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『組織にいながら、自由に働く。』発刊記念!仲山進也さん(楽天大学学長)×青木 耕平さん(「北欧、暮らしの道具店」クラシコム社長)これからの働き方を語る!スペシャル対談トークライブ(全2記事)

自由になりたければ夢中になれることをやり続けようー楽天大学・仲山学長が語る、組織での自由な働き方

2018年8月28日、天狼院書店池袋駅前店にて「仲山進也さん(楽天大学学長)×青木耕平さん(「北欧、暮らしの道具店」クラシコム社長)これからの働き方を語る!スペシャル対談トークライブ」が開催されました。これは仲山進也氏の新著『組織にいながら、自由に働く。』の刊行を記念し、出版元の日本能率協会マネジメントセンターと天狼院書店が開催したイベント。楽天という大組織にいながら、兼業自由・勤怠自由・仕事内容自由という働き方を実践されている仲山氏と、親交の深いクラシコム社長・青木耕平氏が、これからの働き方についてそれぞれの考えを語りました。本パートでは前半の模様をお送りします。

ポストイットを使ったQ&Aセッションでスタート

仲山進也氏(以下、仲山):仲山です。今日はよろしくお願いします。

青木耕平氏(以下、青木):青木です、よろしくお願いします。

(会場拍手)

仲山:青木さんとは最近仲良くさせてもらっていて、喋ろうと思ったらずっと喋り続けられるという感じです(笑)。お茶を飲みながら3時間くらいはいろいろ話したいことがあるというようなおじさん2人です。

放っておいたらずっと喋っているので、みなさんが今日はどんなことに興味を持たれているか、問題意識を持たれているかを1回受け取ったうえで、それを見ながら喋ると、お役に立てる話にウエイトを持っていけるかなと思っています。

青木:大人なのでニーズにこたえたいです(笑)。

(会場笑)

仲山:ポストイットを持ってきたので、最初に1人2枚ずつくらい取ってもらって、ここに聞きたいこと、話題になったらいいこと、質問などを書いてもらってもいいでしょうか。それを集めて眺めながら進めていきたいと思います。

これをやるとシーンとする間ができるというデメリットがあるので、よろしければ近くの人とごあいさつしていただいて、「今日は何しに来たの?」と軽く話しながら書いていただくような過ごし方をしてもらえればと思います。

(質問事項記入中)

自由とは、自分の判断基準で選びとれるということ

仲山:それでは、まずこの中で青木さんへの質問として、「自由な社員ってどう思いますか?」「クラシコムでも自由に働いている人はいますか」というのがあるので、これを聞きたいと思います。その前提として自由の定義を決めておきましょう。

ちなみに本を読んでくださっているのはどのくらい? ありがとうございます。ごく少数ということで(笑)、読んでいない前提で進めさせていただきます。

タイトルに「自由」と書いてあるので、ちゃんと自由を定義しないといけないと思っていて、どうしようかと考えたときに、普段人から「いいよね、仲山さんは自由に働いていて~」と言われることが多くて、そうすると心がザラっとするんです(笑)。

なんでそう思うのか考えると、「自分はこんなにちゃんとやっているのに、あなたは好き勝手やりたい放題やっていていいよね」というような非難のニュアンスを感じるからかなと(笑)。

僕の中では「自由」とはそういう意味合いではないと思っています。自由の対義語には束縛、規律、統制、命令といったものがあります。「自分」を訓読みすると「自分に由る」と読めて、「由る」は理由の「由」だから、「自分に理由がある」と読めます。

「自分に理由がある」ということは、いくつか選択肢がある中で、自分の判断基準でいいと思えるものを選びとれている状態だと思っています。

反対語は「他人に理由がある」という「他由(たゆう)」。造語ですが、他由というのは「他人にやれって言われたからやっています」というような。

最初に他人からやれって言われてやることでも、自分のなかで意味をつけかえたりすることで、自分で「これならやる意味がある」と思える状態にできれば、それは他由スタートだけれど自由に変換できたという状態になると思うので、自由だと呼べる状態だと思うんです。

そういう状態を僕は自由だと考えているので、何もしないでハワイで寝っ転がっていたらATMに入金されますというようなニュアンスや、職場にいっぱい同僚がいるのに迷惑を顧みず独断で動くようなことを自由とは思っていないということを、まずはお知らせしたいと思っています(笑)。

経営者から見た自由な社員とは、自由意志で働いてくれる人

仲山:そういう意味で言うと、青木さんは自由な社員についてどう思いますか?

