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SHARE × FUTURE 〜U29シェアエコ経営者が考える未来〜(全1記事)

シェアエコノミーの進展を阻むのは「固定概念と規制」 U-29経営者が考える、2030年の日本社会

2018年9月7日、シェアリングエコノミーの価値を発信する「SHARE SUMMIT 2018」が開催されました。「SHARE × FUTURE 〜U29シェアエコ経営者が考える未来〜」には、SCOUTER中嶋汰朗氏、DogHuggy長塚翔吾氏、ecbo工藤慎一氏が登壇。シェアリングエコノミー協会の渉外部長である石山アンジュ氏をモデレーターに、来る2030年のシェア社会を展望します。

2030年のシェア社会はどうなるか

石山アンジュ氏(以下、石山):「U29が考えるシェアエコの未来」ということで、実は調査のなかでも6割のミレニアル世代がシェアリングエコノミーを利用していると(出ていて)、まさにシェアリングエコノミーのユーザーのメインストリームはミレニアル世代と言えます。

さっき楽屋で、「ミレニアル世代って初めて聞いた」という話もあって、知らなかったんですよね?(笑)。

中嶋汰朗氏(以下、中嶋):自分が(「ミレニアル世代」という単語を)愛用しているのに知らなかったですね。もうちょっと(年代が)下のことかと思ってました。

石山:ということで、みなさん何歳ですか?

中嶋:僕は今年26歳になります。

石山:長塚さんは?

長塚:僕は22歳です。

石山:工藤さんは?

工藤:先月で28歳になりました。

石山:私も29歳になりまして、「平成最後の夏」と言われてますけども、(登壇者)全員が平成生まれということで、平成生まれのシェアエコ経営者とシェアガールがお送りする、「シェアリングエコノミーの未来」ということで展開をしていきたいと思います。

改めまして、私、モデレーターを務めさせていただきます、シェアリングエコノミー協会の石山です。プライベートでもずっとシェアハウス、実家もシェアハウス。そんなシェアガールがモデレーターということで、どうぞお付き合いください。よろしくお願いします。

(会場拍手)

SCOUTERは「人類総人事計画」を推進

石山:それではさっそくですが、最初に自己紹介をしていただきたいと思います。中嶋さんからお願いします。

中嶋:株式会社SCOUTERの中嶋汰朗と申します。弊社はHRテック、採用・人事まわりのクラウドサービスを中心に、サービスを作っている会社となります。大学3年生の時に始めた会社で、今5年目になります。

今回の「シェアリング」という文脈ですと、SCOUTERという社名通りのサービスをやっておりまして、副業として身近な転職者の方の支援をするという、日本初のソーシャルヘッドハンティングをやっております。

我々は「人類総人事計画」と言っているんですけど、これまで人材会社が持っていた機能を、誰でも個人単位でやれるようにするということを事業にしております。

有料職業紹介とは、人材紹介です。(個人が)企業さんに人を紹介して、お金を受け取ると。この(人材紹介の)事業所って、実はセブンイレブンと同じぐらいの数があります。さらに、今年だけで約1,000事業所が新たに免許を取っていて、それだけたくさんの方が実際にやってらっしゃいます。

僕らはその免許を持っていない、ここにいるみなさんのように普通に会社勤めされている方々に対して、副業の転職支援をできるようなサービスを作っております。

身近で「転職したい」と言っている方がいたりするかと思うんですけど、そういう方々の相談に乗って、転職先を一緒に探す。で、その紹介先(の企業)に対して、その方を推薦する。そういうかたちで報酬を得られるサービスになってますので、空いてる時間を使って、好きなタイミングで副業として転職相談ができるということです。

企業さんに紹介をして採用が決まった場合に、紹介料として(転職者の)年収の5パーセントをいただくことができます。500万円の方だと25万円、1,000万円の方だと50万円。こういった金額を個人で受け取ることができるようになります。

