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OSSプロダクトのプロダクトマネージメント(全1記事)

コンセプトは「ECに色を」 国内シェアNo.1 ECオープンソースのプロダクトマネジメント

2018年7月7日、株式会社フリークアウト にて「プロダクトオーナー祭り 2018 Summer ~プロダクトマネジメントが世界をツナぐ~」が開催されました。IT関連企業に所属するソフトウェア開発のプロダクトマネージャーやプロダクトオーナーを中心に、それぞれが携わるプロダクトの価値や、マネージャーとしての体験談など、幅広い観点からライトニングトークが繰り広げられました。本記事では、株式会社ロックオン EC-CUBE事業部部長の金陽信氏によるLT「OSSプロダクトのプロダクトマネージメント」の模様をお送りします。

EC-CUBEってなんなの?

金陽信氏:よろしくお願いします。株式会社ロックオンの金と申します。昨日大阪から来まして、みなさんよくご存知かと思うんですけども、かなりの大雨でした。家の最寄り駅が2路線あるんですけども、両方止まってて。まずタクシーを呼び出すところからスタートする、というイレギュラーがあったもののここに来れました。

ふだんは大阪にいるので、なかなか東京でお話しする機会がないんですけれども。今回はちょっと思い切ってお話できればなということでやってきております。

(私は)株式会社ロックオンでEC-CUBEという事業のプロダクトマネジャーをやっておりまして、昨年にCSM(認定スクラムマスター)、今年にCSPO(認定プロダクトオーナー)を取りました。

我々が作っているのはパッケージ製品なんですけども、そういった中でもアジャイル開発ができないかなと最近はいろいろ試行錯誤しているところです。

今日のお話は、EC-CUBEという製品についてです。ご存知の方はあんまりいらっしゃらないかなと思うんですが。EC-CUBEってオープンソースなんですね。こちらのステークホルダーたちにはどんな人がいるのかなということと、我々はこれをプラットフォームビジネスとして事業でやっておりますので、そういったところを少しご紹介させていただければな、というのが今回のお話になります。

コンセプトは「ECに色を」

そもそも「EC-CUBEってなんなの?」というところなんですが。一応国内シェアNo.1のECオープンソースです。推定にはなるんですけども、30,000店舗以上のEC-CUBEで作られたネットショップが今日本にあると思っていただければと。

オープンソースですので、そもそも無料で配ってるわけなんですけども、国内のいろんな決済会社さんとアライアンスさせていただいてまして、そこから決済手数料のマージンをいただくというかたちでビジネスをやっております。

我々のコンセプトは「ECに色を」というものです。オープンソースならではの「カスタマイズができるよ」というところで、2006年にリリースして、もう12年が経つプロダクトになります。「ECに色を」というコンセプトのもとに、もうどんどん自由にショップを作ってくださいと言っております。画一的な仕組みではなくて、各ショップオーナーの売り方に合わせて、どんどん自由なサイト作ってくださいね、という製品コンセプトでやってきています。

(スライドを指して)こちらが事例になるんですけども、こんな感じで本当にいろんな業種でご利用いただいておりまして。比較的有名なサイトでも使われているんですが、残念ながら「オープンソースだとなにを使ってるかわかるし、コードがわかるし、なんか攻められるんじゃない?」みたいな偏見がかなりありまして。有名なサイトは、なかなか事例に出させていただけないと(笑)。そういう苦しみを抱えてはおります。

ロックオンのビジネス収益構造

もう1度ビジネスの収益構造を少しだけ説明すると、真ん中に我々株式会社ロックオンがいて、いろんなホスティング会社さんやインテグレートパートナー、制作会社さんを通じて、ショップの運営者さんにEC-CUBEを使っていただいてます。

(スライドを指して)そして、ショップの運営者さんが下にあるEC関連のサービスを、ECサイトだけじゃなくてやはり決済であったりとか、周辺のサービスを使うときに手数料が発生して、それをマージンとしていただいているかたちになります。右側がそういった利用のサイクルになっていて、左側が開発コミュニティというかたちです。オープンソースなので、コミュニティベースでいろいろと開発している部分があります。

(スライドを指して)もう少し具体的にペルソナに起こすと、こういったショップオーナーがいて。だいたいEC-CUBEを使われる方って、もともと楽天さんやヤフーさんみたいなところで、モールをやってたりする方が、セカンドステップとして「自社でもやりたい」ってかたちで選びだすと。

そうするとWebの制作会社に相談にいくわけなんですけども。そういったときにWebの制作会社にとっては、ネットショップをパッと作りたいというところで、いろいろと急いで作るためにも、「モノが揃ってるのがいいよね」ってところでオープンソースを使っていただくと。

さらに、決済会社の方々がいろいろと営業をかけていくわけですね。「サービスを使うためにやはり組み込みが必要だ」と。そういったときに、EC-CUBEと画一的につながっていければ簡単に入るよね、ということです。