青木:「経営者である青木さんは自由な社員をどう思いますか?」「クラシコムでは自由に働く人がいますか?」というご質問をいただいているのですが、基本的に僕らの会社で今仕事をしている人の中で、「ここしか働くところがないから生活のために仕方なくうちで働いている」という人はあまりいないかなと思います。

なので、自分の意志で選択的に選んで働いてくれているかどうかというところで言うと、わりとそういう傾向の強い会社かなと思います。

ただ一方で、例えば自由という言葉が「副業する人がいっぱいいる」「働く場所や時間の制約が全然ない」というようなことを意味しているとすると、決してそういう傾向が強い会社ではありません。

今、制度的にリモートワークができるとか、フレックスで就業と始まる時間をある程度自分がコントロールできるというルールの中でやっていますが、あくまで社内に説明しているのは、

「これは働く人のための制度ではなくて、最も生産性を上げるために何時から何時まで働くか、どこで働くかを選択できる権限を渡している。そして、その権限を活用して生産性を最大限にするための制度なので、『家でも働けて楽だな』『寝坊ができる』ということを実現するというよりは、『本当だったら10時から働いていたほうが自分としては生産性が上がるのに』という人に、わざわざ9時に来てもらわないというだけの話だよ」

ということです。

いろんな揺らぎが許される制度ではあるけれど、いろんなパラレルワークを推奨するようなものではありません。経営者として自由な社員というのは、自由意志で働いてくれている人だけであってほしいと思っています。いわゆる副業をいっぱいしている人の集まりであってほしいとはあまり思っていません。

副業したいと思わないような仕事を用意したい

青木:我々はとくにブランドビジネスをやっていると思っているので、構成員の高度なロイヤリティとコミットメントが必要なタイプの仕事をしていると思います。なので、我々のスタッフで言うと、働いてはいないけれど、休みの日でもどこか暮らしの中で、「これは次の記事に使えるな」ということを考えていたりします。

例えば、マネジメントの立場にある人であれば、自分のスタッフの問題がどこか頭を悩ませているということは全然あると思うんです。多分プロフェッショナルな仕事というのはそういうものかなと思っているので、働く時間はどうあれ、わりと精神的なコミットメントを求めるタイプの会社です。ただ「副業を許しません」というのは、現実に(副業を)している人もいるし、それはケースバイケースでというかんじですね。

ただ経営者としてどうあるかと言うと、経営者は雇う側、働いてもらう側なので、実は選ばれる側じゃないですか? 実は「採用する」というのは、「選んでいる」と思うかもしれないけれど、それはあくまでも「選んでもらっている」人の中から選んでいるだけだから、実は「選ばれる側」なんです。

そうだとして、みなさんは「選ばれる側」だとしたら、絶対に「自分だけ」と思ってほしいと思うんです。それは「人を選ぶ」「結婚する」ということと一緒だと思うんです。経営者としては、副業したいと思わないような仕事を用意したいと思うし、そういうふうに思わないでいいような職場を用意したいというのが率直な気持ちです。

そのうえで、何か事情があって副業しないといけないとか、将来のことを考えてこういうふうにしたいから、こうしたいというようなものがあるのであれば、「別にいいんじゃない、本業に影響しない程度に」というかんじです。

仲山:自由な働き方というテーマで話をすると、「うちは大企業なので、そんなに自由には働けないです」と言う人もいれば、「うちは零細企業なので人が少ないのでそんな自由になんかできないです」と言う人もいます。

