2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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SUPERIDOL氏(以下、SUPERIDOL):さっそく自己紹介をやっていきましょうか。
小島英揮氏(以下、小島):そうですね。
SUPERIDOL:SUPERIDOLでございます。「WeWork Ark Hills South」という日本最初のWeWork拠点のメンバーを、去年の2月のオープンからずっとやらせていただいています。
例えば、大阪にあるWeWork Namba SkyoメンバーのHUGO BOSSさんがイベントをやりたいなといったときに、どうすればブランドのイメージをきちんと伝えながらイベントが盛り上がるか、一緒に考えてつくっていったりしています。
ほかにもWeWorkのメンバーだけではなく、WeWork Japan自体のイベントを一緒にやらせていただいたりもしています。スライドの真ん中上下に出ている写真のうち、上のほうが大阪の拠点がオープンした際、下のほうが福岡の拠点をオープンした際のパーティのものです。
また、東京の日本橋で働く人たちがまちづくりをしている「日本橋フレンド」という団体があるのですが、そこの活動をしていたりしています。その他にも、最近ではesports、いわゆるゲームの競技シーンの写真や映像を撮っています。
イベントをつくったり盛り上げたりしながら、どういうコンテンツに落としこむと、コミュニティやファン、そのシーンのみなさんが盛り上がってくれるのかをコンテンツづくりの立場から考えていくような活動をさせていただいています。よろしくお願いします。
(会場拍手)
小島:みなさん、こんばんは。
会場:こんばんは。
小島:反応があってよかったです(笑)。小島と申します。最近、自分の職業を「パラレルマーケター」と呼んでいます。パラレルは「複数」「同時並行に」ということですよね。僕は、複数の会社でマーケティングの仕事をしていて、本業があって副業という正副の「副」業じゃなく、本当に「複」数をやっているので、パラレルマーケターと呼んでいます。
この『ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング』(日本実業出版社)という本を出しまして、それで今日は呼ばれているんじゃないかなと思っています。
AdobeやAmazon、それから今携わっている会社でもいくつかやっているマーケティング手法の一つに「コミュニティを通じて、いろんなファンとかお客様を開拓する」というのがあります。それを僕は「コミュニティマーケティング」とずっと呼んでたんですけれども、最近このワードを僕以外の人もけっこう使うようになってきた。みなさんも関心があるところなんじゃないかなと思います。この話が今日できればいいなと思ってまいりました。どうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
SUPERIDOL:では、さっそく次のスライドをめくっていただいて。まず、「なぜ今コミュニティが注目されているのか?」というお話です。
小島:本当に(コミュニティって)注目されているんですかね? 注目している人はどれぐらいいますか? これ、あんまり(手が)挙がらないと今日の話は終わっちゃいそうなんですが。
(会場挙手)
よかったです。
SUPERIDOL:これは小島さんから教えていただいた記事で、ちょうど先週ぐらいにアスキーさんに上がっていましたね。
小島:そうですね。けっこうバズっていたので読んだ方もいると思います。読まれた方いますかね。ちょっとスクリーンショットがないのであれなんですけれども。
「大企業に勤めていると五感を使わなくなるよ」という話が書いてあって。社内と競合しか見ないと、“二感”しかなくなる。つまりものすごく世界が小さくなって、ものさしが小さくなっちゃいますよということです。いろんな変化に対応できない。今日はオープンイノベーションや新規事業の話がけっこう多いと思うんですけれども、そもそもそんな(イノベーションをおこす)レベルにいけない、既存の枠でしかものが見えなくなるので、大企業だとけっこう難しいよねという話がこれです。
読んだとか見た覚えがある人います?
(会場挙手)
けっこういらっしゃいますね。で、「このままだと、企業の中にいるといろいろものが見えないので、外とつながる軸が必要ですよね」ということに、コミュニティというのが重要性を増しているんじゃないかなと思っています。
「外との接点をどうつくるか?」という話だと思うんですけれども、お客さんの視点というのは社内にいてもわからないんですよね。お客様と会う場が必要だとか、お客さんと会話する場が必要だと。グループインタビューとかいろんなものがあると思うんですけれども、実際にお客様が使っている場に行くのが一番いいんじゃないかということです。
新規事業をやろうと思ったら、なおのこと外の新しいアイデアを(取り入れる必要がある)。イノベーションは既存のアイデアの組み合わせでできるという話がありましたけど、社内にはアイデアの数が足りないのでイノベーションが起きないわけですね。そうしたら外と接点を持つしかないので、媒体としてのコミュニティが必要なのではないかなと思います。
小島:いろいろコミュニティをつくられてきて、どうですか?
