2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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光村圭一郎氏(以下、光村):あと、この2つは、けっこうつながっている質問のような気もするんですけれども。「社内で志がある人材をピックアップし、社内の味方とコネクションしていく仕組みをどうつくればいいか」。「事業を創っている人の心を折らないための環境づくりや支援をどう整えればいいか」。
この辺は制度や組織に関わるところかなと思うんですけれども。麻野さん、リンクアンドモチベーションでは新規事業をつくるための制度があったり、組織的にバックアップができていたりすることはありますか。これまでは、わりと人の思いや突破力というところに焦点が当たっていたんですが、組織的なことでいうと、なにか出てくるんですかね?
麻野耕司氏(以下、麻野):一応あの制度としては、提案制度があって、1年に1回、新規事業や新規施策を提案することはあります。ただ、そこから生まれた新規事業は1個もないです。
光村:そうなんですか。
麻野:けっこう、リクルートとかはあんまりないですもんね。新規事業の提案制度とか。
麻生要一氏(以下、麻生):いやいや出てますよ。リクナビもそうですし、カーセンサーもそうだし(笑)。
(会場笑)
麻野:うちの場合はあんまりないんですよねえ。どちらかというと、将来の新規事業のリーダーになるような人材を、早いタイミングで殺さないことがすごく大事だなと思っていて。
ある会社でHRをデータで分析したところ、おもしろいインサイトが得られたようです。経営人材が必ず早期離職する場合の理由をデータで調べたところ、まず現場と揉めるらしいです。そういう経営人材って、上司と揉めるらしいんですよ。
光村:若い頃に、上司とぶつかっちゃったり……。
麻野:そうです。なんでかと言うと、自分の意見があるかららしいんですね。それって、経営人材にとても大事な素養で。自分の意見がある、だから上司とぶつかる、というものがある。もう1個が、「もうこの会社いいや」って、すぐに見切りをつけちゃうんです。それは意思決定が速いということらしいんです。
光村:判断力とか。
麻野:はい。自分の意見があるから上司とぶつかる。意思決定が速いからすぐにやめる。そういう感じで、経営人材がどんどん流出しちゃってると。そういうタイプの人材は早めに見極めて、単に上司や現場に預けるんじゃなくて、会社としてモニタリングしていると言っていて、それがとても大事なことだなと思うんですよね。
退職して起業して活躍しているメンバーもだんだん増えてきていて、そういうメンバーを早めに見極めて、現場に預けるんじゃなくて、やっぱり役員陣でグリップしておく。そういうことは会社の施策としては大事にしてますね。
光村:うん。これは、田中さんが言うところの「支える人」と「育てる仕組み」というところにもリンクしていく話だと思うんですけれども。支える人って、役員とか直属の上司とか、いろんなレイヤーの方がいると思っているんですが、やっぱり人事が絡むので、うまく配属させられるかどうかも含めて、現実的にはなかなか難しいところもあると思うんですよ。
正直、理想のチームって、大企業のなかで作るのはなかなか難しいなと思っていて。人事制度上の縦のラインって、もうある種、年次などで決まっちゃう部分がある。やっぱり裏ルートみたいなものでしっかり支えるような。制度化されていないけれども、風土や抜け道があることも同時に大事なんだよなぁと感じたりしているんですけれども、その辺はいかがですか?
田中聡氏(以下、田中):まさにやってみたい研究の一つですね。あと、僕が気になったのは、麻野さんのさっきのディスカッションと、ある意味で対比関係にあると思ったりするんですけど。志という言葉、ビジョンと言ってもいいと思うんですけれども、そういうものに対する世の中の過剰な信奉があるんですよ。
光村:世の中全般に?