世の中には「私の場合は自由に働けない」ということを自信をもって僕に教えてくれる人が多いのですけど、その自信は別の方向に活かしたほうがよいと思います(笑)。

さっき言ったような「自分に理由がある」という自由の定義であれば、大企業であろうが、フリーランスで1人やってようが、経営者であろうが平社員であろうが、別に関係ないと思っていて、本業と副業がどうのこうのというのも、自分に理由があるかどうかという軸で考えたら、どうでもいいと言えばどうでもいいんですよね。

「ここまではセーフ」なラインを探りながら、とりあえずやってみる

青木:副業にも、他由の副業があると思うんです。「今の仕事も不安だから副業もしておかないと」というのは、決して自由意志の行使ではなくて、あくまでも制約事項に対して選んでいるから他由ですよね。まったくの自由意志を行使した結果として副業はしていない人と比べて「どっちが自由なんですか」と言ったときにどうなのかって、わかりにくいですよね。

その仕事だけしている人の中でも自由な人も不自由な人もいるし、副業をしている人の中でも自由な人と不自由な人もいるということは、自由と不自由というのは心持の問題だというところはあるかもしれません。

自由にやるということについて、共通している心持は何かと言ったときに、最終責任を人にゆだねていないというところがあります。雇われているにしても、そうでないにしても、多分仲山さんもそうだと思うんですけれど、自由に組織の中にいて働いている代わりに、いざとなったら「クビにしてください」という覚悟のようなものがたぶんあってのことじゃないですか。

だから、多分そういう心持ちというのは、フリーとか自分で仕事をしている人にも、現代ならできるのではないかなと。自立みたいなこととセットになっているかもしれないですね。

仲山:本にも書かせてもらっているように、新しいことをやりたいと思ったときに上司に許可を求める人が多いと思うんですが、僕は上司の気持ちになってみたんです。そうしたら、「やったことがないこと」をやっていいかと言われてどうなるか。責任を取りたくないなと思ったら、ダメだと言うしかない。もしくは責任を取りたくないからまた上の上司に決めてもらうという二択ですよね。

自分では責任を取りたくないという慎重派の人が縦ラインに1人でもいれば、その時点で新しいことは却下されるのが普通だろうから、わざわざ自分の上司の縦ラインの人に考えてもらうのも生産性が低いなと思いました。だったらそんな迷惑をかけるよりも、とりあえず黙って始められる範囲でやっておいて、「こんな合宿を思いついた、とメルマガに書いたら参加したい人が20人集まってしまったんですけれど、やってもいいですかね?」というかんじでやりました。

あとは会社の誰にも言わず、自分の名前で本を出してみるということを2010年にやって、出来上がった本を三木谷(浩史)さんのところに持って行ったところ、クビにもされず、怒られもしなかったので、「これはセーフ」というような(笑)。

「ここまではセーフらしい」という、ゴルフのOBラインがどこにあるのかを手探りで夜中に確認をするというような作業をしているかんじで働いているところがあるんですけれど、意外と怒られないんです。

勝手にやっちゃう部下は、じつはとてもいい部下

青木:さっきの話で言うと、僕は経営者なので、「OK」「NG」と言う側になることが多いじゃないですか。僕も決してそんなにアグレッシブな経営者ではないので、「ややこしい提案をしてきたな」と思うこともあるんです。でも、ある程度動き出してしまっていて、うまくいきそうな匂いをさせている状態まで来ていたら、「いいかな」と思う。

それから、やってしまって謝られることの良さは、まずいやつなら「お前、なんでやるんだよ」と言えるじゃないですか。でも、「やってもいいですか?」と聞かれることは、僕の責任にされるということだから。僕の場合はそれでもいいけれど。多くの上司にとって、責任がないところで新しいことを試してもらうことは得なんです。

自分の責任ではないのに勝手に新しいことをやって、ダメだったら怒ればいいし、うまくいったら、「いいね~」と言えばいいわけじゃないですか。だから、実はすごくお得なんです。

なので、仲山さんみたいにある程度バランスを持ちながらソロリソロリと試してくれる分には、ダメだったら途中で止めればいいし、うまくいったら乗ればいいしで、損がないんです。

