2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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花海志帆氏(以下、花海):ということで、最後のセクションに進んでいきましょう。先生、お願いいたします。
須藤憲司氏(以下、須藤):はい。ここにある、さっき言ったマイルストンとか真の課題ということに、実は人って難しい問題を設定してしまうんですよ。これがミソで、簡単な問題のほうがいいはずじゃないですか。簡単な問題より難しい問題をなんで設定してしまうのか、ということですね。
これが実は本当に重要な問いの設定でして。例えば真の問題というところにどんな問題が入るかというと、だいたいこの3つに収斂されていくんです、というのがありまして。
1つ目は、例えば今、書こうと思って書けない。「あれっ、戦略そのものが練り切れてないじゃないか」という現状に真の問題がある場合、大抵「日常に流されてる自分をどう変えるか」という問題なんですよね。
2つ目は、社内とかチームのタブーというのがありまして。だいたいの組織に「あの人がこう言ったからこうだ」とか、「この問題は別に自分たちが考えなくてもいい」って言ってる中に、問題があるケースがあるんですよね。
その時は、最初に社内の構造とかってどうやったら変えれるかなとか、どんなふうに変えていけばいいのかな、という問題になってきますし。あと、なんとなく「決断しなきゃいけない」ってのはわかってるんだけど、「決断するための条件は明らかにできていない」ことに問題があるというケースもあります。その時は、決断するための材料とか情報をどうやって集めるか、というアクションになってくわけなんですよね。
花海:ほう。カミヤさんからご質問来てるんですが、「真の課題は、5Iのように深掘って出す感じなのでしょうか?」という、出し方について質問いただいてます。
須藤:あっ、そうですね……これは結局行ったり来たりする問題で、さっきの1、2、3、4って、なんかうまく答えられないなという時は、2がもしかしたら曖昧なのかもしれないとか。実は、簡単に書ける人は簡単に書いちゃうんですよね。それはシンプルになってるからなんですけど。
曖昧だったり複雑になってると、どっかで詰まるんですよ。だから結局行ったり来たりしながら、あの1、2、3、4を書いてもらえるといいかなと思ってます。なので「真の課題」って言ってるのは別にそんな浅い課題じゃなくてもいいんですけど、実際は明確に1、2、3が書けると、4番のところはわりとパッと書ける。
花海:ほう。でも、どうして難しい問題を設定してしまいがちなんでしょうか?
須藤:これは、今日のけっこうポイントでして。良い本があって、『なぜ人と組織は変われないのか』という本があって、ここにも書いてあるんですけど、例えば「なにかを変えよう」と思って、「変えよう」と思って変わらないというのは、変えないことにメリットがあるからなんですよね。
花海:うん、うん。
須藤:わかります? 例えば難しい問題をなんで設定するのかというと、これなんですよ、要は。難しい問題に取り組んでると得てして気持ちいいんですよ。
花海:(笑)。
須藤:「うーわ、今俺難しい問題取り組んでるー!」という、充実感が出ちゃうんですよ。
花海:あぁー……なんとなくわかる気がします。うん。
須藤:仕事とかとくにそうなんですよね。簡単な問題を解いて「簡単だったな」ってやるよりも、やけに難しい問題を汗かいて解いてるほうが充実感が高いわけですよ。だからこの「難しい問題は得てして気持ちいい」という、この構造に陥りがちなんです(笑)。
だからいかに簡単なマイルストンを置いて、簡単な課題を置いて、簡単に達成できて、簡単に中期的ゴール行けたら、それに越したことないじゃないですか。
花海:はい。
須藤:だから実は、みんな難しい道に行っちゃうんですよね。山があって、これは初心者コースというのと、すごい上級者コースってあった時に、みんな上級者コースを選んじゃうんです。
花海:そうですね。スモールステップじゃないですけど、ちょっと高みを目指しちゃいますね。
須藤:そう、目指しちゃいがち。これがだいたい達成できないことの、成長しないことの大きな原因なんで。いかに簡単な問題を設定するかと。
須藤:で、これですね。リチャード・セイラーさんという今年のノーベル経済学賞を取った人が言ってるんですけど。
行動経済学のところで「nudge(肘で軽く突く)はnag(しつこく文句を言う)より重要」って言ってるんですけど、要はひじで軽く押してあげるみたいに、簡単にできるほうに仕向けてあげるのってすごい大事だ、ということで。
例があるんですけど、こっちからいくか。
これ実際にさっきのナッジプログラムというので、イギリスで実行されたやつで。「どうしたら税金の滞納率を下げることができそうか」という、これめちゃくちゃ問題としては難しいじゃないですか。
花海:うん、うん。
須藤:めちゃくちゃ難しいことに対して、すごい簡単なアクションプランですごい成果をあげた、というやつなんですけど。「市民の多くが期限内に税金を納めています」という簡単なメッセージを伝えるだけで、期限内に税金を納める人が増えて税収が大幅に増加したと。
花海:このコメントだけでですか?
