2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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井上高志氏(以下、井上):調子に乗ってうちの執行役員人事本部長の羽田幸広が「働きたい会社のつくりかた」という題名の本を書きまして、おかげさまで増刷で6刷目までいって、たくさん読んでいただいております。これも僕らからすると「利他」なんですね。僕は10年間掛けてこれをずっとやり続けていて、その中には失敗もあるし成功もあるし、気をつけなければいけないポイントというのが何個もわかってきたんです。
これを洗いざらい全部書いて、これを「1,500円でどうぞ」というふうにお話しているので、ご興味がある方はぜひ読んでください。宣伝じゃないですよ(笑)。
また、社長業を始めたのは26歳ですけど、社長っていったい何をやればいいんだってことで10年ぐらいずっと悩んでいたんですね。悩んでいたというか「これでいいのかな?」って。これまでリーダーシップをやったことがない。
僕がリクルートを辞める時はペーペーの社員だったわけですし、もちろん社長も(経験が)ないです。それどころか人生の中で、班長さんも学級委員長もやったことがないので、もう本当に徒手空拳で「これでいいのかな」ってやってきたのですが、経営者の方もいらっしゃると思うのですが、とにかくいろんなことをやらなければいけないじゃないですか。
人、物、金、マーケティング、プロダクト。あれもこれも最終的にこの3つに集約できるんじゃないかなというのをずっといろいろ考えながら、ウィスキーのオンザロックを一人で台所のところで立ちながら飲んでいる時に、天から降ってきたんですね。「あっ、これだ!」みたいな感じで。会社というのは、そして部門とか事業というのは、社会的価値をつくることなんです。目的は。すべてはそれです。
それって「社会的に価値はありますか?」って問われ続けることで、この社会的価値を最大化するのは、人と情熱と仕組みの掛け算だと。人というのもいろんなことをやってますけど、例えば因数分解すると採用と育成に分かれますけど、さらにツリー構造でいくと、採用でも中途採用、新卒採用、技術だったり営業だったり。もしくは外国人採用、女性の登用、高齢者の活用。いろんなことに因数分解して、また枝分かれしていきます。
その人たちを妥協のない採用で、最高の仲間を集めるためには、どういう選考プロセスをやったほうがいいのか。どうやって辞退しないようにしたほうがいいのか。それに対しての報酬はどうしたらいいのか。評価はどうしていったほうがいいのか。配置転換はどういうふうにすべきか。これらが全部繋がってくる。
たった3つの掛け算なんですけど、細かくツリー構造にすると、この下に数10個ずつぶら下がってくるので、いつも社長の頭の中は200とか300のタスクとか案件、プロジェクトとかでパンパンになっているわけですよ。
それをまとめていくと、1番大事なのは最高の仲間同士を集めて育てて、その人たちに活躍をしてもらうことだと。その優秀な人たちが入ってきても、やっぱり人間ですからバイオリズムがあって、浮き沈みもあります。これをずっと熱くし続けるためには、情熱を入れ続ける。
エナジャイズし続けるというリーダーが必要なわけです。このためにはビジョンと戦略があって実現への執念があって、それを鼓舞し続ける。「いいぞ、いいぞ、その調子だ、がんばれ、ゴールは近いぞ!」みたいに、ずっとコーチングし続けるということです。最後、これは人をひとり採って、優秀なマネージメント、リーダーがいて、1 x 1だと意味がないので、それを倍化していく仕組み化というのはやっぱり大事で。
人がひとり入ったらこの会社だと、10人力になるとか100人力になるという仕組み化のところが、すごい大事だなというところがあるので、これはちょっと力を入れてやっています。すわれわれのマネージメントの評価指標としては、この3つを見てます。どれだけ良い人を採用し、育てているか。どれだけエナジャイズしているか。どれだけ仕組み化して、どんどん倍化する仕組みをBPRし続けているか、ということを評価の中で見ています。
