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「競争」の戦略から「変化」の戦略へ。GO三浦が語るブレイクスルーの方法論(全5記事)

これからのリーダーは、上ではなく「前」に立つ人間 不確実な時代に求められる能力

マーケティングはこれまでの市場の先導者を作ることから、時代の先導者を目指すことに意味を変える。時代の先導者になるためのヒントは、「答えよりも、問いを。」 というキーワード――。The Breakthrough Company GOの三浦崇宏氏が、量的成長から質的成長への思考法について解説しました。本パートでは、不確かな時代に求められるリーダー像と、人間の成長の3つのプロセスについて語りました。

量的成長から質的成長を求める生き方へ

三浦崇宏氏(以下、三浦):あるいは量的成長から質的成長。これもさっきの話と近いんですけど、企業は結局機能を追い求めるので、とにかく速く大量に物を売ればみんなが幸せになってきた時代があった。でも今はもうみんな物は持っていますよね。

自動車はみんな持っているし、スマホも洋服もみんな持っている。なんならユニクロとセブンイレブンがあれば、人間ってけっこう幸せに暮らしていけますよね。

でもその時代に、今よりも10パーセント幸福になるにはどうすればいいか。セブンイレブンじゃなくてもっと高い物を食べれば本当に人って幸福になるんだっけ? 部屋を広くすれば幸福になるんだっけ?

そういった量的な成長を追い求めてきた社会が、ようやく質的な成長になったんです。幸福とは一体なにか。自分なりの幸福とは一体なにかということを考えていく時代が来ている。

だからこれから先、みなさんには企業に入ったり自分たちなりに企業を作ったり、あるいは働くというときに、量で成長を求めるんじゃなくて質の成長とは一体なにかを考えてほしいと思います。

これに関しては、世の中の最大公約数はたぶんないんですよ。自分自身が自分の質的成長は一体なにかということを考える。つまり、自分なりの幸福のKPIを自分で定義していくことが必要になる時代と言ってもいいのかもしれません。

数字の経営から言葉の経営へ

もう1個覚えておいてほしいのが、同じような話で言うと、量的成長は数字の経営なんですよね。前年比110パーセント売り上げを伸ばしたい、130パーセントユーザーを伸ばしたいということを追い求めていればよかった時代だから、経営はみんな数字でやっていたんですよね。

だけどこれから先は、たぶん数字だけで経営するのはもう割に合わなくなって言葉で経営しないといけなくなる。これはどういうことか。世の中から、例えばスターバックスで「世界中にカフェを1万店舗作りたい」となると、一人ひとりの社員はモチベーションが上がりきらない。

それよりも「家庭と企業の間に自分なりの居場所を作る」「そういった人々のための居場所を世界中に増やしたい」と言われれば、役員から現場までモチベーションが上がっていく。

例えばディズニーランドだって行ってみたらすごく楽しくて、スタッフの一人ひとりが低賃金で働いて、ものすごく丁寧に我々を盛り上げて接待してくれる。だけど、彼らは「みなさん、今年のユーザー満足度は80点でした。来年は88点、90点を目指しましょう!」と言われてもがんばれないでしょ。

彼らは「みなさんは単なるスタッフじゃなくてこのディズニーランドという舞台を完成させるキャストです」「みなさんはディズニーのミッキーやミニーやグーフィーと同じキャストなんですよ」と言われて初めて、低賃金でもめちゃめちゃモチベーション高く、笑顔で働くことができる。

量的成長から質的成長の時代に変わることに必要なのは、経営を数字で管理することではなくて言葉で管理することなんですよね。だからこそ一人ひとりが自分なりの信念や思想を持って、自分なりの言葉を編み出すことが重要になってくる。

というお話でした。5分前なのでどうしようかな。まだいろいろあるんだけど、このへんの話はまた今度どこかでしようか。

人間の成長は「高さ、広さ、深さ」の順番

OK。最後にもう1つだけ、人間の成長の話をします。人間の成長と言うと、ついついみんな「なんでもできるようになりたい」「なにかを成し遂げる」というふうに思うんだけど、成長の順番は必ず高さと広さと深さの順番になる。

具体的に言うと、高さは技術力です。ある特定の技術を一生懸命身につける。専門的な技術を1個身につけると、ようやく「その技術を使って他のこともやってみてもらえませんか?」と言われるようになる。

