2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
経営者パネルディスカッション「成長するビジネスを支える制度、働き方、テクノロジー」さくらインターネット田中邦裕氏(全1記事)
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大谷イビサ氏(以下、大谷):では次、田中さんからお願いします。
田中邦裕氏(以下、田中):はい、みなさんこんにちは、田中です。いつもはクラウドの話をしてるんですけれども、今回はせっかくなので「さくらインターネットの働き方」ということでお話しさせていただきます。
実は当社は意外と古い会社でして、もう今年で22年になります。そもそも22年前には、Slackどころかクラウドがなかったです。
なので22年前からメールオンリーで、メールに慣れ親しんだ当時25歳の社員も今や47歳という、その中で変わるためにすごく苦労しながらも、変わろうと考えてる会社です。
なぜこのグラフを出したかというと、日本経済によく似てるんですね。最初はすごい勢いで80年代に伸びた会社が、急に外部環境が変わって伸びなくなって、投資をしない、そして人も採らない。
どちらかというと効率化して利益を上げる、その先にやっぱり成長しないといけないというところで、足踏みしてる。
これが日本の経済だと思うんですけれども、日本の経済のまさしく2012年あたりの我々の姿でした。この頃はいわゆる利益は多かったんですけども、売上はほとんど伸びないという状況でした。
なので、売上の成長だとか、社員の採用よりも、いかに社員が辞めることによって利益が上がるかとか、コストをカットして利益を増やすかみたいなことになってたのが事実です。
実際に2010年あたりから、社員が減ってきてるんですね。リストラしてないんですけれども、働きにくい会社というのは、勝手に社員が辞めていって、でもコストが下がると利益が増えるんですね。
現場は疲弊するわけですけど、利益が増える。当時2割くらいの営業利益率でしたので、こういったことをしているうちに、ほとんど伸びなくなると。大石さんが2007年にクラウドに触れたとお話しされてましたけれども、当社は2009年、2010年あたりからとてつもなく成長しなくなったんです。
ただその反対にくるのは、やはりクラウドビジネスをそのくらいにやってたと。私は第1回のJAWS-UGとAWSのコミュニティにおいて、乾杯の挨拶をしてるんです。こんなにAWSになると思ってなかったんですけども、個人的にはすごくAWSが好きだったんです。
そんな中で変わらない会社、しかしAWSが好きだという個人のメンタリティがある中で、乾杯の挨拶をしつつ、細々とクラウド事業を始めたのが2011年頃です。
田中:ただこのあたりからやっぱり会社がおかしいなと。私はアントレプレナーですから、会社を大きくする、成長してお客様に認めてもらうことに対するモチベーションはすごく強いし、承認欲求がめちゃめちゃ強いんで、ぜひあとで拍手をすごくしてほしいんですけども(笑)。
(会場笑)
そういった中で、なんだかんだいいつつ、やっぱり利益じゃないんじゃなかろうかと。利益はもちろん重要です。ただ、やはり社員がたくさん増えて、社員の離職率が下がりながら、お客様にも認めてもらう。こういったことをやってきたのがここ3~4年の話。
結果としてはクラウドが一番、当社の中で大きな売上になり、社員の伸びが増え、そして2010年、2011年あたりから離職率が2〜3パーセントになったんですけども、最近は本当に1~2パーセントくらいで、すごく低どまりしてるという現状があります。
実は特徴的なのが、お客様に成長する企業さんが多いんですね。それこそサーバー1台で始めて、そのあと毎月数千万払うみたいなお客様に支えられてます。なので当社自身がスタートアップなのに、お客様のスタートアップについていけなくなった時期というのが、まさしくその10年近く前の話です。
結局成長に舵を切る中でいろいろな、最近だと産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)さんとかJAXA(宇宙航空研究開発機構)さんみたいな研究機関。あとマネーフォワードさんとかメルカリさんみたいなアプリの会社。こういった多彩な成長企業に支えられている会社であります。
