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パネルディスカッション「経営者が目指す魅力的な労働環境とは?」(全5記事)

18時半以降は仕事が終わればアルコールOK SmartHRが社内にバーカウンターを置くワケ

2018年2月28日に、株式会社SmartHRのオフィスにて、「SmartHRとおかんのCEOが語る! 急成長する企業が働く環境に投資する理由」が開催されました。本パートでは、株式会社おかん代表の沢木氏と株式会社SmartHR代表の宮田氏によるパネルディスカッションが行われ、社内をオープンな環境にすることでもたらされるさまざまなメリットについて意見を交わしました。

オフィスにバーカウンターを置く効果

今西良光氏(以下、今西):ちなみに、(採用の際は)どういうふうに育休明けの方を見つけてくるんですか。

沢木恵太氏(以下、沢木):wantedlyのような求人媒体から直接応募いただきます。ただ、そういうメンバーが働いていることをけっこう広く発信していたりします。少し前だと、例えば「小1の壁って大変ですよね」と言って。実は保育園に入るよりも、小学校1年生に上がった時のほうが働けなくなってしまうとか。

そういったところに対して、社内のメンバーがどう取り組んでいるかという事例をメディアなどで共有させていただいたり。そんな地道な活動をしながら、「あ、おかんってそういう会社なんだな」というイメージを持っていただいたり。あとは、育休が明ける前の段階から、インターンとまでは言わないんですけれども、働きませんかという見せ方をしたりというのもあったりしましたね。

今西:そういうことですね。

沢木:はい。

今西:ありがとうございます。宮田さんはいかがですか。

宮田昇始氏(以下、宮田):ものにもよりけりなんですけど、例えばビール飲み放題ですみたいなやつ(社内制度)は、明確なきっかけがありました。もともと私は、会社にバーカウンターがあるような会社は潰れるだろうと思っていたタイプなんですよね。

でも、今の2つ前のオフィスが、六本木一丁目のちょっと広めのマンションみたいな場所だったんですよね。30坪ぐらいで20人入れるかどうかみたいな大きさだったんですが、そこは居抜きで入れまして。前の会社さんのおしゃれな内装がそのままだったんです。

たまたまバーカウンターが置いてあったんですよね。バーカウンターの横に大きな冷蔵庫が置いてあったんですよ。その冷蔵庫も居抜きでもらって、そのまま使いました。その中に、移転祝いでもらったビールとかをたくさん入れておいたんですよね。とくに当時は人数も少なくて、ルールとかもなにもなかったんですが。

夕方ぐらいになって、仕事が終わったメンバーがバーカウンターのとこでビールを開けると、みんな寄ってきてまた飲み始めて、すごく明るい話がかわされるようなことがあったんですよ。

今西:なるほど。

宮田:「なんだ、このバーカウンターってこういう効果があるのか」というのがあって、それから会社にお酒を常備しておいて、いつでも飲んでいいようにしました。ちなみに、1つ前のオフィスでも、同じような感じでバーカウンターをつくって冷蔵庫を置いていたんですけど、その時に冷蔵庫をちょっと奥まった給湯室に置いていたら、飲む頻度が激減して。

今西:なるほど。おもしろいですね。

18時半以降で仕事が終わったらアルコールOK

宮田:どうしようかと思って。この時期に、あんな感じのガラス張りの冷蔵庫をわざわざ買って、バーカウンターの近くに置いて。それでみんなが飲む頻度が増えました。これはすごくわかりやすくて、インプレッションの効果と手に取りやすい効果と、みんながそこで飲んでいると参加したくなるような効果があるんだなあと思ったのがきっかけでしたね。

今西:勤務時間中は飲んだらダメなんですか。

宮田:ダメです。18時半以降で、仕事が終わった人だけオッケーみたいな感じです。

沢木:この前、うちでプレミアムフライデーみたいなノリで、金曜日の夜に業務時間内でも飲めるようにしてみたんですけど、けっこう盛り上がりました。

宮田:個人情報とか預かっているところなので。

(一同笑)

