2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
未来型の組織をつくるEX(エンプロイーエクスペリエンス)という考え方(全1記事)
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ピョートル・フェリクス・グジバチ氏:今日はエンプロイー・エクスペリエンスの考え方についてお話しします。まずみなさんに2つのお願いがあります。好奇心を持っていただきたいんです。
とある研究によると、日本人の好奇心は世界で一番低い。それは、「新しいことを学ぶのが好き」という質問によるデータのエビデンスなんですけれども、今日はぜひぜひそのステレオタイプを破っていただきたいですね。
(スライドの猫の画像を指して)まずこちらの写真なんですが、これはGoogleのインフラの写真です。信じられない方もいらっしゃると思うんですけれども、そのまま使っているんですね。
広島大学の研究によると、人は子猫などの小さな動物を見るとパフォーマンスが高まる。なぜかというと、落ち着くんですね。常識を破った1つの事例なんですけれども、みなさんに組織開発の面でいかに常識を破るかというのを考えていただきたいんです。
あと、もう1つお願いなんですけど、集中していただきたいんですね。日本人はおそらく世界で一番高い集中力を持っていらっしゃる。落ち着きながら集中する、というのをおすすめします。あとでそれはなぜかをお話します。
さっきの話(前に登壇した各務太郎氏の講演)を聞いてこのスライドを付け加えました。ちょうど120年くらい前のものですが、(当時の)ドイツ人が2000年頃をどういうふうに描いていたのか、です。よく見れば、彼らの時代の世界がそのまま映っているんです。
フランス人も同じ時に(未来を)描いていた絵もあるんですけれども、ドイツ人に比べると、フランス人のほうがクリエイティビティに富んだ民族であるというのがわかっています。
僕は、この写真が気になっているんです。本をそのまま機械に入れて、その本から出た知恵はそのまま頭の中に入るんですよね。
この写真もちょっと気になります。
僕はかなり変なダイビング、鮫ダイビングとかが趣味なんですけど、100年前の人たちは何が海の中にあるかさっぱりわからなかったんですね。「こういう大きい動物がいるんじゃない?」と。要は、我々の今の知識と彼らの知識というのは完全に違う、ということは考えていただきたいし、気付いていただきたい。
あと、これは1960年のアメリカの映像なんですけれども、これもまさに同じですね。そのまま彼らの現実を映しているんです。つまり未来は予測できないということです。ただ、未来は発明できる。さっきの話にもありましたけれど、SFのように未来を想像していかに逆算で作っていくかが、おそらくみなさんのこれからの大きいミッションとなりますね。
少し自己紹介したいと思います。僕が日本に来たのは17年前です。すごく変なバックグラウンドを持っていて、行動経済学を使って消費行動の研究をやっていたんですね。若い女性のブランドの買い方についてです。
そのあと、いろいろあって、なんとそのまま組織開発に流されたんです。ただ、持ち込んだ2つの要素がすごく自分のキャリアに関連があります。広報でのコミュニケーションの考え方を、そのまま人事に持ち込んだんですね。もう1つは行動経済学。こちらもそのまま人事に持ち込みました。
広報というのは、いわゆるコミュニケーションですね。例えば経営者の考えと従業員の考えをつなげていくのは大切なことの1つですし、人事や組織開発もぜひコミュニケーションとして考えていただきたいんですね。
まず人事のキャリアですが、黒いロゴのモルガン・スタンレーとかわいいロゴのGoogleなんですけれども、実はこの会社には共通点があります。1つはスピードで、めちゃくちゃスピーディーです。もう1つは完全なグローバル企業であるということですね。どのオフィスに入っても同じような通路を使って、同じようなコミュニケーションがあって、同じような部屋のレイアウトがある完全にグローバルで動いているんです。
あともう1つは、日本の働きがいのある会社のランキングのTOPになった会社であるということです。今日はそこで学んだことを少しお話しします。私は、Googleではアジアパシフィックの組織開発と人材育成の統括をやり、グローバルなラーニングストラテジーや組織の学習の戦略を考えていたんですね。要は人事イノベーションです。いろんな実験をして、例えばチームのかたちやパフォーマンス評価のやり方、テクノロジーの使い方などをいかに利用して、ラーニングアジリティというコンセプト、学習の能力を高めていくかを仕事としてやっていました。
Googleさんに「シリコンバレーに移ってくれ」と言われたから、辞めてやったんですよ。シリコンバレーはもちろんお金もいっぱいあるんですけれども、もうそろそろ終わるんじゃないかと僕は思っています。いろんな国、例えばイスラエルとかアイルランドとかインドとかって、いろいろ見ているとすごく成長が早いんですね。追いかけてくるんじゃないかと思います。
あと、こういう顔でシリコンバレーの4万人に近い人がいるGoogleの本社に行くと、AIのような人間になってしまうんです。日本は世界で3番目のエコノミーですよね。そこでこういう顔で、しかもかなり辛口ということで、なんかおもしろいことをやれるかな、と思ったので独立しました。