SUPERIDOL:ちょうど今日、先ほどの残間さんと原さんのセッションでも話題に挙がっていましたが、課題感というところで、コミュニティをやっていこうとする人たちと、周囲がどうフォローアップしていくか、活動をどう評価するかという、それぞれの人の立場によってものさしが違うというところは大きいですね。
小島:ものさしというのはすごくいい表現でしたね。
SUPERIDOL:基づいているカルチャーや価値観が関係者間で異なっている際に、どう乗り越えていくのか。そのあたりが「コミュニティとして活動してみたい」というイメージがなんとなくありながら、どう着地させるかでモヤモヤされているようなケースにあらわれているのではないかと思っています。
小島:そうですね。このあとコミュニティの「パターン」のお話をするんですけど、社内で諸々ができていれば、そもそもオープンイノベーションや新規事業などは言わなくていいよね。行き詰まっているところを打開する一つのメディアが、コミュニティだと思います。
一方、このスライドはWeWorkさんが言っているコミュニティです。これはどんなふうに解釈できますか?
SUPERIDOL:WeWorkのメンバーではなくて、「外から遊びに来たよ」という方はどれぐらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
半分ぐらいいらっしゃいますね。会場にいらっしゃるときにWeWorkのサイトも見ていただいたと思うのですが、Webサイト上で「WeWorkにあるもの」はこのように宣言されています。
「ワークスペース」「テクノロジー」「コミュニティ」です。要はいろいろなものを組合わせてみんなが動きやすい環境をつくっていくという話です。
単に作業をするだけ、あるいはメンバー間でお仕事の受発注ができるだけではなく、メンバーがつながりやすくすることによって、一緒に動いていくための最初のきっかけづくりができたり、インスピレーションが得られたり、そういうことができる場なのだ、と捉えています。
なので、WeWorkという世界中に広がる巨大なコミュニティがあって、そこに入ると自動的になにかすごいことが起きるのかというと、それはそれでまた(別の話で)ね。
小島:ここに書いてあるように、「場はありますよ」と書いてあるだけなんですよね。だから、WeWorkに入ったら自動的にイノベーションができたり、いろんな人とつながれるのははっきり言って幻想で。
ただ、やろうと思った人にはすごくいいファシリティが提供されている。みなさんが主体的になったときにはかなりいいかたちで使えるんじゃないかなと宣言されている。チーズの試食会とかも書いてあって。
SUPERIDOL:そうですね。
小島:場はたくさんあるわけですよね。
コミュニティに関心がある方とお話しするときに僕がよく使う4つの象限なんですけど、「どんなコミュニティをつくりたいと思っているか?」なんですよね。
コミュニティとはもともと、住んでいる地域に関することが多い。地域軸の集まりをコミュニティと呼んでいたはずです。
これに対して、最近は、オープンイノベーションやコミュニティマーケティング、ファンコミュニティ、ファンベースのマーケティング、「こういう世界をつくりたい」「オープンイノベーションを達成したい」というのもそうなんですけど、関心軸で集まった人々をコミュニティと呼ぶことのほうが多くなっているんですよね。
その関心軸で人をどう集めるかというのが大事です。関心軸で人が集まってそれがどんどん広がるようなものをつくりたいといったときには、今日の話はけっこう役に立つのかなと思います。
ただ、世の中のコミュニティは必ず関心軸で広がらないといけないということではありません。例えば町内会とか、そこに住んだらどうしても入らなきゃいけないよね。こういうものがあるわけです。
僕はオートバイが好きなんで、趣味の世界ながらFacebookの自分のグループも持っているんですけど、いろんな人にどんどん入ってきてほしいわけではないんですよね。心地よい場を保ちたいという。これはクローズドなんですよ。だからコミュニティにもいろんなタイプがある。
新しい志や関心軸などでどんどん仲間が集まってくる。自分の商品とかをお客様のほうがいいと言ってくれてどんどんお客様がお客さんを紹介をする。そういう関心軸でオープンに拡がっていくコミュニティとしてつくりたいのであれば、このあとのコミュニティマーケティングの話はけっこう合うのかなと思います。