同額を転職者の方も受け取ることができるので、一緒に収入が入ってくるようなイメージです。それ以外にも(相談の際にかかる)食費の手当だったり、面談に対しての時給だったりとか、そういったものもお支払いさせていただいてます。

だいたい2年ちょっと運営しているんですけど、応募者の合計は1万人ほどです。雇用契約を結ぶというかたちで、法律に則ってやっているんですが、実際に契約している方が約3,500人です。今はノンプロモーションでやっていて、日々口コミで増えていっている状況です。

約1,000社の企業さんに、(登録者の)身近な方をご紹介できるようになっていて、月間1,000件ぐらいの紹介というのが、我々のサービスを通して起こっているような状態です。よろしくお願いいたします。

石山:ありがとうございます。働き方のシェアということで、SCOUTERさんにご紹介いただきました。

社会課題をシェアで解決を目指す

石山:次は長塚さん、よろしくお願いします。

長塚:はじめまして、株式会社DogHuggyの長塚と申します。私たちは旅行や出張をするときに、ワンちゃんを預けたい飼い主さんと、預かってくれる近所の愛犬家をマッチングする、簡単に言うとペット版の民泊のようなものを運営しております。

現状の(愛犬を預ける際の)課題ですが、旅行の際中はペットホテルと言われるような施設飼い主さんの帰りを待っています。このペットホテルは質が低く、ワンちゃんのストレスになってしまうことがあります。

そうなるなら、近くに住んでいる愛犬家の方が預かってくれたほうが、預かるほうも楽しいですし、預けた飼い主も安心できる。そして、ワンちゃんとしても、普段過ごしているところと同じような環境で過ごすことができる。そういうサービスを運営しております。

我々は「街のみんなが犬の家族になろう」というようなことを目指しています。ワンちゃんも愛情をすごく感じる動物なので、そこを犬好きの方や地域のみんなで助け合って、(犬が愛情を感じて)生きていけるような社会を、私たちは作りたいと思っております。以上です。

石山:ありがとうございました。工藤さん、お願いします。

工藤:ecboという会社をやっておりまして、メインのサービスは「ecbo cloak」という、店舗の空きスペースをコインロッカー代わりにして、荷物のお預かりをする、世界初のシェアリングサービスをやっております。

どういった課題があって、このサービスが誕生したかと言いますと、2年前に渋谷を歩いていた時に、外国人旅行客に「スーツケースが入るコインロッカーが見つからない」と声をかけられました。実際にコインロッカーを探してみたのですが、40分かかっても見つからなかったんです。

調べてみると、実は渋谷のコインロッカーは1,400個しかなくて、その中でスーツケースが入る、大きなコインロッカーは約90個しかない。これを日本全国で見てみると、22万個しかコインロッカーがなく、実際に必要とされているコインロッカーが30万個です。

コインロッカーを新しく増やそうにも、駅前に土地がないということで、「どういったサービスがあればいいのか?」と考えた時に、このecbo cloakというサービスを思いつきました。

僕らのミッションは、この世界初のサービス、ecbo cloakを、2025年までにグローバル500都市に展開したいと考えております。

では、なぜ展開したいのかと言いますと、僕自身、前職がUberという会社でして、先ほど元自分の上司で、今はWeWorkにいる高橋正巳さんのセッションを聞いていたんですが。

僕自身、Uberが世界に急拡大したのを身近で見ていて、そういったことが自分にもできないかと思い、このecbo cloakを500都市まで広げたいと考えております。はい、お願いします。

石山:ありがとうございます。

平成生まれの経営者が考えるシェアの未来

石山:それでは、次の展開に入っていきたいと思うんですが、私たち、平成生まれの世代って、ずっと不況が続いていましたよね。地震などの災害が起こったりで、(そういった状況の)延長線上に、「どんな社会がくるんだろう?」というのが読みにくい社会だと思うんです。

