2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
経営者パネルディスカッション「成長するビジネスを支える制度、働き方、テクノロジー」サーバーワークス 大石良氏(全1記事)
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司会者:「成長するビジネスを支える制度、働き方、テクノロジー」を開始いたします。モデレーターは株式会社角川アスキー総合研究所、アスキー編集部、大谷イビサ様にご担当いただきます。それではよろしくお願いいたします。
大谷イビサ氏(以下、大谷):はい、みなさんこんにちは。角川アスキー総合研究所の大谷と申します。
本日は、「成長するビジネスを支える制度、働き方、テクノロジー」ということで、たぶん日本で今一番、IT系の会社の中で働き方が進んでる3社の経営者の方をお招きしています。よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
80分という長丁場なんですけれども、懇親会もあるということで、ちょっとリラックスして聞いていただければなと思います。
まず私の自己紹介をさせてください。ASCII.jpのTechとビジネスの担当をしてる記者になります。もともと『インターネットASCII』であるとか、『アスキーNT』とか、『NETWORK magazine』という、紙の雑誌を長らく経験していて、2011年から今、Webの媒体の記者をやってます。
実は同じ会社に今年22年目という感じなんですけども、社名がコロコロ変わって、アスキーからアスキー・メディアワークスになって、今度KADOKAWAになって、4月から角川アスキー総合研究所というところで、今も変わらず記者をやっております。
なんでここに私がいるかというと、業務リーダー、どちらかというと経営者というか現場のリーダーの人たちのための働き方媒体『ASCII Team Leaders』を去年、Webを立ち上げました。
そこで働き方改革で重要な制度、文化、テクノロジー。この3つを追っていこうと媒体をやっていて、以前は情シスの方やエンジニアの方と話すことが多かったんですけれども、最近は人事部の方であるとか、あるいは経営者に近いような方とかと話すことが非常に増えているという、そういった記者でございます。
本日はまず前半に10分ずつ、今回登壇していただくパネラーの自己紹介と、働き方についてやっていること、経営者としてなにをしているかをお話しいただきます。
そのあとに後半のパネルに、具体的にガソリンを注ごうかなと思って趣旨の説明をして、後半に「そもそも制度ってなに」とか、「オフィスって必要なんだっけ」とか、「管理職はこれからなにすればいいんだっけ」とか。
あと働き方改革でテクノロジーを使ってるんだけれども、うまく生かす方法もあるけれど、殺す方法もあったりするよね、というお話もさせていただきます。
「そもそも働き方を変えれば企業って成長できるんでしょうか」というところを、みなさんに問いかけて、共感していただきたいと思っております。
さっそく、登壇者の方の自己紹介に移りたいなと思います。まずサーバーワークスの大石さんから、よろしくお願いいたします。
大石良氏(以下、大石):それでは、みなさんこんにちは。サーバーワークスの大石と申します。
私たちサーバーワークスという会社は、AWS、Amazonのクラウドを専業で扱ってるインテグレーターです。私は2007年に初めてAWSに触って、すぐ虜になってしまい、もう「これからクラウドだ」とずっと言ってたんです。
しかも私、名字が大石というものですから、最近社員から大石蔵人之介(クラウドのすけ)なる、あまりありがたくない名前をいただいてます。
なにがありがたくないかといいますと、「蔵人之介」というくらいですから、最後はやっぱり切腹なんですね。
ということで、今日はみなさんの貴重な時間をいただきますので、セッションの中でなにも得るものがなかったら切腹する、そのくらいの勢いです。必ずなにか1つお持ち帰りいただけたら。アイデアをご提供させていただくことは、約束させていただきたいと思います。
少しだけ、会社のご案内をさせてください。私たちサーバーワークスという会社は、2000年に作った会社でございます。
今こんな感じで、社員としては110名ちょっと、あと運用子会社が札幌にありまして、合わせて150名くらいでAWSを専業でやっている会社でございます。
こんな会社さん、おもにエンタープライズのお客さんに大規模にAWSを使っていただくご支援を中心にやってる会社でございます。
今日は私たちの働き方とか、私たちのチャレンジをちょっとだけご紹介させていただきたいんですけど、一番最初のイビサさんの問いにあった「働き方を変えればビジネスは成長するのか」に対する私たちの考えなんですけど、こんな感じなんですね。
