2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
集団の力を引き出す編集メソッド(全1記事)
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安藤昭子(以下、安藤):みなさん、本はお手元にありますか? だいたい4人くらいのチームになってください。それでは早速いきたいと思います。まず、ワークに入る前にざっとご説明だけしますので、お酒を飲みながら少し聞いてください。
今日使う読書の手法は探究型読書「Quest Reading」というものです。これは何かというと、物事を深く思索して、自分の考えを組み立てて、ことの本質を追求し続けるための手段としての読書と言っています。目的としての読書ではなくて、何かを考えるための手段としての読書です。
それをする上で「5つの心得」というものがあります。それぞれ高速でお話ししていきます。
まず、Quest Readingでは、本を読む前と読んだ後まで含めて、「読前、読中、読後」の3つのプロセスをすべてつなげて読書と考えます。
2つ目に、「著者のモデルを借りる」とありますけれども、本には必ず著者がいて、その著者がこの本を書こうと思った何かしらの動機や、疑問、視点を元に1冊の本ができているので、それを借りてくるというのが、本を速く読むコツの1つなんですね。(スライドでは)「著者とアクティブに対話する」と書いてあります。
読書をしたら、読みながらモヤモヤしたり、スッキリしたりすると思います。その状態をなるべく行ったり来たりするように作り出す。わからないなとか、なんでだろうな、といった読めていない状態も大事でそのモヤモヤは大歓迎なんです。
そして、どこかでハッと思ったり、自分なりに結びついたり、すっきりしたりする瞬間はある。こうした、モヤモヤとスッキリのかわるがわるを意図的に起こしていくことをおすすめします。
今日はみなさんに「本を開けないで持ってきてください」と言いましたが、「伏せて開ける」というのは、情報を扱う上で非常に大事なコツなんですね。
(スライドに映し出された、一部が隠された絵を指して)これ、なんだと思います? さすがに分からないと思いますが......(隠していた部分をなくしたスライド上の絵を指して)これ(怪獣の絵)ですね。これも、例えば、怪獣の絵がここにあるだけよりも、1回伏せられて「これはなんでしょう」と言われて開けられた方が、おそらくこのあとのみなさんの記憶の中に残ると思います。このカラクリを使いながら読むというのが4番目。
5番目が仮説的に進むというところです。思い切った仮説をもって本を読む。本の中と頭の中を照合しながら、疑問や発見をたくさん持ちながら読んでいく。 この5つの心得を元に、 まずはこの1冊の本を ダァーっと、20分でみなさんに読んでいただいて、これを使ってディスカッションをしていきます。
その前に本日の探求テーマを掲げておきます。みなさんにはそれぞれ、全員バラバラに本を読んでいただくんですけれども、ある1つのゴールに向かいます。そのゴールというのは、 チームの力を最大化する方法を考えようという場だと想定してください。
みなさんのお手元に、Quest Readingのためのワークシートがありますね。(ワークシートの)中身にはこのあと入っていきます。一番後ろのページに「探究テーマ」と書いてあって、ビフォーメモとアフターメモがあります。この探求テーマのところには、あとから思い出してわかる程度で良いので、今日のテーマを書いておいてください。「チームの力を最大化にする方法」を今日はみんなで考えたいと思います。
今日はビフォーアフターを洗練するために、一旦なにもしない状態で、いま「チームの力を最大化にする方法を考えてください」と言ったときに思い浮かぶアイデアや見方を、メモしてもらえますか。チームの力を最大化する時に、どんなことをしたらいいでしょうか。1分差し上げますので書いてみてください。何個でも結構です。
はい、そろそろいいですかね。まずはウォーミングアップという感じで、ここから始めたいと思います。共読のための探究型読書ということで、1回目に参加していたという人はいらっしゃいます?