ここにいらっしゃる方はスーツの方が多くて、私たちより上の世代の方がほとんどかと思いますが、自分の過去の成功だったり、豊かだった時代というのがあった時代だと思います。

その中で私たちの世代は、「不況」というのが1つのポイントでした。もう1つは、テクノロジーが身近にあったことです。そこからいろんな着眼点で、(登壇者たちが)サービスを起業されたと思うんですけれども。

そんなみなさんに、「これからどんなシェアの未来がくるのか?」という質問をさせていただきたいと思いまして、「2030年、どんなシェアの社会がきますか?」というのを、平成の経営者に聞いてみたいと思います。

中嶋:はい。2030年、12年後ということで、ここに書いてあるのは「超能力格差」と書かせていただいてます。

石山:超能力格差。

中嶋:はい。私たちはHR、採用まわりのサービスをやっているんですが、若くて非常に優秀な、下手したら10代で1,000万稼ぐようなエンジニアさんがいたりとかして……。

石山:ちょっと待ってください。10代で1,000万?

中嶋:はい。それぐらい(稼ぐのは)妥当だなというぐらいのスキルを持ってる方が、実際いらっしゃるんです。

石山:それって学生で、ということですか?

中嶋:学生だったりもします。うちでも、下は16歳の業務委託のエンジニアがいたり(します)。まあ、ちょっと考えられないですけど。

石山:16歳で、業務委託で、エンジニア。

中嶋:はい。(そういうふうに)やっている子もいますし、現に21歳で、エンジニアリングのレベルとしては、30代、40代のベテランよりもできちゃうことも実際にあります。これからは年齢の分だけスキルが伸びていくというよりは、そういった(能力の)差がより大きくなっていくんじゃないかと思っています。

石山:そうですよね。これまでだと会社に属している年数だったりが、ものをいう時代だったと思うんですが、超能力格差というのは……?

中嶋:僕も新卒でいうと4年目の歳になるんですが、周りを見ていて思うのは、優秀な人から会社を辞めていってるなと感じていて。「(自分は)もっとできる」「自分でなにかやりたい」と考えて、「会社を辞めよう」という決断を3年とか、それぐらいでできる人が非常に増えているなというのが、感覚としてあります。

サラリーマンの経験はある?

石山:ちなみに(登壇している)お三方に聞きたいんですが、みなさん、サラリーマンの経験はどれぐらいあるんですか?

中嶋:僕はないです。

石山:学生起業ですか?

中嶋:はい。

長塚:僕もまったくないですね。

工藤:……一瞬。

石山:一瞬(笑)。

(会場笑)

石山:なんで一瞬で辞めたんですか?

工藤:前職でやりたいことをある程度やったからです。で、自分でやりたいなというのがあって、(会社を)始めたという感じですね。

中嶋:どのぐらい(その会社に)いたんですか?

工藤:1年半ぐらいですね。

中嶋:十分いましたね(笑)。

石山:(笑)。

工藤:はい、十分いました。

石山:みなさんの中だと、1年働いたら「あ、十分だね」という感じなんですか?

中嶋:いろいろ学ぶには十分な時間だと思います。

石山:ということは、年数じゃなく、「十分だ」となる基準があるんですか?

中嶋:会社が伸びていると、事業も変わるし、いい人も入ってくるし、学べることは多いと思うんですけど、例えば一定の収益が生まれるような事業って、学べる総量はどうしても減っちゃいます。変わる必要がないというか。そういうところだと若い人はあまりワクワクしないと思います。

