2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
基調講演(全1記事)
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改めまして、私の自己紹介です。SmartHR代表取締役CEO、宮田昇始と申します。私は大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社し、Webサイトやソフトウェアの開発を仕事としてきました。どちらかと言うと、人事よりは開発側の人間です。これまでは、人事労務とは無縁の生活を送ってきました。しかし、今から3年前、とあるできごとがきっかけで、このジャンルに興味を持つことになります。詳しくは、後ほどご説明いたします。
発表の前に、セッションについての説明事項です。まず、このセッションは撮影OKです。Twitter、Facebook、Instagramなど、SNSへの拡散もOKです。本日、残念ながら会場に来ることができなかったみなさんのためにも、ぜひどんどんシェアしていただければと思っています。また、投稿する際は、ハッシュタグ「#SmartHR」をぜひご活用ください。
さて、この時間は、「SmartHRが描く未来」と題しまして、まさにNext、「SmartHR」の次の展開を発表したいと思います。みなさんにとって、働き方改革をさらに進める、強力な武器になれると信じています。また、本日、SmartHRをすでにご利用中の企業さまに加えて、SmartHRを現在ご検討中の企業さまもたくさんいらっしゃいます。次の展開の発表に先駆けて、まずはこれまでのSmartHRの軌跡をご紹介いたします。
最初に、スライドの日付です。2015年11月18日。この日にSmartHRを一般公開しました。今から約2年10ヶ月前です。実はSmartHRは、一般公開からまだ3年にも満たない、若いサービスです。
そして、スライドの「16,000」という数字は、何の数字だかおわかりになりますでしょうか? この数字は、現在SmartHRをご利用中の企業さまの数です。サービス公開からわずか2年10ヶ月で、これだけ多くの企業さまにご利用いただける、それだけ強力なニーズが育っているサービスです。
次に、「99.6%」。これは、SmartHRの継続利用率です。逆の言い方をすると、SmartHRの解約率はわずか0.4パーセントです。我々のようなクラウド型ソフトウェアの世界では、解約率が2パーセントを切ると「とてもすごいですね」と言われる水準です。
我々は、それと比較してもはるかに低い0.4パーセントという、驚異的な数字を持っています。これは、常にユーザー企業さまの目線に立ち、よりよいプロダクトを目指し、日々改善を繰り返してきた結果の表れだと自負しています。
また、SmartHRの機能も、月日を追うごとに充実してきています。このセッションの前半では、SmartHRがどのように拡大してきたのか、また当時、どういった気持ちで挑んでいたのか。そのあたりを、キーワードとともに振り返っていきたいと思います。
まずは、SmartHR開発当初の話からスタートします。初期のSmartHRを言い表したキーワードです。「社会課題の解消」と「時代の変化」。この言葉がぴったりときます。
それを象徴する、1枚の写真があります。この写真は、今から3年半前、私の自宅で撮影した写真です。散らかっているのは、産休・育休の書類。それを、妊娠9ヶ月になる妻が自分で作成しています。
本来、これらの書類は会社が作成し、役所に申請する義務があります。それを、すでに産休に入っている従業員がやっている。倫理的にはもちろん、従業員のモチベーション的にもよくありません。
このできごとをきっかけに、人事労務という領域に興味を持った私は、調査を開始しました。それから約半年間で、200社を超える企業の人事担当者のみなさまにヒアリングをしました。当たり前の結果なのですが、担当者のみなさんはとても困っていました。そして、人事労務の分野は、私たちが想像していたよりもはるかにアナログで、はるかに手間のかかるものでした。
まず、基本的に紙です。紙で大量の書類を作成しなければいけません。それぞれの書類は、専門の書籍が必要なほど難解です。さらに、作成した書類を役所へ届け出る必要があります。しかも、1ヶ所だけではありません。年金事務所、ハローワーク、健康保険組合。何ヶ所にも出向く必要があります。窓口では、2時間以上待たされることもざらです。
また、驚くことに、当時はこの課題を解決するソリューションがありませんでした。みな、手書きや判子、役所で行列で並ぶという昔ながらのやり方で、時間とマンパワーをかけて対応していたのです。これら200社からのヒアリングを通して、サービスの構造を固めました。それが、このSmartHRです。
まずは、デモ動画をご覧ください。