あとは薩摩の教えですね。何かに挑戦して成功した人が1番偉い。2番目は何かに挑戦して失敗した人だ。ここをいつも強調しています。だから、バッターボックスを沢山用意するから、「できるかどうかじゃなくてやってみろ」と言って、事業の立案とか実行というのを任せていきます。4番と5番はいらないからねって言ってますね。あとは正義と力の関係でいくと、『論語と算盤』もそうですけど。
正義がない力は単なる暴力で、これは企業に置き換えても、そういう会社があります。一方で、力なき正義は単なる無力だと。なんかすごく良いことをいっぱい言ったんだけど、業績が低迷してぜんぜん伸びてないよねっていうのは無力ですよね。これは個人も法人もそうだと思いますけど、やっぱり世の中を良いほうに変えるには、正義もあるし力も持っている、そういう存在にならなければいけないので、これを2つとも高い次元で両立するということがまさに経営だと思いますということです。
よく質問を受けるのですが「利他主義って良いですね。でも利他と売上利益というのが相反することが出てきたらどうするんですか?」っていう。相反しないように両方達成するのが経営だと、当然でしょということをお伝えしています。
ちょっと時間が迫ってきているので、僕の今やっていることをさらさらと言います。さっき言った世界平和。紛争がない。これは50年後です。その手前でBase of the Pyramid(BOP)の人たちが自立できる社会をつくろう。そのためには、水、食料、住宅、医療、教育、働き、エネルギー、この辺のイノベーションを興していこうと。今、着手中のところでいくと、さきほどちょっと説明したような、グローバルなところに展開していったり、プラットフォーマーになろうとか。それから教育とかリーダー育成とかをやってます。
「Living Anywhere」というのは未来型のキャンピングカーみたいなもので、レベル4とかレベル5の自動運転技術を搭載、再生可能エネルギーで、いろんなことができちゃいます。それから財団をつくってまして、もともと公益志本主義を提唱しているのがこの方で、ダボス会議なんかでも監修メンバーで入っている原 丈人さんという方で、日本よりはもしかしたら世界でのほうが知名度が高いかもしれませんが。
そういった方と「100年後の未来ってどうデザインすべきか」というようなことを一緒にやっています。社会デザインというものの1つが「Living Anywhere」で。もう1個の社会デザインは、財団でいろんな叡智を集めてやってます。それから教育改革、これは21世紀に求められる人間のOS(Operating System)基本OSというのがあって。
これをどうやってインストールしていくのかというもののプログラムをつくりました。企業向け研修のかたちにも仕立て上げました。実はこのメソッドというのは、子育てにばっちり効くように計算してつくっているんですね。なので、会社にいる時には部下を育てるために使えるメソッドになっていて。
それで成果が見え始めて、そのメンバーたちが育ってくると、「実はお父さんお母さん、これは子育てにもまったく同じように効くんですよ」というのが埋め込まれているので、まだちょっとできていないですけど、これの子育てバージョンをつくって、全部無償公開しようというふうに思ってます。みんなが家に帰ってそういう育て方をすると、セルフ・エスティーム。自尊感情、自己肯定感、自己効力感、これが持てる子供が育っていくので、「自分でやってみよう」というふうに前に飛び出せる人たちが増えるといいなと思ってます。
先程ご説明しました規制改革では、新経連の理事をやってまして、IT重説のオンライン化(を進めています)。「不動産の重要事項説明なんかは対面じゃなくてもいいじゃん」ということで、賃貸に関しては突破してつくりました。民泊規制も緩和できました。あとフィランソロピーは、成功した起業家たちが、社会貢献活動に自分の私財をバンバン投じられるように、税制とか公益認定規制というものをちゃんと変えていこうというふうにしてます。