石山:ありがとうございます。

能力を持っている個人が活躍できる社会へ

石山:中嶋さんの考える2030年というのは、能力を持っている個人が活躍する社会。

中嶋:そうですね。どんどん活躍できる。

石山:逆にそれがないと、生き残っていけない。

中嶋:なかなか難しくなっていくんじゃないかな、とは考えてます。

石山:ありがとうございます。次、長塚さんにも聞いていきたいと思います。

長塚:「シェアすることがステータスになる社会」。

石山:シェアすることがステータス。

長塚:そうですね。

石山:それ、私以外にいるんですか?(笑)。

長塚:いや、これが当たり前の社会になってくると思うんです(笑)。それこそアンジュさんみたいな人が、もっと増えてくるんじゃないかなと。やっぱりアンジュさんってミレニアル世代の憧れというか、キラキラしてる……。

石山:ほめすぎじゃないですか? なにも出てこないですよ(笑)。

長塚:ほめすぎましたね。やめましょう。はい。

石山:(笑)。

長塚:例えば、自分の特技を活かしたりとか、自分がやりたいことをどんどん発信していったりして、それをシェアする、(他の人に)分けていく。こういった価値観が僕たちの世代では、自然と言いますか、「それが楽しいよね」という認識(を持っている人)がすごく多いと思っていて。

背景として、どんどん社会が豊かになっていて。ある一定の物質的な満足度みたいなものがそろっていて、その上に自己実現の欲求だったり、誰かに認めてもらいたいとか、そういったところが大きい世代だと思っています。

幸せの尺度が1つじゃなくなってきた

石山:それはすごくおもしろい観点なんですけど、私は冒頭で「私たちは物理的に、経済的に豊かじゃない」、要は「豊かさを知らない世代」と言いました。「逆に豊かになっていってる」「幸福度は増えてるよね」みたいな話で。このギャップって何なんですかね?

たぶんこれは、(ミレニアル世代より上の)大人の世代にはわからない感覚だと思います。お金の総量的に言ったら、上の世代より年収が低いかもしれないし、社会的なステータスも違うと思うんですけど、 「なんか幸せだよね」みたいに感じる。(これは)どういうギャップなんでしょうか?

長塚:尺度が1つじゃなくなってきたところが、大きいと思いますね。

石山:なるほど、尺度が1つじゃなくなってきた。おもしろい観点ですね。はい。では、工藤さんに聞きたいと思います。あ、今していた話の延長になるんですね。

工藤:そうです、今の話にも繋がります。「(2030年までに)豊かさの概念が変わっているんじゃないか」と僕は思っていて。今までの「豊かさ」とは何だったのかを考えてみると、シェアの反対の概念で、所有をすること自体がすごく豊かとされていたんです。

本当に「いつかはクラウン」みたいな感じで、車を持ちたいであったり、あとはマイホームを持ちたいであったり、今までの豊かさはそれが当たり前でした。でも、今の世界では、情報量も増えてきて、これまで気付かなかった豊かさというものに、簡単にタッチできるような時代になってきたと。

豊かさは無数にあるので、すべてを所有することはやっぱりできません。なので、今後の豊かさというのは、スポットごとにお金を払って、それを一瞬体験していく。例えばカーシェアだったら、テスラにも乗りたいし、ベンツも乗りたいしみたいな。そういうラインに変わってくるんじゃないかな、と考えています。

石山:確かに物を持っているよりも、それを使っているときが一番楽しいという感覚は、共通してありますよね。さっき中嶋さんは「Anycaでめっちゃ稼いでる」みたいな話をしてましたけど。

中嶋:稼いでるというか、車好きなんです。やっぱり(車を)買うと高いじゃないですか。僕は友人と一緒に買ったり、Anycaでも運営をしてるので、実は(その収入で)ほぼ月の金額をペイしてたり。

石山:なるほど。所有はしてるけど、「シェアをしながら所有してる」という感覚ですね。

中嶋:そうですね。シェアエコを使いたくてやってるわけではなくて(笑)。あくまで経済合理性を考えたときに、たまたまそうなりました。

石山:そうですね。

「コスパ世代」と言われる所以

石山:経済合理性みたいに、コスパ世代とも言いますけど、なんとなくそういう観点で消費をしてる感覚ってありますか?