(動画が流れる)
例えば、入社の手続き。実は、こんなに大量の書類が必要でした。もう、これらの書類は必要ありません。SmartHRを使ってみましょう。会社がやることは、とてもシンプルです。新入社員を招待するだけ。これで、準備が完了です。
すると、新入社員に入社手続きの案内が届きます。新入社員は、自宅で必要な情報を入力するだけ。難しい書類とは違い、シンプルなUIなので、サクサクと終わってしまいます。入力が終わると、人事担当者に通知が届きます。あとは、入社日や給料を入力するだけ。面倒な書類が、すべてできあがってきます。
さらに、役所へのWeb申請もできてしまいます。必要なのは、わずか数クリック。これまで数時間から1日かかっていた届出が、わずか15秒程度で完了です。非常に便利な機能です。
また、このSmartHRを公開した2015年は、時代の変化も大きな年でした。2015年に総務省が運営する電子政府が、電子政府APIを公開しました。APIとは、別々のシステム同士が簡単に連携できる仕組みだと思ってください。
SmartHRで作成した手続きも、この電子政府APIを通して国のシステムへダイレクトに申請ができるようになっています。国もこの分野の電子化に踏み切り、我々はその変化にいち早く対応することができました。
また、2015年はマイナンバー制度が本格的に動き出した年でもあります。企業は、マイナンバーを収集・管理するために、新しいソリューションを導入する必要がありました。今振り返っても、非常に大きな変化を迎えた年でした。
SmartHRは、私の身の周りで起きた身近な社会課題をきっかけに始まったプロジェクトです。未解決のまま放置されていたアナログな社会保険制度と、そこに訪れた急速な時代の変化。そこに私たちSmartHRが現れたのは、むしろ必然だったのかもしれません。
そしてSmartHRは、サービス公開からわずか半年で1,000社を超える企業への導入に成功します。しかし、当時の利用企業は最大でも500名規模にとどまり、ユーザー事業の業種もITベンチャーが中心でした。しかし、サービスを拡大していく過程で、利用企業も業種も徐々に広がっていきます。
まずは、働き方改革です。今後10年間で、日本の労働人口はほぼ半減する見通しです。人の確保がますます難しくなります。その中、労働時間は23パーセントも削減しなくてはいけません。さらに、AIやRPAといった職業代替にも負けない従業員のキャリア形成のサポートが必要になります。
これら難しい3つの課題を同時に解決していくのが働き方改革であると、私たちは定義しています。非常に難易度が高い問題です。そして、これを誰が牽引していくのか。もちろん、企業の人事労務の担当者のみなさまです。しかし、人事労務の担当者のみなさまは、多忙を極めます。
これはエン・ジャパンが調査した、人事労務担当者の担当業務についてのデータです。左の棒グラフが、彼らが担当している業務。ほとんどの方が採用に携わり、半分以上の方が労務に携わり、社会保険や年末調整も4割以上の方が担当しています。右のグラフは、その兼務の状況です。みなさん、かなり多く兼務されていることがわかるかと思います。
とにかく、人事労務担当者は多忙です。2つ以上の業務を兼務している方は8割以上、3つ以上の業務が6割、6つ以上を兼務している方でも3割に上ります。また、残業時間も多いです。業種によっては、半数以上が30時間以上の残業を行っています。これでは、働き方改革を牽引できるはずがありません。皮肉にも、人事労務担当者の業務負荷を下げることが、働き方改革の最初の一歩になります。
では、どこから効率化できるのでしょうか? これは、先ほどご紹介した担当業務のグラフです。緑のマークを付けたのが、採用や評価、人事企画といった、しっかり時間をかけるべき業務。青いマークを付けたのが、勤怠や給与計算など、何十年も前からソリューションが存在し、すでに効率化が進んでいるジャンル。
そして、赤いマークを付けた労務・社会保険・年末調整が、いまだにソリューションがなく、もっとも効率化が遅れている箇所でした。社会保険手続きの効率化から始まったSmartHRが、年末調整やそれ以外の労務にも乗り出していきます。
まずは、年末調整です。これまでの年末調整は、どのように大変だったのでしょうか。例えば、飲食チェーン店の場合です。まず、全従業員分の用紙を事前に印刷し、全国の店舗に郵送する必要があります。
仮に100店舗で2,000名の従業員がいるチェーン店の場合、6,000枚の書類を印刷し、100個の段ボールを郵送する必要がありました。書き方のマニュアルも用意し、それでも10月から12月は、問い合わせの対応に追われます。従業員としても書き方がわからず、アルバイトに書き方を教える店長も大変でした。