SUPERIDOL:先ほど申し上げた日本橋フレンドという団体のケースで言えば、日本橋に町内会というかたちのコミュニティが元々あるわけです。
そこで日本橋フレンドは何をやっているかというと、「日本橋を盛り上げましょう」ということではなくて、日本橋で働いている人たちが、毎日通っている場所を、第2の地元のように感じられるようになりましょうということなんです。
小島:関心軸がちゃんとあるんですね。
SUPERIDOL:毎日通勤している街との距離感を近づける、つまり街への入口となるキッカケをつくっていく活動をしているので、こういうコミュニティが成り立つ。逆にいうと、町内会と同じ位置付けのコミュニティをやっているのであれば、活動が広がっていかないはずです。なので、関心軸はすごく重要という実感を持っています。
小島:あと、これ地域軸と関心軸で大きいのは、地域軸ってそこに住んでいると無理やり参加している状態になっているじゃないですか。意外に帰属意識が弱いんですよね。町内会の帰属意識ってかなり弱いんですよ。集金に来るんだけど、参加している意識はほとんどないんですよね。でも、自分がオーガナイズするコミュニティでは参加しているという帰属意識が高いんですよ。
帰属意識が高いとメンバーが熱量を持ちやすいという傾向にあります。だから、物事を動かすコミュニティをつくりたいのであれば、関心軸を立てるのは必要だし、それが帰属意識を生んで自発的な行動につながるメカニズムがあるのは、まず理解いただきたいなと思います。
小島:言葉で言ってもなかなか伝わらないのでビジュアルでお見せしたいんですけど、これ動画を再生することはできますかね。ありがとうございます。ちなみに、もう9年ぐらい前のTEDの動画なんですけど、これを見たことある方います? 「社会運動の起こし方」という。
もはや(画質が粗くて)モザイク状態でよくわからないので説明を入れます。真ん中で変な人が1人踊ってるんですよ。
奇妙な人なんですけど、この人を真似して一緒に踊りはじめる人が出ます。これをこの中でファーストフォロワーと呼んでいるんですよね。このフォロワーが一人つくことで、はじめの変な人がリーダーになるんですよ。
続く人がいないと、永遠にヘンな人なんですけれども、1人目が真似をして踊りだすと、この人はリーダーになる。このフォロワーは「みんなも来なよ」と誘っているんですよね。翻訳が出ていますけど、1人のフォロワーが1人のバカをリーダーに変える。
これをやっているうちに、2人目のフォロワーが出ます。この2人目のフォロワーってすごく大事で、1人のリーダーに対して1人のフォロワーだと、1対のヘンな人たちなんですけど、1人のリーダーに2人フォロワーが出ると拡大傾向になるんですよ。わかります?
この2人がどんどん人を呼ぶ。周りの人たち、ずっと見ているじゃないですか。こういう人は関心はあるんだけど、いつ参加したら安全かを見ているんですよね。間合いを見ているんです。少しずつ巻き込まれていく。
これが拡大期です。画像がゆるいのであれなんですけれども、これよく見ると、はじめに踊っていた人はほとんどフレームアウトしているんですよね。だから、人に集まっているんじゃなくて、そのムーブメントに人が集まっている。
小島:これでいうと踊り自体が関心軸ですけれども、こういうかたちでみんなが集まる関心軸をつくると、リーダーからフォロワー、フォロワーからワナビーズと感じでムーブメントが起こる。これをコミュニティを使ってやるといいんじゃないかなというのがよくお話しをしていることです。
あとでURLなんかもTwitterで共有しておきますので、ぜひこれは見ていただくといいかなと思います。ありがとうございます。
SUPERIDOL:この動画を見ていると、自分の実感として強く思い出すところがあって。僕は20年ぐらいDJをやっているんですが、DJもフロアをいかに楽しく心地よい場にしていくかという視点で動くわけです。
小島:そうですよね。
SUPERIDOL:早めのオープン直後の時間帯って、やっぱりみんなおっかなびっくりな雰囲気があるわけです。「えっ、これ踊っていいんでしたっけ? 大丈夫なんですよね?」と様子を見ている感じの時間帯に、一番最初に踊りはじめるのは誰なのか、という空気をDJブースから見極めて、「あの人ならついてきてくれるんじゃないかな」と見定めたら、その人に合わせてどんどんチョイスをしていく。
そして最初の人が動き出したら、その動きがみんなに広がっていくようにちょっとずつトーンを変えていって、その波を少しずつ広げる、というようなことをやっているんです。