須藤:そうです。
花海:えー! 意外と簡単だった(笑)。
須藤:そう、だから「何日までに税金を納めてください」と言うよりもこう言ったほうが。例えばトイレとかで「いつもきれいに使っていただいてありがとうございます」ってあるじゃないですか。
花海:(笑)。ありますね、はい。
須藤:あれ、めっちゃパワフルなんですよ。
花海:確かに。
須藤:だってそうやって言われると、「綺麗に使わないと、あっ、そうか」って思うじゃないですか。人ってこういう、心理学的な動き出しやすさみたいなのがすごく効くんで。このナッジな問いかけというのをしたほうがいいですよ、ってよく言われていて。
花海:ナッジな問いかけ。
須藤:そう。仕事だと、例えば僕らは「How should we?」、要は「どうすべきなのか」とか。これを実現するためにはどうしなきゃいけないのか、とか。「How can we?」ですね、「どうすれば~できるのか」とか言うんですけど。こういうことをやってると、さっきの真の課題にめっちゃ難しいこと書いちゃうんですよ。そんなのできない、みたいな。
例えばさっきの「どうすれば僕は痩せれるのか」という時に、「もう炭水化物は取らなくてナントカで、もうシメのラーメンも絶対行かない」というのは。
花海:確かに、極端になりがち。
須藤:そう。いや、それできたら苦労しないけど、それができないんですよ、みたいな。そういう話じゃないですか。
花海:(笑)。うん。
須藤:そうすると大事なのは「How might we?」ということで、「どうしたら~できそうか」って話なんですよ。
花海:うーん、なるほど。
須藤:例えば、もう最悪ですよ、「夜9時以降のラーメンだけはやめよう」とすると、じゃあ夜9時前までに行くラーメンはありだと。そうすると、なんか俺はラーメンをディフェンスできるんじゃないか、とかですね。例えばそういうことなんですよ。
要は「どうすれば~できそうか」というこの問いかけを、みなさんがさっきの4番目のとこにするだけで、けっこうな威力を持って前に踏み出せる……ということらしいです。これは僕が言ってるわけじゃなくて、リチャード・セイラーさんが言ってるんで。
花海:(笑)。
須藤:文句はリチャード・セイラーさんに言っていただければと思うんですけど(笑)。本当に、一応そういうふうに証明されてるんで、はい。ぜひですね。もし「課題は何だろう、ナントカはどうすべきか」って思った時は、「どうしたら~できそうか」と考えると、いいらしいです。
花海:なるほど。これショウさんも、「トイレにも似たような感じなの貼ってありますね」って、さっそくコメントいただきましたし。
須藤:ありがとうございます。
花海:フジタさんは、「日本の選挙も『みなさんが投票していますよ』でいけるのかも?」と(笑)。
須藤:そうですね、例えばそういうことなんですよ、本当に。「みなさん期日前に投票してますよ」とか言うだけで、もしかしたら上がるかもしれないし。結局「ナッジな問いかけ」というので、かなりその後のアクションが変わるということらしいです。
花海:先生が「ラーメン」「ラーメン」言ってるので、カズキさんが「ラーメン食べたくなってしまった」って(笑)。
須藤:そうなんです、今僕もね、めっちゃ食べたいんですよ(笑)。
花海:先生、9時過ぎてますよ(笑)。
須藤:はい、絶対食べません、はい。
花海:ディフェンスしましょう、はい……リチャードさんのお話があったり、真の課題とアクションのプランもどういうふうに行っていけばいいのか、というところですが。次のスライド、いってみましょうか。
須藤:そうですね。じゃあ最後にみなさんに……今日学んでいただいたことは、どちらかというと「これで全部解決した」とはまったく思ってなくて。例えばお茶してる時に、自分のノートの片隅に「今」と「未来」と「マイルストン」と「課題」ってこう、書いてもらって。それがちゃんと一気通貫でいってるかな、ってこう、さらさらと書くだけでも重要だと思うんですよね。
で、そこで大切なのは、じゃあここで学んだことを活かして、「あなたは明日から何を変えますか」という。これだけはぜひみなさんに、投稿していただければと思ってまして。実は「言う」ことってすごい大切で、結局自分で書いたり言ったことって、やっぱり「しないと」って思う。アクションにつながりますので、ぜひですね。「KAIZEN宣言」ということで、あなたは明日から何を変えますか、ということをちょっと書いて、コメント欄に投稿いただければと思っております。
花海:はい。なのでみなさん、「明日から何を変えますか」ということで、KAIZEN宣言。コメント欄にお待ちしております。先生はちなみに、どんなことを改善したいですか?
須藤:明日からですか。
花海:明日から。
須藤:まずやっぱり炭水化物ですよね。
花海:(笑)。
須藤:炭水化物は本当おいしいんで。僕もう本当、お米党なんですよ。だからお米が止められなくて。明日から何を変えようかな……もうだから、夜ご飯にご飯食べるのやめようかなぁ。
花海:(笑)。極端ですよ、本当にそれできそうですか?
