2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
おかん CEOが語る「働く環境に投資が必要なワケ」(全1記事)
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沢木恵太氏(以下、沢木):こんにちは、株式会社おかんの沢木と申します。今度は私たちの会社で取り組んでいることに対して、共有させていただければと思います。基本的には、環境面や事業に対する投資の部分でどのようなことをしているかをお話しします。前半部分で、私たちのサービスの紹介をできればと思っております。
この写真は、私たちのオフィスの入り口です。左側に少し見えるかもしれませんが、(入口が)玄関のようになっておりまして、靴を脱いであがるようなオフィスになっております。お客様にも、靴を脱いでいただいておあがりいただき、くつろいでいただく。そんな特徴的なオフィスを持っております。
そもそも私たちの起源ですが、私たちはミッションステートメントを掲げて活動をしていますので、簡単にお話をさせていただきます。そうすると、なぜ事業をやっているか、社内でそういう施策を行っているのか、という点に繋がってまいります。
原体験としまして、私は新卒でコンサルタントの会社に入社しました。(東証)一部上場企業ですので、本来はホワイトである必要があるのですが、私が就職した会社は、入社1年目で月間500時間くらい働いておりました。終電で出社をして、明け方に仮眠をして、また働き続けるということをしていました。
そのようなことをしているとなにが起きるかといいますと、(スライドに)表示しているのはイメージですが、1年目の健康診断で、再検査の項目がむちゃくちゃ出るんですね。健康を害してしまう。もちろん、その要因として、休養がとれていない、食事が疎かになっているなどいろいろありますが、これでは働き続けられないと。この体験が弊社のスタートになります。
私たちの会社は、働く人のライフスタイルを豊かにするというミッションを掲げています。どの会社で働くかはもちろん重要なことですが、今は社会的な背景が変わってきて、どれだけ理想の仕事に就いていても、例えば私のように健康との両立が上手くいかない。
鬱もそうです。これ(鬱)によって持続できない、あるいは、私は子どもが4人おりますが、育児との両立で働き続けられない。また、これから必ず増えてくるのが介護。介護との両立のために持続できない、といった介護離職の問題が増えてくると思っています。
私たちは、こういった社会問題と個人の活動との両立をどのように促していくか、これからおそらく企業もこの点の支援をしていく必要性が出てきます。このような意識行動の変容のご支援をしていきたいということで活動をしております。
その1つの方法論として、「オフィスおかん」というサービスを行っております。非常にシンプルなサービスです。私たちはこのようなかたちで、企業様の中にサービスを設置させていただきます。ご覧いただいているのは一番ミニマムでシンプルな設備ですが、その中には、真空包装されたお惣菜が常設されるかたちになります。
常設されたお惣菜をいつでも取っていただき、その中にある食事をみなさんに自由に食べていただける。そういったものをご提供しております。もちろん、食べるだけではなく、企業内でのコミュニケーションを誘発するとか、健康経営に対する1つの施策として使っていただいているサービスとなります。
ご提供しているのは、真空包装されたお惣菜です。最近、コンビニでも非常に美味しい真空包装のお惣菜が増えていると思います。イメージとしては同様です。私たちもこういったものを設備に置いておくことで、24時間いつでも食べられる状況にしています。
例えば、日本国内では今、約1,500種類の食品添加物が許可されています。欧米では約150種しか許可されていません。日本だけ許可されているものがいっぱいある状況です。私たちが扱っている商品に関しては、その中からさらに約30種のみ許可するという、非常に厳しい制限で提供しているのが特徴です。
国産の食材を優先して使っていることもそうです。みなさまにとってヘルシーな食事を提供して、安心安全な状況で使っていただこうというお惣菜になります。私たちはこれを、従業員のみなさんに1個100円でお召し上がりいただけるようにご提供しています。代わりに企業様には、このサービスを導入するにあたって、月額料金3万円からの固定料金を頂戴するサービスとさせていただいています。
なぜ企業様は(「オフィスおかん」を)導入するか。例えば、先ほども少し触れたとおり、コミュニティスペース、休憩スペースを作っているが、そこに人が集まらない。せっかくのスペースを有効活用できていないので、人を集めたいです。あるいは、サービス業で、そもそもアルバイトの応募者数が増えない。そのために、応募してくださる方に賄い(付き)をうたいたい。
また、女性の社員が多くて、帰宅後の支援をしたいと思われています。そのため、「(オフィスおかんの食事を)家に持ち帰って使ってください」。このような推奨をして、働く支援をしていきましょう。そして、復帰率(を高めて)、離職率を低減していきましょう。このような使い方をしている企業様もいます。
