2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
プレゼンテーション(Goodpatch 土屋氏)(全1記事)
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土屋尚史氏(以下、土屋):みなさん、こんばんは。僕のコンテンツは箸休めだと思ってください。本番はこの後にありますから。DeNAと一緒にUI Crunchを立ち上げて、なんともう4年も経っていました。増田さんや宗像さんと一緒に登壇できるというのは、こんなイベントになったか! と思っております。非常にうれしいです。
Goodpatch自体は、もう会社を立ち上げてから7年になります。2011年に会社を立ち上げて、今では、東京とベルリンとミュンヘンとパリにオフィスがあります。
もともと会社を立ち上げるきっかけになったのは、サンフランシスコに行ったことです。そのサンフランシスコに行くきっかけは、DeNA南場さんの話を聞いたことなので、Goodpatchがあるのは南場さんのおかげなんですね。
GoodpatchはいわゆるUI/UX領域のデザイン会社として仕事をしておりまして、最近ではモチベーションクラウドというSaaSのサービスや、コミックDAYSというマンガアプリのUI/UXデザイン、開発をお手伝いしました。
自分たちでもプロダクトを作っておりまして、プロトタイピングツールのProttや、デザイナーに特化したキャリア支援サービスReDesignerなどがあります。クライアントワークと自社プロダクトの両軸で仕事をしているようなデザイン会社でございます。
今日は僕の方からどういった話をしようかというところで、このReDesignerを運営する中で、今のデザイン領域が、企業とデザイン側に求められることをお話しようと思って持ってきました。
まず最初に、近年の海外におけるデザイン領域のトレンドについて。みなさんご存知のものもあると思いますが、例えばこのAirbnbといった、デザイナーが共同設立したスタートアップが、やっぱりすごく大きな結果を出してきているというのが、海外の事例で出ています。
まず大手企業が相次いでデザイン会社を買収しておりまして、本当にFacebookやGoogle、アクセンチュアやマッキンゼーのような戦略コンサル、そして金融機関。こういったものが、この7年くらいでデザインファームをどんどん買収していっているという事例が、海外では起きています。
あと、先ほどもありましたが、CXOやCDO、CCOといった経営層に入り込むデザイナーがここ数年増えてきておりまして、海外ではフォーチュン100の14パーセント、ユニコーンスタートアップの21パーセントがデザインエグゼクティブを設置しています。日本でも最近では、ここ1、2年ですね、スタートアップを中心に、CXO、CDO、CCOが非常に増えてきているというのが、いわゆる海外のトレンドとしてあります。
僕らはこのReDesignerというサービスを5月に立ち上げて、そこで対企業側とデザイナー側のニーズを常に取っています。このReDesignerから見る日本のトレンドについてお話しますね。
まず、企業側のトレンドとしては、まず1個目は本当に今まで考えられなかったようなレガシーな大企業がUXデザイナーを採用して、デザイン組織構築に動いています。
先ほども、特許庁にCDOができたというお話がありましたが、本当にこんな会社がというところが、CXOを設置したいと僕らのところに相談しにきたりしています。
スタートアップだけではなく、ある程度の規模の、大企業とまではいかなくても、数百人規模のベンチャー企業もCXOなどのデザイナー役員を設置するようになった事例がだんだんと増えてきていまして、そこでデザイン組織を作っていきたいという相談が起きてきています。
最近感じていることは、スタートアップの資金調達後のお金の投資の仕方が変わってきていますね。ほとんど肌感覚ではありますが、だいたい20名くらいの会社で4、5憶調達しました! というようなスタートアップが、調達後に使う使用用途が、ブランディング、コーポレートブランディング、CIを刷新したりといったように、唯一の改善としているところに投資する。
調達したお金をいわゆるマーケティングの方に投資するのではなく、そういったデザインに投資する事例がだんだん増えてきました。僕たちにもそういった相談が増えてきています。
これは海外企業のデザイナーとエンジニアの比率の変化ですが、本当にこの7年間でエンジニアに対するデザイナーの比率が変わってきています。例えばアトラシアンなどは7年前はエンジニアが25人いる中で、デザイナーは1人というような状況だったわけですよ。これが、今では9対1になっていたり。IBMなどでも、72人いてデザイナー1人だったところが、8人に1人のようなことになっているんですね。
本当にすごい変化です。だんだんデザイナーの比率が高まってきている。イコール、デザイナーが増えているということが起こっています。