これ、みなさん何度もご覧になってると思うんですけれども、とにかく今、人が減るという世の中で、プラスでこんなことが起きてますね。
大石:「Uberization」というキーワードを、お聞きになったことがある方、いらっしゃると思います。たとえばUberで、私も仕事で1年に1回はアメリカ西海岸に行きますけども、何種もタクシーとかレンタカーとかよりUberのほうがいいと、とって変わられちゃいましたよね。
あとAirbnbで、フランスのホテルが1日1軒潰れてる、と。こんな状態だったり、Netflixは1億4,000万人の有料サブスクライバーがいるビデオオンデマンドのサービスですよね。こういう感じで、ITの活用をする未知の挑戦者によって、リアルな今のビジネスが突然壊されることが、全世界的に起きているわけですよね。
これを逆算して考えると、こんなことが言えるんじゃないかなと思うんですよ。エンジニアとかIT人材の価値って相対的に増しますよねと。若者の価値って相対的に増しますよねと。ということは、こういう優秀なエンジニアとか若手人材を育成してリテンションしないと、そもそも生き残れないと私たちは思ってるんですね。
なので、働き方改革は我々にとっては十分条件じゃなく、必要条件だと。これがないとそもそも競争の土壌に立てないと、我々は考えているわけです。
私たちはこんな言い方をよくしているんですけども、今まで相対的にたぶん会社のほうが数が少なかったので、会社が人を選んでいたと。
ところが今、人が少なくなっている中で、こうなるわけですね。こういうふうに、選ばれる会社にならないといけないねというのが、我々のスタートラインなんです。
私たちがどうしてるかというと、とにかくまずは私たち自身が働きやすい会社にしようというのが1つ。私たちだけじゃ、自己満足じゃおもしろくないと、世界に広げていこうと。
これを、クラウドというテクノロジーを使って実現しようということで、私たちサーバーワークスという会社は、「クラウドで世界をもっと働きやすく」というビジョンを掲げて、事業をやっているわけなんです。
大石:実際どんなことをやってるかご紹介したいと思います。私たちのオフィスの写真を持ってきたんですけども、こんな感じです。
非常に横長のオフィスになってて、フリーアドレスです。こちら(スライド右側)がワイワイガヤガヤしてもよくて、こちら側(スライド左側)にいけばいくほど、集中して仕事をしようという感じでゾーンを分けて、自分で仕事内容に応じて移動して仕事しようと、こういうスタイルを振り分けたんですね。
(リフレッシュルームの)写真を持ってきましたんで、こちらをご覧いただければと思います。こんな感じで立食のパーティーをやったり、ランチを食べたり、フリーのコーヒーを出したり、これ(スライド右上)は昼寝スペースです。
私たちは、いつでも好きなときに昼寝していいようになってます。頭を使う仕事ですから、休めるときに休もうということなんです。
ちょっと移動すると円卓があって、技術と営業が1つの画面見ながら、お客さんへの提案書を作ったり、あとオープンなスペースで勉強会とかもやってます。
週1でやってるんですけども、オープンなとこでやると勉強会に入ったり出たりするハードルが極端に低くなるんですね。
非常に参加率が上がるというポジティブな効果があったり、あと畳のスペースで、本当に横になりながら仕事したりとかですね。
あともうちょっと移動すると、Web会議とか、電話をやるためのブースなんかもあります。みなさんご経験あると思うんですけど、隣で電話とかされると集中が途切れちゃうじゃないですか。なのでWeb会議とかは専門のブースでやろうというものを用意してたりとか。
あとはカフェ席ですね。
完全に奥のほうまで行くと、集中スペースになってまして、イヤホンOKで、話しかけない、私も話しかけちゃいけないというようになってます。
こんなオペレーションをしているんですね。もちろん、ファシリティ(設備)だけじゃなくてツールの支援もやってます。(フリーアドレス化すると)誰がどこにいるのかわからないので、Slackを使ってます。
私たちは2014年の8月に全部Slackに切り替えました。私たちより早く入れたという方は知らないんですけども、もしいらっしゃったら教えてください。
大石:2014年の8月に、社内メールは全部禁止ということで、100パーセントSlackに切り替えました。メールでも同じことできるじゃんという方いらっしゃるんですけど、やっぱりぜんぜん心理的な距離感って違うんですよね。
今年の1月に大雪が降ったときに、こんな感じで実況写真を添えて、「家の前を雪かきしないと」とか、こうやって写真をあげたりしてくれるわけですね。
まったく同じことをメールでやると、「明日は雪がやばいかもです」とか、「いま春日部の様子です」みたいなこととか、こんなことをやるかというと、やらないですよね(笑)。
(会場笑)