もう、アメリカなどで大きな成功をつかんだ人は次の時代のために浄財寄付して、しかもハンズオンに入っていって、どんどん社会変革をしていくんだということも進めています。あと不動産市場の活性化。あと先程ご紹介いただいたベナン共和国。聞いたこともないかもしれませんが西アフリカです。そこで学校をつくったり、井戸を掘ったり、製品をつくったりというのもやってます。
あと世界平和。広島でやっている「国際平和のための世界経済人会議」これの主催者側のほうの1人としてもやってます。今年1発目でやるのが、第1回目になるのですがピースデイ。今年の9月2日開催で、1日目は「旅祭り」といって、世界一周をしてきた旅好きの若者たちがいっぱい集まります。こっちはラブ&ピースな人たちが集まって、そんなに堅苦しくないです。
音楽のフェスっぽい感じで楽しみながらも、ふと気づくと「やっぱりピースって大事だよな」ってビール飲みながらふと思うみたいな。そういう仕立てにしてますので、よろしければ幕張海浜公園でやってます。ここまでで終了となりますが、この後はもしご質問があれば「Living Anywhere」の参考資料だとか、どんなことをやろうとしているのかとか。
シンギュラリティ(技術的特異点)の時代が到来すると、僕らシンギュラリティ大学ジャパンサミットのスポンサーを今年やっておりますけども、エクスポネンシャル(指数関数的・飛躍的)のテクノロジーの進化というのも、とんでもない感じで。ぜんぶ90度のカーブのようにいろんなものが上がってくるので、もう5年10年すると劇的に社会が変わっていくと。
これを活用して何をやろうかというのも、社会デザインにとって大事だなというふうに思いながら、こういった活動をしています。以上、一旦終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
司会者:はい。井上社長、貴重な講演ありがとうございます。それでは質疑応答のほうですね、10分弱程度ございますので、3つ4つぐらい受けたいと思います。何かご質問がありましたら。はい。お願いします。
質問者A:お話ありがとうございました。ドローンのスタートアップをやってます。冒頭で目立たれるのがあまり好きじゃないというか、メディアに出られないというふうに聞いたんですけど。僕の周りでも、起業家なんかは目立ちたくないといっている同世代が多くて、目立ったら叩かれるって言うじゃないですか。得しないみたいなのがやっぱり染み付いているのかなというので、それがもしあるんだったら。
井上:相浦さん帰っちゃったので、ぶっちゃけ言うと、べつに目立つのが嫌いなわけではなくて、敢えて隠れているのでもなくて、そこそこ出てはいますので(笑)
(会場笑)
井上:機会があればどんどん出ていきますよ(笑)。べつに日本社会のバッシング状態に嫌気が差したり、なにか後ろめたいことがあるから出るの止めてるとか、まったくそんなことはないですよ。
質問者A:わかりました。
井上:むしろ僕はGMOの熊谷さんとかもそうですけど、起業家というのはもっとどんどん出ていったほうが良いと思ってますし、なんかああいうのクールでかっこいいよねというふうに思われるような、文化を作ったほうがいいと思っているので。そういう意味で「スラッシュアジア」ってわかりますかね。もう4年目か5年目になりますけど。
あれを最初にやったのは孫泰蔵さんとか僕とかでやって、超クールな感じでレーザー光線とか、ミラーボールのようなディスコみたいな仕掛けで、「イェーイ!」みたいな感じで起業家たちが出てきてすごいかっこいい。学生たちが見ても「俺もいつかああなりたい」みたいに思ってもらうのは、やっぱり大事だよって思ってます。
質問者A:ありがとうございます。初生産の売上がずっと平で急激に伸びているみたいなのがあったと思います。僕らは今そんなぐらいなんですけど、どういうきっかけで、マインド的なきっかけでとか、資本提携がやっぱり大きく跳ねるきっかけだったのか。何かそういう転機になったこととかを聞きたいです。