まさにさっきのプレゼンテーションにもありました、未来創造事業というPronoia Group、Pronoiaというのは「先を見る」というギリシャ語なんですけど、Paranoiaの逆でもあるんですね。いろんな変な会社、Google、Amazon、Facebookとか、あと普通の日系企業である東京海上さんとか、LIXILさんとかサントリーさんとかにお世話になっています。
ど真ん中にはスタートアップ、要はこれからガンガン大きくなるだろう組織のサポートもやっていて、コンサルというより一緒に、BtoBとかBtoCだけではなくて、BwithBにBwithC、Bと共に、Cと共になど、パートナーシップを組んでいろんな変なことをやっています。
コンサルって、ちょっと悪い言い方なんですけどキャバクラに近いですね。肉体労働ですし、いかにお客様を喜ばせるかを考えてやらなきゃならない。それに、あまりサステイナブルではない。それをいかに自分で無くしていくかという考え方で、AIと行動経済学を使ってベンチャーも立ち上げています。
あと、変な本も書いています。読まれたことある方は……。
(会場挙手)
何名かいらっしゃる。ありがとうございます。ぜひ残りの方は僕の声を無視してパシャっと(撮影)やるか、amazonでご購入ください。良い本みたいです。とくにこれ(『あのGoogleが社内でやっている神速仕事術67』)は最近売れていて、儲かっているわけではないんですけれども、広がっています。
実はもうすでに6冊も本を書いています。来年(2018年)の2月か3月くらいに、まだ仮のタイトルなんですけれども『世界基準の「メンタル」を作る』と『ニュー エリート』の2冊を出します。先に名前を出した本は、今日の話にも一番関係あると思います。これからの世界はガンガンスピードが上がっていきますし、SFの考え方もガンガン必要になってくるので、軸がない、メンタルが強くない人はかなりブレてしまうと思うんです。だから、いかにブレないように生きていくかが大切です。
次に「ニューエリート」。、今日は高そうなスーツを着ている方は少ないんですけど、こういうパソコン(ステッカーがたくさん貼られたパソコンを指して)で、黒い画面に白い文字を、例えばスタバでTシャツ姿で打ってる人たちというのがこれからのエリートだと思うんですね。要は、今の世界の常識に従わない。常識を破っていくという人たちです。その本はそのマインドセットとスキルセットを紹介していく本です。
今日は挑発をしたいんですけど、こういう英語があります。
(スクリーン上に「ARE YOU READY TO GET FIRED?」の文字が表示される)
まずこの英語がわからない方。
(会場挙手)
わかっている方。
(会場挙手)
ちょっと少ないですね。残りの方は家に帰ったら英語の教科書を必死に探してみてください。英語を勉強し直しましょう。(スライドの)下にFacebookとTwitterのアカウントがあるのでフォローとか友達申請したい方はご遠慮なく。メッセージもいただければ必ず返しますけど、2週間くらいかかります(笑)。
この意味は「クビになる準備はできたのか」なんですけど、ここで、ぜひみなさん自分が毎日やっている日常業務を考えていただきたいんですね。その仕事はどれくらいの期間でAIに置き換えられるかというのをちょっと考えてみてほしいんです。例えば20年間、10年間、5年間、1年間。じゃあちょっと見てみよう。20年間と思っている方。
(会場挙手)
10年間と思っている方。
(会場挙手)
5年間と思っている方。
(会場挙手)
1年間と思っている方。
(会場挙手)
1年間と思っている方はおそらく一番マシだと思います。僕はNDA(秘密保持契約)があるのでなんとも言えないんですけども、Googleで見たものは恐ろしい。ほとんどの仕事はおそらくもう自動化できるということです。
ただ、みなさんの会社のIT部門がちょっと時代遅れというのが1つと、国の法律も時代遅れであることが挙げられます。経産省はがんばっていろいろ変えようとしているんですけれども、例えばいきなり仕事をAIに置き換えてみなさんをクビにすれば、もう国が潰れるから危ないという点もあります。
ここからは1つの例を通じてみなさんにお話したいと思います。Airbnbはみんな知っているでしょうからあまり紹介しなくてもいいと思うんですけど。
ちょっとデータが古いんですが、非常に小さなスタートアップだったAirbnbは、2~3年くらい前にホテル業界で一番大きい会社になったんですね。市場価値のレベルで、ハイアットの3倍です。
ベッドすら1台も持っていない会社で、良い面と悪い面もあっていろんな議論ができるんですけれども、ただ恐ろしいですね。1台のベッドも持っていない会社が、ハイアットの市場価値を3倍も上回っているんです。それがなぜかというお話を少ししたいです。
Airbnbは、ユニコーンと呼ばれる企業です。要は10億ドルに育った未上場のスタートアップですね。世界中におそらく233社あります。一番多いのはアメリカで、その次が中国、次にインド。いろんな国にあるんですけれども、日本には1社しかありません。メルカリです。使っている方いらっしゃいますか?