(会場挙手)
お二人は復習ということで。今日初めての方は、Quest Reading自体もいろんなところで役に立っていただけると思うので、是非、今日覚えて帰っちゃうぞというぐらい集中してやっていただければと思います。
Quest Readingに入っていく最初の段階として、「準備する」「いざ読む」「つなげる」という、大きく3つのステップが書いてあります。これはさっきお話しした、本の読前、読中、読後の3つのステップです。まず本を読む前の段階の手続きをしていきたいと思います。目次読みと言っています。
これから私がご案内する通りにすすめてください。本がありますね。まだ開かないです。表紙周りの情報を少し吟味してください。この本はどんな本なのかなというのを想像しながら、タイトルや、帯、背表紙といったところに書いてあるものをまず見てみてください。
次に、目を閉じてください。表紙に書いてあったことを思い出してみてください。タイトル、著者名。
はい、目を開けていいですよ。どうでしょう。ここ(スライド)にも書いてありますけど、きっと空白だらけでのはずです。わからないと思います。では表紙を見て確認してください。いま思い出せなかったこと、タイトルや、著者をもう1回頭に入れてください。
これが、さっき言った伏せて開けるというところなんですね。自分自身で1回伏せてみる。そうするとわからないなという、モヤモヤっとしたところが出てくる。そこで、すかさず開けてざっと情報を入れる。これを繰り返すのがコツなんですね。
早速ですが、目次を開けます。みなさんが手にしている本は新書なので、たいてい最初に目次があると思います。目次を開けたら、まずは全体を眺めてください。どういう構造になっているのかなあと思いながら目次を眺めます。
この時のコツは、頭の中に建造物を建てていくように、大きな柱をズドンズドンと立てていくようなイメージで目次を立体に捉えてみることです。
おそらく大見出し、中見出しという構造になっているものが多いと思います。大見出しをざっくりととらえて、間に中見出しを置いていくといいでしょう。
はい、1回閉じてください。思い出せますか? 目次に何が書いてあったか、ツラツラと思い出してみてください。1個2個でも思い出せたらいい方かもしれない。
では、もう1回目次を開けて。モヤモヤとしていたところに正解を流し込んであげてください。ざっと眺められましたかね。いまここまでで、みなさんの中でなんとなくこんなことが書いてある本らしいというぐらいまではいったんじゃないかなと思います。
次のステップでは早速手を動かしていこうと思います。ワークシートを開けていただくと、左側のページにタイトルを書くところがあります。これは後ほど書いていただいてもいいですし、さっと目を通していただいてもいいです。タイトルと著者名を書きながら聞いてください。
右側のページに、「ステップ1で目次読みのヒントを集める」と書いてありますが、ここにざっと目次からキーワードを抜き出していただきます。書名を書き終わった人は、主に目次から、目次や、タイトルや、背表紙など、いま見た情報の中から気になるキーワードを右側のページにどんどん書き出してください。きれいに書く必要はないです。落書き状態で OK ですので、どんどん書き出していってください。
ここがポイントなんですけれども、キーワードを書き出しながら、キーワードの周りに、それから連想される言葉を書き出してください。これをホットワードといいます。本の中に書いてなくてもいいです。自分が連想する言葉をキーワードの周りに書き出すことを同時にやってください。図解でもいいし、箇条書きでもいいし、どんなやり方でも結構です。1冊の本をガバッと捉えるつもりで書き出してみてください。
そろそろ一旦区切りますね。今日はQuest Readingとしてはどんどん進んでいっちゃいますけれども、十分に咀嚼できていなくても全然大丈夫です。
次のページを開いていただいて。今度は膨らますという段階に入ります。いま、みなさんにキーワードと、そこから連想される言葉としてのホットワードを2ページにざっと書き出していただきました。今度はそれらの言葉を主に使いながら、もう1回整理し直していきます。
ここ(スライド)に「例えばこんな形に」とありますが、これは編集工学でよく使う編集の考え方・型です。3つで考えると情報は扱いやすくなるのですが、その組み合わせのパターンを図式化したものもです。「編集思考素」と呼んでいます。今日は「著者のモデルを借りる」というスペースは、時間がないので省きます。
その次のプロセスに飛びますが、2つのキーワードの見方を合わせると、もう1つ別のものになるとか。もしくはある1つのキーワードが、このキーワードにも、このキーワードにもなるとか。もしくは3つセットで考えるとわかりやすいとか。3つがそれぞれつながっているとか。
(スライドを指して)この型も使いながら、2ページのキーワードの落書きを整理して、ここに置きなおしてください。きれいに書く必要はないです。頭の中で情報を置き換えることがとても大事で、その過程でみなさんの中で仮説や見方が動き始めます。これも同じく3分でやってみましょう。
いいですね。みなさん、なかなか思い切って書いてくださっています。まだ書いていらっしゃる方は続けていただいて、片耳で聞いていただければいいです。できたよという方は、次の C のところに進んでください。
Cのところは、いま画面に出していますけれども、仮説を描くという段階です。みなさんはまだ本を全然読んでないですが、読んでない状態でこの本にはどんなことが書いてあるのかなという仮説を立ててください。
編集工学では、ベース、ターゲット、プロフィールという考え方で、いま自分がいる場所、向かいたい先、そこに至るまでのプロセスという考え方をよくします。いまの自分、つまりはベースのところに、現在その本について知りたいなと思うこと、もしくは分からないなと思っていること、もしくはその本に関する漠然とした印象を書いてください。
ターゲットのところに、この本を読み終わったあと、自分はどうなっているか、何かを分かっているんじゃないかなとか、何かの発見があるんじゃないかなという予測を書いてください。
