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パネルディスカッション「経営者が目指す魅力的な労働環境とは?」(全5記事)

通る提案、通らない提案の分かれ目は? 株式会社おかん代表が語る、トップの判断ポイント

2018年2月28日に、株式会社SmartHRのオフィスにて、「SmartHRとおかんのCEOが語る! 急成長する企業が働く環境に投資する理由」が開催されました。株式会社おかん代表の沢木氏と株式会社SmartHR代表の宮田氏によるパネルディスカッションが行われました。本パートでは、斬新な社内制度を取り入れている2社の代表が、トップや上司に提案を通す際のポイントについて答えました。

やるかやらないかを判断する基準や方法

今西良光氏(以下、今西):(いただいたご質問が)たくさんありますので、どんどんいきましょうか。「働く環境に投資をする際に、やるかやらないかを判断する基準とか方法はありますか」というおもしろいご質問なんですが。これはなにかあります? 僕とかもいろいろこういうことをやりたいなあとか、あるんですけど。

だいたいの企業でありがちなのが、ROI(Return On Investment:投資利益率)で切る。「これをやったときにどうなるんだっけ」みたいなことを思い浮かべるけれども、「ROIに算定できねえな」というような話のとき、お二人はどういう判断をされているのか。

宮田昇始氏(以下、宮田):ビジネスに得があるものはやり、そうじゃないものはただのバラ撒きになるんでやらない、みたいな感じです。例えば、うちでオフィスおかんを使っているんですけれども、入れたときは2つ前のオフィスだったんですよね。そこはマンションの6階ぐらいだったんですが、エレベーターが1個しかなくて、すごく混んでいたんですよ。近くのコンビニにご飯を買いに行くにも、往復30分弱かかるようなところだったんで、すごく時間がもったいないなあと思って。

食べ物にこだわりがないと、コンビニにわざわざ行くよりもオフィスおかんで外に出ずに食べられるほうがいいんじゃないかということで入れたり。「そういう観点で導入されたのはけっこう珍しいです」と言われたりして、「あ、そうなんだ」って思ったんですけど。

「ビールを飲んでいいですよ」とか、部活動制度で「会社のメンバーと遊んでくれたら1人につき1,500円あげます」とかも、会社に得があるからやっています。逆に得がないようなバラ撒きみたいなことは、今やることじゃないなと思っています。まだベンチャーキャピタルさんとかで投資を受けながらやって、赤字でビジネスを回そうというフェーズの会社ですので。線引きとしてはそういう感じですかね。

今西:ありがとうございます。沢木さんはなにかありますか。

定量的なサーベイを独自でつくっている

沢木恵太氏(以下、沢木):そうですね。お金がかからない施策は多い気がするので、意外とROIの議論になりづらくて。オフィス移転とかはまた別かもしれませんが、先ほどご紹介したプロットしていたものも、だいたいお金がかからないようなものなんです。

そうすると、僕が云々ではなく、メンバーがいろいろと企画して、褒める会も(僕が)知らない間に始まっていたので。そんなレベルでどんどん試しては変わっていった感じです。

ただ、お金がかかるものに関しては、確かに効果は考えなきゃいけないですけど、なかなかROIの検証の仕方が難しいので、現時点では意思決定の際に、さっきお話した心理的安全や身体的安全に影響するかを意識をしながらやっています。「ただの娯楽じゃないか」みたいなところは見ています。

あと、社内でトライアルし始めているのは、もう少し定量的なサーベイをつくることです。それを従業員に対して行って、生産性にどう影響するか、費用換算できるようなことを、いろんな論文をあさりながら社内で独自にやっているんですね。

ここにこれだけ取り組むとこのスコア改善ができる可能性があるし、そうすると生産性がこれだけ上がりそうだから、人件費でこれだけ効果ありそうだよね、というのをやっています。まだ試し始めたレベルなんですけれども。

今西:それは、似たような事例の成功事例とか文献とかを洗ってきて。

沢木:そうですね。アメリカとかは先進的なので、そういうものを探してきては社内で試してみると。

今西:そういうことですね。

沢木:だから、それが逆に悩みです。定量的に効果をどう示すかは僕らの課題があるので。僕らもちょっと試してみる。

今西:ちなみに、こういう施策をやるんだという意思決定って、どうされているんでしょうか。例えば、ファジーなものであればあるほど、最終的には社長の意思決定みたいな話になるのかもしれないんですが。

