうと、Zoomで会議すると、いる人といらない人って本当にわかるじゃないですか。ただ時間に空きがあるから出てたんだっていう人が、「あっ、結局この会議、何も発言してないわ」みたいな。そういうものも含めて、いるものといらないものの取捨選択がすごく明確になって。

だから、いるものに関しては明確に「これは絶対必要だ」と多くの人が感じるから、企業が「うちの企業はこれを提供できます」「これは絶対不可欠だよね」というパーパスみたいなものは考えやすい状況にはなってますよね。

一同:うんうん。

松原:そうね、毎日の暮らしの中で「これが必要不可欠なのか?」って考える機会はすごく増えましたね。とくにポートランドは、エッセンシャルなサービス以外はすべて休業なんです。

:エッセンシャルってすごい、そういうことですよね。「これはエッセンシャルか、エッセンシャルじゃないか」ということで、分別が生まれていく。

松原:今は暮らしの中のエッセンシャルなんですけど、これが社会において、地球において、環境において、そういうもうちょっと社会の中でこの事業・会社がエッセンシャルかどうかということが、これから思いっきり問われてくる。そんな時代が来るように思いますね。

「本質的かそうでないか」で判断することが必要

:このエッセンシャルかエッセンシャルじゃないかが、すごく分化しちゃうという状況は理解します。矛盾していることを言う感じもするんですけども、同時にあいまいなものっていうのがZoom会議で全部なくなっちゃって。

河炅珍氏(以下、河):ははは(笑)。確かに。

:雑談とか、雑領域っていうか……三浦展さんとかがよく言う「あいまいな境界線の領域」みたいなものがなくなっちゃって、Zoom会議ってしゃべってる人が一人で、次また一人しゃべって、みたいな。なんていうのかな……。

三浦:エッセンシャルっていうのは、本質的であるかどうかが問題で、必要かどうかということではないと思うんですよ。つまり、必要ではないが本質的である、ゆえに本当の意味で必要であるっていうことは、やっぱりあると思っていて。1回みんながエッセンシャル、自分にとって本当に本質的に必要かどうかっていうことを問い直すことはすごく重要だと思ってます。

それは、その個人の生活レベルであり、企業の活動レベルであり、社会の価値観レベルである。それぞれであると思うんですね。ただ、そこに「不要不急」とか「必要であるかどうか」と言うことって、すごく痩せた、もったいない概念だと思うんで。

:そうですね。

三浦:不要不急ではない。必要ではない。だが人類においてはどうしても必要である。

松原:あぁ、ありますね。

三浦:ドイツがアートに対して非常に大きな助成金を支払ったように。ゼロベースで見た時、だからまさにエッセンシャルという言葉はすごい大事で、必要か必要じゃないかではなく、「本質的かそうでないか」で判断することがとても重要なんじゃないかなって思うんですよ。

効率性を求めるだけでは、社会は豊かになれない

:私も今の三浦さんや嶋さんの意見、松原さんの提案にすごく同感していて、やっぱり効率性だけを見ていくことでは、社会は豊かになれないと思います。

その一番の証が文化じゃないですか。無用の用というか。そこに経済的な基準だけでははかりきれない価値があったからこそ、私たちの生活がすごく豊かになるし、新しさが生まれてきた歴史があると。

なので、エッセンシャルという言葉をどう定義していくのか。そのうえで、もちろんSNS上の個々人が集団知性として意見を出し合うことも可能ですが、やっぱりPRパーソンの方で経営者とか政府がどう思っているのか、そのあたりを社会の考え方とマッチングさせていく必要があると思うんですよね。

これを無理やりやってしまうと、プロパガンダになってしまうんですけれども。お互い考えていることを結びつけてくれるメディアがあって、そのメディアの仕掛け人というか、デザイナーがPRパーソンであると。

それと、ファッションをめぐる議論がすごくおもしろかったんですけど、いかにファッションというものが一人歩きができないか。つまり、都市という空間とセットになっていたことを、改めて実感しているんですよね。

都市の中でファッションが意味があったわけで、それを自分の体で身体化して見せていく、プレゼンテーションする場所が都市なんですよね。都市という空間の中で他者に見られているという意識が、ファッションには欠かせない。

これはある種、なんと言いますか、顕示的消費というよりかは、ファッションそのものは、他者が前提となった時、非常に強力な意味が生まれてくるので、今こういう状態で都市が止まってしまった時にはファッションも一緒に止まると。ヨーロッパでもそうですし、東京でも、メトロポリスであればどこもたぶん同じ情況なんですよね。

あと、欲望について言えば、私も正直、自分のクレジットカードの明細を見ると、本当に生活品しか買ってないんです(笑)。食料とか。ただ、おそらく歴史的に見た時、欲望が再び刺激されるときは必ず来ると思います。今は私は広告よりもPRの出番だと思うんですけど、コロナの問題が落ち着いて「これからはやっぱり経済が大事だ」となると、広告とPRは交互に行ったり来たりしながら進んでいく。いま抑えられている欲望の反動が来るのは明らかな気がしていて。

例えば、1930年代、アメリカではものすごく景気が悪くて、経済的に非常に大変だったんですけど、そこから10年ぐらい過ぎた40年代になると、色々要因がありましたが、ガラッと変わって経済がまた伸びていった。市場や経済の循環は歴史の中で常に繰り返されてきているわけなので、ポストコロナ時代に新しいトレンドを作っていくことも大事なんですけど、このあたりの循環を現場の方々はどう捉えているのか、気になります。

三浦:今のお話で言うと、すごくわかるのが、まさにエッセンシャルという議論と同じだと思うんですけど、ファッションもメイクも、他人のためのものから、自分のためのファッション、自分のためのメイクになっていくと思うんです。

うちの女性社員とかは、やっぱり朝起きて、ピアス(をつけること)が自分にとっていかにスイッチになっていたかわかったと。すごくインサイトフルだなと思って。ピアスをパチッとつけることによって、彼女は仕事モードに切り替わっていたんだという話がおもしろいなと思って。

これから先、メイクとかファッションが、他者のためじゃなくて自分のためになった時に、どういうカルチャーとして進化し直していくのか、そこはちょっと僕もまだ見えてないんですけど、興味深いところだなと思ってます。

松原:確かに。

菅原:ファッションに限らず、それは増えるのかもしれないですね。さっき河さんがファッションと都市の話をしたんですけど、それこそ関係性を作る場の話だと思うんですよ、都市って。

で、この「関係性を作る『場』」というのは河さんが上げてくれたテーマで、ファッションの場合は都市だったじゃないですか。いろんな意味で都市というのは関係を作る上で大事だと思うんですけど、それがもう職場でもなくなり、こういうオンラインの場に。なんかこのあいだ思ったんですけど、だいたい僕PCかスマホを見て人と話してるんですね、最近。

:そうなるよね。

菅原:画面とずっと対話してるんですよ。いわば。

松原:ふふふ(笑)。

:確かに。

三浦:そうだよ、人間同士で話してる雰囲気してるけど、側から見たら画面に向かって話してるだけだからね。

:(笑)。

三浦:画面を見てるだけだからね、今みなさんも。体動かせよ、もっと。

一同:(笑)。

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