2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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安藤昭子氏:この動画はよくできていますよね。ドイツの……クーザクトと読むのかな? ミュンヘンにあるクリエイターチームらしいです。
ここにあるように、創発というものはやっぱりまだ謎に満ちていて、けれども私たちの世界の相当な部分を作っているらしいと。それは細胞や分子や原子といったミクロのところにもあれば、国、国家、社会というような私たちを取り囲むマクロなところにも起こりうるといっています。
今日は、会社の中のチームでこの創発にあたる現象はどうすれば起こりうるのか。そうした創発現象が起こりうるチームは何が違うのかというようなところを、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。
今の動画は流れるのが速かったので、ポイントだけをまとめます。アリが出てきましたが、アリは一匹一匹はちっちゃくって、考える力も小さな生き物です。しかし、たくさん集まると、ものすごく精巧で複雑なコロニーを作ると。
この仕組みは、今の映像の中にも出てきましたが、司令塔がいて、その司令塔の支持の元でみんな動いているわけではない。お隣さん同士が協働しあうことによって、全体が生まれているということでしたね。
これがまさに創発現象として、よく例として言われるところです。動物ばかりではなく、細胞、分子、原子レベルまでそうだということでした。
生命そのものが、一個一個の単位で見ると別に生きているわけではないものの集まりによって、創発している現象だとも言えますね。これも先ほどの繰り返しになりますが、原子、分子、細胞がわたしたちの身体を一体一体をつくっていて、その一人ひとりが人間の社会をつくっています。
そう考えていくと、この映像の中でも「国家とは何か」ということが出てきましたが、では私たちが所属している組織というものを考えたときに、組織というのは何なのでしょうか。
組織を指差してくださいと言ったら、何を差せばいいのか? そのオフィスなのか、オフィスのある住所なのか、それとも会社のロゴなのか? 社長なのか、構成メンバー一人ひとりを指差さないといけないのか?
これは、国家の話も社会の話も組織の話も一緒だと思います。この映像にもありましたが、恐らくそれはすべて相互作用の中で発生している現象ですよね。
組織とは何ですか? と言っても、それは人がいて、やるべき仕事があって、お客様などの外部とのお付き合いがあって、関係とプロセスの集合体を私たちは何となく組織と呼んでいるわけですね。そういった組織だったり人の営みが集まったものが社会や国家になると。
創発する組織という言い方をしていますが、どうすると組織全体が良くなっていったり悪くなっていったりするのか。それは環境としての、良くなっていくときの特性、悪くなっていくときの特性というものがあるのだろうということで、組織そのものを研究している人々がいます。
ダニエル・キムというMITの教授が、組織開発でいうと第一人者と言えるのではないでしょうか。成功循環モデルと下に書いてありますが、このダニエル・キムという人は、組織のバッドサイクルとグッドサイクルという考え方を提示しています。
結果の質と、関係の質と、思考の質と、行動の質という4つの質と、クオリティの話が書いてあります。企業活動をしている中で、どうしても結果はチェックせざるを得ない。
結果が良くなかった、成果が上がってない、という場合に、例えば上司から部下に対して、もしくはその逆もあるかもしれませんが、何かしらの依頼が出たり、指示が出たりする。
でも成果が上がっていない状態だと特に、高圧的な指示や命令が多くなり、それによって責任転嫁などのネガティブな反応が起こり、一人一人の思考の質が、受身的なものになっていく。
思考の質が受け身になっていくと、行動の質として自発的に行動しない状態になっていく。それがもう一回グルッと回って結果としてさらに成果が上がらない結果が出るので、またさらに関係が悪化して、自己防衛に走っていくというように、どんどん悪いスパイラル、負のスパイラルに入っていくことがあると。
ここにはまり込んじゃっている組織というのも、もちろんたくさんあると思います。このときに、どこから手を入れるかというところをこのダニエル・キムという人は考えたんですね。
結果を良くするためにどうするかということを、いろんな手を打っていくわけですが、結果からみていくとこのサイクルからなかなか抜け出ることができませんね。そこで、このサイクルをくるっと一つまわして、結果の質を問うのではなくて、関係の質に着目するところから始めるべきだ、というのがこの人の成功循環モデルの考え方です。