須藤:いや、できないです、
花海:(笑)。
須藤:どうしたらできそうか、ですもんね。あっ、だから、夜ご飯の時間を早めます! これならできる。もう夕方6時とか7時にはご飯食べちゃおうかなと。8時以降は食べない、それまでに食べる、というふうに。
花海:それまでに食べる。
須藤:それをがんばりたいと思います。
花海:なるほど。「どうしたらできるか」も一緒にコメント欄に投稿していただければね、実現に近づくかなと思います。
須藤:そうですね。
花海:ではみなさんからのコメントをお待ちしたいんですが、今日のまとめとして。みなさんにも「学んだボタン」を使って、今日のまとめをしていただきたいと思います。みなさんからのコメントをお待ちしている間に、先生から今日の授業のまとめをしていただきます。先生、お願いいたします。
須藤:はい。今日みなさんにお伝えしたのは、ちょっと前のほうに戻りますけれども……これですね。「戦略マップ」ということで、ここに出してますけれども。
「今」と「未来」を「どうしたいのか」ということをクリアにすると、90日後にどういう状態じゃなきゃそれはきっと実現できないな、でもそれをやるためにどうやったらできるかな、って考えるという。この4つが本当に大事でして、これをとにかく持ち帰っていただきたいと。
で、持ち帰っていただいて、できればご自身のチームとか仲間とか、ご家族とか友達とかとやっていただければ、今日はもう最高です。
花海:ありがとうございます。私も今日は、バイアスっていろいろな種類があるんだなと、改めて気づいたことが学びでした。ありがとうございました。みなさんからのコメントも見てみましょうか。
須藤:はい。
花海:「学んだ」コメントで、はい。トミタさん。「社外にどう対応するか、社内にどう向き合うか、決断ラインをどこに置くか学びました」。カタオカさんからは、「『変えないメリット』が『変えるメリット』よりも上回っているから」とかですね。
確かにシンプルで考えることは大切ですね、ハヤマさんから。「いかに簡単な問題を解くか」ということでコメントいただきました。
須藤:そうなんですよ。やっぱりね、みんな小っちゃいころテストで、簡単な問題から解いてたじゃないですか。大人になると急に難しい問題から解きたくなるというですね(笑)。
花海:(笑)。
須藤:まずこれを防ぐということで、だいぶみなさんの事業の成長に近づくんじゃないかと思っております。
花海:ありがとうございます。では授業の最後に、先生から告知がありますので。こちらをしていただきたいんですが……はい。
須藤:はい。今日使った「戦略マップ」とか、今日の授業のフォーマットと。あと我々カイゼンプラットフォームで使ってる「90日間改善計画」のテンプレートがあるんで。教務課の方からアクセスできるURLをお送りいただきますので、もしよろしければアクセスして、ダウンロードしてみてくださいということで。
花海:はい、ありがとうございます。ワークショップの資料に関するご紹介なんですが、教務課からダウンロードURLのリンクを貼っておりますし、あともう一つは授業ページにもリンクがあります。こちらも授業の……こちら、先生のお写真の上らへんに、「こちらからダウンロードできます」というリンクがありますので。こちらポチっと押していただくと、こちらのページに遷移いたします。
スクロールして下に行っていただくと、情報を入れていただくと資料をダウンロードすることができます。
須藤:よろしくお願いします。
花海:全3回でお届けしている授業なんですが、3回ともこちらの「戦略マップ」を使っていきますのでね。ぜひみなさん、ダウンロードしてみてください。ということで、こちらが第1回目の授業となりましたが、第2回目・第3回目もあるんですよね。
須藤:はい。第2回目は、今回課題を設定して「どういう問題に取り組むか」ということを決めた時に、次に「どんな目標を設定するといいのか」という、いい目標設定ですね。適切な目標設定とか、KPIはどうしたらいいか。どうやって測定するのがいいか、測定自体もすごい問題の解決とか改善を高めていくので、ぜひそのエッセンスをみなさんにお伝えできればと思ってますので。
次回も金曜日の夜ということで、しかも連休の合間の金曜日の夜ということで(笑)。
花海:(笑)。
須藤:みなさん、ぜひ参加いただければこれ幸いです。
花海:よろしくお願いします。次回は12月22日金曜日、21時からの放送です。ぜひご覧ください。
お待ちしてる間にも、みなさんから続々と宣言いただいてました。
須藤:あぁ、ありがとうございます。
花海:ありがとうございます。アオキさんからは「明日から積極的にコメントするようにしたいです」とコメントいただきました、ありがとうございます(笑)。
須藤:ありがとうございます。
花海:癖づけてほしいですね、こちらリョウスケさんから。「今の問題が本当に大事な問題か考える癖をつけたい」とコメントをいただきました。ありがとうございます。ぜひみなさんも引き続き、明日からの改善に動いていってみてください。
では、授業は以上で終了となります。今回お越しいただきましたのは、株式会社カイゼンプラットフォーム、CEOでいらっしゃいます、須藤憲司先生でした。本当にありがとうございました。
須藤:ありがとうございました。
花海:受講生のみなさんも、受講お疲れ様でした。引き続き一緒に、スクーで学んでいきましょう。それでは、さようなら。
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