2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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奥谷孝司氏(以下、奥谷):「Factelier」もこれ(Amazon Goやボノボスのビジネスモデル)に近いと思うんですけど、お店はコミュニティーであり、商品を触る場所。別に大量陳列して売ることを、お店の役割にしてないみたいです。この本にはそんなに詳しく書いてないですけど、ZOZO SUITも、僕からするとZOZO TOWNのチャネルシフト戦略ですね。どういうことか。顧客の自宅を試着室に変えるということですね。
本ではここにサブスクリプションというか、ファッションライターを入れてますけど、これは要するにネットで買う。もしくはネットで繋がっているんだけど、例えば、レンタルではまだ買ってないですよね。ご自宅という場所を試着室にして、どういうふうに買うか決める。
ZOZO SUITEの場合は、ここでサイズなどがわかることによって、ZOZO TOWNからすると返品の防止や顧客データの把握などをやるんだと思いますね。
だから別にZOZO TOWNさんは店をやってもぜんぜんいいと思うんですけど、こういうやり方もお店ではないけど、オフライン接点を作るというやり方ですね。非常におもしろい。
やはり、これからすごく大事になるなと思うのは、さきほどボノボスでも言いましたけども、単なる現場体験から、行動データに基づいた体験ということで、最近ちょっと若い男性のサラリーマンの人と話してたんですけど。
例えば洋服を買う場合、接客されたくないので、ヘッドホンを付けて店に行く。自分で見て、話しかけられたくない。
だけど、この本でもリファレンスというオーダースーツの事例を入れているんですけど、彼はそれを使っていて、「なんでそれを使うの?」と聞いたら「自分のサイズに合ったものを買いたい」。そういう時は当然、ヘッドホンを外していくわけですね。
つまり、接客を受けたいことを事前に予約した場合は、外部ショップと言われている場所に行きます。心温まる接客をすることを僕も無印良品で言われてきましたが、はっきり言って、店舗には不特定多数の人がいて「いらっしゃいませ!」と接客する暇がないんですね。
「Mサイズが合いませんから、Lサイズください」と探しに行ったら、「レジお願いします」とレジに寄って、「誰がお客さんだ」という話になるんですね。だからボノボスなどを見ていると、事前に繋がっていることがすごく大事です。
僕の場合、ボノボスを使った時は、実は1店舗目で店員から名刺を渡されたんです。店員が日本に比べて、インセンティブで動いています。「ジーパン売るから俺から買ってくれない? まずは会員登録してくれ」。
それで、自分は何を見ているか・自分は何を買ったのかをベースに「あなた、このシャツを持っているから、これを合わせてみたら?」という接客ができる環境を作っているんですね。お店は、1等地の売り場、2等地、3等地に分かれていて、商品を置く時の売り場のランキングがあります。
奥谷:そういうふうに顧客と繋がっていると大量陳列をしなくて済むので、どんどん店舗スタイルはアップルストア化する。いわゆるコミュニティのように集まって「今日は何が欲しいの?」と聞く。はっきり言って、大量陳列は在庫になるので無駄なんですよね。だけど、それをしないとビジュアルマーチャンダイジング(注:視覚に訴えながら「見やすい」「買いやすい」売り場を作ること)は成り立たない。私の本も売れなければ無駄なわけですから。
ただ多いほうが良く見えるんですね。どんどんお店のほうもそう変わっていくだろう。さきほども言いましたけど、店舗のデジタル化が進むと無人店舗になるのではなくて、むしろ接客が高度化する。お客の内側がわかっているから接客するわけですよ。
それを僕はボノボスを見ていて、すごく思いましたよ。何せガラガラのお店です。お客さんがきたらしっかりお話ししなければいけない。
そうすると実は人間力を問われることになるわけですね。さっきの「うわー忙しい」と大量陳列して、銀座に出店すると大量にお客さんが来る。僕はオフラインが好きなせいもあるんですけども、「うちの店すごい」「いっぱい客来る」と売り場に酔っちゃいますね。
昔はそれで戦えたけど、別に接客するからではなくて、もしかしたらブランド力や立地の問題だったなのかもしれないです。
そうではなく、デジタルで繋がる。チャネルによって顧客との繋がりをつくり出す。だから、「4P」をみなさんは勉強したと思いますけど、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション。ほとんどの人はプレイスは適当だと思います。だいたい、ええもん作って、ええ値段で、プロモーションしたら売れるやん。
だからプレイスなんかどうでもいいと思っているかもしれないですけど、これからネットという場所とリアルという場所。それを僕は「チャネル」と言っているんですけど、そこで顧客との繋がりを作っておかないと、もう2度とお客さんが戻ってこない可能性がある。
そういう時代に、僕はよく顧客時間というお話をしますけども、お客さんがオンラインとオフラインを行き来しながら、検討・購入・使用・消費をするんですけど。
チャネルシフトをやる上でもう1つ大事なことは、カスタマージャーニーをちゃんとオンとオフで見ることなんですよね。お客さんは買い物する時にオンとオフを行き来しますよね。これをしっかりと企業側は設計する必要がある。例えばWarby Parkerというメガネ屋さんは本当にApple storeのようなメガネ屋さんですね。
店舗の真ん中にはメガネを選ぶ場所があり、壁面だけに商品があって、そこでは商品は買えないので、ひたすらメガネを掛けるだけです。体験だけをする場所です。検眼するのもネット予約、買ったメガネが届くのも、お店に来ても届かないので、家に届く。
この店を見ている時に「Apple storeっぽいな」と思ったんですね。Warby Parkerは、もう一方でお店に来なくても「Try frames at home」ということで、お店にフレームを送ってくれて。