そのターゲットに至るまでに、どんな道筋があるだろうか。つまり、どんな読書体験になりそうか。こういうことが分かって、こういうことが分かって、こういう発見をするんじゃないかな、というようなプロセスを想像して、書き出してみてください。この丸の数だけ書く必要はないです。まったくもって当てずっぽうでけっこうです。ここまで終わらせてみましょう。
では、この辺りで一旦区切ります。 ここで1回、チームの中で共有しましょう。まだ読んでいる前の段階なんですが、仮説段階で共有してください。何を共有してもらうかというと、いま自分が持っている読みかけの一冊がどんな本かということを紹介してください。まずはそこまででけっこうです。
せっかくなので自己紹介をしながら、1人3分で収めるくらいのつもりでお話してください。 それぞれどこからでも構いませんので、始めてください。どうぞ。
(会場談話)
もしかすると途中のチームもあるかもしれないですが、時間もないので次のステップに進みたいと思います。いま、みなさんに仮説状態で共有してもらいました。まだ読んでいない本を紹介するって、これも考えてみたら不思議な体験だと思うんですけれども、いよいよ中身に入っていきます。
今日は時間がないので、本当だったらこうします、という手順をまずご案内しますね。
(スライドに)QA サイクルと書いています。「Q読み」と「A読み」というのがあります。ワークシートを開けていただくと、「著者のQを借りてくる」「著者のAを要約する」と書いてあります。クエスチョンとアンサーです。自分のクエスチョンを立てる。自分の発見を書き出す。自分と著者を行ったり来たりする。もしくは自分と著者のQ & Aを行ったり来たりする。
それを探し出すつもりで本をめくっていくと、非常にスピーディーに本の内容が頭の中に入ってきます。これが探究型読書のコツで、一字一句熟読する方法とは違うんですが、思考を進めるためにポイントをざっと抜き出すというやり方です。
今日は十分な時間をとってはできないんですが、この一端だけは体験していただこうかなと思います。非常に過酷ではありますが、10分でこの1冊を読みきります。読みきるというのはどういう状態かと言うと、なにはともあれ全ページをめくってください。
スピード感でいうと、(本をめくるスピードを会場に見せながら)こうやって本を読む。こういう感じて追いながら。これぐらいでいいです。みなさんはいま、十分に仮説を立てたのでキーワードがあったら。目に飛び込んでくると思います。目に飛び込んできたものをざっとメモする。それぐらいで構わないです。雑でいいので、ここから10分で最後のページまでめくるつもりでやってください。
……どうでしょう? 最後までめくれたでしょうか。当然ながら消化不良状態だとは思いますが、今日は読書自体よりも、みなさんとの「かわしあい」の方に重点を置きたいので、このまま進めていきたいと思います。本当であればこの手順を見ますということを、ご案内だけしておきます。
いま、みなさんは読中のステップ2のところを終えていただきました。このあとはステップ3の読後のところに入ります。それが(ワークシートを指して)これですね。最後の見開きになります。
「仮説の振り返り」とあるところは、先ほどみなさんにベース、プロフィール、ターゲットという方法で、この本はこういう読書体験になるんじゃないかという仮説を立てていただきました。「振り返る」というところにパーッと目を通してみてください。10分といえども、紙をめくってみた状態で、最初に自分が想像していた本と合っていたか違っていたか。どっちでもいいです。合っていても違っていてもいいですが、仮説したものを一旦振り返るというのがとても大事なステップです。
手を動かしながら聞いていただきたいんですが、2番目の似たもの探しというところ、ここから先が頭の中に入れた1冊をどう活用していくかというところに関係していきます。
例えば、他の本で書いてあったものでもいいし、最近自分が考えていたことでもいいし、同僚や家族がふっと言った言葉でもいいんですけれども、「この本に書いてあったこれって、あれと似てるな」と思うことを読み終わったすぐあとに書き出して欲しいんですね。
ここでは、本の内容と関係なくていいです。「これとこれって似てるよな」ということを書いてほしい。これはアナロジカル・シンキングなんですね。それも読み終わったすぐあとに1回入れておくということです。本来はこれをやります。
3番目の「自分に置き換え」というところ。ここは、3分ぐらい時間を取ってみなさんにやっていただきたいと思います。この本から得たものを、自分自身の今後のことに活かせるかどうか。もしくは自分の仕事や、問題意識になにか当てはめて考えられそうなテーマがあったかどうかというところを、自分ゴトにするというプロセスなんですね。
こじつけでもけっこうです。ちょっと飛躍しすぎていてもけっこうです。自分自身の学びや問題意識に紐付けて、この本をとらえ直してみてください。これはなにかしらにメモしていただくといいと思います。
いいですかね。ここまでで一旦、この1冊の本に関して、みなさんに読前、読中、読後を駆け抜けていただいたという状況です。これを今日のテーマにつなげていきます。
探究テーマに寄せてというプロセスになりますけれども、冒頭でこの裏側にテーマを書いていただきました。今日は「チームの力を最大化するための方法を考える」ですね。そのテーマと、みなさんが読んでいただいたこの本からいろいろゲットしていただいた発見や見方やキーワードを関連付けていくということをやっていただきます。
ここにもあるように、この本から得られた視点や、連想されたことをテーマに関連付けて考える。新たに見えてきた仮説や、疑問、問題意識はメモをしていきましょう。ここでは本から多少離れていてもいいです。
何がしたいかというと、みなさんの中にあるイマジネーションを最大限に引き出したいのです。想像力を呼び覚まして、それなりのディスカッションができる状態までみなさんの問題意識を持っていきたいということなので、本から離れていただいてもいいんです。本はあくまで道具と考えて、探究テーマに寄せてメモをしてくださいね。
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