(会場挙手)
女性の方が多い……いや、男性の方も多いですね。ぜひ使ってください、良い会社です。僕もお世話になっております。
彼らには5つの共通点があります。まず、一見愚かなアイディアです。彼らが何をやっているかというと、SFですね。我々がまだ見ていない世界をそのまま作ってくれているんです。その中で新しい行動パターンを作るんですね。要は、我々ができると思わなかったことをそのまま行動にもたらすんです。そう、Facebookみたいに。
僕は10年前、Facebook(アカウント)を持っていませんでした。わけがわからなかったんですね。なぜ自分の写真や個人情報をわざわざネットにアップするのかわからなかったんです。そのときはバカだったと思うんですね。Facebookが今何をやっている会社かというと、世界で一番大きいメディアカンパニーですね。SNSではありません。
彼らが実際に競争しているのは、例えばテレビ局とかラジオ局とか新聞社です。彼らは実際、他のメディアカンパニーを潰していくんですね。Googleさんも一緒です。なんでそれができるのかというと、競争が激しい大きなマーケットに膨大な利用者を持って入り込むからなんです。なぜ膨大な数の利用者を持っているのかというと、それはいきなりマネタイズしないからなんですね。まずは無料やプレミアムで提供していくんです。
最後の特徴は、経験がない創立者であるということ。ほとんどの創立者は、他業界やビジネスの経験がありません。なので、ぜひみなさんに組織開発の面でそれを考えていただきたいんです。一見愚かなエリアをビジネスモデルに応用し、そのビジネスモデルの中でいかに人材や組織を開発をしていくかを逆算して考えていただきたいです。
こういう会社は山ほどあります。例えばGoogle VenturesやVALVE、金融業界にゲーム業界、それにTeslaといったメーカーもいっぱい出てるんです。だからみなさんと同じ業界の会社は、どこかもうあるんですね。ただ小さすぎてまだ見えないです。ここで指数関数的な変化に気付いていただきたいんですね。大きいメガトレンドは進んでいます。
テクノロジーの進化やマーケットのグローバル化などよって、私たちが想像していなかった変化がガンガン登場してきます。最後には成功の定義を予測すること自体がもうできなくなるんです。だから未来の予測はできないんですけど、創ること、創造はできるはずですね。
もうちょっとテクノロジーについて話してから、組織開発に戻りたいと思います。まず、デジタル化が猛スピードで進んでいます。モノがデータに移行しているんですね。データになれば、指数関数的な変化が起こります。データは見えないんですね。
率直に言うと、AmazonさんとかGoogleさんは世界にどのくらいのデータがあるかというのはさっぱりわからないんですね、彼らでさえ。僕らにもわからないんです。
データがどこにあって、どうやってアクセスすれば成功できるのかわからなくなってきているから、そこにアクセスしてしまえば破壊ができるんです。例えば、既存の業界を1日で破ることができる。それで固定資産を持たないビジネスモデルの拡大が進んでいるんですね。さっきのAirbnbの話です。
あとは金銭にこだわらない無料のビジネスモデルがガンガン増えているし、民主化が進んでいます。誰でもなんでもできるようになってきているので、大手企業が必要なくなってきている。
昨日ファッションテックのイベントで必要な大手企業について話したんですが、インフラを作っているような大手企業は必要だと思うんです。例えばエネルギーとか、建築、建設とか。大きいインフラを作っていない大手企業って、もう必要じゃないんですよ。