小島:そうですよね。今すごく大事なことをおっしゃっていたと思っていて。はじめのリーダーとかフォロワーの見極めがその後の運動をほぼ決めるんですよね。さっき(のセッションで)佐川さんかNTTさんがおっしゃっていたんですけど、全員は相手にしていなくて、一緒に走れる人と走った話をしていました。これは本当に鉄則です。
ということは、みなさんがなにかムーブメントを起こしたいとかオープンイノベーションの場を大きくしたいと思ったら、はじめに誰を選ぶかはものすごく大事だということです。選ぶためには、「この場はどんな場所ですよ」という関心軸が設定されていないと、仲のいい人を呼んでしまったりしてしまうので、その関心軸とリーダーを選ぶのはすごく大事なところですよね。
SUPERIDOL:では、次にいっていただいて、「コミュニティの立ち上げ・成長に役立つ『コミュニティマーケティング』の考え方とは?」です。
小島:僕はよく「Sell through the Community」という言葉を使っています。これは書籍に描いている絵のままなんですけれども、コミュニティをつくって失敗する例というのは、コミュニティに集まってきた人に一生懸命Sellingしてしまうパターンなんですよね。これはぜんぜんスケールしないし、さっきのムーブメントにもならない。
大事なのは、コミュニティに来ている人が「お前もこれ使ったほうがいいよ。これなんで使ってないの?」「これすごくいい場だから来なよ」と、ほかの人を誘う流れをつくること。いる人たちにSellingすると、全部売り切って焼け野原になっちゃうんですよね。
数字を追い込まれると、すぐここから売上を立てようとするんですけど、あんまりそれは期待しなくていい。ここからどう多くの人にビジネスが広がるか、それからオープンイノベーションのネットワークだったら、この人にもっとおもしろい人をどう連れてきてもらうかを設計する。どんどん大きくなることによってポチ率が増えるということなんですね。それが「Sell through the Community」です。
SUPERIDOL:コミュニティに向けて売ろうとすると、とりあえずの人数を増やさなければならなくて、コミュニティの中身はさておき、見込み客とみなして売ろうとしてしまう。とにかくコミュニティの人数を増やして、焼畑農業をして、という考え方になってしまうので、それはもはやコミュニティでもなんでもない。
小島:単なるお客様のプール、見込み顧客プールみたいですよね。
小島:あと、もう1つ、B2Bの商材をやっている方います?
(会場挙手)
お客さんの中からコミュニティを一緒に拡げていく人を選ぶときにやってはいけないのが、売上規模でお客さんを選ぶってやつです。B2Bの売上規模はその人が所属している組織で決まるんです。例えばNTTデータさん(のような大規模な組織)に所属していたらライセンスも大きいんですよ。スモールビジネスにいったら小さいんですよ。
大事なのは、その人がいくら使っているかじゃなくて、どれぐらい熱意があってほかの人に勧められるかですよね。売上規模じゃなくて、これをすごくいいと思っている人をどう集めるかがすごく大事。逆に売上規模が高い人を、ヒエラルキー をここに持ち込むと、同じように失敗します。熱量をちゃんと見極めるってすごく大事ですよね。
SUPERIDOL:一方で、コミュニティマーケティングが難しいと捉えられてしまう部分もここにあると思っていて。コミュニティに売るでいくと、「これだけリストが集まっているので、この人たちに売ればいいのです」と説明がつくじゃないですか。でも、コミュニティを通したモデルだと、「この人たちは買わないので」という話になって、説明しにくいものに見えてしまう。
小島:「買わない」「そんなに伸びしろはない」という言い方になりますよね。
SUPERIDOL:そこを関係者のみなさんに理解していただくというのが、大事なポイントだと思います。
小島:コミュニティマーケティングとは何かというと、刈り取りはやってないんですよね。「いい」という人を増やしているのであって、この人たちが実際に試して使うための刈り取り施策とかキャンペーンは、別に用意されているんですよ。だから、このコミュニティマーケティングだけでものが売れることはなくて、これで十分に温まった人が次のステップにいくというのが大事です。
小島:この「温める」ステージがないと、「セミナーに来たらAmazonのギフト券をあげます」とか、いろんなことを言って無理やり人を呼ぶことになり、その結果ぜんぜんコンバージョンしない。だけど、これはよさそうだと思った人たちが来たら、いいはずだと思って来ているので、聞く耳もあるし、コンバージョンも高いんですよね。