工藤:そうですね。まあ、時間のコスパはすごい考えますね。

石山:なにかをずっと積み上げて、一生懸命に高い車を買おうとか、そういう感覚ではないですよね。

工藤:そうですね。ちょっと例を1つ挙げると、僕の友人はニューバランスがすごく好きなんですよ。1万8,000円するニューバランスを買って、1年履いて、それを翌年にメルカリで1万円で売ったんです。ある種、新品を8,000円で1年消費したみたいなことがあって。そういうコスパ重視みたいな人は、身近にいたりします(笑)。

石山:そんなふうにライフスタイルだったり消費観、そして、幸せの概念が2030年までに変わっていくんじゃないかということですけど、そこに向けての現状とのギャップについて触れていきたいと思います。こういった(フリップに書かれていたような)社会を実現していくために、いま日本が抱えている根本的な課題って、みなさん、何だと思われますか?

中嶋:根本的な課題ですか。「超能力格差」と書いたところでいくと、まさに移り変わりの時期なのかなと思っています。なので、「今までの当たり前」と「これからの当たり前」の変わり目。

変わり目なので、非常に先が読みづらいというのはあると思うんですけど、2030年、あと10年ちょっと経てば、たぶん「こんな話あったよね」ぐらいになっていくかと思います。

働き方とかって変化がとても顕著に出ると思いますし、「副業を認めよう」みたいな動きもあると思うんですけど、僕はあんまりイメージがピンとこないんですが、「副業している人を雇わないと、優秀な人が採れなくなるよ」と言うほうがリアルに刺さるかなと思ってます。

やっぱり優秀な人って、いろんな会社から必要とされますし、それなりに稼げる。ただ、旧来型の給与システムで、優秀な人に2,000万とか3,000万出すって、なかなか難しいと思うんです。なので、週1回その人に協力してもらうとか、週2日だったらしてもらえる(というかたちになる)。

個人としても、それが2、3社あれば、1社に属するよりもいろんな経験ができて、個人としても収入が上がって、自分の価値も上がる。もう一部の職種では、実は当たり前になってきてると思います。

石山:でも、そういう動きはぜんぜん進んでないですよね?

中嶋:そうですね。

想像以上に大きい固定概念と規制の壁

石山:その大きな壁になってるのって、なんですかね?

中嶋:今だと、会社がそういう採用を認めてないという姿勢です。まだまだ採用の仕方があるんじゃないかなと。正社員だからとか、フルタイムじゃないとみたいな、あんまり(しっかりと区別する)理由はないんですよね。

石山:「固定概念が縛りつけてる」ということなんですかね。

中嶋:もちろん「週5だったらありがたいな」と思いつつも、週1でもそういう人が来れば、新しい視点で事業を伸ばせたりもするので、そこは積極的に取り入れていく。そうじゃないとそもそも人がいない、という大前提がありますし。

石山:その危機感は、私たち世代はありますよね。

中嶋:ありますね。採用をやっている側としても、そう感じることはすごくあります。

石山:長塚さんがいま根本的に感じている課題、いかがでしょうか?

長塚:そうですね。僕がシェアリングエコノミー全体を見ていて思うのは、「規制の壁」が当然出てくるかと思います。それはまさに中嶋さんがおっしゃったような個人へのシフト、「個人をエンパワーメントしていきましょう」という価値観ですね。この価値観に対して(社会が)変わるところが、どうしてもまだ一歩踏み出せていないような気がします。

石山:確かに。「個人がサービスを提供する」というシェアサービスが多いんですけど、現行だと、なかなか法整備が整ってない。私も公共政策担当なので、永田町をウロチョロしてるんですけど(笑)。やっぱり既得権益だったりとか、これまで守ってきた業界が、今の社会や政治を支えてたりするじゃないですか。そういったところが障壁になってることは、否めないですよね。

長塚:まあ、「障壁になっている」と言われると、否めないですね。変わることには痛みが伴いますし、それが自然なかたちではあると思います。

石山:誰かが痛みを味あわないといけない。

長塚:逆に僕らも「どうしたらそれが実現できるのか?」「僕たちが考えている世界はもっとこんな感じなのに、なんでそれができないのか?」ということに、しっかりと向き合っていくことが重要だと、私は思ってます。

シェアの浸透も「時間の問題」

石山:ありがとうございます。工藤さんは「今の日本が抱えている課題」「2030年までのギャップ」、いかがでしょうか?