そうすると、結果云々の前に、まず関係が良くなるとはどういうことか。例えば、お互いに尊重する、一緒に考えるといったこと。そうしたことをすると、今度は一人ひとりの思考の質というのが発見的になったり、自発的な気付きが起こりやすくなる思考の質がそのようになっていくと、今度は行動の質が自発的になったり、積極的になったりしていきます。それによって、自ずと成果がでてくる。
そうなるとまた、関係の質も信頼関係が高まり、思考の質としても、もっといいアイデアが出てくるようになる。この良くなっていくスパイラルになんとか切り替えるというのが、組織開発においては一つのポイントだ、ということですね。
この方法論を用いて、ダニエル・キムはさまざまな組織の課題を解決したり、紛争の間に立って解決をしたりしています。
もう一回整理をすると、上の方の結果の質と行動の質というのは、わかりやすいですよね。定量的に測りやすいものかと思います。とくに売り上げや利益など、数字として見えるものをチェックするのはわかりやすいですが、グッドサイクルのスタートにあたる関係の質や思考の質というのは、見えにくいわけですね。
関係の質を上げるにしても、どこの関係をどのように、また質が上がるとはどういうことなのかということを考えていくと、なかなか遠回りでもあります。けれども、ここが非常に重要です、という話です。
では、その関係の質というものをどうやって高めていくか。一人ひとりに何かを注入したとしても、全体の関係の質というものを変えていくことにはなかなかならない。
集団でこの関係の質の向上を図るのであれば、組織的に何らかの学習状態に入っている必要があるのではないかというのが、今日これからの話になるところです。
つまり、ピンポイントで研修をしたり、一時的に強いメッセージを送ってその場は変わったとしても、組織のなかにおける関係の質自体が変わっていかないと、このグッドサイクルに入れない。組織全体として向上していく状態にするためにはどうすればいいか、というところですね。
それを考えるにあたって、編集工学研究所でもよく参照する人なのですが、グレゴリー・ベイトソンという人がいます。もう亡くなっているアメリカの文化人類学者で、ベイトソンの研究は多岐にわたりますが、とくに学習論やコミュニケーション論というところで、その後の組織開発や精神医学、文化人類学や社会学といったいろいろなところに影響を与えるような研究を発表しています。
この先の話を進めるにあたってこのベイトソンに一旦戻りたく、倣いたいと思います。チームの学習状態というのは、どのような層になっているのか。これはベイトソンによる「学習とコミュニケーションの階型論」という論文の中で言っていることです。
学習には段階という状態があります、という話なのですが、あるシステム、たとえば組織でもチームでも学校のクラスでも、集団の中に何か情報が入ってきて、その情報が何かの成果になっていくときの学習状態を、このように学習0から学習3というように分けているんですね。
学習0状態というのは何かというと、何らかの刺激が入ってきて反応するのですが、刺激と反応が1対1の関係で、そこに何もフィードバックが起こらず、学習が起こってない状態をさします。これは超まずい状態ですね。でも、組織の中ではけっこうこういう状態はあるんじゃないかと思います。学習がない状態が学習0です。
学習1になると、刺激があって反応するということで、これは定義が難しいのですが、刺激と反応の関係が確立してルールが定着するところ。例えば犬に、おすわりしたらエサをあげるといったことをやっていき、犬がちゃんと覚えておすわりをするとご飯がもらえると、それは学習1状態になっているわけですね。
学習2というのは、それよりも少し高次、高い段階です。刺激があって反応がより高次な目的へと書いてあるのですが、ルール自体を自分で変更しようとしたり、学習すること自体を学習している状態なんですね。
例えば、学習1がいくつかある選択肢の中から何を自分は選んだらいいんだろうか、というところ、つまり、お題があってそれに対してどのように答えればいいのか、という学習状態だとすると、学習2に関してはその選択肢自体を自分で設定しなおしたりできるという、つまりは視点が上がっていくということですね。
学習2の状態までには、比較的簡単に到達できる。私たちが習慣化していたり、私たちの性格になっていたりすることというのは、学習2が進んだ状態で、あるルールや、自分の考え方というものが定着して、それをハンドリングできている状態です。
ただ、これは良し悪しなんですよね。何か自分の考え方が枠にはまっていっているという可能性もあります。学習2が起こってルールが定着して、フレームがそこで固まっていっている状態。その学習2の状態になれるから、毎回毎回、0から考え直さなくてもいろいろな取組ができるという利点もありますが、悪しき習慣になってしまうということもある。