なにより興味がありそうな人をベンダーがいちいち見つけるって、ものすごく難しいじゃないですか。だけど、人事系のソフトだったら、その利用者には、同じ採用のことに困っている人事の友達とかが多いんですよ。同業者がけっこう多いんです。同じような人に情報がどんどん伝わるので、このほうがはるかに相手を適切に見つけられると思うんですね。
SUPERIDOL:そこでアウトプットが広がっていく。例えば小島さんがつくったAWSのコミュニティがありますよね。
小島:その立ち上げをやりました。今はもう本当にすごく大きくなっていますけど。
SUPERIDOL:そのコミュニティが広がっているおかげで、いろんな情報が世の中にアウトプットされています。
僕はエンジニアではないのですが、コミュニティのみなさんがアウトプットしてくださったおかげで、AWSを自分で触って、「写真や動画のデータはかなり大きいので、バックアップをS3に置いておこう」「CloudFrontを使ってみよう」といったことができるようになったんですね。
小島:欲しい情報がどんどん生み出される。
SUPERIDOL:そうです。
小島:「じゃあコンテンツマーケティングみたいなものなの?」というと、限りなくそれに近いんですけど、ベンダーがつくれるコンテンツはすごく限定的なんですよね。例えばITベンダーって意外にスペックのことしか語れないんですよ。ユースケースはほとんどよく知らない。
お客様のほうがよっぽどよく知っていて、「これでこれをもっとうまく使えるようになるよ」「今まで難しかったこれがこの機能ですごく楽になる。この機能は神だね」などと彼らが言ってくれる。そのほうがよっぽど響きます。
SUPERIDOL:たしかにそうですよね。ベンダーさんの「うちの売りはこれだ」という目線のメッセージでくるのか、お客さんが使ってみた目線のメッセージか。お客さんの側も、運用の人なのか、開発する人なのか、ビジネス寄りの人なのかで、切り口が変わってくる。
小島:そうですよね。
SUPERIDOL:そこの切り口が多ければ多いほど、刺さる受け手の幅も広がる。
小島:そうです。同じような切り口の人に話を聞くことが、この図って多いんですよ。だから、つくったコンテンツが伝播しやすいんですよね。
SUPERIDOL:その広がりというところがすごく大事なわけですね。
小島:はい。
SUPERIDOL:では、次にいきましょう。コミュニティを上手に広げていくために必要なポイント、小島さんの本に掲載されている3つのファーストについてご説明をお願いします。
小島:今のような「Sell through the Community」で大きくなるコミュニティをつくりたいと思ったら、この3つをまず守っていただくといいんじゃないかなと思って。
まず1つは、「関心軸」という話をしていますけれども、「これが何の集まりだよ。これを、みんなでこういう世界を達成しよう」というコンテキスト、共通の文脈が必要なんですよね。「来たらピザとビールが飲めますよ」ではダメなんですよ。ぜんぜんコンテキストじゃない。
これで集まった人の熱量を確認したり、熱量を伝播させたりするためには、オフラインの場のほうがやりやすいと思っています。こういう話を聞いて誰が頷いているとか反応が薄い・熱いというのは、やっぱりオフラインだと伝播しやすいんですね。
オンラインだけだとすごく難しいんですよ。広げるコミュニティってオンラインからはじまるイメージがあるかもしれないですけど、オフラインからスタートしたほうが絶対いいので。
ただオフラインだけだと、その場で共有したものが消えていってしまうので、みなさんが今日のツイートなどをブログに書いて、ここに来なかった人に見つけられる、という流れが必要です。で、それを見つけた人たちが次の回にその人がやってくる。「オフライン→オンライン→オフライン→オンライン」という順で拡大のスパイラルを広げる。
アウトプットがないと絶対そうならないんですよね。だから、人を集めるだけではダメだし、来た人がみんな「うん」といっても、誰もアウトプットしていないとダメ。オンラインだけでなにかしようというのもかなり難しい。ということなので、この3つを守っていただくと、だいぶその踏み外しがないんじゃないかなと思いますね。
SUPERIDOL:この3つを、ブランド・企業側がつくっていくのではなくて、コミュニティが回していく。