例えばファッションのサービスや、商社銀行とかも。まあ銀行はまだ必要だと思うんですけれど、ただ、ガンガン必要じゃなくなってくるかもしれないです。
ここで少しテクノロジーを見ていただきたいんですけど、この10年間でどれくらい進化しているかについてぜひ考えていただきたいんですね。例えば、産業用のロボットはコストパーで23倍の向上がありました。ドローンは142倍の向上です。3Dセンサーは5年で250倍、3Dプリンターは400倍の向上です。最後、DNAシークエンシングは10,000倍です。
考えてみてください。我々は本当に気付かないんです。何ができるようになってきているかということを想像もできないんですね。おそらく明日明後日に、まったく違うテクノロジーが出てくるかもしれませんし、さっきの話(各務太郎氏の講演)にあったように、女性・男性がいらなくなるかもしれない。それは正しいと思うんですね。ほとんどの男はいらないと思います。
(会場笑)
エキスパートも知っているかっていうと、知らないんですね。ここにマッキンゼーの方はいらっしゃいます? いないですね。
(スライドを指して)これはマッキンゼーのデータなんですけれども、ケータイ市場がどれくらい大きくなるかという予測です。例えば2年ごとに見ると16パーセント、14パーセント、12パーセント、10パーセントと成長するんですけれども、実際に見れば100パーセントだったんですね。全部2年ごとに100パーセントの成長です。
何を見逃しているのかというと、いろいろ見逃しています。例えばこの場合だと、(見逃したのは)スティーブ・ジョブズですね。大きいステージに出て、iPhoneを持ち込んだんですね。ちょっと(自分と顔が)似てますね(笑)。
次に何を見逃したかというと、中国、インド、アフリカを見逃していたんです。固定電話が無い国を見逃した。何やってるんだろうマッキンゼーさん。ぜひマッキンゼーを使っている会社でお仕事をしている方はぜひ社長にお話してください。
それなら何をすればいいのかということについてをお話ししたいんですが、まず情報の収集と分析は必須です。テクノロジーを活かさないと働く意味が無い、というのが1つの現実です。ただ、我々が人間として使っている直感をガンガン活かしていくということもやっぱり必要です。
今の段階で、人間にしかできないことをいかにガンガン活かすか。要はイマジネーションなどのソフトスキルですね。それによって新しいインサイトやひらめきを創っていくんですね。SFの世界を創っていくということが、今のホワイトカラーワーカーの大事な役割です。
なぜそれが大事か。指数関数的な変化って、ほとんど見えない変化でしたよね。見えるようになってくるともう遅い。終わりです。みなさんの業界でも、なにか変な変化が見えてきたという時にはもう遅い、ということは気付いていただきたいですね。
やっと働き方の話です。(スライドの)下からですが、まずwork1.0というのは肉体労働のことです。肉体労働には勤勉さと服従が求められます。その次、ナレッジエコノミーは専門性です。ただ、赤い線から下はもうほとんど自動化できて、できなくてもアウトソーシングやクラウドソーシングできるんですね。
だから、さっきの(各務氏の)プレゼンテーションですごく共感していたのは、これからの仕事というのはプレイに近くなるということですね。遊びに近い、クリエイションですよ。それに何が必要かというと、率先と創造力と情熱です。
ここで、日本はどうかについて少し考えていただきたいです。ご存知かとは思いますが、日本は働きがいが一番低いというデータも出ているんです。イオンの調査によると、日本人の38パーセントしか働きがいを感じていない。
ここでちょっと聞いてみましょう、明日の朝すごく出社したい、すごく会社に行きたいという方、手を挙げていただいていいですか?