だけど、最初から何もしないうちに、「いいですか?」と聞かれて、僕が例えば「いいよ、じゃあ仲山さんやってください」と言ったら僕の責任になりますよね。

仲山:なりますね。うまくいかなかったら、青木さんのせいですよね。

青木:僕が許可したからっていうことになるじゃないですか。勝手に試している分には、失敗したときに「お前、勝手にやるなよ!」と言えるということから考えると、実はいい部下なんです。すごくありがたい。

仲山:今のフレーズ、楽天の人に言ってほしい(笑)。

スリーエムに学ぶ「許可を求めるな、謝罪しろ」

青木:大けがしない範囲でやってくれれば、泳がそうと思うじゃないですか。でもいきなり最初のトライで大けがするようなことから始める人もいるんです。これは絶対に泳がせられないやつで、首に縄付けてどこかに括っておかないと事故を起こすという人もいる。

でも、いい塩梅で小さく試す人は、わりと「しばらく泳がしておくか……」というかんじになりやすいと思います。ただ原理としては許可を求めるよりは求めないほうがお得な部下かなというかんじはします。

仲山:本にも書いたのですが、ポストイットをつくっているアメリカのスリーエムという会社の社是というか社訓みたいなものに「許可を求めるな、謝罪しろ」というのがあるそうです。つまり、会社のサイズが大きくなってくると、決裁を通すにも時間がかかるから、いつ決められるかわからないような組織になっているのに、「稟議が通っていないからできません」というような組織はイケているわけがない。

だから、やりたいことがあったらやってみて、うまくいかなかったら謝ればいいという価値観だと。それを聞いたときに、僕は普通にやっているなと(笑)。

青木:僕はお金を使わなくてもできる方法を考えたい。お金がかかると「やっていいですか」と言わざるを得ないから。

仲山:稟議などが発生してしまいますもんね。物理的に原材料が必要なモノ作りをしているわけじゃないし、サービス業なので、お客さんと話していて「こんなことをやったら面白そうですね」といったものについて、オフィスに集まってくれたらお金は1円もかからないし、お客さんは喜んでくれるからいいですよね。なんだったら、みなさんが参加費を払ってくれました。利益が出てしまいました(笑)。

青木:(笑)。逆に、「入金伝票をどうやって切りましょうか」というかんじですよね。

仲山:そんなふうにやっていると、「自由でいいよね」と言われるんですが、「だったらやればいいじゃん」というかんじです(笑)。

「とりあえずメルカリで売ってみる」くらい小さなことから試す

青木:でも小さく試すのは、簡単なようでけっこう難しいんですよね。まじめな人はちゃんとやろうという気持ちが強いので……。

仲山:失敗せずにやろうとするんですよね。

青木:失敗せずにというのもあるけれど、試せる最低ラインは自分が思っている最低ラインよりもずっと下だと思ったほうがいいです。

例えば、最近だと僕らは動画のビジネスを始めているので、どういう撮り方をするかのテストをするときに、スタッフがやっているのを見ていたら、毎回ロケをやってテストを撮ってちゃんと編集して、それで僕のところに持ってきて「こういうふうにやってるんですけどどうですか」と聞きに来るんです。

そうするとサイクルが長いんです。1本撮るという1サイクルに、数日はかかるじゃないですか。「絵コンテとかで落書きみたいなのを並べて、紙芝居みたいな時点で1回試すのもいいんじゃない? そして絵コンテで見て、そこで議論して絵コンテだけで直して、完璧な絵コンテとかできたら撮ってもいいんじゃない」というような話を最近社内でしたんですが、やっぱりそういう頭ってないんです。

動画の検証だから「1本作らないと」と思うんですよね。だから、そんなことをしなくてもいいことがけっこういっぱいあるんです。

あとは、ビジネスで僕らはモノを販売するEコマースという仕事をしているので、いろんな新しいビジネスをやるということもあります。さっと上がって来て、「新規事業でこういうのはどうですか?」というときにトライとして想定しているのが、サイトを一つ立ち上げる、みたいなところを考えているんです。

