2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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須藤憲司氏(以下、須藤):はい、次ですね。ようやく本質のところに入ってくるんですけど、「問題設定の質を高める」ということで。みなさんに書いていただきたいのはここですね。
中期的なゴール、要は「2年とか3年先にこういうところに行きたい」とした時に、「90日後、こういう状態を達成していたらきっと行けるはずである」。90日ってミソなんですけど。90日後にこういうマイルストーンでできていれば、きっと2年後こうなっているはずだ、というマイルストーンを置いてくださいと。
花海志帆氏(以下、花海):なぜ90日なんでしょう?
須藤:なるほど、ありがとうございます。
花海:(笑)。
須藤:あの、「90日を超えると目標設計の精度が急激に落ちる」と言われてまして。これおもしろいんですけど、僕アメリカで経営をやってたんで、例えば面接するじゃないですか。新入社員とか中途採用の面接とかをするんですけど、90日プランって必ず書いてもらったりするんですよね。
要は入社して30日、60日、90日で、90日後にどういう状態目指す、みたいなことを。3ヶ月だと「かなり確からしい達成イメージが湧く」と言われております。
花海:へぇー。
須藤:さらにいうと、これも例えばGEとかの、M&Aとかすごいたくさんやる会社。会社を買収したりする会社も、最初にだいたい90日~100日プランというのを書くんですけど。
花海:へぇー!
須藤:買収した日をDay 0とした時に、Day 1、Day 2、 Day 3って、90日間でどういう状態まで買収後に持って行くか、というのをけっこう練っていて。それの精度がその後のM&Aの成否を決めるって言われてるから、作ってるんですよね。
けっこういろんな巨大プロジェクトも、最初の90日がその成否にかなりの影響を及ぼすって言われてまして。なので、90日って実はけっこう大事なんですよ。
須藤:なんとなくわかると思うんですけど、例えば「ダイエットしよう」。
花海:はい。身近ですね。
須藤:そう。半年後の目標はけっこう難しいんですけど、3ヶ月ならなんとなく想像できません?
花海:あっ、そうですね。3ヶ月、例えば夏から冬にかけてとか、タームで考えられますね。
須藤:今だと11月の終わりじゃないですか。12月、1月、2月の3ヶ月だったら、「なんとなくこうだな」ってリアルに想像つくじゃないですか。実は90日で大事なのが、「そのマイルストーン、本当に90日で達成できますか?」というのも大事で。
花海:はい。
須藤:例えば「今から体脂肪率を10パーセント落とします」とか、そんなん無理に決まってんじゃん、みたいな。
花海:(笑)。
須藤:わかりますかね。そのマイルストーンが、本当に達成できるマイルストーンで置けることもすごい大事で。要は実現可能で、かつ最も効果的な目標を置く、というのがこの90日マイルストーンのキモなんですよね。
花海:ぜひね、みなさんもこの90日マイルストーン、3番目と、4番目の「真の課題とアクションプラン」、考えてみていただきければ思います。お手元にちょっと、自分の事業内容を書いていただければと思いますが。
須藤:そうですね。90日のマイルストーンを書くと、だいたい課題って出てくるんですよね。なので、「ここまで行きたいな」と思ったら「たぶんこういうことしないといけない」って課題が出てきて、そのためにアクションプランを書く、という。そんな感じなんですよ。
花海:書き方わからないなと思ってる方も、ワークショップに関する質問もお待ちしておりますので、ぜひタイムラインから教えてください。
ツジさん、「学んだボタン」を使っていただいて。「ポストM&Aも90日までの計画を重視するんだなぁ」ということで。
須藤:そうです、そうです。
花海:アオキさんから、「まさにダイエット中なのでわかりやすいです」というコメントをいただきました(笑)。
須藤:ありがとうございます。僕もダイエットしたいといつも思ってるんですけど、90日後のゴールが描けなくて達成できないんです。
花海:(笑)。お仕事、経営者をされていない方でも、このワークショップの「90日改善計画戦略マップ」を使って、ダイエットを成功させるのもおもしろそうですね。
須藤:あぁ、ぜんぜんできると思います。今の事業構造は「毎日どんな飯食ってるか」とか、「どんな生活をしてるか」という絵を描いてみるじゃないですか。中期的なゴールで「なんかわかんないけどすごい体になってる」みたいなことを置くじゃないですか。そうすると、今の生活からそこに行くのに、90日後どこまでいくと行けんのかな、って考えるわけですよね。
花海:うんうん、確かにわかりやすいですね。
須藤:はい。そうすると真の課題が出てきまして。例えば「夜のラーメンは絶対にディフェンスしなきゃいけない」とか。そういうことになるわけですよね。
花海:(笑)。確かに、真の課題ではありますね。ついつい食べたくなっちゃう。
須藤:そうですね、「飲みに行ったらご飯はダメだ」とか「シメはやめよう」とかですね。そういうことなんですよね。
花海:なるほど。確かに自分事だと本格的に考えられるんですが、自分の仕事、事業となるとなかなか、目を背けたくなるというか。考えられない、って感じはありますね。
須藤:そうなんです、そのとおりなんです。みなさん書きながら聞いていただければと思うんですけど……実はこれをやると、自分の考え方の中のバイアス、要は偏見みたいなものですよね。考え方のクセがみんな、それは誰しもあるんですけど、あることに気づきます。僕が見てきたバイアスって、4つぐらいに分類されていてですね。
