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パネルディスカッション ~消費者への直接販売について~(全2記事)

農家でも「週休2日 8時〜17時で残業なし」をクリアできる freeeによる労務管理と、余剰を活かした販路拡大のビジョン

2018年11月9日、freee株式会社 五反田オフィスにて「農業Meetup@五反田 ~わかりやすい農業の販売・流通・事務~」が開催されました。「消費者への販路作り」「栽培のIT化・見える化」「経営・事務の高度化」といったワードが飛び交う昨今の農業ですが、実際の現場では実践への道筋が想像しづらいことが課題となっています。当イベントでは、これからの農業のあり方について、「農業の販売・流通・事務」にスポットを当てたセッションが繰り広げられました。そのなかから今回は、農家が消費者に直接販売することをテーマとしたセッション「パネルディスカッション ~消費者への直接販売について~」の後半の模様をお送りします。

先代から10年かけて、ほぼ100パーセントの直売体制を実現

丸山孝明 氏(以下、丸山):ありがとうございました。さっそく一つ目の質問からいきたいと思います。質問の前に、今日いらっしゃっている方で、農家の方ってどのくらいいらっしゃるんですかね? 一次産業なさっている方は?

(会場挙手)

あ! けっこういらっしゃいますね。その中で法人化されている方って……。

(会場挙手)

少ないですね、わかりました。ありがとうございます。法人化までいく方って、まだまだ少ない状況です。今後若手農家さんが農業を続けていくときに、ビジネスとして法人化という選択肢もあるかとは思います。はい、じゃあクエスチョン1ということで、現在の販路について教えていただいてもよろしいでしょうか? 佐川さんから。

佐川友彦氏(以下、佐川):はい、阿部梨園は今のところ、ほぼ100パーセント直売でやっております。軒先ですとか、インターネットからお客様にご注文いただいて梨をお届けするようなパターンですね。とくに贈答用が多くて、栃木県から県外に季節の贈り物ですとか、ご挨拶ですとか、そういったものでご利用いただくことが多いです。

だいぶ割合は少なくなったのですけれども、それ以外にも百貨店様向けに卸したり、梨を使ってくださるレストランですとか、スイーツショップみたいなところに加工用の原料というかたちで卸したりもしております。

丸山:そういう意味では、直販っていうか市場流通は……?

佐川:そうですね、ほぼゼロに近いかなって感じです。

丸山:もともとそういう形態だったんでしょうか?

佐川:はい。今の代表が3代目になるんですけれども、先代から直売に切り替えておりまして、地域の中では早い方でしたので、地元のお客様も早めに獲得していたというか、直売している梨園として認識していただいてきたと聞いております。先代の時点で直売率は高めで、今の代表になってから10年強なんですけれども、残りじりじり詰めていって、ようやく100パーセントに近いところまでこれたという感じになっています。

法律的な縛りのきつかった米の直販

丸山:なるほど、素晴らしいですね。直販ということで言えば、つい最近までお米もかなり法律的な縛りがきつかった時代があったじゃないですか? そのあたりを含めて、平山君のほうから今の販路、市場流通についてお話しいただいてもよろしいでしょうか?

平山翔太氏(以下、平山):うちの場合は、割合でいうと市場流通・JAさんへの出荷が8割、直販用に残しているのが2割強ですね。丸山さんが仰っていたように、直販が厳しい時代がずっと続いてきたと思いますが、市場が開放して直販がある程度自由にできるようになってから、年によってメーカー価格の上下はあっても、安定的に出せばある程度の生活は保障されるというところがありました。

うちの親父もそっちに100パーセントになっていたのですが、私の代になってから、徐々に直販の可能性を探しているというところです。

freee上で行なっている業務を、他のスタッフでもできるように

丸山:今の農園運営に関して課題に感じることはありますか? たぶん課題って生産の課題もあれば販売の課題もあると思いますが、今日はバックオフィスがテーマなので、バックオフィス側の課題について少しだけ教えていただいてもよろしいでしょうか? 

佐川:はい。もともと阿部梨園のバックオフィスについても、経理とか注文管理とかは、日中畑に出たあとの夜に、阿部と阿部の妻でやっておりまして、その仕事を私が巻き取って、阿部と現場班は生産に専念できるという仕組みを過去数年で築いてきました。

さらにもう1歩進んで、課題というかこれからやっていきたいことは、僕が巻き取ってきた事務の仕事を他のスタッフにもできるようにしていきたいというのと、生産の部分でも同じように正規雇用の現場のスタッフが阿部なしで作業計画を管理していくことです。現時点では部分的にしかできていないので、これからやっていきたいところですね。

課題としては、僕が腕力で巻き取りすぎたというのが課題で、それを標準化というかパートさんも含めて他の人でもできるような仕事にしたいなというのが、最近真剣に考えていることになります。

丸山:ありがとうございます。freeeさんって導入されていらっしゃるんですよね?

