CLOSE

オフショア開発におけるチームビルディング(試行錯誤中)(全1記事)

民放VODアプリのトップシェア 『ネットもテレ東』の裏側 勝ち筋はオフショア開発によるチームビルディング

2018年7月7日、株式会社フリークアウト にて「プロダクトオーナー祭り 2018 Summer ~プロダクトマネジメントが世界をツナぐ~」が開催されました。IT関連企業に所属するソフトウェア開発のプロダクトマネージャーやプロダクトオーナーを中心に、それぞれが携わるプロダクトの価値や、マネージャーとしての体験談など、幅広い観点からライトニングトークが繰り広げられました。本記事では、株式会社テレビ東京コミュニケーションズ 動画ビジネス部 テックリードの段野祐一郎氏によるLT「オフショア開発におけるチームビルディング(試行錯誤中)」の模様をお送りします。

テレビ東京の動画配信サービスでの事例紹介

段野祐一郎氏:はじめまして。テレビ東京コミュニケーションズの段野と申します。前2人のお話のレベルが高くて、まずレベルを下げにいこうかなと思っています。

自己紹介すると、もともとテレビ東京に入ってITと現場をやって、今はテレビ東京コミュニケーションズで動画配信のサービスをやっています。

テレビ東京コミュニケーションズは(スライドを指して)こんな感じで、テレビ東京の番組を使った事業や動画配信などもいろいろとやっているんですが、プロダクトオーナーとマネジメントも含めて私が携わっているのが動画配信サービス『ネットもテレ東』です。

思考やロジック、役割に、PO・PMの話などいろいろとあるんですが、やったことを話すのが1番わかりやすいかなと思ったので、事例を紹介したいと思っています。

開発チーム内製化の理想と現実

そもそも、みなさんはどれくらい(POとしての仕事に)リソースを割いていますか? 開発チーム予算に自分がどれくらいコミットメントできていますか? 「プロダクトオーナーなら100パーセントコミットしろ」と思うかもしれませんが、会社によってはなかなか難しい立場もあるかと思っています。

すみません、(動画での)配信があるってぜんぜん考えていなかったので、ちょっと危ないような内容もあるんですが(笑)。

(テレビ東京コミュニケーションズは)日経グループなので、いつも日経を参考にさせてもらっているんですが、(日経では)内製で20名超のエンジニアがいるという話を聞いています。1月にお話をうかがったときは9名くらいだったので、かなり多くなっているなと思います。

事業をやっていくうえでは、絶対に内製のほうがいいだろうということはもちろんわかってはいるんですが、そんなにコストをかけられない人も多いのはないかと思っています。

代理店経由での開発に伴う、裏側のブラックボックス化

我々で言うと、開発できるのはエンジニアの私が1名だけ。予算はテレビ東京なので、あまりなくて。コミットメントは、POとしてはあまりよくないですが、僕はいろんなプロジェクトに関わっています。

なので、開発を内製でゼロから作っていくのはさすがに難しいので、基本的に外注をやっていきたい。でも、当たり前ですが、どんどんPDCAを回していきたいからアジャイルでやりたいというところもあります。

アプリのリニューアルプロジェクトをやるときに、なにがやりたいかというのをざっくり書いたら、4社コンペして1社が提案してくれたからやりましたと。

スクラムでやり始めました。私もアジャイル開発で言うと2件しか経験がないので、大前提として会社さんによりけりだと思うんですが。アジャイルで裏側は動いていても基本的にブラックボックスというか。アプリ開発なんですが、日本にいる代理店経由で開発をするので、直接やりとりをすることはあまりないです。

なのでブラックボックス化されていて、かつ結局伝言ゲームみたいになってしまって。開発するベトナムの方のクオリティがなかなか上がらなかった、という考えがありました。

スクラムマスターの会社がなくなるという、青天の霹靂

(スライド「Previous Sprint Scheduke」を指して)こんな感じですね。僕たちがあまりリソースをかけられなかったというところもありました。あと、現場と直接やりとりをするわけではないから、デイリースクラムなどもなくて。

2週間に1回はスプリントを計画して、デモとレトロスペクティブをやって、また次のプランニングをするというような。本当はそこも2つに分けるべきなんですが、なかなか時間が取れなくてこんな感じでやっていました。

なにかおかしいというか、「あまりクオリティが上がらないな。アジャイルってこんなもんじゃないだろう」と思ってはいたんですが。そんななか、青天の霹靂というか、このスクラムマスターの会社がなくなって継続ができなくなりました。

「どうしようかな」ということで、もちろんゼロからやり直すこともできるんですが、体制を変えようと思いました。そこからスピンアウトした人を中心に、ちゃんとオフショアのメンバーと会話しながら作っていきました。

