2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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司会:最後は、これまでご登壇いただいた5名のみなさんに再度前に出て来ていただいて、約1時間にわたってパネルディスカッションを行っていただきます。モデレーターは、光村さんにお願いいたします。
それでは「天才を活かす組織とは?」というテーマなんですが、その前にみなさんからいろんな質問をいただいていますので、それを選びつつ、あるいは光村さんから投げていただいてもかまいませんし、登壇者の方から出していただいてもかまいませんので。ぜひよろしくお願いいたします。それでは拍手ではじめましょう。よろしくお願いします。
(会場拍手)
光村圭一郎氏(以下、光村):改めまして、よろしくお願いします。この時間は、みなさんから質問もいただいていますので、それをうまく拾いながら話を展開できればと思っております。その前に今日、麻野さんの方から、なかなか衝撃的な一言が飛び出したなというふうに思っておりまして。今日は北野(唯我)さんがいないので、ちょっと分が悪いなと思うところもあるんですけれども(笑)。
先ほどの麻野さんのお話の中で「天才なんかいないんだよね」という話があったと思っています。今日は、天才と秀才と凡人、というようなテーマもあったんですけども、天才がいるのかいないのかとか、起業家みたいなものの天才性というものがあるのかどうかという問いですね。
例えば、社内新規事業をやる時も、そういうものがあるのかないのか。ちょっとその辺で、みなさんのお考えがあるようであれば、簡単に聞いておきたいなと思っておりまして。例えば田中さん、「事業を創る人」という定義の中に、ここで話題になっている天才性のようなものは、はたして含まれるのでしょうか。
田中聡氏(以下、田中):いきなり難しい問いですね。僕の研究では「天才」という表現をこれまで扱ったことはないのですが、どうなんでしょう。ちょっと遠回りな話をしますが、人が誰かを見て「天才だよね、この人」と言うときって、何を見ているかというと、その人の可能性じゃなく、成し遂げた成果を見て言っているような気がするんですね。
例えば、ジョブズの成し遂げた偉大なる成果、彼が率いたアップルという会社が創り上げた偉大なる成果を指して「ジョブズは天才だ」と人は言う。ただ、幼少期のジョブズを見て、一体どれだけの人が彼を天才だと評価できたのか。だから、人が天才という時、その人の将来の可能性ではなく、過去の実績に目を向けてますよね。
ただ、ビジネスの世界は受験の世界とちがって、一発勝負ってあまりないと思うんですよ。つまり、ある偉大な成果を生み出すために、1,000回、2,000回の失敗をしている可能性はある。でも、人ってそのプロセスにあまり目を向けないじゃないですか。
光村:うんうんうん。
田中:だから、ちょっと話をまとめると、天才には「結果としての天才」と「可能性としての天才」がいて、「結果としての天才」は容易に評価できる。結果を見てればいいわけですから。一方、「可能性としての天才」は事前の評価が難しいんじゃないかなと。もちろん、天才性という言葉があるぐらいですから、「可能性としての天才」もいるにはいると思うんですが。
光村:それは、結果的に「天才と呼ぶに値する人」がいるということですよね。
田中:はい。ただ、繰り返しになりますが、それを事前に見極めるのはかなり至難の技。あえて僕の研究に引きつけて言うと、どれだけトライ&エラーできる人なのか。言い換えると、1回の成功を打ち当てるためにどれだけの失敗を積み重ねられるのか。そういう行動特性の中に、なにか天才性(「可能性としての天才」)を見極めるヒントがあるんじゃないかと思います。
光村:麻生さんの話をうかがっていると、再現性というものをすごく大事にして、人の育成や組織制度の設計をされてたりすると思います。やっぱりこの再現性というのは、ある種、天才性のようなものに依存しない、と見えたりもするんですけれども。そういう考え方についてはどうですか?