佐川:はい。私が業務を巻き取るにあたって、阿部のパソコンにしか入っていないソフトだとお互い気を使うので。端末を選ばないで、かつ量的にも圧縮しながらスマートに会計ができるということで導入しました。3〜4年前なのですけれども、当時はクラウド会計がどんどん伸びているときでしたので、「こういうのがあるんですよ!」「まず僕が1人でやるんで勝手に入れていいですか?」という感じで導入してみました。

なので、僕がクラウド会計のソフト上でなにをやっているのかというのは全員が知っているわけではないので、これから他の人にもできるように部分的に切り出したいと思っております。

バックオフィス業務の効率化は、あくまでも手段

丸山:はい。どうもありがとうございます。平山君の方はどうでしょうか?

平山:はい。バックオフィスという部分での課題ということでは、経営の管理であるとかそういうものは、先ほども極端に原始人ですと申し上げましたが、本当に「紙」ですね。それをパソコンでExcelなりそういうソフトなりで少し精査したうえで、現状だと直販の部分は私が管理していて、出荷の部分はまだ親父が管理しているという感じなんです。

親父にいたっては、1ヶ月の収支を取らず、年の収支でどんぶり勘定なので、申告の時期が近づいてくるとあたふたして「1年間どこに置いておいたの?」「わかんない!」って言いながらレシート集めはじめて「あぁ日に焼けちゃった! 読めないよ!」なんて話をしながらやっているというのが現状です。今日こういう機会をいただいて、少しクラウド化というのも具体的にこれからの課題として感じているところです。

丸山:なるほど。じゃあfreeeさんがどんどん営業してもらって、1件でも多く加入してもらうと良いと思います。バックオフィスと限定してしまいましたけど、基本的には、バックオフィスの業務を効率良くして、余った時間を違うことに使うことが目的なのですよね。バックオフィスをやることを目的にしてしまうと変なことになってしまいますけど、そういうイメージですよね? 

佐川:おっしゃるとおりで、私の仕事なんてまさにそうで、事務だけかっこよくしてもぜんぜん自分のお給料出てこないので、そのへんをいかに圧縮できるかってことで、僕はシーズンの半分は営業みたいな気持ちでやっています。そっち側でお給料取り返して、残りの半年で内側とか組織とかを浄化していくみたいな意識でやっています。

農家でも「週休2日 8時〜17時で残業なし」をクリアできる

丸山:ありがとうございます。時間がないのでクエスチョン3にいっちゃいます。バックオフィス業務のなかで僕が気になっていることが、労務管理です。「労働環境をよくしなさい!」って政府がよく言っているわけですけど、農業界に限ってはあまりそこが浸透されていない気がするのですけれど、労務管理の点ではどうですか?

佐川:労働条件という部分でいくと、うちはもう週休2日の8時~17時で残業なしっていうのをほぼ通年で、阿部さん以外全員やっておりますので、そこはだいぶクリアしたかなと思います。「農家だから」というのはお互い言わないで、外から雇用されに来ている方が働きやすい条件で、というのをド正論で通させてもらっています。それで利益を出すためにブランディングですとか、販売促進を頑張っているような感じですね。

労務管理という部分でいくと、給与計算とかは、僕が預かった1年目は1度Excelで控除とか源泉徴収とか全部やってみて、年末調整まで手計算した挙句、これは無駄な時間だなと思って、freeeさんの人事労務を入れさせていただいています。

丸山:なるほど。freeeさんがまた出てきました!

佐川:Agrionさんっぽい観点でいくと、「だれが何時間働きました」っていうのだけではなくて、「だれがなんの作業をどこの畑で何時間やったか」という細かいところまで数字を積み上げて、計画とか分析に生かしています。ただ、Agrionさんがサービスインされる前からそういうことを始めていたので、Excelでべたべたやっていますね。全員に手書きで日報を書いてもらったのを、雨の日に暇な人がExcelに打ちなおしてという。

丸山:なるほど。平山君はどうですか? まだ従業員という方はいらっしゃらないと思うのですけど、家族経営の中で労務管理はどのようにされていますか?