小島:最終的にはです。けれど、(最初は)ユーザーさんがその役割に自覚的でないことも多い。ユーザーさんといろいろとお会いして、みなさんが同意しそうなコンテキストは最初はベンダーからセットするのがたぶんいいんですよね。でも、それはベンダーがやりたいことというよりは、ユーザーがどう言っているかから組み立てることがすごく大事です。
もっというと、その商品とかサービスのことをいいと言ってくれる人がいないと、コミュニティってつくれないんです。ファンがいなければコミュニティはつくれないんです。
ファンがいないということは、コミュニティをやる前にもっとやらなければいけないことがあるんですよね。かなりクリティカル。お客さんはいるのに誰もファンじゃないって、たぶん直さないといけないことがたくさんあるので、まずはそれと向き合ったほうがいいんじゃないかなと思います。
SUPERIDOL:日本橋なりWeWorkなりで活動していく中で、関わる人に「どんなところが良いと感じている?」というのをまず最初に聞いています。「日本橋を盛り上げたいよね」「WeWorkを盛り上げたいよね」という考えはたしかにそうなんだけど、「どこをどう盛り上げたいの?」という(ことが大切)。
小島:「どうなっていたい?」「どこに持っていきたい?」みたいなのが、解像度が高ければ高いほどその後がやりやすいです。
SUPERIDOL:ですよね。
小島:「なんか集まっておもしろいことしよう!」って、絶対失敗するキーワードですよね。「なんか」って僕の中では絶対的NGワードです。「なんか」と言っている時点で、もうかなり危ないです。そういう話には近寄らないようにしています。
SUPERIDOL:その「どうしたいの?」に対する本気度合い、どれぐらいの覚悟を持って考えていらっしゃるのかは、オフラインのほうが伝わるじゃないですか。
小島:そう思いますね。みんな関心があるのか・ないのかというのは、こうやって見るとわかるわけです。スマホをいじっていると「あまり関心がないんだな」と僕は今わかるわけですし、頷いている人とかメモを取っている人は、少なくともその人は(こちらに)チャンネルが開いている。
その人は、今日の話題だと、僕にとってのファーストフォロワーですよね。その人と一緒にこの考えを広げていこうとなるわけです。
SUPERIDOL:なるほど。では次のスライドにいっていただきましょう。これまでの話について「みんながそれをやるということではなくてね」という考え方ですよね。
小島:これはさっきの踊る人と真似する人の関係がリーダーとフォロワーで。リーダーというのは製品でいうと、その製品のよさがわかっていて、そのよさを伝えることができる、伝えたい人ですよね。フォロワーというのは、それを聞いて実際にやってみる、手が動く人。ワナビーズというのは、「なんかおもしろそうだな。それおいしいの?」と言っている人たちです。
コミュニティをつくると、最終的にはだいたい上のリーダーとフォロワーで20パーセントぐらい、80パーセントぐらいはワナビーズの人です。逆にいうと、初めに20パーセントを掴まえておけば、80パーセントの人はあとで来るんですよね。来ているうちにだんだんフォロワーになってリーダーになるという構図になります。
全員を相手にしないというのはすごく大事で、このリーダーとフォロワーの人をどう見つけてスタートするかというのが、コミュニティを大きくするときには非常に大事です。とにかく数を集めると、すぐに下の人が集まってくるので、この人に火をつけるのは非常に難しい。
SUPERIDOL:コミュニティを組み立てたり、支援している中で感じるのですが、「こんなスキルセットを持っていて一緒に走れそうな人がこのコミュニティにいるといいな」と思っても、全く関係の無いところから無理やり人を引っ張ってくるのはNGだなと。
無理やりどこからか人を引っ張ってこなければいけないコミュニティは、関心軸が充分にシャープになっていないということなのだと思っています。半分は理想論なのですが、シャープに関心軸ができていると、そこにちゃんと来るべき人が来るのであって、その中でリーダーになれる人を見つけてアプローチしていく。
関心軸と全く関係のないところから「あの人ってキラキラしているし、フォロワーもたくさんいるし、すごそう!」という動機で引っ張ってくるのは、あまり得策ではないのではないと思っています。
小島:半分正しくて半分そうじゃないところがあると思います。まず正しいなというのは、「キラキラしていたから連れてくる」というのは間違いだということ。