お二人の話を聞いていて、社内で自動的に施策が走っていたことがよくおありなんだなと思いました。そこらへんの社内の取り組みを決めるときはどうしていらっしゃるんですか。

チームの中の決めごとはチームでやって問題ない

沢木:うちはプロジェクト的にさっきの係とかが走っているので、係で勝手に決まっている感じですよね。だから、飲める会とかメンバー会という生徒会的なところが主導で決めていたり。緑をこういふうに配置しようというのは、生き物係が主導でやったりとか。

一応、「ちょっとそれ、ださくない?」みたいなものはあるかもしれないんですけど、いったん生き物係がどんどんやっていたりとか。そこはもうあえて権限移譲する体制になっている感じですね。

今西:生き物に関しては、生き物係のリーダーが絶対なんですね。

沢木:そうです。リーダーというか、そのメンバーですね。

今西:今西:沢木さんはそこに対して、「この花はなんか、いまいちうちのブランディング上違うんじゃねえか」とかも言わない。

沢木:はい。我慢してる。

今西:(笑)。なるほど。ありがとうございます。宮田さんはいかがですか。

宮田:チームの中の決めごととかは勝手にチームでやってオッケーとしています。会社全体に関わることは、「経営会議」という決める会議と、「モム(議題を揉む)会議」という発散させる会議があるんですけど、どっちかに持ってきてもらう感じです。提案する人がいたら、「いいじゃん、それ持ってきてよ」みたいな感じで持ってきてもらえます。

だいたいその場で「やるか、やらないか」を決めるんですけど、だいたい「やってみようか」となるほうが多いです。「合わなかったら捨てればいいや」という考え方がベースにあるので、効果があるのかどうかを悩むよりもまずやってみて、良さそうだったら続ける、ダメそうだったらそれでいいかなと思ってやっています。なので、あんまり定量化とかは考えずにやっていますね。

今西:なるほど。ありがとうございます。ちょっと逆の立場でのご質問をいただいています。今は、経営者の視点で語っていただきましたが、逆に「上司にオフィスへの投資やEX(Employee Experience )投資をすることを説得するにはどうすればいいでしょうか」。こうやって提案してくれたら意思決定するよ、というものがあれば教えてください。

これはちょっと難しいかもしれないんですが。例えば宮田さんが「こうやって話をあげてくれたら」と言った瞬間に(社員の)みんなが聞いていて、明日あたりからどんどん投資案件が来ちゃうかもしれないですけれども。どうしたらいいとかってあります?

「絶対盛り上がるんでこうしましょう」と言われたらやる

宮田:昨日か一昨日に、実際にメンバーとした話をします。今、執務スペースとこっちのイベントスペースって照明が同じなんですね。全部蛍光灯みたいな感じなんですよ。うちの会社は、月に1回の飲み会があるんですが、四半期に1回は外でやって、それ以外は基本的に社内でやっています。

蛍光灯の下で飲むのって盛り上がりに欠けるんで、ちょっと白熱灯みたいなやつを、いつの間にか勝手に見積もりを取ってきて「何万円です」みたいな話があったり。

今西:けっこう割れるし。

宮田:思っていたよりも高かったんですよ。「そんな高いの?」みたいな感じだったんですけど。「やっていいですか」と言われて、「えええ」って、「けっこう高くない?」みたいな感じちょっと及び腰になってしまいました。

月1回の飲み会を締め会というんですけど、「締め会が130%盛り上がりますよ」と。なんか自信満々に「絶対盛り上がるんでこうしましょう」と言われると提案を受け入れやすいですね。従業員側が自信満々に「絶対大丈夫」と言っていると、こっちもオッケーと言いやすいということだと思いますね。

今西:そこに大丈夫の度合いの確度はとくには求めない。

宮田:とくに求めないです。

今西:それは素晴らしい意思決定ですね。なるほど。ちょっと反省しました。僕は、けっこう「それって、どういう理由で言ってるの」みたいなことを言っちゃうんで。やっぱり施策も行われづらくなっちゃうので、それはすごく弊社としても(取り入れていきたいです)。

宮田:そのメンバーに「CFOに交渉するときにはこういう言い方したほうがいいよ」というのを伝えた上で、こうって言ったら、まったく同じ言い方をそのままCFOにしてちょっと怒られました(笑)。

今西:なるほど。今、ちょっと視点が一つ上がったと思うんですが、誰かを説得するときはどう言うかみたいな話もあるのかなあと思いました。例えばCFOであれば、やっぱりお金じゃないですか。なので、コスト的にどうだという話をするとか。宮田さんであればビジョンとか。こうしたほうがいいということはあります?