でも僕は「それを1回メルカリで売ってみたら?」と言うんです。メルカリで売れないものをサイトにしたら売れるということは絶対にないから、個人としてメルカリで売ってみたり、ヤフオクで売ってみたりして、想定より売れるかということを、そんなの今日でもできるから、それでいいじゃんという話をよくしています。

小さく試すという言葉は随分浸透しているから、できるだけ今やろうという意識はほとんどの人がみんな持っていると思うけれど、もっともっと原始的なレベルでいいという意味だからというのは、よく会社の中で言っていて、「お前がやっていることは全然小さくない、すごくちゃんとしている」と。

もっともっと小さくていいし粗くていい。そうすると、さっき仲山さんが言ったように、お金がかからないから何回も試せる。お金や時間をかけたあとはすごく肩ひじを張ってしまうし、失敗が怖くなってしまうけれど、今日メルカリで売ってみるというのは何の怖さもないから、何回でも試せるんです。

「小さく試す」の中の「小さい」という意味は「粗い」という意味でもあるので、「小さくちゃんとしたもの」というよりは、「小さく粗く」という(ことです)。

セドリ出身のベンチャー経営者

仲山:青木さんはよく「解像度」という表現を使いますよね。すごく高解像なものを最初からもってくるからダメなんだということですよね。粗いうちに、「こんなかんじでどうですかね?」というような。

青木:そうですね。そうすると、多分自由に試させてもらいやすくなるということなんだと思います。

仲山:楽天出店者さんでも、かつてはヤフオク出身みたいな人は多かったです。だから起業したという意識もないくらいですよね。起業を決意したわけではなく、やっているうちに売れてきて。

青木:上場ベンチャーの経営者でも、もともとは中古の自転車を自分で直してヤフオクで売って、それを繰り返しているうちに他の人のやつも直して売ったりして、気が付いたらビジネスの延長線上で、中身は様変わりしてしまったけれど、すごいビジネスになってしまったというところはあります。

仲山:青木さんもセドリ出身でしたよね。

青木:そうですね。僕も最初の事業がうまくいかなかった頃に、ブックオフで買った本を転売するということで、家族を食わしていたことがありましたね。でも、あの時期にビジネスのほとんどすべてを学んだと思います。

仲山:知り合いのベンチャー経営者でいいかんじの人たちがけっこうセドリ出身だということが判明してきた、と言ってましたね。

青木:だから、本当に誰でもできるような取るに足らないことから始めているというのは、非常に1つの特徴だなと思っています。

自由な働き方を望んだのではなく、実態としてすでにそうなっていた

仲山:「起業したいと思ったわけではないけれど起業家と呼ばれるようになった人」という話とのリンクで言うと、僕は10年前から「兼業自由・勤怠自由で人事考課もフリーな正社員」のような変な働き方になったのですけど、みんなに聞かれるのは、「どうしたらその条件になれたんですか?」と。

青木:それは僕も逆に知りたいです。そうまでしてもいてほしいと、少なくともそれでもまだ所属してもらったほうがいいと思われる状況があったんでしょう?

仲山:そこは逆に自分ではわからないのですが、今僕が言いたかったのは、その勤務条件になったから自由に働けるようになったとは思っていなくて、「会社に来ても来なくてもいいよ」と言われた日の前後で何か変わったかと言うと、何も変わらないです。

青木:実態としてはもともとそうだったってことでしょう? さっきの「許可を求めるな、謝罪せよ」が、働き方としてすでに行われていて、いいかんじですよね。逆に自由になろうという意識はあったの? 

仲山:ないです!

金髪に染めている人は、本当に自分で自由を選びとっているのか?

青木:要するに、兼業とか時間や出勤の自由を交渉できましたってわけじゃないの?