沢木:そうですね。

宮田:手元が滑ったとか怖いな。

沢木:仕事をしながらではないです。

宮田:そうですね。

沢木:どちらかというと、ディスカッションする時間にあてるような感じでやっていました。

宮田:そういうのはありますね。夜に事務系の仕事が終わった後に、20時ぐらいから面接が入ったりすることがあるんですけど、求職者の方と腹を割って話しましょうみたいな時には、「ちょっとどうですか」みたいな感じで(飲み物を)出すのに(バーを)使ったんですけど。

今西:応募してきた人に出すんですか。

宮田:そうですね。そういうのがたまにあったりしますね。

今西:先ほど、ハード的なものも置く場所の工夫でだいぶ変わるというお話がありましたけれど。似たようなお話で、ちょうど今日、野村(不動産)さんもこのオフィス環境の話をされましたので、オフィスづくり的なところで。こだわりも含めていただいてけっこうです。

今みたいに、こういうことをやってみたら、ものすごくコミュニケーションが活性化されたとか、生産性が上がるなどの成果が見えた話があれば、いろいろ教えていただきたいなと思います。

ガラス張りの会議室はほぼフルオープンの状態

宮田:組織の活性化でいうと、マンパワーをかけて活性化しようみたいなのがあると思うんですね。もっと交流してとか、もっと情報共有してみたいなことをやっても、マンパワーだと、やっぱり言われたその場だけしかアクションを起こさないですし、言うほうも言われるほうも、たぶん嫌な気持ちになるんですよね。

だから、そういうのがなるべく起きずに、仕組み上で勝手に交流が取れるとか、勝手にオープンになっていくようなことをすごく意識しています。このでっかいのがバーカウンターなんですけど、ふだんは真ん中らへんに置いてあるんですよね。目立つところにしています。なので、自然と人が集まりやすくなる。

あと、(ここから)見えるかな。あそこのファミレス席の、一番こっち側に栓抜きとかを付けたりしているんですよね。そこでシュコンとやると、大きい音とかしたりするんですよ。すると、やっぱりみんな気になってチラチラ見始めてくれるみたいなのがありますし。

あと、会議室をものすごくガラス張りにしてて、基本的に閉めるのが禁止なんですよ。閉めていいのは個人面談の時と、あと具体的な給料に関する話をする時、この2つだけです。株主とのミーティングも全部オープンでやっています。そういう仕組みのところでオープンの文化が根付くようにとか、交流が自然と生まれるように、仕組みでなんとかするのがすごく意識しているところです。

今西:フルオープンみたいなものも、一見怖そうだなというか。僕なんかだと聞かれちゃまずい話とかが怖いなって思っちゃうんですが、そこらへんはうまくマークしてるんですか。

宮田:そうですね。あと、さっき言った経営のコンセプトみたいなものは、先輩経営者から教えてもらったんですよ。確かにそうだなと思って。ただ、それを実現するために情報をオープンするのは必要不可欠だなあと思って、今もやり続けています。たまたま最初の頃からずっとオープンにしていたんですよね。

今西:なるほど。

社内をオープンにする方が“説明コスト”を減らせる

宮田:初期のオフィスが、会議室などが区切られていない大きめのワンルームマンションで、会議室の話がダダ漏れだったので、情報がオープンになることが当たり前でした。

あとは私の性格もあると思います。あんまりクローズにするのが得意じゃないタイプなので、「オープンなほうが説明コストが少なくて楽でいいよね〜」ぐらいの気持ちでやっています。

今西:そういうことですね。最初にそういう文化づくりができちゃうとけっこう運用が乗りやすいというか、円滑になるんですかね。

宮田:そうですね。会社の議事録文化みたいなものも、私と共同創業者の2名しかいない時からやっていて。2名しかいないので、なんとなく知っているんですけど、一応議事録をちゃんと上げてみていました。後から入ってきた従業員にとっても便利ですし。

営業チームも営業の議事録とかをバンバン上げていて、開発陣が見て、最近のお客さんはこういうことに困っているんだみたいな、ビジネス的な良さもありますし。あと、経営陣が変なことをしているんじゃないかみたいなことも払拭できる効果もあるのかなと思っています。