工藤:そうですね。そもそも前提として、シェアの社会が本当に僕らの生活を豊かにするのかといったら、僕個人としては、本当に豊かになって、便利な社会になると信じてやってるんです。じゃあ、なぜすぐに浸透しないのか。僕個人がすごく思うのは、単純に僕らの力不足だと。

例えば、このシェアリングエコノミーというサービスが、まだ世の中に浸透していない理由として、若い人であれば使ってもらえるんですけど、今まさにここの会場にいるみなさまが使わない。使ってない理由としては、まだ便利だとは思わないから。

僕らのミッションとしては、まずここにいるみなさんに、ちゃんと使ってもらえる、便利(なサービス)として使ってもらえることです。なので、シェアリングエコノミーというサービスが「GDPの何パーセントを創出している」であったり、「売上をかなり作り出している」であったりとか、そういったところにコミットしていきたいです。

なので、単純に僕が抱えている課題は、(提供する側が)すごく力不足だなと思っていて。しっかりと世の中に売上として貢献できるような、そういったバリューを作っていきたいと考えています。

石山:シェアリングエコノミーって、注目されている一方で、上場企業があんまり出てきてないじゃないですか。その背景にある課題って、どういうところがあると思いますか?

工藤:まだ概念としては新しいものとして映っていて。「本当に僕らの生活を便利にするのか」というのは、まだみなさんが疑問に思っているのかな、と思ってます。

あと、まだまだ概念としては新しいので、試す機会があまりなくて。これが1回でも試してもらって、いいサイクルができれば、10年経たずにどんどん、UberやAirbnbのように(広がっていく)。たぶん時間の問題だと思います。

石山:そうですね。インターネットで会話をするのも、いつの間にか浸透していたので、シェアもそうなっていくんですかね。

工藤:そうですね。まだ経験してない人が多いので、それを経験すると、「こんなに便利なものが今まであったんだ」と思うんですよ。

UI/UXでシェアの問題は解決できるか

石山:たぶん、ここに来ていらっしゃる方は、シェアになんらかの関心があって来られていて、「シェアっていいよね」というのはみんな賛同しているんだけど、なぜか使うまでの一歩が踏み出せない人が多いと思うんですよ。便利なのはわかっていてもです。なぜ踏み出せないんでしょうか?

工藤:個人的に思うのは、僕らが提供しているサービスに、まだまだ使いにくさがあるんじゃないかと考えています。なので事業者側としては、どんな世代でも、本当に80歳のおばあちゃんでも、ecbo cloakやDogHuggyやSCOUTERを使うことができると、すごくいいんじゃないかなと思います。

UI/UXの話ですね。そういったところに僕ら事業者が提供しきれていない、「力不足感」があるんじゃないかなと考えています。

中嶋:同じくそう思います。電話をかけるのに能力が関係ないのと同じで、便利だったら使うし、便利じゃないから使わない、それだけなのかなと。

石山:そうですよね。今のシェアサービスはテクノロジーが前提というか。

中嶋:面倒くさいことが多いですよね、登録をするとか(笑)。

石山:私たちはデジタルネイティブだから、なんとなく感覚で触れちゃったりするけど、そうじゃない世代に対して、どうアプローチしていくのか、どう便利だと思っていただくのかですよね。