組織全体の力を合わせてもう一段階上のところにいかなければいけないという問題意識をお持ちの企業が最近特に増えている印象がありますが、それはつまり、この学習2の状態のままでいると、これまで歩んできたやり方や考え方の枠組みから脱却できない、それではもうこの先は生き残れない、というところにきているということだと思います。
そういった背景もあって、こうした学習論というものが再び注目されているところなのだと思います。自分たちの考え方の枠組みから脱却したり、その枠組み自体を変えるという状態が、この学習2から学習3へのジャンプなのですね。
ベイトソン自身は、学習3という段階はそんなに簡単には起こらないと言っているんです。また、学習1や学習2というのは、いろいろな動物に起こりうる。先ほど犬の例を出しましたが、イルカのショーであったり、ほかにも多くの動物が学習2まではいくのですが、学習3の領域に行けるのは、哺乳類の中では人間だけじゃないか、ということを言っているんですね。
では学習3がどんな状態かというと、これがですね、今日のテーマにしたい、チームが創発状態になっているということだと思います。
一応ベイトソンの言葉で言うと、前提となっている枠組み、フレームから脱却して創発が起こっているという状態。もう一つ違う言い方をベイトソンはしていますが、自分たちが所属しているシステムやルール、考え方自体を変更している状態ということですね。
学習2までは、お題はどこかから与えられてる、それに対してどう答えるかという状態なのだけれども、学習3に関しては、お題自体を自分たちが創造しているという状態と言ってもいいと思います。
この学習2から学習3に、どうやって至るかというところが創発型チームを考えるときのテーマになってくるのですが、そこに行く前にもうひとつだけややこしい話をします。ベイトソンは興味深いことを言っていまして、1950年ぐらいにダブルバインド理論というものを発表するんですね。
これはその後心理学の世界などで参照されている考え方なのですが、ダブルバインドとは何かというと、言ってみれば矛盾状態のことです。ここには二重拘束状態と書いてあるのですが、あるまったく相反するメッセージを受信して、その矛盾したメッセージを受信したことによって起こる混乱状態をダブルバインドと言うんですね。
例えばベイトソンは、ある精神に病を持った子どもと親子の話を例としてあげています。お母さんが子どもに対して「あなたのことはとても大切よ」というのですが、子どもが「お母さんありがとう」とお母さんをハグしようとしたら、お母さんの体がギュッと固くなった。
子どもが受け取るメッセージというのは、お母さんは自分のことを大好きだと言っている。でもお母さんは自分を避けてるのだというメッセージを同時に子どもは受信してしまって、そこで病が急激にひどくなっていってしまう、というような例をベイトソンはあげています。
ベイトソンがいうダブルバインド状態と言うのは、ある非常に強力な関係の中で起こる矛盾のことを言っているのですが、私たちの日常生活の中にも、矛盾したメッセージによる混乱状態というのは、程度はどうであれよく起こりうることだと思います。
例えば会社の中で、最近は多いと思うのですが、「残業はしちゃダメ」「早く帰りなさい」と言われるんだけれども、「結果は前月より出しなさい」と言われる。そうした普通に考えられるダブルバインド状態というものもあるんじゃないかと思います。
もしくは親子関係でも、会社の中でもあると思いますが、「もう早く自分の手を煩わせないよう自立しなさい」と言われたので、それなら自立しようというような方向に向かうと、「なんだ自分の意向は聞かないのか、気に食わない」と言われてしまう。そうしたことはいろいろあると思うんですよね。
そのときに、上司と自分だったり、親子関係だったりというところの関係が緊密であって、かつ、その受け取るほうがその相手からの評価や愛情が自分の全世界であればあるほど、このダブルバインド状態というものから逃れられなくなって破綻していくケースがままあると。
ですからベイトソンは、これは非常に危険な状態だと、まず大前提として言っているんですね。けれども、ここが興味深いところなのですが、学習2から学習3へ移行する過程では、このダブルバインド状態をほとんどが通るというんです。
相反する矛盾したメッセージを受け取ったときにそれをストレスとしてミスコミュニケーションが起こり、破綻したり病んでいったりするという方向もあります。一方では、その葛藤を使ってより高い次元に思考を飛躍させる、それによって創発を起こしていくという方法もあると。
ベイトソンは、ダブルバインドは基本的にはリスキーなものというようには発表していますが、同時に治療的ダブルバインドということも言っていて、このダブルバインド状態をあえて治療の中で使うということも、精神医学、心理学の中で取ることもあるということを言っているんですね。