同じ施策でも誰が言うかで変わる

宮田:すいません。そんな真面目な話ではなくて(笑)。明かりによって(飲み会の)盛り上がりが違うよねみたいな例えを、なにかのお店となにかに例えていうと。ちょっともう、うろ覚えです。「こういう言い方をするとわかりやすいんじゃない?」という雑なアドバイスをした話でした。

今西:いえいえ、失礼しました。ありがとうございます。沢木さん、いかがですか。

沢木:そうですね。我々のサービスもどちらかというと、総務の方から上司の方に提案していただくようなものなので、我々もいろんなご相談をいただくんですけど。上司の方のキャラによって違うんですよね。

数字を気にされる方は気にしますし。でも、ぶっちゃけ言うと、数字がどれだけ正確かは重要ではなくて。僕が(提案を)受けるときも、ちゃんとロジックをつくってきたかがきっと大事なんですよね。

要するにそこまで組んであれば、それだけその人が考えて本気だということが伝わりますので。見ていて、そのあたりが分かれ目なんじゃないかなと感じていたりします。もちろん、それが数字じゃなくて、エモーショナルに熱量でいけばいい。トップであれば一番簡単で、さっきみたいに「いやもう絶対盛り上がるからやりましょうよ」で通る気がします。

自社で考えた時に、自分がなにで判断するかも、同じ施策でも誰が言うかでけっこう違うなあと思っているんですよね。もちろん、公平に見ているんですけど、自信満々に言う人の施策と、同じ施策だけど、ちょっと探り探りで無理でもいいかなってレベル感で言っているのは、いろんな人を見ているのでさすがにわかります。

それでけっこう判断していますね。「お前がそこまで強く言うんだったらいいんじゃないかな」という感覚は持っています。そうすると、かなりロジカルじゃないんですけど、結局その人がどれだけやりたいかという熱量だと思うんです。

我々のサービスを導入する企業さんも担当者さんも、結局導入が進んでいるのは、ロジカルかどうかではなくて、担当者の方の熱量が圧倒的に強いんですよ。だから、そこ(がカギのよう)な気はしてます。

今西:なるほど。これは意外ですね。共通していたのは自信とか熱量。

沢木:どこまで通じるかわかんないですけれど。

熱量や自信を持ってほしい

今西:(施策や提案を)あげられた方は、ぜひ熱量や自信を持って。プロセスとか、ただ単にペッて言ってくるんじゃなくて、それをどう考えていたのかというようなことも含めて、その熱量を見ているよと、視点で見てますよということですね。

沢木:そうですね。

今西:なるほど。ありがとうございます。せっかくの機会なのでこれだけは聞いておきたいみたいなご質問があったら、それを優先的に聞いていきたいなあと思います。もしそういう方がいらっしゃれば、この場で手を挙げていただければと思うんですが、いらっしゃいますか? なかったらこのsli.doでそのまま進めますけど。

宮田:僕も質問を見てみます。

今西:はい。あと15分ですので、けっこういけますね。1回、シンプルにオフィスのハード系の質問をいってみますね。「オフィスで一番こだわった点と社員に影響した仕組みはなんでしょう」。ちょっとかぶっちゃうかもしれないんですが、もし言っていないものもあれば、これはすげえ評判がよかったなあとか。宮田さんは今年たぶん(新しいオフィスに)移転されてきて。

宮田:いや、まだ2ヶ月たったぐらいです。

今西:ちょっと野村(不動産)さんの前で言いづらいかもしれないですが、(新しいオフィスに)入ってきてみての感想を。いや、逆に言いやすいですか。

宮田:オープンな会社なので大丈夫です。

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