井上:どちらかというと、1回決めたことはけっこう信念を持っていたので。3つぐらい、「これをクリアすれば絶対日本では最大級になれる」という確信を持ってる戦略があったんですけど、それを愚直にやってたので、売上はなかなか上がらないけども、KPIとかKGIがだんだん伸びてくることに関しては自信を持っていたので、そこはブレなかったです。
因みに言うと、ネットワークとメディアとデータベースですけど、これを抑えれば勝つと思っていたんですね。巨大な物件情報データベースが当時はなかったので、これのデータべースを作ると。そのためにはリアルタイムに全部集まってくるようにするために、全国津々浦々の不動産会社さんとのインターネットによる、接続ネットワークを作ると。それから、集まってきた巨大な情報はユーザーにただで伝えるネットメディアが必要だと。
これは95年から始めているので、当時で言うとネットの用語もないし、ビジネスモデルなんかもないような時で。でも、この3つを抑えればいけるなというふうに思ったので、それから6,7年ぐらいその信念でかすみ食って、毎日20時間働いて、1日の睡眠も2時間でしたからね。それが500日とかノンストップで休みなく、もちろん正月も大晦日も、ずっとそのモードでやってて、ようやくふっと上がってきたという感じですね。ですので、信じてがんばってください。
質問者A:ありがとうございます。
井上:最近、「早めにピボットしたほうがいいよ」みたいな軽い風潮があるんですけど、あんなのやってたら小さいベンチャーしかできないので、信念持って骨太でガーンといったほうがいいと思います。
質問者A:がんばります。ありがとうございます。
司会者:はい。他にありますか? けっこう手が上がって、じゃあ、最初に手を挙げた方。
井上:すみません。因みに他に質問があるという方。1人、2人、3人、4人。どうしましょう。もうそろそろお時間ですよね。
司会者:そうですね。あと2つぐらいいただきまして。
井上:そうしたら、質問だけ先に伺ってしまって、答えたいやつだけ答えます(笑)。
(会場笑)
司会者:わかりました。まずは質問のほうを。
井上:質問を先にお願いします。
質問者B:今日はありがとうございました。先程、「空き家が増えていきます」ということで、LIFULL HOME'Sさんで空き家バンクをつくられたというお話だったんですけども、着目するに至った経緯みたいなところがあれば、お伺いしたいなと思います。
井上:空き家バンクをつくった経緯ですね。
質問者C:ありがとうございました。「ビジョン経営」ということで、ビジョンを日々磨いていってるのか、それとも既に「こういう状態になっているんだ」というものがあった上で、アイデアがどんどん出てくるものなのか、その辺りをお伺いできればと思います。
井上:わかりました。ビジョン経営について。
質問者D:中国からきている者でして、さっきライドシェアの話がありまして、ちょうどバイクという会社のOBたちと一緒にですね、日本でいろんなIT関係で、AIの顔認証とか、あと最近は仮想通貨のマッチングエンジンの開発にも着手していまして。私はもともと外国人でして、採用に関して悩んでます。けっこうエンジニア関係のほうは、僕のほうでいっぱい呼んでくるんですけど。
なかなか日本の現地スタッフの採用のところで、けっこう苦労してまして。普通の日本のみなさんから見ると、うちの会社はけっこう変というか、変わっているという雰囲気がたぶんあるのかと思うんですが。採用基準のところで、どういうところに(会社を)アピールすれば良い人材が集まってくるのかなと、すごい悩んでます。
井上:なるほど。採用についてですね。
質問者E:最初のほうに「将来会社がなくなる」というふうにおっしゃってたと思うのですが。でも会社をやってるし、1,000人も雇っていて、100社つくるとかおっしゃてましたよね。なんかそこが矛盾しているように思うのですが。
井上:矛盾だらけじゃないかと。15年でここをどうやってそこに移行するのかと。
質問者E:あとさっき3つってちょっと聞き逃したので、メディアとデータベースともう1つ何でしたっけ?