(会場挙手)
1、2、3、4……まあ残りはたぶん行きたくないというあれですね(笑)。このデータは正しくないと思いますね。僕はね、10パーセントしか働きがいを感じていないと思ってます。
次に労働環境がひどいことにぜひ気付いていただきたい。休めないというのが1つ、あと男女の差がいまだに恐ろしいですね。いろんなデータもありますけれども、例えば給料のレベルだと男女で40パーセントも差があるみたいです。ここにいらっしゃる女性の方は、あとで会社に戻ってぜひ人事に文句を言ってください。
次は、日本人の生産性が伝説的に低いと。いろんな理論もあるんですけども、なんで低いかというと、例えば「おもてなし」はサービス業のなかで良い意味で伝統の文化で、時間をかけてお客様と接することですね。
ただサービス業界を見ると、問題はおもてなしではないんですね。ビジネスモデルの問題です。働き方改革というのは本当に馬鹿げた考え方だと思うんです。経営改革をしないと、「みなさん18時に帰ってください、20時に電気消します」と言うことに何の意味もないんですよ。
日本の経営の、大手企業病の話を1つしてから組織の話に戻りたいと思います。まずピラミッド構造の会社が多いです。ピラミッドというのはお墓ですよね。下に死んでる骨状態の現場の人たちがいらっしゃるんですけども、その腐ってる体の臭いが外に出ないように分厚い壁がありますよ。バレたらみなさん謝罪して、何もしないんですね。謝罪という言葉はぜひ日本語から消していただきたいです。何の意味もない。
ほとんどの会社は商品重視かサービス重視。ユーザー無視ですね。さっきのプレゼンテーションであったような、未来を創造していかに未来を創っていくという考え方ではなくて、今あるものが大好き、自分たちの商品が大好き、ということですね。
みなさんテレビは持っていますね。ぜひ自分たちのテレビのリモコンを思い出してください。ここで全部のボタン、全部の機能を完璧に使いこなしている方は手を挙げてください。
いないんですよね。ほとんどいないんです。(以前に)1人いたんですけど、10歳の男の子でした(笑)。1回手を挙げてくれました。おそらく子どもは使いこなせるんですけど、大人はもうついていけていないんです。ガンガン新しいボタンを付け加えるというのは日本のメーカーの考え方ですね。Apple TVを見れば、5つくらいしかないんです。なぜかというと、それしか必要がないんですよ。
1回、とあるメーカーの方が講演会で来られて「ピョートルさん、言っていることはわかるんですけど、その競争から抜けられない状態です」とおっしゃいました。「何言ってるんですか?」「だって、他のメーカーも似たようなリモコン作っているから、我々はこういうリモコンを作らなければならないんです」「え?」っていうことがありました。ユーザーのことをぜんぜん考えていない。他社のことを考えているんですね。
次、学習するというのも必要なんですけれども、Un-Learn、学びほぐすという考え方のほうが必要ですね。要は常識を手放す。率直に言うと、今の我々の常識というのは9割くらいはもう時代遅れの常識です。これからというか今の世界で、「newというのは今」ということを考えていただきたい。
ものづくりとかサービスのみというのはもう終わりですね。仕組みづくり、プラットフォームがないとダメです。それは例えばオンラインのプラットフォームかオフラインのプラットフォームか、コミュニティ作りか、テクノロジーかなどなんでもいいんですけど。ぜひ、仕組みやプラットフォームに力を入れましょう。これは完全に経営改革の話ですね。働き方改革ではないですね。
あと、強欲な考え方ではなくて、利他主義の考え方が今の常識ですね。要は世界のため、他人のため、平和のため、ということですね。よく見ればGoogleもFacebookもAirbnbも、ああいう会社は全部、非常に社会的貢献に近いビジョンで動いているんです。それでも勝ってるんです。真逆にすると、儲かりたいからやるということにすれば、人気になれないんですね。
次は、クローズドな組織ではなくて、オープンな組織ですね。要は枠じゃなくて軸です。枠とか境界線は壁ではなくて、強い重力のある軸の組織しか生き残らないんです。この会社のために働きたい、この会社のために物を買いたいとか。例えばGoogleのクラウドソーシングというのは非常に有名ですね。
オープンソースでコアソフトを外に出して、それを買いたいエンジニアたちが好きに買えるんです。ぜひ考えていただきたいのは、適切な数字はないんですけれども、おそらく世界で毎日何百万人ものエンジニアがタダで仕事しているということです。
Googleの社員ではないんです。タダで、オープンソースでプログラミングをしているんです。みなさんの会社のために無料で働いている方々は何名くらいいらっしゃいますか? 自分の会社のために無料で貢献している方々を想像してみてください。おそらくいないんですよね、残念ながら。