「影響力が大事だから、インフルエンサーを連れてくればいいじゃない?」という話があったりするんですけど、この人に熱量があるかどうかが大事なので、インフルエンスがあるかどうかってあんまり関係ないですよね。
ちょっと脱線するかもしれないですけど、インフルエンサーの人ってだいたい自分のインフルエンスにすごく自覚的なので、そういう人に「一緒にやろうよ」と言うと、最終的に自分のインフルエンスを高めるためにその場を消費することがけっこう多いです。だから、(コミュニティが)踏み台にされることがある。それよりは熱量がある人がいいですね。
熱量がある人を外から持ってくるのは難しいかというと、単にその人が自分の関心軸に気がついてないだけということがけっこうある。だから、いろんな人に会ってみて「実はあなたこれをやりたいんじゃないの?」という説得をしたりとかすり合わせをしたりする場は、有効だと思います。目の前にいる人だけでリーダーをつくる必要はないんじゃないかな。
SUPERIDOL:ちょっと人が足りないなぁという時に「なんとなく近場にいるから」ということだけで人を引っ張ってきてしまうことがあって。「ここに人が足りないからとりあえず入れちゃおうぜ」というケース。
その瞬間はいいんですが、3ヶ月・半年と経つと、コミュニティが薄まってしまうことに繋がると感じています。
小島:ワナビーズみたいに入ってくるんだったら、「ここは自分の場所と違いますね」と、フェードアウトするだけで終わるんですけど、その人を真ん中に置いてしまうと、「方向が違うので一緒に走れません」となる。
SUPERIDOL:音楽性の不一致みたいな。
小島:バンドが分かれたりとか、そういうやつ。あんまりいいことにはならないですね。
SUPERIDOL:では、次にいってみましょう。3つの成長軸。
小島:これは「コミュニティをどんどん大きくするときに3つのベクトルがありますよね」というのを描いているものです。「自走化」「地方展開」「株分け」と書いています。
自走化というのは、メーカーだったら、マーケティングの担当がいて、こういうムーブメントでお客さんと一緒に走りたいと思っている担当がいたとします。だけど、その人一人なので、全部のミートアップに参加することはそのうちできなくなりますよね。
メーカー側の人がいなくても、「俺たちでやっていくよ」となったほうが、その(メーカー側の)人が割ける時間に依存しないので、成長のスピードが速くなるんですよ。まず発起人と活動の時間が分離するのがすごく大事。僕、これを自走化と言っています。参加者がどんどん自走してやる。
さっき言ったようにオフラインで集まるのがすごく大事です。東京にしかないムーブメントって、東京でしか広がりにくいですよね。じゃあ「同じようなやつが大阪でもあったほうがいいんじゃないか」「福岡でもあったほうがいいんじゃないか」ということで、集まりやすい単位で広がる。
僕が知ってるコミュニティだと、東京の場合は「中央線界隈で集まろう」とか、そういう帰りやすい界隈というのがあるんですけど、そういうものでもいいです。
さらに、どんどんその会場が大きくなってくると、そのテーマとか製品性について深く語りたい人と初めてやってきた人って出るじゃないですか。そうすると、だんだん興味の幅が広くなって、一回の場所で吸収できなくなるんですよね。そうしたときには株分けのタイミングかなと思っていて。
「初めての人専門の場です。玄人さんお断り」とか、「めっちゃガチで深い話しかしませんよ」というところとか、その関心軸に応じてどんどん株分けをしていくと、大きくなる。株分けをして、地方展開をすればするほど、新しいリーダーが生まれるので、このコミュニティ全体を引っ張る力はすごく大きくなるということですね。
ちなみに展開の順でいくと、自走化と地方展開が一番初めにあって、そのあとに株分けがくるのが多いパターンと思いますね。
SUPERIDOL:そうですよね。自走化していって、先ほどの3つのレイヤーでいうと、真ん中と下が増えはじめたあたりで株分けができるようになってくる。
小島:はい。ここでやっぱり「この話だけでもうちょっと深掘りしたいな」というのが出てくるので、そのときに新しい分科会ができるようになる。コミュニティが三角形で表されるとしたら、その三角形がどんどん増えて、かつそれぞれが自走すると開催頻度もどんどん早くなるというようなタイミングですね。
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