こんな感じで、オープンソースで広がっていくというのが、制作会社を通じて店舗オーナーにつながって、店舗がさらにサービスを使うことで、お金を儲けるサイクルになります。

製品・サービス・情報と一体となって初めて価値を持つ

前提をばーっと話してるだけで5分前になってしまって、わたわたしてますが(笑)。プラットフォームっていうところで、今日お話ししたいのはここなんです。「ほかのプレイヤーが提供する製品・サービス・情報と一体となって初めて価値を持つサービス」ってことですね。

こういったビジネスを我々がやっているというところで、レイヤー構造でいくつかの階層にわかれますよね、というのがプラットフォームの特徴として言われています。そして、その階層間で独立したプレイヤーたちが存在し得るっていうことですね。

(スライドを指して)EC-CUBEのプラットフォームのレイヤー構造ってこうなってます。サーバーが下にあって、その上にEC-CUBEを乗っけて、プラグインの販売サイトであったり、開発コミュニティを通じて、さまざまな周辺サービスや機能のカスタマイズができますよと。

ショップオーナーは、いろんなレイヤーから各レイヤーを、自分の好きなものを選んでいただくことができるものなので、プラットフォームだと言えるんですね。

で、こういったプラットフォームをうまく活用して広がっていくのに、「ネットワーク効果」と言われているものがあります。これに「サイド内ネットワーク効果」と言われる、特定のプレイヤーの中で活性化するものがあります。例えばSNSとかそうですよね。そこの中に友だちがたくさんいれば増えていくっていう。

一方で、「サイド間(ネットワーク効果)」というのもあります。特定のサイド同士、片方のユーザーが増えるともう片方も増えていくという、サイド間でのネットワーク効果というものがありますと。ゲームソフトがたくさんあるとゲーム機も売れる、というかたちのサイド間での関係ですね。

(スライドを指して)これをEC-CUBEで表すと、こういったかたちになるんですけども。ショップオーナーにとって、いろんなサービスが使えるからEC-CUBEを選んでいただけると。そして、アライアンスのサービスさんにとっては店舗が増えるから、どんどんと自分たちの顧客が増えていく。一方で左側の開発者にとっても同じですよね。顧客が増えていくと。ショップオーナーにとっても、ベンダーロックインみたいなところから解放されやすくなるのが利点にもなってくるので、制作会社も選びやすい。

これがサイド間のネットワークなんですけども、もう1つ、開発コミュニティのように制作者同士で情報の交換ができるようになっているので。制作者が増えれば増えるほど、より情報が集まっていくというかたちのネットワーク効果が起きていて、EC-CUBEはここまでやってこれています。

各プレイヤーたちをどう活性化させるのか?

じゃあ、そういった中で、ほかの各プレイヤーたちをどう活性化させるのかということで、少しご紹介します。「インテグレートパートナー制度」というかたちでやっているんですが、ランクシステムを設けてます。コンピテンシーという定めたものの獲得状況によってランクが上がっていくんですが、それによってEC-CUBEのサイト上での紹介が上がってきて、よりパートナーランクを上げるっていうモチベートになるわけですね。

このコンピテンシーというところも少し工夫をしていて、プラットフォームを補完するような活動になってます。共同の開発コミュニティを用意しているので、そこでの活動量であったり、本体開発への貢献度であったり、プラグインの提供度合いであったり。そういったものを定量的に評価して、一部定性的なものもありますが、そういう評価を通じて、コンピテンシーを付与するというかたちでコミュニティの活性化、ネットワーク効果の最大化を図っていく、という仕組みになっています。

それで、こういったプレイヤーたちと一緒に作るネットワークとして、やっぱり直接会うっていうことも非常に重要で。本体の開発を進めていく上で、ロックオンの中だけでやるんではなくて、最初の企画みたいなところから「開発合宿」として、コミッターの方々に集まっていただいて、実際に合宿形式でやったりだとか。各地にユーザーグループがあって、ユーザー同士が交流しているというかたち(になっています)。

(スライドを指して)あとは実際のビジネスのプレイヤーの場として、こういったイベントを開催したりとかですね。800名規模のイベントを我々独自で開催したりということがあります。

こういったネットワーク効果に対して、いろんなオンライン・オフラインを使ったコミュニケーションを作っているっていうのが、EC-CUBEが今成功できているプロダクトの、ステークホルダーとの関わり方と思っていただければなと思います。

最後に、今年の9月に大きなバージョンアップをしていこうというところで。EC-CUBEはエンジニアやデザイナーの方がカスタマイズしやすくて、ショップオーナーにとっても運用しやすいもの、そしてショップを使う利用者にとっても、もっとモバイルとかで簡単に使えるものをというかたちで、今大きなバージョンアップをしています。

ぜひ今後のEC-CUBEに注目していただければな、ということで今日お話させていただきました。ありがとうございます。

(会場拍手)

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