そんな中開発されたのが、この「ペーパーレス年末調整」です。この機能は、SmartHRの女性プロダクトマネージャーが企画した機能です。彼女は、大手飲食チェーンで人事労務担当者として実際に働いた経験を持ち、毎年この年末調整に苦労していました。そんな現場の課題から生まれた機能です。
SmartHRの年末調整を使えば、印刷したり段ボールを郵送したりする必要はありません。画面上から対象となる従業員を選び、ボタンをクリックするだけです。従業員も、スマホから年末調整が可能になります。しかも、「はい・いいえ」といった簡単なアンケートに答えていくだけ。マニュアルも不要です。あの面倒な年末調整が、スマホだけで完結。もちろん、パソコンでも利用可能です。
さらに、誰が完了していて、誰が未対応なのかといった進捗管理もできるようになっています。間違いがあった場合の差し戻しも簡単です。10月から12月の2ヶ月間は、年末調整で潰れてしまう。そんな課題を解決するこの機能は、おかげさまで大ヒットしました。
さらに、先月公開した新機能として、雇用契約書もSmartHRで締結が可能です。デモ動画をご覧ください。年末調整と同様に、雇用契約を結ぶ相手を選択します。すると、新入社員のところに案内が届きます。新入社員はスマホを立ち上げ、契約内容を確認。問題がなければ、自分の氏名を入力するだけ。これで契約が完了です。契約書の印刷や製本も不要です。判子を持ってきてもらう必要性はありません。
これは先ほどのグラフです。SmartHRはこの赤いグラフの箇所、人事労務の中でもっとも効率化が遅れている箇所を、次々にカバーしてきました。このように、我々SmartHRは、働き方改革と、そこで重要なファーストステップである人事労務担当者の負荷軽減に、真剣に向き合ってきました。その結果、SmartHRの機能はどんどん強化されてきました。
ご紹介したもの以外でも、Webの給与明細や社員名簿、人事データベースとしての機能も備えています。人事データベースは、年内に大きなアップデートがある予定です。こちらにもご期待ください。機能の拡充に伴い、利用企業数は増加。冒頭にご紹介したとおり、その数は1万6,000社を超えました。そして、その継続利用率は99.6パーセントと、非常に高い水準を誇っています。
そして、働き方改革の対応でもっとも大きな変化があったのが、利用企業さまの従業員規模と業種です。この2年間で、利用企業は一気に従業員1万名規模まで膨らみました。業種も、メルカリさんのようなIT企業だけでなく、DEAN&DELUCAさんのような飲食業、ヴィレッジヴァンガードさんのような小売業、イトキンさんのようなアパレル業、星野リゾートさんのような宿泊業など、まさに本日のイベント「SmartHR Next」のテーマであるサービス産業全体へと広がりを見せています。
このサービス産業のみなさまに選ばれている理由として、1つ目は若いスタッフやアルバイトの方が多く、入退社が多いこと。2つ目は、店舗が全国にあり、郵送の手間やコスト、免許証のコピーなどを郵送する個人情報が加わっている点。何より、店長さんを本業である店舗の運営に集中させたい。こういった理由で、SmartHRが選ばれています。
さて、そしていよいよ「Next」です。また新たな課題が生まれてきました。今回生まれた課題は、お客さまの規模が大きくなり、業種が広まったことによるニーズの多様化です。なるべく多くのニーズに応えたいのはやまやまなのですが、すべてのニーズに応えようとすると、製品が中途半端になってしまったり、複雑になって使い勝手が著しく悪くなってしまったりする。ソフトウェア開発の世界では、よくある話です。
私たちは、この課題に対して「やらないこと」を決めています。(その理由の)1つは、ニーズに無理に応えようとして、中途半端な製品を作ってしまうこと。もう1つは、利益を追求するあまり、中途半端な製品で囲い込みをしてしまうことです。しかし、ニーズにはお応えしたい。
この課題を解決するためのNextです。SmartHRのプラットフォーム化構想を発表します。
プラットフォーム化にあたって、2つやっていくことがあります。1つは、すでに進めている外部サービスとの連携の強化です。これをさらに強化していきます。
もう1つは、社内で「SmartHR Plus」のコードネームで呼ばれている、アプリケーションストア構想です。SmartHR上では、さまざまなアプリもインストールできるようになり、人事データとの連携が可能になります。
それぞれ説明していきます。まずは、外部サービスとの連携強化からです。これは、SmartHRがすでに連携を発表している外部サービスです。今月連携を発表したばかりのKING OF TIMEをはじめとした勤怠管理との連携や、MFクラウドなどの給与計算ソフトとの連携、「Talentio」や「HITO-Link」などの採用管理システム、その他にもID管理サービスやストレスチェック、SlackやChatWorkなどのビジネスチャットとも、すでに連携をしています。