1個は、「組織のバイアス」ってあるんですよ。組織内の、例えばコミュニケーションが良くなくて、チームの雰囲気が悪いとか。「あの人は何ができない」、ケイパビリティとか、要は能力の話ですね。「あの子が何ができないからちょっと足手まといだ」とか。
こういう組織の問題に、めちゃくちゃ目が行く人いるんですよ。これって、実は事業が成長してない時にすごい起きがちなんですけど、やっぱみんな「内」を見ちゃうんですよね。
花海:あぁー、確かに。
須藤:そういうふうになるケースもありますし。それから「リソースのバイアス」というのもあってですね。例えば「予算がないからできません」「人が足りないからできません」「本当にそれが問題なんですか?」って。例えば無限にお金と人がいたらそれって達成できるんですか、っていうと「うーん、できない」。だとすると、それってリソースの問題じゃ、実はないんですよね。これもよくありがち。
花海:確かにあります。働いていても「こんなに仕事がいっぱいあると、いろんなことができないです! 人足りないです! 採用してください!」って言う人けっこう、私も含めてそうなんですけど。実際に「人がいなくても業務改善してね」って言われると、あぁそうだったかもしれない、と。
須藤:そうですね。だから実はその問題に向き合う時に、「これが問題だ」「あれが問題だ」という時って、「じゃあその問題クリアしたら絶対達成できるんですか?」って言うと、そうじゃない問題にみんな気を取られるわけですよ。
なんとなく、表現がいいかどうかわかんないですけど、目に映る問題がすごい気になっちゃう、ってことですよね。ハエみたいな感じで。「うわっ」て。
花海:ハエみたい(笑)。
須藤:ハエなんかなんとかしても、成長とかマスタープランとかにいかないのに、すごい気になるからみんな構っちゃうわけですよね。それが組織の中に、「あいつが悪いんだ」とかね。あるいはリソース、予算がないからできません、みたいなやつとか。あとよくあるのが競合ですよね、「ライバルの会社がいるから難しい」と。
「いや、本当にそれ問題なんですか?」と。競合そのものが問題なのか、それとも明確に競合との差がないことが問題なのか、どっちなんですかねという話だったりとか。あと顧客ですよね、「お客さんがこう言ってるから」。「いやいや、お客さんってそもそも正しい問題を理解してんでしたっけ」とかって言うと、自分の中の考え方のバイアスみたいなものに気づくことがありまして。
こういうことを意識したり、自分のチームはどういうバイアスがかかってるのかを意識するのも、すごい大切ですね。
花海:確かに、そうですね……冒頭に、みなさんに「ご自身の事業、成長してますか」というご質問させていただいたんですけども。
須藤:はい。
花海:最初にツジさんからは、「全体的に見ると市場の拡大に伴って成長はしていますが、国内は頭打ち」ですね。
須藤:よくありますよね、よく聞きますね。
花海:あとはタカスさんからは、「人口減少の影響をモロに受けています」。
須藤:もうね、ものすごい勢いで減ってますからね。いや、でも本当そうなんですよ。日本ってそんな簡単にもう成長しなくなってるんで、けっこう的確に問題捉えていかないと、絶対成長しないんですよ。
花海:はぁー、なるほど。
須藤:はい。なので、たぶん今日みなさん(授業を)受けてくれてるんだと思うんですけど。
花海:トミタさんからは、「事業の拡大に人やスキルがついていきません」というコメントもいただいてました。
須藤:なるほど。
花海:切実ですね。
須藤:そうですね。これけっこう難しいのは、量だけを取ったら、成長していく業態とか業種のほうが少なくなってるんですよね、実は。なので実際は人も成長しなきゃいけないし、組織も成長しなきゃいけないし、商品・サービスも成長しないといけないから、難しいんですよ。
要は単なる膨張をするんじゃなくて、成長しなきゃいけない。質的・量的な成長をしなきゃいけないから、けっこう難しいという。
花海:なるほど。フジタさんから、「本来的な人材の育成ができていないと、いい人材をとっても仕方なくなったりするのかなぁ」とコメントいただいてますね。
須藤:うん、そうですね。なのでさっき言った、「事業を正しい改善に向かせるために、自分たちは何を変化しなきゃいけないのか」というのがたぶん、これのポイントでして。それに気づくためのやり方を、ちょっと学んでいただきたいと思っております。
花海:はい。こちらの3番と4番についても、10分ぐらいで書いたほうがいいかな、という感じですかね。
須藤:そうです。これをまぁ、10分ぐらいで書いて。結局大事なのは、これをこの後、人と見せ合ったり。自分のチームと見せ合ったり、自分の事業を知らない人が例えば見た時に「これどうしてそうなんですか」というストロークをすることがすごい大事なんで。ぜひみなさん、それを実行していただければいいかなと思っております。
花海:大企業の方はけっこう捉えづらいかとも思うんですが、部署単位でも考えてもいいですね、チームごととか。
須藤:ぜんぜん、もちろん。
花海:チームごとになるとけっこう、また「人のリソースが……」ってなりそうですね(笑)。
須藤:あ、そうですそうです。だいたいチームごとになると、口を悪くいうと……些細な問題をここに書くんですけど、「その問題達成したら中期的なゴール行きますか」というと、意外とかないというですね。
花海:はい。ありがとうございました。もういろいろ、短い時間ではみなさん、書くのも大変ですし。
須藤:大変だと思いますね。
花海:考えるのもなかなか大変ですよね。
須藤:はい。僕もこれは自分を棚に上げないとぜんぜんできない事業なんで。棚に上げてやってきてますけど。
花海:(笑)。
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