井上:ネットワークですね。
質問者E:ネットワークですね。あと、さっきの話と重なっちゃうんですけど、当時は有限会社で300から500万円あったんですよね。
井上:個人事業主です。
質問者E:5万円からどうやって、かすみを食うにしろ、そこそこ(お金が)掛かると思うのでどうやったのかなというのが気になったので、もし簡単に答えられるのであればお伺いしたいです。
井上:わかりました。簡単なので答えます。ホームページ制作屋さんをまず始めました。それで日銭を稼ぎながら。僕はパソコンもぜんぜん触れなかったので、大きな書店にいって入門編を買ってきて。すごい大きな書店なのにWebサイトの作り方という本は2冊しかなかったんですよ。当時は。それを見ながら、お金をいただいてました。空き家バンクとビジョン経営と採用と、どうやって15年以内に会社なくなるのに(今は会社を)やるのという話ですけど。
空き家バンクは僕らが従事している業界なので、既に820万件空いていて、次に今年出てくる調査ではたぶん1,500万、1,600万件空いているという状態のデータが出てくると思うんですね。なので「これは放置できないよね」というのがあって、先程データベース、ネットワーク、メディアって言いましたが、やっぱり空き家のデータベースを作ると、それを活用しようとする人たちが出てくるので、そのためのメディアを作りました。
空き家データは、不動産屋さんはお金にならないからこういう情報を扱ってくれない。地方行政と今、ネットワークを作っているんですよ。それが480〜500ぐらいの自治体と提携ができているんですけども、それを最終的に1,740まで広げていこうという最中です。
行政が乗っかる時に「お金かかるんです」っていうと、たぶん「じゃあ、議会通して予算通さなきゃ」ってなるはずなので、「そんなものいらないです。ただでいいから使ってくれ」って言いました。
ビジョン経営のところに関してはですね、日々ビジョンは進化してます。先程、見ていただいたやつで言うと、社是とか経営理念は変わらないです。利他主義ということと、常に革進していって、世の中の人たちをみんなハッピーにするよって言っていることそのものは変わらない。
利他主義、これは変わらないです。「イノベーションを興して世界中の人をハッピーにする」というのも変わらないです。ただし、この経営理念をビジョンという音声付きのカラーの動画で本当にビジュアライズしていくときには、それはずっと進化していきます。最初は「日本の不動産業界を変革する」だったんですけど、今はもう世界平和までいっちゃってるじゃないですか。
世界平和を実現するためには、そこのイメージがある程度ないと、足りないパーツがわからないので作りようがないですよね。だから僕の脳内では、妄想でもいいので勝手にそのビジョンを作っちゃいます。
必要なもの、例えば水とか電気、エネルギーに食料、それに働くこと。こういうのは必要だよなというものです。人が生まれて死ぬまでの間で、「制約があるからみんな自立できない」っていう領域があるから、「その制約をなくしてしまえ」みたいなほうに、どんどん発展させていきますという感じですかね。
ただ創業した当時は、そんなことには脇目もふらず、例えば液体を瓶とかに入れるときのじょうごのように、ベンチャーで下から細い通路をいっている間は、「一心不乱に1回決めたことを徹底的に曲げずにやる」みたいな時期が必要で。選択と集中どころか集中のみですね。
選択なんかしないと決めてやってみて、それが花開いてきた時、ようやく他のことが考えられるようになっていく。そうして広がっていく感覚がありました。(質問者の)御社がどれだけ変わっている会社かは、存じ上げないですけど、僕らはビジョンフィット、カルチャーフィト、ポテンシャルフィット、スキルフィットの順番なんですよ。よく過ちがあるのは、スキルフィットを最初に重視することで。
とくに中途採用の場合。猫の手も借りたいので、すぐPHP書ける人、JAVA書ける人、ブロックチェーンについてわかっている人って感じでピッと採っちゃうんですけど。その人は、その時代のその瞬間では、そのスキルは活きるかもしれないですけど、3年後5年後10年後、その通りであるかというのはわからない。一方で、ビジョンが一緒で、しかも自分たちのカルチャーにフィットしていて、しかも(社会が)どう変化していってもポテンシャルがあるから追随することができる。
「学習することができる」という人たちから採用します。これでいくと、新卒なんかはそもそもスキルがないので、この前半2つ(ビジョンフィット、カルチャーフィット)だけ見ればいいわけですよね。僕ら妥協のない採用ってやってますけど、ずっと「うちの会社のビジョンはね」から始まるんですよね。それは僕の階層だけじゃなくて、最初に会う社員からでも、「いや、われわれのビジョンはね」ってなる。
だから面接する時に、どちらかというと腕組みしながら「はい、キミ何やってきたの? 何できるの?」みたいな聞き方はしなくて、「僕らはこういうことをやりたいんだ」みたいなプレゼンテーションから入っていきます。それでいけば、仮想通貨とかモバイル系シェアリングエコノミーでしたっけ?