今西:ありがとうございます。沢木さん、オフィスのこだわりとか、こういうトライアルをやってみてよかったことを教えてください。

沢木:さっき宮田さんがお話していたように、自分でなにか動機付けをさせるというか、力点を持たせるのは難しいなあと思っていますね。私たちのオフィスであるとすれば、いらっしゃったお客さんを使わせていただくような動きで。ですから、お客さんから見えるような状態を1個1個つくることを意識しています。

なので、かなり執務スペースも見えてしまうような構造になっていますし、圧倒的にパーテーションをつくらないような仕組みになっています。先ほど、ちゃぶ台をつくって、そこでご飯を食べられるようにというお話をしましたが、お客さんがミーティングをするスペースのすぐ横に置いてあるんですね。まる見えなんですよ。

みんながまる見えの場所で、ほかのお客さんがミーティングをしているそばで、ワイワイご飯を食べています。そこでミーティングをしていたりします。

自分たちの働き方をひとつのモデルケースとして見せる意識

沢木:そうすると、そこにいるメンバーたちはどう見られているかを意識しながらやりますし、逆にお客さんに対しては、私たちの働き方をひとつのモデルケースとしてお見せすることができます。そういった意味で、あえて見せるような工夫だったり、オフィスの構造をつくっていきます。

演ずるというとちょっと表現はあれですが、もちろんミッションに共感をしているメンバーたちですので、自分たちもそういうみなさんにとっても、なにかケースになれるようなことをいろいろと考えてくれたりします。それが1つのこだわりかなと思います。

今西:さっきの宮田さんの話に通じますよね。オープンにしていくと、演じるじゃないですけれども、秘密がなくなって、それがお客さんにも見えているという意識付けみたいなものが、そういう雰囲気づくりをすごく活性化させるところもあるんですね。

なるほど、ありがとうございます。今のようなお話で、ハード面だけにこだわらず、ソフト面の話もあると思うんですけれども、実際にこういう環境面に投資をしてみて、すごく成果が上がりましたという事例があれば教えていただきたいんですが。

沢木:逆に今西さんに聞きたいのが、eNPS(Employee Net Promoter Score:従業員ロイヤルティ)を取っているじゃないですか。

今西:そうですね。

沢木:先ほど説明があったように、従業員のエンゲージメントを測るサービスをやられているので、たぶんいろんな企業の「この会社はいけてるな」、「この会社はひどいな」というのを見ていると思うんですけど、なんかこのあたりって影響している実感はありますか。

トップとのコミュニケーションが取りづらいと不満につながる

今西:ありますね。やっぱり会社の規模感とかにもよるんですけれども、1,000人を超えないような会社の規模感だと、まさに地をいかれているなと思いました。

風通しの良さを具体的に定義するならば、同僚や上司とのコミュニケーション量とか、あとは1,000人未満だったらトップとのコミュニケーション量みたいなところって、エンゲージメントの押し上げにものすごく効いているケースが多いですよ。

当たり前なんですけど、そのぐらいの規模感でトップとのコミュニケーションが取りづらくなっちゃうと、みなさんの不満につながりやすいところはあります。我々はエンゲージメントがネガティブに働くと言っているんですけれども。アナログな話ですけど、コミュニケーション量とかオープンさはすごく気にしています。

沢木:そうすると、ハードやソフトの環境も、上司やトップとのコミュニケーションがつくれるようなハードもつくるし、そこに乗せる取り組みというか施策があると(エンゲージメントが)上がるんですね。

今西:そうですね。

沢木:なるほどね。

今西:さっき宮田さんが言っていたような、経営会議をオープンにしちゃうような話ってなかなか覚悟がいるんですけど、そのスタンス自体が、一緒に働く人にはすごく近くに感じて、オープンに感じることにつながっている。だから、たぶんうまく急成長されているのかなあという。我々が実際データを見ている肌感としても、すごく納得感があるお話でしたよね。

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