ここですね、石狩データセンター。みなさん石狩データセンターご存じの方どれくらいおられます?もしよければ。
(会場挙手)
田中:すごく多い、ありがとうございます。省エネというイメージがあると思いますけれども、基本的には、今一番力を入れてるのは、世界で一番働きやすいデータセンターを作ろうということです。
(写真を指しながら)これは3号棟で、新しい棟なんですけども、なぜか3階建てになってます。もともと2階建ての予定だったんですけれども、オフィスが狭い。
空間的にけっこう贅沢に使えるような場所柄にもかかわらず、すごく机が詰めて並べられてたんですね。当然コストカットしてるような時代に作ったデータセンターですから、すごく働きやすいとはいいにくい。
そういった環境だったんですけれども、今3階を作りました。もう1つ理由があって、このデーターセンターは一番手稲山がきれいに見える場所に作ったんです。
働きながら手稲山がきれいに見えると、それがシリコンバレーの山並みに近いということで、この土地を選んだと、そういった背景もあるんで。
田中:コストダウンをしていた時期は、山がきれいに見えるために何億かプラスしようみたいな発想って、やっぱり途中は生まれなくなっちゃったんですけど、結果として一番きれいな場所にオフィスを作ることのために、相当なお金をかけたという背景が、実はあります。
省エネやAIに最適なデータセンターといった文脈もありますけれども、やはりそこで誰が働くのか、どういった人がそのサービスを支えているのかが非常に重要になってきます。
こういったことから、働き方を変えるために、(働く)場所まで変えています。やはり、人への依存がますます高まっていって、いい人をちゃんとのびのびと働かせることが重要になっている。いわゆる知識集約型ビジネスというのが背景にあります。
結局、昔は労働者をたくさん集めて、労働時間を長くすれば価値が高まった。これは当たり前の話ですけれども、実は我々のサービスはクラウドですから、1ユーザーだとしても、1万ユーザーに増えたとしても、人件費がほとんど変わらないんです。
もちろんサーバーへの投資額が増えてくるから、サーバーが故障する確率、確率というか台数は当然増えるわけですけれども、それも突然1万倍の人が必要になるわけではない。これはクラウド時代のサービス提供者のあり方だと感じています。
ああいうふうにクラウドが伸びていったとしても、結局それほどエンジニアが増えることはない代わりに、障害がすごく難しくなったりとかですね。対処が非常に難しくなってくる中で、結局時間から、技術者の発想であったり行動をここに転換せざるをえない、こういった企業の背景があります。
一時期、人月で「誰がやっても同じサービスが提供できる」ということを目指していた時期があります。コストを削減するために、当社は昔アウトソースしてたんですね。しまいには運用の現場までアウトソースする、自社の社員を雇わないということをやりました。
しかしながら結局、例えばOSのセキュリティホールが出たとか、すごいDDoS攻撃が来たとか、すごい不正申し込みがあったとか、いろいろ事業をしている中で問題が起こってくる。こういうことの対処って、すでに未知のことなわけなんですね。
それに対応するために職人的な対応というのが非常に重要になる。こういった背景も出てきました。
このへんはホラクラシーですね。この辺りはまさしく倉貫さんの得意とされる分野だと思うんで、私はあえて言わないですけれども。
田中:基本的に先ほどの、社員に選ばれる会社という文脈と同じなんですけれども、上司が部下をコントロールするんじゃなくて、部下のために上司がコントロールされる。なので、立場が逆転してるということを押さえておかないといけないというのがあります。
正直、社長が全社員にメッセージを送るときに、私はSlackの中に「田中チャンネル」って作ってるんですけれども、そことかに発信するんですね。だから全社員に対して、即座に社長からメッセージが送れるのに、階層を作る必要ってほとんどないということがあります。