近日連携予定のサービスを、いくつかご紹介します。1つ目は人事労務freee。もう1つはジョブカンです。ご存じない方もいらっしゃるかと思いますが、この2社はSmartHRと非常に似た機能も提供されています。
しかし、我々は無用な囲い込みをしません。人事労務freeeの給与計算ソフトを利用されている方にもSmartHRも利用していただきたい。同様に、ジョブカンで勤怠管理を利用している会社さんにもSmartHRを利用していただきたい。そんな思いで我々から強くアプローチし、連携が決定しました。
少し毛色の違う連携もご紹介します。福利厚生の「RELO CLUB」です。連携内容はまだ非公開ですが、こちらもSmartHRとの連携が決まっています。そしてLINEです。LINEとSmartHRが連携することで、ユーザーの体験は大きく変わります。
従業員はLINEで入社手続きができるようになり、LINE BOTの質問に答えるだけ。源泉徴収票の発行や毎月の給与明細もLINEで。そんな未来がやってきます。我々は、いただいたニーズから中途半端な製品を作ってしまうことを決して行いません。代わりに、そのジャンルで最も優れたサービスたちと次々に連携を行っていきます。
そして、もう1つのプラットフォーム化。社内でSmartHR Plusのコードネームで呼ばれている、アプリケーションストア構想です。iPhoneのApp StoreやGoogle ChromeのChrome ウェブストアといったものをイメージしていただくと、理解が進むかもしれません。
SmartHR上で、さまざまなアプリケーションをインストールできるようになり、人事データ連携が可能になります。さまざまなアプリケーションのインストールはもちろん、各アプリとSmartHRが人事データを連携します。この仕組みは外部ベンダーにも公開予定で、決済やOAuth認証のような基盤も提供していきます。
もう少し具体的な例を。雇用契約書や年末調整という先ほど紹介した機能は、実はSmartHR Plus上で動いているアプリケーションです。ユーザーからすると、SmartHR本体を操作するのと何ら変わりない感覚で操作が可能です。
その他、自社アプリとして店舗向けのiPadアプリやHRデータのレポート機能、顔と名前を一致させたりさまざまな用途で使える「すごい社員名簿」の開発も予定しています。また、SmartHRが作る自社のアプリケーションだけではなく、将来的には外部ベンダーのアプリケーションもストアに並ぶ予定です。
ユーザーの多様なニーズに応えつつ、かつシンプルに使いたいユーザーの邪魔もしない。ユーザーは、使いたいときに使いたいぶんだけ、使いたい機能だけを使える。我々は、製品の品質を下げることなく、多種多様なニーズに応えていくことを諦めません。SmartHRは、プラットフォーム構想を推進していきます。
では、プラットフォームの先にはどんな未来が待っているのでしょうか? もう1つのNextをお話しします。これまで、オフィスのキャビネットやパソコンのローカル環境に閉じていた人事データが、クラウド上に集まってきています。これは、SmartHRのプラットフォーム下で、さらに急速に加速するでしょう。
すると、これまでバラバラだったさまざまなデータをつなぐことができるようになります。データをつなぐことで、どんな未来があるのか。例えば、採用管理ツールとの連携。採用管理ツールは入社前のデータを持ち、SmartHRは入社後のデータを持ちます。どんな採用媒体から来た人が在籍期間が長いのか、どのエージェントから来た人が昇級が早いのか、そういったことがわかるようになります。
これだけではありません。例えば、ここに評価制度、エンゲージメントといったデータが入ってくると、どこから来たどんな人材が、どんな配置だと活躍するのか。そういったことがAIによって高い精度で見えるようになります。これらの連携により、AI時代を見据えた人事データの連携・蓄積ができるようになるのです。企業内において、AIで活用できる意味のあるデータを持つことができます。
繰り返しになりますが、SmartHRは、より幅広いニーズに応えるため、そして、AIの時代を見据えた意味のある人事データを企業内に蓄積していくため、このプラットフォーム化を進めていきます。
今、この働き方改革の時代においても、将来やってくるAI活用の時代においても、経営者や人事のみなさまが変わらずすべての時間を価値ある仕事に集中できるよう、我々SmartHRはプラットフォーム化を進めてまいります。
以上で、私からの発表、「SmartHRが描く未来」とさせていただきます。みなさま、長い時間、ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
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