働く環境を整える中での1つのツールとして、「食」を使っていただくサービスとなります。このサービスは今、4年ほど運営しております。もちろん、いろいろな規模の会社様に使っていただいていますが、例えば、こういったみなさまがご存知であろう企業様でも導入いただいております。
先ほどお伝えしたとおり、文脈はさまざまです。働き方改革、健康経営、女性の活躍支援、あるいはコミュニケーションの活性化といろいろな理由がございますが、いろいろな場所で使っていただいております。もっというと、例えば工場ですとか工事現場、お寺などでも使っていただいています。
私たちのサービスは今、非常に注目をいただいているのですが、やはり社会的背景として、働き方改革、健康経営、雇用促進・人材定着、こういったキーワードが流行っている部分もございます。いろいろなメディアでも取り上げていただき、社会的な時流から導入される企業様が増えております。
私たちは、3年強~4年弱の直近で、1,000の企業様で導入をいただいております。この1年では500社ほど増えておりますので、毎年だいたい倍に成長している状況です。私たちからのプッシュの営業ではなく、基本的にお客様からお問い合わせをいただいてということで、今、非常に機運が高まっている状況ではないかなと思っています。
私たちは、社内で従業員の環境をどのように作っていくか、私たちの働く環境をどのように作っていくかを考えているのですが、この活動を「EX投資」と呼んでいます。
エンプロイー・エクスペリエンス(EX)というキーワードで社内活動をしています。ちょうど社内でも、今まで活動していたチームの名前をエンプロイー・エクスペリエンスチームと変更するところです。これはもともと、アメリカなどで最近言われているキーワードとなります。
よく、ユーザー体験をUX、お客様体験をCXと呼んだりします。同様に、働く人もイノベーションを起こすべきということで、働いている人の体験をどのように作るか、という考え方でEXというふうに最近言われています。
なぜEXに取り組むべきなのか。もう一つ、私たちはこういう捉え方をしています。よく、動機付け要因と衛生要因ということを言われたりします。動機付け要因は、俗に「やりがい」と言われるものです。理念やミッションについて、なんのためにやっているのか、お客様の声をフィードバックしてやりがいを感じたりするものです。一時期、国も非常に主導して、やりがいを高めていきましょうということを示していました。
一方で、衛生要因です。これは大前提として、健康的に働けるか、あるいは安心して働くことができるかという点に関するものです。もちろん、こういったオフィスも制度なども含まれます。私たちはこの2軸のバランスを重視しています。
実は、この動機付け要因だけを高めてしまうと、一時的にモチベーションはとても上がりますが、持続がなかなか難しいものです。まさに私の新卒の状態です。モチベーションは非常に高かったわけですが、ガツガツと働き過ぎて健康を害してしまい、続けられない。これではまさに、燃え尽き型の組織になってしまいます。
一方でもちろん、衛生要因だけですと非常にぬるい組織になってしまい、なんのためにやっているかという話になってしまいます。そのため、どちらも重要ですが、両方のバランスを整えて、ホワイトという表現が正しいかどうかはわかりませんが、一番生産性が上がる状態を意識しています。
さて、社内の取り組みをマトリクスでプロットしてみようと思います。先ほどの話で、左側に動機付け要因、右側に衛生要因、そして、オフィスなどのハード面と、ソフト面で割り振ってみました。
いっぱいあるのですが、代表的なものをいくつか挙げてみたところ、このような感じになりました。プロットしてみて気づいたことですが、まず、動機付け要因に関する取り組みが多くなかった。なぜかというと、先ほどミッションステートメントについてお話をしましたが、私たちはそもそも、ここに共感するメンバーだけを採用しましょうということでやっております。
採用上の優先順位を設定していますが、スキルは最後で良い、極論としてスキルはなくても良いとしています。しかし、ミッションステートメントだけは共有できていないと、一緒に働く意味がないですよねという採用活動・エントリーマネジメントをしています。そのため、入社したメンバーはすでにやる気があるだろうという前提に立っています。
極論では、「動機付けは会社がする必要がありますか」というもの(考え)を持っています。そのため、あまりこの点に関しては活動をしていません。唯一あるとすれば、ミッションステートメントが重要ですので、それをずっと語りかけ、みんなで共有し、この点だけはずれないようにしています。
ここで重要になってくるのが、やる気を持っている人たちがいかに最大のパフォーマンスを発揮できるか。ここにフォーカスをするべきだと思っています。みなさんがパフォーマンスを発揮するために重要なのが、例えば、Googleなども言っていますが、心理的安全と身体的安全の2点が担保されていれば、パフォーマンスは発揮されるだろうと見ています。
「心配だな、不安だな」と思っていれば、それに引っ張られてしまってパフォーマンスが発揮できないでしょうし、もちろん、身体の調子が悪ければパフォーマンスが発揮できません。
ですので、この2点だけをフォーカスして、この点を会社が保証しましょう、担保しましょう。それさえすれば、みんなやる気は高いのだから、パフォーマンスを発揮しますよね、優秀なんだから、という考え方を持っています。そのために多くの施策を用意しています。