田中:世の中全般に。とりわけ新規事業という文脈のなかで、そういう人をいかに発掘するかという時、経営層や人事の方々に過剰なこだわりを感じるときがあるんです。「うちの会社にはビジョンを持った人材がいない」と、みなさん嘆いていらっしゃる。
光村:なるほど。
田中:ちょっとテーマに挙げて話をしてみたいなと思っていて。もちろん、志を持っていることは、新規事業を前に進めていく上ですごく重要なことだと思ってます。それがないと、絶対に茨の道は乗り越えられないだろうと。ただ、さっきも話したように、志って行動を重ねていくなかで生まれたり、あるいは大きくなったりするものだと捉えた方が、実態に合うんじゃないかなと思っているんです。
「お前に新規事業を託した」という内示を受けて新規事業を始めた頃って、本当にこれっぽっちの志というか、目の前にいる誰かが困っていたら助けたい、というくらいの動機かもしれないですよね。ただ、その後の経験や人との巡り合わせによって、そこから強烈な信念が生まれる可能性がある。実際に、そういう方をこれまで何人も見てきました。
ですから、新規事業を誰に任せるかを検討する段階で、「志があるかないか」をあまり重視して評価する必要はないんじゃないかなと思っています。逆に志やビジョンを高く評価しようとすると、かえってエセというか、行動より口が先に立つようなタイプを誤って選んでしまう恐れもありますよね。
麻野:いやそうですね。
大室正志氏(以下、大室):みんながビジョンが見えたら、あんたみたいな暑苦しい人しか、ってなりますよね(笑)。ちょっとやだ。
(一同笑)
麻野:そんな、必ずしもビジョンはいらないと思う。
(会場笑)
光村:これはけっこう議論になっていて。それこそベンチャーキャピタルの方が投資するときに、ベンチャーの経営者に対しても、「君はなぜこれを始めたんだ」と問うときに、「愛がすごく大事だ」ということを言っていて。それはすなわち、志とかに言い替えてもいいかもしれないけれども。やっぱりみなさん、起業する動機ってそんなに一様なものではなくて、むしろ目の前にちょっとしたヒントがあったからやってみた、ということだったり。
それこそ走りながら、志めいたもの、ビジョンめいたものが、後付けで来たというのも少なからずあって。ただ、成功している人を見ると、ビジョンを持っているように見えるから、「ビジョン大事なんじゃね」というふうになっちゃっている部分は正直感じるし、指摘されるところでもあるのかなという気はするんですけどね。
田中:例えば、「麻野さんって、なんであれだけビジネスを大きくされたんですか?」とか、あるいは「なんで麻生さんって、この新規事業をやってるんですか?」とか、けっこう問われるじゃないですか。うまく行っているかどうかは別として、新規事業担当者って、社内広報とかいろんなメディアから取材を受けるようになりますよね。
その時にポロっと言った一言を、自分なりに意味づけて、それに辻褄を合わせるような行動をしないと、っていう変なプレッシャーがかかるんですよね。ある意味、先に発言があって、それに言霊を宿していくようなことってけっこうある。だから、「問いかけ」って重要ですよね。新規事業の成長にとっても、事業を創る人の成長にとっても。
光村:けっこうありますね。
麻野:それはまちがいないでしょうね。やっぱりビジョンって、アクションから生まれる部分があるし、アクションってビジョンから生まれる部分もあると思うんです。僕が10年前とか20年前、学生の時に「組織診断が活用できてないから変えたい」と思えたか、というと絶対に思えなかった。
やっぱり10年間コツコツ仕事をしてきた中で、問題意識を持ってそういうビジョンが芽生えたということは間違いない。行動することによって、そういう志が生まれるのは間違いないと思うので、最初から明解な志が必要かというと、そうじゃないと思うんですよね。
光村:正直、一般的なサラリーマンと呼ばれる人たちのなかに志を持って生きていると公言する人はほぼいないなというのは、実感としてはあるし、大企業のサラリーマンなんてそんなもんですよね。
麻生:僕は、これを「原体験化」と言っているんです。いろんな方に新規事業をやっていただいてるんですけど、最初から志めいたものがある人って皆無なんですね。あったら起業してるから、なくていいって言ってるんですけど。ただ、最後までないかと言うと、絶対どこかでできるんですよ。
できる瞬間のことを「原体験化」と言ってるんですけど。いつ生まれるかというとパターンがあって、顧客のところに300回行くんですね。300回行ってるなかで、100何十回目かに、例えば、出会うんですよ。出会って、見ちゃうというシーンがあるんですよね。