デザイナー側のトレンドとしては、ReDesignerのアンケート結果を元にお話しします。例えば「5年後のデザイナーとしてのキャリアはどういうところを目指しているか」はというと、「デザイン技術を極めたい」というのが当然1位なんですよ。そして3番位にある「経営に携わりたい」。今日は「デザイン経営」宣言の回でありながら、経営に携わりたいデザイナーの方は12パーセントしかいらっしゃらないという。10人いれば1人くらいが経営に携わりたいと言うような意識です。
これはあなたが関わりたい事業形態は何か? ということで、(BtoCの)C向けが多いですね。70パーセントくらいが、BtoCに関わりたいといっている。あとはBtoBは20パーセントくらいですから、やっぱりC向けがまだまだ多いということがあります。
「今後はどのようなスキルを上げたいか」という設問では、やはりUXデザイン、UIデザインが非常に多く、3番目にブランディングやCI、VIというものがきています。
UXデザイン、UIデザイン、ブランディングへの関心が非常に強い。経営に関わりたい人は12パーセントと少ないんですが、ブランディングのスキルをつけたいというデザイナーは非常に多いんですね。ここには僕もけっこうギャップを感じています。
ブランディングというのは、みなさんがどう思われているかはわかりませんが、経営への理解がめちゃくちゃ重要なんですね。経営トップの思想や、社会との関わりといったビジネスの理解も非常に必要で、経営者との共通言語も高度なビジネスコミュニケーションスキルが求められるわけです。
ですから、いわゆる本当に表面上だけのCI、VIをやりたいというのは、本当にブランディングを理解していますか? ということを思うわけですね。
これからのデザイナーに必要なのは、経営というものをちゃんと理解して、会社の作り手になるマインドセット。これを持つようなデザイナーが非常に重要になってくると思います。
デザイナーに求められる領域が増える中で、領域を超えていくチャレンジ精神がめちゃくちゃ重要です。僕は個人的に、これからのデザイナーに特にこれを持っておいてほしいというマインドセットが、アントレプレナーシップです。
アントレプレナーシップといっても、別に起業しろということではありません。ハーバード・ビジネススクールの定義では「コントロール可能な資源を超越して機会を追求すること」とあります。まさに今言われていた、越境人材と言われるようなところに通じておりまして、越境してチャレンジするというところを求めているわけですね。これからのデザイナーに、これはとても重要だと思っています。
不確実性が高い現代において、デザイナーの役割はめちゃくちゃ重要だというのは自明であり、やはり社会にインパクトを与えた経営者の横には参謀としてのデザイナーがいます。当然、AppleはSteve JobsとJony Iveだし、Sonyは盛田昭夫さんを支えた黒木靖夫さんがいらっしゃったんですね。
こうしたデザイナー参謀と言われる人たちが、非常に必要なわけです。これについて、経営者も理解しなければいけない。これから経営者側に訴えたいのは、経営者の方はまずぜひこれをやってほしいと思っています。経営者に必要なのは、デザインのチカラを信じるということ。これが必要です。
デザイン戦略によって成長した会社は、トップの強力なリーダーシップとバックアップがあるわけです。これがめちゃくちゃ重要で、今日は「デザイン経営」宣言の回ですが、デザイン経営のスタートラインは、まず経営トップがデザインのチカラを信じること、ここから始まるわけです。ですから、ここがものすごく重要なので、今日来ている経営者の方はぜひここだけは覚えて帰ってください。
「デザイン」と「経営」というところでいうと、質と量のバランスや、右脳と左脳のバランスや、クオリティとビジネスのバランスといったように、これを振り子でいったりきたりしなれけばならないわけです。
『CDOの秘密』というAppleのボードメンバーについて書かれた記事では「ボードメンバーが質的なものを信奉し、それに沿って行動することが出来るということに大切な何かがある。それは単純に役員レベルでは往往にして数量的な情報がより力を持つからだ」という記事があります。
これはAppleの例を出してみると、Appleのボードメンバーというのは、共益のチャンネルが新商品で埋まっていたとしても、全員が市場での発送準備がオッケーだとしても、Appleの役員会は、それを1歩引いて、それって意味があるのと問う力があったとこの記事では書いてあるんですね。
ですから、質的な考え方と数量的な考え方をまたぐことのできる人物がいること、そしてそれを許容する組織であること、これが非常に価値のあることだと思います。
今日はデザイン経営のお話も後で聞きます。これを今後5年間推し進めていくということが非常に重要なことでして、やはりデザイン経営は日本を変えると思っております。みなさんでぜひ推し進めていきましょう。ありがとうございました。
(会場拍手)
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