中嶋:僕らががんばっていかなきゃだと思っています。

石山:いろいろな課題にも触れていただきましたけど、そろそろ最後の部分ということで。

2030年に描いた未来と、今にギャップがある中で、これが今日の最後のセッションということで、この会場の参加者のみなさんと一緒に約束する、約束したいこと。ワクワクする未来に向けて、参加者のみなさん一人ひとりができることを、お一人ずつ話していただきたいなと思います。私たちも含めて、一人ひとりができることです。

中嶋:私はキャリア・人材ジャンルということでやってますので、人の能力をシェアしていくという文脈においては、みなさんの部下だったり、周りにいる会社を辞める人とか、なにか新しいことを始めようという方が、もしかしたらいると思うんですけど、(会社を辞めるのを)ぜひ止めないでいただきたいなと。

(会場笑)

石山:みなさん止めないで(笑)。

中嶋:無理に(環境に)適合するというのは大変なので。自然にそう(辞職に)向かっていくことって、たぶんこれからもっと増えると思うんです。なので、今までの当たり前のルールで、「それは違う」と言うのは、それもまた違うのかなと。

石山:「育ててあげるよ」とか、「自由にさせてあげるよ」じゃなくて。

中嶋:「もうわからないから勝手にしろ」って。

石山:「勝手にやらせてくれ」と。

中嶋:一定数(の認識)が変わっていれば、層が入れ替わると思うので、僕は止めないでほしいなと思います。背中を押してあげてください。

石山:いま部下やメンバーを、思い出してる方も多いんじゃないでしょうか(笑)。

趣味や嗜好がマネタイズできるインフラが整っていく

石山:長塚さん、いかがでしょうか?

長塚:ちょっと今の話からはズレちゃうんですけど、僕らのサービス(DogHuggy)の主なユーザーさんって、実は40代、50代の女性なんですね。

石山:けっこうユーザーの年齢が高いんですね。

長塚:実は高いんです。そこに対して僕たちは電話のサポートをやってみたり、サポートはするようにしてます。そういったふうに頭で考えて良い悪いというよりかは、肌で感じてみて、そこからリピートしてくださる方がすごく多いんです。

なので、「使いたいシェアサービスがない」という声があるかもしれないですが、僕たち事業者も日々努力していくので、ぜひ試してみて、肌で感じてみてほしいなと思います。

石山:ワンちゃんを飼ってるみなさんは、ぜひDogHuggyを。工藤さん、最後いかがでしょうか?

工藤:はい、最後は若干のプレッシャーがあるんですけど。僕がすごく考えるのは、今みなさん一人ひとりが持っている趣味であったり、そういった嗜好を、本当に大切にしてほしいなと思っていて。なぜかというと、おそらく2030年になれば、個々人の趣味や嗜好がマネタイズできるインフラが、すごく整っていくんです。

例えば、40代の方がすごく多いという話なんですけど、本当にワンちゃんが好きな人が、DogHuggyに集まるんですよ。で、たくさん友達がいて、どんどん紹介できるぞっていう人はSCOUTERを使うと思いますし……。ecbo cloakはあんまり思いつかないんですけど(笑)。

(会場笑)

工藤:そういう個々人の趣味で、今までテクノロジーが発達していなくて、フォーカスされていなかった部分が、やっと2030年にインフラも整って、スポットライトを浴びるようになると思います。僕もサッカーが大好きなので、サッカーをどんどん磨いていきたいなと思ってます。

石山:はい、ありがとうございました。まさにシェア、個人が主役の社会というものが訪れる感覚があります。みなさん、個人の能力に人がつくし、お金がつくし、社会を巻き込んでいく、それがシェアというステータスになっていくという話と、シェアすることでマネタイズできる、で、幸せの概念が変わっていくという話もいただきました。

みなさんぜひ、この平成の経営者たちの成長に、引き続きご注目いただけたらと思います。今日は本当にありがとうございました。

(会場拍手)

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