平山:労務管理という感覚がないのが現状です。朝起きたらとりあえず田んぼに行きなさい。家に帰ってきたらお風呂入って寝なさいという(笑)。本当にそうなのです。

(会場笑)

圃場から離れられないと、規模を広げるのは難しい

丸山:僕も実家がそうだったので、気持ちがわかります。会社の規模や環境によって、ここはかなり左右されてくる部分だなということをみなさんも感じたと思うのですけど、ちょっとあまり時間がないので、先に進ませていただきます。

これは最後の質問になってしまうのですけれど、今後のビジョンと夢っていうのを教えてくださいということなんですけど、先ほど、労務管理の話をしたとおり、時間を使って余った時間をどう使うかという観点でいくと、たぶんこの、今後のビジョンと夢につながっていくのではないかなと思っているのですけど。

例えば平山君の方も、労務管理という観点はないかもしれないけれども、今後自分たちだけでまかない切れないことが生まれると思います。その時を想像して、少し夢とビジョンを語ってほしいと思うのですけど。

平山:はい。今後の労務管理の観点も入れたビジョンとなると、これからある程度規模を拡大していくということになれば家族経営だけではちょっと苦しい時代がやってくるというのがありまして。今は都内のマルシェに出店したり、横浜のほうにも行かせていただいているのですけど、直販の入り口としては言葉が悪いのですけど、どれだけ名簿をとれるかっていうのが大事で。

どれだけの方に食べていただけて、どれだけの方が直接お電話いただけるかということが力を入れてやっているところなのですが、自分がずっと圃場にいなければいけないという状況になれば、そういったこともできなくなってくると思います。今後はある程度任せられる人材の育成ですとか、いま食べていただいているお客様をどれだけ離さないでいられるか、というのが、今後の課題でありビジョンです。

「平山さんのお米だから」と言われるお米屋になりたい

丸山:販売先の種類って、BtoCなのかBtoBなのかとかいろいろあると思うんですよ。消費者に直接販売するという観点だと、Cの方がおそらくイメージされていると思うのですけど、逆にBっていうか、企業にビジネスやっていこうという時になにか少しアイディアありますかね? 

平山:企業さんとか大規模のレストランさんとか、ホテルさんとかそういったところからもお話いただくんですけど、Hirayama Rice Farmingとして屋号を立てたときに、自分の中で決めたことがあって。お米を毎日食べていただきたいんです。「うちのお米屋さん」っていう感覚になりたいですね。

「私のうちのお米は、平山さんのお米だから!」というお米屋さんになりたくて、個人経営のレストランさんは何件か契約させていただいてます。大規模なBtoBっていうのは考えていないというのが実情ですね。

農家の経営改善エバンジェリストのような存在に

丸山:いつかその日がくる! 可能性がある! ということですね。じゃあ佐川さんお願いします。

佐川:代表の阿部の夢と僕の夢っていうのが、それぞれあるかなと思っているんですけど、阿部の夢っていうので最近聞いているのは、桃が好きなので「桃畑増やしたい!」というのをここ1年間ずっと言っていて。そのために「梨を預けられる人材を育てたい!」「自分の食べたいものを作ってお客さんに売りたい!」という部分があるので、桃畑を増設することというのが阿部梨園の夢です。梨園の夢ですね。

僕自身としては、阿部梨園の内側に入ってみて、いろいろ経営改善をしてみたら、まだまだやれることがたくさんあって。農家さんがそのボトルネックで経営を良くしていく機会を逃していたら、非常にもったいないなという部分があります。

私たちの取り組んだ事例をオープンにしながら、農家の経営改善エバンジェリストではないですけど、「もっとやれることたくさんありますよ!」「万策尽きてないですよ!」ということをいろんなところで言って、そのために必要なツールとかサービスを提供して下さる企業さんをどんどん農業界に引き込んで、現場のリアルな悩みやかゆいところに手が届くようなサービス・ツール・道具をどんどん投入してもらえるような流れを作りたいなと思っています。

丸山:なるほど。まさに農業はFarmingですね「ing」ですね!

佐川:そうですね!

丸山:常に進化し続けるということですよね? 素晴らしいですね。僕も実家が農家だと先ほどお話ししましたが、同じような状況で、僕は継げなかったですね。親父の代で終わるということで、継がせてくれなかったんです。本当に2人を見ていて、うらやましいなと。僕も今から大分かえってやろうかなと。そんなことはうちの親父が許さないと思いますが、また自分の仕事をまっとうしていかなければと思っています。

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