さっきも話したんですけれども、トップダウンのKPIではなく、経営者は大きいビジョンを掲げて、利他主義のビジョンで動き、ボトムアップでみなさんがゴールや自分の目標を考えていくということ。やりたいことに集中していく。あとは、エンプロイー・エクスペリエンスです。やっとたどり着いたんですけれども、ピラミッドの社畜優遇ではなくて、優秀な方が好きに働けるような環境作りがマストですね。
あと、マネジメントの考え方というのは、計画主義じゃなくて学習主義ですね。名前はあまりピンとこないんですけど半導体を作っていた山梨県のある会社が、自分たちのビジネスを100パーセントワイナリーに変えたんですね。来週の木曜日にそのワイナリーを見学しに行くんですけれども、半導体を作っていた科学者たちがワインを作っているんです。それはまさに学習主義ですね。
次にマネジメントの考え方で、エンプロイー・エクスペリエンス、要は従業員の体験を良くするか悪くするかというのは、マネージャー次第ですね。
みなさんよく考えてみてください。会社が一番良い時と一番悪い時、それはマネージャーのおかげかマネージャーのせいだと思っていいと思うんです。あと、プレイングマネージャーなんてありえないです。ポートフォリオマネージャー、要はマネージャーは問題解決をしていく仕事をするんです。
その問題解決を、人を通じてなのか、テクノロジーを通じてなのか、もしくはその他のリソースを通じてなのかは別として、問題をちゃんと決めて、プロジェクトベースで解決していくというのが今の仕事ですね。
それからこれも覚えておいていただきたいんですけれども、(スライドを指して)ぜひ右と左を見て自分のマネージャーを想像してみてください。鵜飼いのようなマネジメントではなくて羊飼い、要は従業員がそれぞれ好きに働ける、ラクに働けるという場作りですね。
ぜひあとで「プロジェクト・オキシジェン」と検索をしていただきたいんですけれども、これはマネジメントの1つの手本です。Googleが2年間かけて社内で研究をして、「実際に良いマネージャーは何をやっているのか」というエビデンスをもたらした研究です。マネジメントというのはエンプロイー・エクスペリエンスの土台だということをぜひ考えていただきたいです。
あと、組織のレベルでミッションとビジョンを考えていただきたいんですね。さっきも言ったんですけれども、ミッションは、forではなくてwithと考えたほうがいいんです。お客様のためではなくて、お客様と共に、顧客と共に。その顧客がBなのかCなのかは別として、一緒にパートナーシップを組むという考え方でないと、働き方改革やエンプロイー・エクスペリエンスができないんですよ。
考えてみてください。今広告業界で一番大きい問題になっているのは「お客様は神様」という考え方ですね。いろんなメディアに取り上げられたとある広告代理店ですけれども、そこでもやっぱりお客様は神様。コンサル業界も一緒ですね。
例えば非常に優秀な女性の友人がいるんですけれども、さっきすごく説教したんです。彼女が東京ではないところでとあるお客様のプロジェクトをやっていて、出張で行っているし泊まっているから、週末も時々そこに泊まっているみたいなんですね。
それで、土曜日にお客様から電話がかかってきたんです。ちなみに彼女は、「コンサルはお客様のためになんでもやる」という定義を持っているんですね。土曜日の真夜中に電話がかかってきて、今キャバクラにいるから来いと言われた。で、行ったわけです。
女性が土曜日の真夜中にキャバクラに行くという。それもお客様に価値を提供していくためだと。それってもう僕の考えでは信じられないですね。
これは1つの業界の例なんですけれども、ぜひ右と左を見てどっちが共感できるかということを考えていただきたいです。
adidasさんはモノを作ってスポーツをやりたい人たちのために提供していく。NIKEは違うんです。とくに(スライドの)下の部分を見ていただきたいんですけれども、「身体さえあれば、誰もがアスリート」。どっちに共感できますか? じゃあちょっと見てみましょう。左(に共感する人)。
(会場挙手なし)
右(に共感する人)。
(会場挙手)
そうですよね、ぜひNIKEを買ってください。僕はコミッションはもらってないです。
ここで一旦終わります。このあとの対談でインスピレーションのあるスライドがあればお見せします。今はスピードが必須ですね。
働き方の面ではなくて、ビジネスモデルのレベルでスピードを出して、社員がラクに働けるような環境を作るというのは、これからのみなさんの課題です。それから、創造性。創る力というのはこれから大切なことです。
ありがとうございます。
(会場拍手)
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