社内でEXに関して、いろいろと研究をしています。海外の論文を読みながら、どのようなことが心理的安全・身体的安全に影響するのかを、社内的に項目で分解してみました。
おそらくこのような活動が影響するのではないかと、よく論文などに書かれていて、因果関係なども説明されていたりします。このあたりにフォーカスして、私たちの取り組みは、どの項目に当てはまるのかを考えながら活動しています。
先ほどのプロットしたものをすべてお話すると時間がかかってしまうので、特徴的なものをいくつか挙げてみました。「だべり場」という取り組みを行っています。こちらは、週次で全体MTGをします。
私たちはこれを「家族会議」と呼んでいるのですが、この中であえて無秩序にというか、シャッフルでコミュニケーションを取るような時間を作っています。コミュニケーションの活性化と、お互いを評価する内容もありますので、自己肯定感を向上していきましょうということもあります。
例えばその内容として、Good&Newということで、今週1週間、「あなたはどんな良いことが起きましたか」、または「どんな新しいことをやりましたか」を、本当にただ共有するだけです。これに対して、みんなが「いいね、すごいね」と称賛をするものになります。
また、最近やりはじめたのが「褒める会」という、ひたすら褒めるだけの会です。4人~5人くらいのグループを作り、お互いのことをみんなで褒め続けるという(もので)、これはすごくうれしいです。
今週も開催して、僕ももちろん参加するのですが、社員から「最近、沢木さん成長しましたね」と言ってもらいました。どちらが上司かわかりませんが、そのような感じでフラットにみんなで褒めあっていたりします。こういう活動は、心理的安全に繋がります。「私はここにいて良いんだ」「みんな私のことを認めてくれているんだ」といったことを促そうとしています。
続いて、下の「係」、こちらはすべて塗っています。総務業務など、細々とした業務がありますよね。私たちは人数が限られています。1人のコーポレートスタッフが全部やるわけにはいきませんので、こういった役割をみんなに振っています。これを「係」というかたちでやっています。
係は無作為にグループを作ります。そのため、そこでももちろんコミュニケーションが活性化されます。例えばどのような係があるかというと、メンバー係、これは生徒会のような役割です。健康係は、窓をしっかり開けましょうなどと推進します。
例えばオフィスの中で、緑視率という緑が見える率が15パーセントを超えると集中力が高まるという研究が出ていたりします。生き物係は、そのためにどう緑を用意するかなどを考えます。図書係は、社内の共通言語を作るために、どのような本を共有していくかということをやっています。あとはイベント係。本当に無作為に選ばれるので、私も入っています。
私は本当は、生き物係がやりたくて駄々をこねてみたのですが、図書係になってしまいました。これはもちろん、どの係を活動するかによって、なにに影響するかが変わってきますので、すべてに色を塗っています。
あとはもちろん、オフィスも重要です。先ほどお話をしたように、(靴を脱いで)上がって、ゆっくり過ごすようなオフィスとなっています。これもメンバーみんなでワークショップを行い、オフィスのコンセプトを作るところからみんなでやっています。そしてくつろげるようなかたちになります。とくに重要なのが、ちゃぶ台を置いた畳のスペースがあるのですが、ここがマグネットスペースとして非常に活躍してくれています。
私たちもお酒が飲めるようになっていたり、もちろん、お惣菜を自社で提供していますので、このスペースでみんながご飯を食べながらコミュニケーションを取ったりしています。もちろん、フリーアドレスやフレキシブルスペースなど、一般的なこともやっています。
とにかくコミュニケーションを作るために、いろいろなメンバーとどう接することができるか。これは単純に情報の共有だけではなく、みんなに必要とされているという心理的安全を作るために一所懸命取り組んでいます。
一応、社長なので、「私専用の席が欲しい」と駄々をこねてみたんですが、「ダメです」ということで、私もフリーアドレスの中に入って普通に活動しています。
最後ですが、私たちは「オフィスおかん」というサービスを展開していますので、自社内でも使っております。これも先ほどお話をしたとおり、いろんな活用の手段があります。導入企業様の例ですが、まさに健康経営の推進のために打ち出されている会社さんもいたり、あるいは食生活を改善するために、新卒の社員のみなさんに対して食育の研修を一緒にやらせていただいて、意識をあげていくといったことをやらせていただいています。
もちろん社内でも、定期的に惣菜を囲んでランチミーティングをしたり、夜、お惣菜をつまみにみんなで飲んだりしています。ということで、お伝えしたかったのは、衛生要因と動機付け要因で分けてプロットしてみるところ。私たちは、動機付けは自分たちでしなさいと。ただ、衛生要因の部分で、心理的安全と身体的安全をどう担保するかに取り組んでいます。
では、以上となります。ありがとうございました。
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