まったく同じコミュニケーションなんですけど、道具が違うと心理的な距離って違うと思うんですね。実際、(Slackの)スタンプを1,000個以上作ってるんですけど、よく使われているスタンプトップ10です。
「あざます」とか、「ほほう」とか、そういうのよく使いますね。利用の形態としては、「もう帰りたい」というスタンプを押すと、誰かが「仕事しろ」とか、「わかる」とかで、スタンプでコミュニケーションしたり。
もちろんこういうラフなコミュニケーションだけじゃなくて、いろんな自動化もやってます。たとえば電話メモだったりとか。あとおもしろいのが、我々はAWSをやってるので、「料金はいくら」と聞くと、botが自動的に答えてくれたりとか。
あとは、いわゆるSIの仕事も非常に多いので、プロジェクト単位の仕事が多いんです。そのときに、我々エンジニアがなにかプロジェクトの仕事をやるときに、まず「今からプロジェクトAの仕事やります」とつぶやきます。終わったら「終わりました」とつぶやくわけです。
そうすると、ここからここまでの時間を裏側のbotが自動的に集計して、「今日は帰りますね」というと、どのプロジェクトにどのくらいの時間を使ったかを、全部集計して出してくれます。
この情報を自動的に勤怠管理システムに流して、BIを使って、プロジェクトの採算管理をデイリーでやって、1日単位で全部見えるということが、実際に実現できてたりします。
こんな感じでカジュアルなコミュニケーションに移行した結果、どうなったかというと、こんな部活動(ボルダリングやウィンタースポーツ)が勝手に始まったりとかですね。
最近は調子に乗る人が出てきて、男子トイレの個室があるじゃないですか? あそこにセンサーを着けるやつが出てきたんです。Slackで「/toilet status」と入れると、男子トイレの状況がわかるようになってきました。
これがリリース後、非常に好評だったんです。昨日アップしまして、「/toilet reserve」というコマンドが出てきて、空くとモバイルプッシュが出てくると。これがIoTですよね。
(会場笑)
IoTってみなさん、なんの略かご存じです? 「Internet of Toilet」ですよね。すみません、言いたかっただけなんですけど(笑)。こんな感じで、カジュアルなコミュニケーションも、実際に役立つこともできるようになってきました。
大石:もちろん、こんなことやって事業が伸びなければ意味がないと思うんですけども、おかげさまで社員数も順調に増えて、事業も年率50パーセントで、非常に堅調に伸びております。
私たち自身が良くなったといっていてもしょうがないので、第三者評価も入れました。おかげさまで「Great Place to Work」というもので、2018年の「日本における働きがいのある会社」にランキングさせていただいたりとか。
あとちょうど1ヶ月前くらいにTwitterでこんなツイートが流行ったの、みなさんご覧になりましたよね? 「IT企業に2ヶ月ほどお邪魔になってわかったこと。Eメール使ってない、電話使ってない」。みたいな感じで、これが2万リツイートくらいされたんです。
私たちは某キャリアさんと非常に仲良しで、その方がいらっしゃってて、その方がこれをつぶやいたんですけども、これは我々のことです。
実際にこういう感じで、外部から受け入れた方に私たちのオペレーションを知ってもらって、持ち帰ってもらうというような活動をやっていたりします。なので今日、私たちの取り組みが、みなさんにもなにかご参考になればなと思っております。ありがとうございます。
大谷:ありがとうございます。(スライドの)切り替えの時間に、田中さんから今の大石さんの取り組みとか、どうお考えですかね?
田中邦裕氏:そうですね、実際にそれを実行してる社長の姿が素敵だなというのと、あと自分が蔵人之介になって、前面に立つという勇気。
やっぱり社長ってキャラじゃないですか。だから社風とキャラがすごくマッチしてるのが素敵だなと思いました。
大石:ありがとうございます。
大谷:ありがとうございます。倉貫さんとか、今見ててどうでしたか?
倉貫義人氏:そうですね、僕らはまさしく同じようなことやってるので、先に言われて、違うネタを言おうと(笑)。
雪の日とかぜんぜん来ないというのは、効率とかよりも安全とかね。社員がちゃんと安全な生活ができることを守るためにも、大事なことかなと思いましたね。
大谷:これは西日本の豪雨の話もあったり、災害対策という意味でも、非常に重要だなと思っています。
あとは大石さんの話でよく出てくる、今までは会社が人を選んでたんだけれども、これからは人が会社を選ぶんだという、このフレーズをすごい気に入っています。実はいろんなところで言ってたりする事実を、ここで告白しようかなと思います。
大石:ありがとうございます、ぜひ。
大谷:ありがとうございます。
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