仲山:交渉してません。この前「いつから自由な働き方になろうと思いましたか?」という質問をもらったときに、「自由な働き方をしたいなんて思ったことは一度もない気がします」と答えたら、その場にいた「ほぼ日」の篠田(真貴子)さんが「わかる」と言ってくれて。

篠田さんのお子さんが通っている学校は校則が少なくて有名なところなんです。そういう自由な学校の生徒を見ていたら、みんなが判で押したように学校祭の前に金髪とかに染める人が多発するのだと。

じゃあその染めている人たちは自由なのかと言ったら、逆に自由にとらわれて自分でやりたいかどうかもわからないけれど、染めたほうが自由だと思われるっぽいから、という理由でやっていたら、それは自由じゃないよねという。

「自由になりたいと思った瞬間に、自由にとらわれて自由になれないということはあると思うから、仲山さんが言っているのは真理だと思う」と言ってくれたんです。

だから「自由に見える人」は自由になりたいなんて思わずに、ただ自分の夢中になれることを続けていたら「自由な人」と呼ばれるようになったというところはあると思います。

青木:言われてみたら、僕はけっこう自由にとらわれているかもしれません。僕が起業したのは、自由になりたかったからです。自由になれるんだったら何でもよくて、若いころと言ってもそこまで若くないんですが、とりあえず作家だったら自由になれるんじゃないか、小説を書いてみたり……。

仲山:散歩をしていればよさそうですもんね(笑)。

青木:一通り自由にできそうなことをやってみて、最終的に経営者になったんです。経営者になったら自由になりそうじゃないですか。でも、誰が言ったのか忘れてしまったんですけれど、ある有名な人が、「CEOというのは自分以外全員の奴隷だ」と言っていて、これはやってみるとまったくその通りなんです(笑)。

要するに、そんなに大きな会社の社長でない限り、交渉力はないわけですから。お願いして働いてもらって、お願いして取引していただいて、当然お願いしてお客さんに良くしてもらっているんです。全然自由ではありません(笑)。僕は今、人生史上1番とらわれていると思うから、やっぱり自由になりたいと思って選択していると、こういうことになるのかなと話を聞きながら思いました。

ただ、どう働くかということは、ある程度自分で決められますが、誰かの顔色をうかがいながらやらないといけないという本質的な意味においては、あんまり自由を追求しているとそういうふうになるなと思います。意外と僕自身は自由にやりたいとずっと思い続けていたタイプです。

負けず嫌いと競争嫌い

仲山:「自由になりたい」というのと「他由を減らしたい」というのと、ニュアンスは違わない……?

青木:そうですね。多分人の言うことが聞けないというかんじですね。

仲山:僕も同じ病気だと思います。

青木:「こうしなさい」と言われると、逆もありなんじゃない? とすぐ思ってしまう(笑)。

仲山:このやり方がベストとは限らなくないですか? と思っちゃう(笑)。

青木:あと「普通こうしてるよ」と言われると、その普通というのは誰かが証明したのかな? というふうに思ってしまうから、うまく機能しないんですよね。だから、自分で問い自体を作る側にいかないとまずいなというのはありましたね。

仲山:青木さんのように、商売が独自性、オンリーワン性が高くて、他の人とあまり競争しないで済むようなポジションになっているお店や会社をやっている経営者の方と喋ると、ものすごく負けず嫌いすぎて、戦いを1回もしたくないからそこにたどり着いてるのかな、と思います(笑)。

青木:それはあるかもしれませんね(笑)。負けず嫌いすぎるというか、やっぱり競争が嫌なんです。息子が今小学生なんですが、よく似ているんですよね(笑)。

仲山:関係ないけど、うちの息子と青木さんの息子のフォルムが超似ているんです(笑)。

青木:息子がスイミングスクールに通っていて、順調に級が上がっていったんです。そしてあるとき飛び級したら、それまで級の中で泳げるほうだったのが、いきなり飛び級だから級の中でいきなり下になるじゃないですか。そうしたら飛び級した1週間後にもう辞めていました(笑)。

仲山:やる気がなくなってしまって(笑)。

青木:そう! だから「こいつも苦労するな~」と思いながら(笑)。これ、働き方の話になっているのかな……(笑)。

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