麻生要一氏(以下、麻生):そうですね。誰でも新規事業を創れるという宗教なんですけど、新規事業を作るときの方法として、僕はいつも「顧客のところに300回行けば新規事業ができる」と言っているんですね。なので、(天才性が)唯一あるとすると、その300回に行けるかどうかなんですよ。
光村:うーん。
麻生:これは行けばいいだけだから、本当に誰でもできるんですね。
光村:うん。
麻生:とにかくいろんな顧客や潜在顧客のところに300回行って、話を聞いてきてください。ぶつけてきてください、というだけなんですけど。そんな簡単なことなんだから誰でもできるはずなんだけど、それができる人とできない人はやっぱりいますよね。
光村:これはユーグレナの出雲さんがおっしゃっていることで、それこそ300回、500回と営業の足を運んで、ようやく買ってくれる人が見つかったということもあったりします。そういう努力を、人はもしかしたら「天才だからこそできる努力」と言うのかもしれない。天才って、定義自体が揺れる言葉なので、なかなか一概には言いにくいところがあるのかもしれませんけれど。
麻生:イチローが「コツコツと積み上げると遠くまで行ける」というような話をしていたじゃないですか。新規事業もそれに似ていて、あるとき降ってくるものではなくて、やっぱりちょっとずつたどり着いて行くものだと思います。だから、その大量の行動ができる人かどうかということはありますよね。
光村:なるほど。大室さんにちょっとお聞きしたいんですけど。新規事業などで、まさに大企業のなかでこういう立場になったときに、先ほど田中さんがおっしゃった死の谷のような話があって。それこそ、そこでけっこう精神的に病んでしまったり、悩む方もいらっしゃると思うんですよ。
そういう方々に対して、もちろん、つらい状況などに陥りがちということは当然あると思うんですけれども、産業医の立場から、なにかコメントや見地をいただけないでしょうか?
大室正志氏(以下、大室):はい。まず一般論の話をすると、会社のなかでメンタル不調になりやすい人は、簡単に言うと、空気を読みすぎるか空気を読めないかなんですよ(笑)。
光村:読めなくても病む。
大室:そうです。読めなくて病む方というのは、簡単に言うと、発達障害と呼ばれる方がいらっしゃいますよね。
光村:あ〜。
大室:ちょっと共感力が低い、だけれども理数系の能力が高いなど、秀でているものを持つ方も多くいらっしゃいます。では、そういう方がなんで病むか? これは実は、空気を読まないから挫折体験が増えるんですよ。何か自分の言いたいことがあっても、うまく伝わらないんです。またコミュニティで孤立したり……。そんな挫折体験が増えるから、結果的に鬱になりやすかったり……。
光村:話が通じないとか。
大室:通じない。これが空気を読まないで病む方。空気を読み過ぎて病む方というのは、医師がこういう言い方をしちゃうと悪いと思うんですけど、世間一般でイメージがつきやすいのは「メンヘラ」というような用語でしょうか。あ、これは忘れてください(笑)。
(会場笑)
よくいるじゃないですか。Twitterをちょっとのことでブロックしたり、なんだかすごく忙しい人。ああいう人の間のことが、すごく気になっちゃうんですよ。そういう人はやっぱり、空気を読みすぎるので、どんどん(心の)充電が減っていくと。これはこれで病みやすい。
ただポイントは、こういう病気、いわゆる境界性人格障害や発達障害というような病名に当てはまらないんですね。つまり、空気が読めないタイミングということです。例えば帰国子女の方は、日本企業にある暗黙のルールのようなものが見えにくい。
これは結果的に病気ではないのに、空気が読めないというふうになってしまう。あと一方で、普段は普通なんだけれども、やたらパワハラをする上司にあたってしまった。そうするとDVを受けている子どもとか、親の顔色ばっかりうかがっている子どもみたいなもので、空気を必要以上に読みすぎてしまう。
だから、病気ではなくても、空気を読みすぎるシチュエーション、空気を読めないシチュエーションになってしまうと病みやすい。これが僕の産業医としての意見ですね。