顧客がものすごく困っていて、それは「こういう構造になっているからで、そこに、このソリューションをこうやってさしたら、この人の課題解決できるかも」みたいな、そういう誰も見えてない真実が見えてしまって。
それをちょっと実験したときに、涙を流して喜ぶおばあちゃんみたいなのを目の当たりにしたりして、それがその人にとって人生を決める原体験になる。そういう瞬間が訪れるんですよ、必ず。
光村:なるほどなるほど、おもしろい。
麻生:その瞬間以降、劇的に事業開発が進むんですけど、人も変わるんですよね。なんか昨日まで後ろ向きなサラリーマンだったのに、急に世界を変えるって言いはじめたな、みたいに。本当に劇的に変わる瞬間。
麻野:顧客のところに300回行く、ですね。
麻生:そうです。
麻野:確かに僕も組織診断を300回くらい報告した気がする。それぐらいかもしれないですね。
大室:300回の法則。
麻生:起業家とか社内起業家って、顧客が作るんですよ。
光村:なるほど、なるほど。
大室:僕は研修医のときからすごくお世話になっている、初期ソフトバンクの取締役の方がいるんですけど、15年ぐらい前、「あの頃なんかヤフーとかって、すごかったですね、あのときの株を買っておいたら」とか言ったら。
「いや、あの会社さ〜」とか言って。役員みんなで「孫がまた変な会社買ってきたらしいよ」って。「誰か社長やれ」と言ったときに、一番若くてバイトみたいだったからと「井上、お前だ」って言われて、それからあんなにすごい名経営者になったんですよね。 だから、初期には絶対ないです。たぶん、そうやってるうちにああいうふうになっていったんだろうなっていう。だから確かにビジョンというのは、(京セラ・KDDIを創業した)稲盛会長も、経営者はみんな言うから、すごいんですけど。
僕がすごく尊敬している一橋大学の元教授だった、山岸俊男さんという人がいるんですけど、この人がよく「日本人は頭でっかちではなくて、実は意外に心でっかちだ」と。すべての原因を心に求めると。
例えば日本人がそんなに(自分の功績を)アピールしなくても、お天道様が見ててくれると思うのは、中世の村社会以降、日本人がみんな同じ環境でずっと何十年も過ごさなきゃいけないから、その環境のなかだったら、あんまりアピールするのは得じゃなかったという。
環境が心を規定するわけであって、心なんて最初からあるわけじゃないと。この考え方にけっこう近いって今思いましたね。
麻野:なんかパターンがあるんでしょうね。僕はけっこう、アクションからビジョンという感じですけど、最後までビジョンがなくても新規事業を当てる人がいるじゃないですか。本当に頭のいい人。そういうパターンもあるだろうね。
大室:ABテストの鬼みたいな人いるもんね。
麻野:心技体でいうと、体がそのアクションみたいなものだとして、そっから見つける人もいれば、心でビジョンをというのでもなく、本当に技というかスキルがすごくて、新規事業をやっている人……。
大室:今だったらスタートアップ面してるけどね。尊敬するのはイーロン・マスクよりも、松下幸之助とか稲盛和夫とか昭和の空気を色濃く……(笑)。
(会場笑)
麻野:パターンがあるんだろうね。
光村:ある種、新規事業自体の整理をもうちょっとちゃんとすべきかなと思っていて。やっぱり、世界の誰も見ていないようなブルーオーシャンを狙うという新規事業なのか、誰かしら手をつけているものを早く模倣しろというようなタイプの新規事業なのかということでも、その辺のやり方が違ってくると思うし。
麻生:課題解決から始まっている事業をやる人は、さっきの志パターンになりそうな気がするんですけど、頭がいいパターン、テクノロジーベースのやつとかそういうパターン……。
光村:市場拡大ベースとか。
麻生:あぁ、そうですね。ブロックチェーンスタートアップとか、VRがみたいなものって、たぶんそんなに……。
光村:市場の成長に沿っていくだけでも、これくらいのパーセンテージの成長はできます、というのはありますよね。
麻野:事業と自分のタイプが整理されていて、それが選べたら、みんながもっと新規事業を立ち上げやすくなるのかもしれないですね。
光村:やっぱり正直、社内でいろんなコンテストをやるにしても、そこら辺をちゃんと整理して事務局が采配するとか、ジャッジする側がリテラシーを上げていかないと、と思ったりしますね。
麻野:そうですね。
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