そういった中で、300人いるエンジニア組織において、60人の管理職をゼロにしちゃったんです。
それはちょっと大胆すぎて、上司がいないことによる問題というのも、あとでディスカッションの中で出てくるかもしれません。このサーバント(支援型)・リーダー、このあり方というのが、上司としてはやっぱり必要かと思います。上司がいなければいいという話ではないと。
最後に、当社の「さぶりこ」という、働き方を変えるパッケージのご紹介をさせていただきます。
ただ強調してお伝えしたいのは、制度だけ作っても会社は変わりません。制度と風土とテクノロジー、それが今回のテーマですけれども、制度面以外のところが実は紹介したいところではあります。
せっかくなんでこの終わりの章ですけれども、制度だけ紹介させていただくと、例えば残業ゼロにしようという発想が、そもそもおかしいですね。
要は、ゼロよりももっと短くしないと、定時には帰れないはずだということで、「定時よりも前に終わったら帰ろう」という話をしました。
それが「ショート30」です。あとは当然のことながら、うちはフレックスではないんですけれども、毎朝、定時までに連絡をすると、朝7時から朝12時まで出社時間を変えられるという制度。
あとこれがけっこう効いたんですけれども、残業時間を20時間先に払っちゃうんですね。20時間超えたら分単位で実費払いされます。
これはなにかというと、20時間を下回る残業時間になってくると、残業を減らしてもぜんぜん月給が変わらないんですね。今だいたい6.8時間くらいが当社の、1日じゃないですよ、月の残業時間になってたりします。
あとは最近おもしろいことだと、東京以外に移ろうと。東京オリンピックをして東京が大変だ大変だというんだったら、東京以外に、自分の意志で行った人には100万円あげましょうという制度にしたりだとか。
あとは当たり前のことですけど、「さぶりこどこでもワーキング」、(スライドの)左下ですね。在宅勤務制度と書いてるんですけれども、在宅じゃなくてもいいです。ここで勤務してもいいし、旅行先で勤務してもいいです。
日頃から、在宅勤務をしてもらわないと、いざ雪が降ったときにどうすればいいのかわかんなくなるので、どちらかというと風土として、日頃から在宅勤務をするということをしています。
というとこで、時間になりましたので、私のは以上とさせていただきます。
大谷:ありがとうございます。
(会場拍手)
大谷:今の話を聞いて大石さん、どこらへんあたりが一番刺さった?
大石良氏:実は田中さんのところも、一時期離職率が高い時期があったと私は初めて聞いて、最初からポジティブなイメージしかなかったので、そうなんだなというのが新鮮でしたね。
大谷:ありがとうございます。昔はブラックな会社であるところがあったんですか?
田中:そうですね、今もそりゃ残ってる部分はあるとは思いますけれども、(創業して)22年ですからね。
でも、少なくとも制度としてはかなりホワイトになったのと、今日言い忘れましたけども、一番大きく変えたのが、社員を信頼するように変えようというところなんですね。
今まで社員は「絶対悪いことする」というのを前提に、とくに上場する審査のときにそう作ったんですけども、一部上場しちゃったら次、全部上場とかないじゃないですか。だから「社員を信用していいんじゃないの」としたのが、実は大きな背景かもしれないですね。
大谷:あと私が記者としてけっこうびっくりしたのが、大阪オフィスに去年取材に行ったときに、「大阪に新しいオフィスができました」というので行ったんですけども、たぶん半分、3分の1くらい使ってないんですよね。
だからフロアが丸ごと、さくらさんなんですけど、半分くらい使ってない。当然私が質問として「これ次に何に使うんですか?」と聞いたら、「なにに使いましょうね」と言うんですよ。
そもそもオフィスを全部埋めようという発想がないこと自体が、必ずしも効率性を重視しないというさくらの方向性を表しているのかなと思って。それは(まさに取材を通して)経験したんですけれども、そういったところが今のさくらの考え方なのかなと思いました。
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