光村:先ほど麻生さんがおっしゃったような、「お客さんのところに300回インタビューに行け」って、モチベーションのありようによっては「ウゲー」ってなる人もいるだろうし、それこそ、それを強いれば病んでしまう人もいるだろうなと思うし。でもたぶん、いわゆるフロー状態の時は、そういうの平然とできますよ、という。そこの源は何が違うんでしょうか。
大室:1つはすごく遠くが見えている。いわゆる大欲は無欲に似たりじゃないけれど、そういうパターン。もう一方はやっぱり、ちょっと鈍感な人。だから紙一重問題ということですよね。
それはそれで1つの能力。だから、共感の能力が低いことは、ある分野においては失敗するかもしれないけれど、そうやって、もう二進法のように「あっ、そうですか」と応えられる。ABテストで断られたら「次行こう」と動けるのは、強みになることもありますよね。
だから、断られてもそれを根に持ったり、そもそも痛みを感じない心を持っている人は、そういう部分に関しては強みだったりして、ガンガン行けたりすることもあるんですよね。
光村:なんとなく、今みなさんがお話しになったキャラの一つの積み重なりの結果として、天才に見えるような人が、また生まれたりするのかな、という印象を受けました。麻野さんは、この辺をトータルで聞いてみてどうですか?
大室:天才、いない説。
麻野耕司氏(以下、麻野):天才、いると思うんですよね。
大室:えっ!?
(会場笑)
光村:どっちなんじゃい? みたいな。
麻野:天才はいる。天才は天から与えられた才能を持っている人ということじゃないですか。要は、努力では絶対に到達できないような才能を持った人は世の中にいると思うんですよ。
光村:標準偏差から生まれながらにしてずれちゃってる人。
麻野:ただ今回のイノベーター、つまりは新規事業を成功させていくとか、自ら事業を創っていけるという文脈でいくと、新規事業に天才は必ずしも必要じゃないという感覚で。
光村:必要はないということですね。
麻野:本当の天才は難しいと思うんですよね。やっぱり、世の中の3歩先、4歩先へ行っちゃうと、あんまり儲からないことも多いなと思っていて。やっぱり、1歩先、2歩先ぐらいがいいと思うんですよね。
だから本当に、天才である必要はないかなと思う。世の中の天才が言っていることをちゃんと理解できれば、1歩先、2歩先ぐらいに行くことはできると思うんで。なので、「新規事業に天才は必ずしもいらない」というのが僕の意見です。
大室:天才の代名詞って、よくノーベル賞受賞者と言うじゃないですか。よく言うんですけど、ある時から、ノーベル賞受賞者の質が変わったということがあるんですね。例えば、昔、日本で、中間子を発見してノーベル賞をとった湯川秀樹さんという有名な物理学者がいますよね。
あの頃の物理学者は、頭の中で考えたことを紙とペンだけで一生懸命に理論化して、それが認められる、と。こういう個人の天才性に由来して受賞されるような方が多かった。
一方で、最近ニュートリノの観測でノーベル賞をとった小柴昌俊先生。そもそもあのスーパーカミオカンデという機械は、何十億円、100億円レベルのものを国に投資してもらうためのお金を引っ張って来なきゃいけない。あれだけのことをするために部下を雇って、たくさんの人と(プロジェクトを進めていく)。どちらかというと、プロジェクトマネージャーなんですね。
そこまでしてようやく発見すると。一方で、医学などでも山中伸弥教授は、国からお金をもらってくるためにマラソンもしますし。新元号の命名の委員にも入っていたり……。明らかに研究には邪魔ですけれど、そういうことをやって、プロジェクトマネジメントをする。一生懸命みんなでチームを作って研究して、それで発見ができると。
だから、ノーベル賞ですら、個人の能力で急にボンッと非連続的な知を生み出すものではなくなっている感じがします。
麻野:本当にいろんなこと知ってるよね〜。
大室:(笑)。
麻野:楽しいよね。
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