例えば落合陽一さんというメディアアーティストがいますけれども、彼はデジタルネイチャーという研究の第一人者です。その研究の第一人者であるという技術的高さ、専門性の高さがあるからこそ、「じゃあアートもやってみてもらえませんか?」「映画を撮ってみてもらえませんか?」と別分野からの話が来る。

昔みたいにマルチアーティストですよ。今はマルチタレントみたいなことが通用しなくなっているけれど、本当に高い専門性を持っていると逆に自然と「そんなあなたにこんなこともやってほしいです」と言われるようになる。

ある特定の技術の高さがあって、ようやく「別の領域に応用してみませんか?」というオファーが来る。この高さと広さを繰り返して成長していくうちに、いろんなピンチがあったり「あれ、今のままの自分では乗り越えられないぞ」という壁を乗り越えるような経験を積み重ねたりしていくうちに、人間的な深さを手に入れられると。

この高さと広さと深さの順番で人間は成長していくんですよ。今の若い人たちはSNSとかテクノロジーの進化に応じて、若いうちから「なんでもできるようになりたい」「いろんなことやりたいんです」という人がけっこう多いんだけど、僕は必ずこの話をしています。

まずは高さを手に入れてほしいんです。そうすれば自然と自分が望まなくても他の分野のオファーがかかるよと。そのオファーによって、毎回毎回できないこと、ちょっと自分では無理そうなことを乗り越えていく過程で人間的な深さが身について、本当のプロフェッショナル、あるいは本当のリーダーになるんですよ、というお話をさせてもらっています。

アイデアは常に世の中にある

もう1個、アイデアは自分の中ではなく世の中にという話。これも「アイデアは一体どこから出てくるんですか?」という話をよくされるんですけれども、ある日ポッと湧いてくるアイデアはないんですよ。

基本的にはアイデアは自分の趣向の中だけで出てくるのではなくて、世の中の何かに対して、どうやったら役に立つのか。

例えば、この携帯電話を世の中の役に立てるためにはどうすればいいかを考えたときに、今って就活生がすごく大変そうだよね。女性の役員が日本の企業の中でほとんどいないんだよね。今は人生100年時代と言われて、70歳、80歳でも働きたいという元気なお年寄りがたくさんいるよね。

「それにはスマホはどうやって役に立つんだっけ?」と考えて初めてアイデアが生まれる。なので「アイデアが出ないんです」という人に僕がよく言うのは、「Yahoo!ニュースを見てみて、そこに書いてある話題になっていることと、自分が売りたいものや自分の考え方と組み合わせてごらん」と。

すると、わりと簡単にアイデアが生まれるようになったりするんです。「アイデアは自分の中にあるものじゃなくて、常に世の中にあるものですよ」ということを言う。

これからのリーダーは、上ではなく前に立つ人間

時間も時間なので最後の話をします。「上ではなく前へ」という話です。これはよくリーダーシップの話をさせていただくときにするんですけれども。

昔は1つの価値観があって、その価値観に従って一番丁寧にその価値観を再現できた人がリーダーになる。だから上に立つ人がいるという時代だった。だけど今は、さっきも言いましたけれどもなにが正しいかわからない。変化が起きまくる時代には、なにが正しいかわからないんです。

なにが一番有効か。なにが強いか。なにがいいかなんてわからない時代に、一番求められているのは、上に立つ人間じゃなくて前に立つ人間なんですよね。誰よりも先に1個自分の信念や自分の仮説を示して、それを1回試してみる。それがうまくいったら、その後ろに周りの人がついてくる。

それがうまくいかなかったらまた別の仮説を検証する。誰よりも早くみんなの前に立って、リスクやダメージを恐れずに仮説を立てて、その仮説を検証するためにアクションを起こす。

昔のリーダーは組織の上に立つ人間だったけれども、今はある概念やある組織の前に立ってみんなを引っ張っていく人だと思っています。

だから昔は政治家とか社長が偉いんだと言われていたけれど、たぶんもうそういう時代ではなくて。誰よりも先に仮説を立てて、その仮説を検証するための行動をするために前に立っている人たちこそが、今の、これからの新しい時代のリーダーになっていくんだろうと思っています。

だから今日ここに集まってくださっているみなさんが、リーダーシップをとっていきたい、新しい社会に対して正しい価値・新しい役割を示していきたいと思うのなら、人の上に立つ人間じゃなくて人の前に立って進んでいく人間を目指してほしいと思っています。

そういう感じで、今日は45分のトークだったんですけれども、いったん締めようかなと思います。

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