質問者D:顔認証でFace IDっていうのがあるんですけど、それをパッケージ化して展開していこうと思っています。あとは、仮想通貨のマッチングエンジンですね。事業者向けにモジュラーして売っていこうかなと。
井上:いや、本当にそれすごい良いじゃないですか。めっちゃ興味がありますよ。今朝、日経新聞に出てた中国企業だと300人が何億人の監視カメラの画像見て。
質問者D:それFace IDですね。うちの方で販売権を持ってます。
井上:おっ、ちょっと後で話しましょう(笑)。あれ、めちゃめちゃすごいですよね。日本の保育園って、保育士さんが子供のお昼寝の時に、どの子がどっちを向いて寝ているかというのを、5分ごとに20人分ぐらい全部チェックする「午睡チェック」というのをやるんですよ。紙のノートに線引いてAちゃん、Bちゃん、Cちゃんみたいに書いて、5分ごとですよ。
矢印でどっちの向きに向いて寝てるかを書いていく。要はうつ伏せで寝ちゃって、5分もすると呼吸がだめになって事故が起こる可能性があるので、それをチェックするんですけど。べつに顔認証というか動画で見続けていたら、今危険だってときに、ビーってワーニングがきてくれたら、その間別のことができますよね。
質問者D:ほとんど大人のサンプルでしかやってないので、赤ちゃんのをやるとなると、いろいろプログラミングしないといけないですね。
井上:いや、非常におもしろいと思います。そして最後、ネットワークというのはお答えしましたよね。ものすごく掻い摘んで言うと、「中央集権的な会社」をつくっていくのか、「分散型の会社」をつくっていくのかというので。けっこういろいろ考えた結果、分散型でいくことにしたんです。ゆくゆくはたぶん人はどこででも働けるし、けっこうパーソナルなAIエージェントが自分のことをサポートしてくれるようになるので。
じゃあ会社というものに属して、会社員でいる必然性っていったい何なんだっけという時代にだんだん変わっていくと思うので。僕らはなるべく会社をヒエラルキー構造の、大きなピラミッド構造にしていくのではなくて、分散して連邦国家型にして、みんなが内発的動機でやりたいことをやっている集合体にしようと。だから一気通貫しているのは、利他主義という主義主張は一緒なんだけども、それ以外にやっていることはみんなバラバラ。
それで経営のスタイルもバラバラ。ただしOBゾーンにいかないように、LBASというスコアリングシステムをつくっているという感じですね。そこまでいくと、もう正社員なのか契約なのか、フリーランスとのオープンイノベーション型なのか、そんなに大きな差はなくて。今会社をオープンイノベーションの場所にしていこうとしているので。
先程、見ていただいたようなファブリケーションスペースだとか、コワーキングスペースだとか、もう外と内の境目がなくなるように作り込んでいっているんですね。気付いたときには本社に誰もいなくなっているけど、いいんじゃないっていうふうにできるといいかなと。
会社ってすごく簡単に言えば、「この指止まれ!」って最初のファウンダーが言って、そこに共感した人たちが集まって、自分の能力をそこに集めながら、何か一緒にことをなすという同士だと思うんですよね。そのときに会社組織である必要があるかというと、別に明治維新を起こした志士たちって会社組織になってたわけではないので。それぞれ自由なんだけど、同じ志で集って、同じ方向にムーブメントを起こしていったということがあるのと、それをテクノロジーがきちんと補完してくれるような時代になってくるので。
「もう別に会社に属してなくてもいい」という人たちは増えていくんだろうなと。極論言ってますよ。すべての会社が15年以内になくなるとは言ってません。ただし、もしかしたら3割とか5割は、そっちに移行している可能性もあるんじゃないかなということになります。以上、全部回答させていただきました。ありがとうございました。
(会場拍手)
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