当事者意識を芽生えさせるために、一体感を醸成

ちょっとだけエモい話ですが、チームの要件は、ゴールをちゃんと共有してコミットメントして、みんなで敬意を持ってやりましょうというところで、グループとは違います。みなさんもやられていることだと思うんですが、チームビルディングが肝だと思っています。

これ(チームビルディング)にオフショア開発チームもちゃんと巻き込んでいかないということですね。我々は体制がゼロからになったというところで、2泊3日と短いですが現場に行って、ずっと我々がなにを考えているか……ゴールはなんなのか……価値観としてなにを重要としているかを説明してきました。

あと、ここ(オフショア開発チーム)は本当にシステムの末端というか。アプリはユーザーに触られるところで、UXはそうですが、情報を提供しているのは裏側のシステムですよね。もっといろんなものが複雑に連携しているので、全体を見てもらわないと彼ら自身もいきなり与えられた課題に対して「どうすればいいんだ?」と、提案がなかなかわかりづらかったりします。ちゃんとそこらへんのシステムの全容を見せたりする必要があります。

こういうのを考えているというロードマップの提案とかも、いろいろとやってきました。あとはチームビルディング。本当はいろんなゲームのやり方があるとは思うんですが、課題についてディスカッションをするだけでも、みんなの考えていることがかなりいろいろとわかるようにはなってくるので。

こういうワークショップを通じて彼ら自身にもいろいろと考えてもらうことで、当事者意識を芽生えさせることもできました。当たり前ですが、当事者意識を持ってもらうということが大事です。

オフショアでも、言われたものを作るという気質で働いている人が多いです。そうではなくてユーザーとしてだったら「これは困るよね」とか、彼ら自身で受け入れ条件とかをちゃんと作れるように、当事者意識の芽生えや一体感の醸成とかを狙ってやりました。

Slackを活用した信頼関係の構築

さっきの話の続きですが、解決案の提示は本当に任せてしまいます。これは内製チームだったら当たり前の話かもしれないですが。自分もそうなんですが、オフショアはどちらかと言うとレベルが低いんじゃないかと。

自分はエンジニアなのでやっぱりこうあるべきではないかという最適解を出してしまうんです。そうだと彼ら自身にも責任感が生まれないし、スキルも伸びない。信頼関係を構築するためにもそういうのはまるっと任せて、よっぽどまずいのはこっちでチェックするようにしますが、基本的に彼らのやるようなことをやってもらうようにしています。

(スライドを指して)これは単に打ち上げの写真です(笑)。飲みニケーションはグローバルスタンダードだということで、いつもけっこう仲良くやっています。

結果として、1年間に1回しか行ってないんですが、出張費が10万円×3人です。これくらいで意識改革ができるんだったらぜんぜんお買い得だと思っているので、2年続けてやっていて、また今度行こうと思っています。

帰ってきてからのモチベーション維持というのがやっぱり大事で、綿密なコミュニケーションが必要なんですが、結局英語でやりとりするしかなくて。僕は英語は書けるけど話せないので、Slackでやりとりしています。

綿密なコミュニケーションをするためにデイリースクラムは基本Slackです。1週間に1回Skypeでの打ち合わせ。スクラムマスターがなぜかフランス人なので、通訳してもらいつつやっていて。あとは振り返りもKPT。KPTは、オンラインホワイトボードのツールでやっています。

継続的なインテグレーションをあきらめる必要はない

要件定義はやっぱりビジュアルを見せないといけないのでZeplinを使っています。要件定義はリアルタイムボードで(スライドを指して)こんな感じで。

結局視覚的に見せないとなにについて話しているのかが英語だと伝わりづらいので、(スライドを指して)どこの話かというのを細かく、認識のズレがないようにやっています。それで、決めたことをJIRAに落としてチケット(として整理する)というようなことをやっています。

今のスケジュールで言うと、デイリースクラムを毎日やって、週に1回ディスカッションとリファインメントをやっています。これでスクラムっぽくなってきた感じですね。一気に良くなってモチベーションがアップしています。自慢なんですが、民放のVODアプリの中では実は1番で。がんばってAbemaを抜こうと思っている感じです。

まとめとしては、「開発予算がかけられない」とか、「今エンジニアってぜんぜん採れないので人の体制が整えられない」とか、「そもそもPOとしてプロジェクトにコミットできない」といったところでも、継続的なインテグレーションをあきらめることはなくて。オフショアはそういうチームになり得るので、がんばってやりましょうというところです。

以上です。

(会場拍手)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • “退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!