これを学習論に当てはめて考えてみると、いまのお話のように何かしらチームの中に、矛盾や葛藤が生じたときこそがチャンス、というのがこのダブルバインドを通るという考え方ですね。
昨今はダイバーシティということもよく言われていますが、あれも単にいろいろな文化や考え方を許容しましょうという話だけではなく、やっぱりたくさんの相反する考え方というものが混ざり合うということが、組織全体を次のステージに運んでいく上では非常に大事だということで、理に適っている話だと思います。
ここまでは、学習論、組織論というところの前提となるお話をしたかったのですが。それでは、その創発するチームとしてはどんな要素が揃っている必要があるのかということをまとめてきました。
これについてはいろいろな見方があると思いますが、編集工学研究所としてはこのように見ていると言うものです。
縦の軸が組織、横の軸が個人だと思ってください。縦の軸には環境と書いてありますが、これは組織の文化や風土というところではありますが、まずはメンバーの心理的安全が確保される環境が大事ということでもあります。
そういった環境を持ちながら組織全体がどこに向かおうとしているのか。ビジョンやミッションといったものをいろんな会社さんが掲げていらっしゃるとは思いますが、そういった大きな全体のものとは限らずとも、例えばチームにおける方向感、もしくはだれかの想いなどの向きがディレクションとして上に書いてあります。
そして横軸の個人のところにあるマインドセットは、どういった世の中の見方、世界の見方をしているのか、考え方をするのかということ。あとはもう片方では、スキルセットですね。
ここでは特に思考スキルを指していて、このdocomoさんでもアナロジカルシンキングなどの形で、シンキングメソッドをいろいろやりましたが、考え方の技術というものはやっぱり必要です。
それらを全部合わせて関係性というものが真ん中に書いてあります。じゃあコミュニケーションをどうしていくのか。これらがいっぺんに底上げされるということが、チームが創発状態になる上では必要なのだと思います。
私たちもいろいろな企業研修をお預かりしてやることがあるのですが、研修として切り出しやすいので思考スキルをテーマとするものは多いのですが、ここ(思考スキル)だけやってもなかなか焼け石に水ということが多いんですね。
例えば、想像力を鍛える思考スキルのところですが、これは先ほども言いましたが、docomoさんでもアナロジカル・シンキングのようなメソッドをやりました。こういったかたちでトレーニングをすることはもちろん可能です。
あとは方向感のところ。前回、物語の方向ということで、ビジョンをどのように語って組み立てて伝えていくかということをやりましたが、ここにも方法論はあると思うんですよね。
見方、考え方に関してもアナロジカルシンキングで、随分とカバーできるところだと思います。あとは、どのように組織としての安全な環境を作っていくか。そして真ん中の関係性というものをどのように質を高めていくか。対話を活性化すると書いてありますが、組織を変えるのであれば、これらをいっぺんに底上げさせる必要があります。
今日ここから、後半1時間ちょっとですが、これらをまとめて一気に底上げする方法のうちのひとつを、ワークショップ形式でご紹介したいと思います。「共読」という手法を通じたチームビルディングで、本を活用して集団を創発状態にもっていくというものです。今日は短い時間の中なので、体験ぐらいにとどまってしまうかもしれませんが、みなさんと一緒にやっていきたいと思います。
ここからさっそくワークショップに入っていきたいと思いますが、ルールだけ先に言いますね。
まず4〜5人で1チームになります。今の席がそうなっているので大丈夫かと思います。あとは探求テーマを決める、これは私の方からお題を出します。そして、こちらの編集工学シリーズの1回目でやりました、クエストリーディングの手法を読み方として使います。その上でグループで対話をして、何かしら新たな問い・課題を見つけるところまで、今日1時間ぐらいでやっていきたいと思っています。
本は編集工学研究所にあるものから持ってきました。このあとみなさんに立っていただいて、そこに並べてあるので、直感で選んでください。ご縁だと思って、あまり吟味しないで。1つだけ約束事、中を開かないで持ってきてください。表紙でピンときたものをとって席に戻る。
そして、今日はなんと、編集工学シリーズが最終回ということで、docomoさんのお計らいで、お酒などをカウンターに出してくださっているということなんですね。鈴木さんありがとうございます。ですからみなさん、本をとって、お好みのお飲み物をとって、あと1時間は大いに遊ぶつもりで席に戻ってください。
(会場笑)
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