写真を撮って、「#warbyparker」とSNSに入れれば、Warbyの人がコメントしてくれるんですよね。これは1つのカスタマージャーニーですけど、例えばWarbyの場合、例えばサイズとか好きなことをオンラインでまず検討する。まず家で掛けてみる、使用してみる。それを写真でアップしてみる。それでネットで買う。これが1つのやり方ですね。
奥谷:一方では、お店に行く前に検討してもいいですけどね。いろんなカスタマージャーニーをオンとオフで用意している。繋がりによってマーケティングの要素を変革することで、チャネルがマーケティング変革の起点になる。そういうふうに考えないと「どうだ、ええ店できたよ。この店はなかなかないぞ」と言っても、消費者はいい売り場があれば、1回は行くと思いますけど、毎回行くのか。
そのためにはチャネルがお客さんとの繋がりの接点になってないといけない。これは学術的にも4Pがわかりやすいので、これを証明してみたいなと思っているんですけど、エンゲージメント4Pというエッセンスがこの本には出てきます。
つまり、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションが、普通は横並列です。しかしプレイス、これは別に店舗だけじゃなくてもいいです。ネットでもいいです。
その場所でのエンゲージメントが強くなると、お客さんとの繋がりが強まって、優れた繋がりが良い商品や良い価格(に繋がる)。安くすることもできるし、高くすることもできる。優れた繋がりが良いプロモーション戦略に繋がる。
エンゲージメントの先にどうなるかという学術的な意味がわからないですが、要するに商品に対する愛着が上がる。価格に対する弾力性が非常に強く上がる。プロモーションへの反応が良くと言えるんじゃないかと思います。場所がエンゲージメントを作る。
この事例をAmazonから話したいんですけど、例えばAmazonがやっている優れた繋がり。プライム会員によるプライスとプロダクトの変革は何かと言うと、1個は圧倒的な差の価格戦略ということで、Amazon Booksとさきほど言いましたけど、Amazon BooksはAmazonプライムの人のほうが、24~5パーセント安いです。
日本にそういう小売業が早くできたほうがいいと思います。「お客様は神様です」とか言いながら、実際にみんなで安くしなくていい人にまで安くするのはバカげてますので、そういうことができるようになっている。それは優れた差であるプライム会員であるということが、それを可能にしているということですね。こんな感じですね。
奥谷:Amazon Booksは、(スライドを指して)こういうプラットフォームになっています。(コードを)ピッとやると、値段が出ます。これを見たら逆にプライム会員にならないと損だということが一目瞭然です。プライム会員は12.43ドルで、これだけ価格が違うと、けっこうショッキングです。ここもほとんどレジレスみたいなもので、アプリで払って本を持って帰ったっていいわけですね。参加してもらうだけ。
Amazonのカスタマージャーニーもきれいにできていて、やっぱり選択・購入・使用・消費を、ちゃんとアマゾンの中、もしくはKindleの中でしっかりしているので、この辺はネットのビジネスをやっている人からしたら当たり前だと思いますけど、何を買うから、どんな価格で販促しようかなと思ったとか、価格安くしてあげようかなとか、買わなくなったからこうした案件をやらせてみようかな、こういう流れがある。
これをオンとオフ両方でできるように今なってきているんですね。これをやらなければいけない。
Amazon booksだけをとると、基本的には仕様は見てないですけど、もともとのAmazonとの繋がりで、持っていた商品推奨。買った人がアソシエイションルールに基づいたレコメンドをオフラインでやってみる。そしてオフラインでこの本はおもしろいなって思ってピッとやると、プライムが上がる。こういう店舗体験を設計している。
ここでもやっぱりネットでの繋がりがものすごく大事になっている。ただ単に「いらっしゃいませ」と言わずに、「あなたにはこの値段」「あなたにはこのサービス」。それをやるには、いずれにしてもデジタルで繋がらないといけないですね。
でも、デジタルで繋がれば、例えばメーカーさんもいると思うんですけど、小売に過度に依存する必要もなくなると思うんですよ。どういう繋がりを作るかを考えれば、いわゆるDirect to customer(注:メーカーなどが直接消費者に対してマーケティング的な内容を訴求していくこと)だってできる。
「メーカーさんがただただ売ってくれ」というお客さんは、Amazon Dashがいいのかわからないですけど、特別なオフライン体験をお店以外でどう作るのかを考える必要が出てくるとは思います。
どんどんマーケティングをやっていく上で、こういうチャネルシフトを実践していくには、テクノロジーとの連携ってすごく大事になってくるから、Amazon Dashがどうやってできているのかわからなくたって、お客さんからすると非常にシンプルな営業ですね。ボタンをポチッと押せば何かできることや、ただAlexaに話しかければ、買い物が済むことなどですね。
奥谷:お客はいい意味でも悪い意味でも、どんどんレイジーになっている部分もあるので、そのオフライン体験を良くしていく意味では、ITが大事で、Amazon GoはITの塊ですから、そういうことをやらないといけなくなる。
だからデジタルの力はこうやって使うんじゃないかなと思ってます。もちろんオンラインの店舗を伸ばす発想もいいんですけども。
今、見ていただいたようにチャネルシフトをするということは、オフラインに出ていくということになりますので、やっぱりデジタルの力を使って、いかにオンライン体験を大きくしていくかをやれる時代がきたんですね。
これをやるという意味で、『チャネルシフト』という本を活用して勉強していただければいいんじゃないかなと思います。オンライン起点でのビジネスモデルづくりが大事になってます。
いかにお客さんとデジタルで繋がるか。ただ、それだけじゃダメなんですけど、その先に良い体験を作れれば、みなさんと新しい小売体験は作れるのではないかと思います。
何度も言いますけども、チャネルのデジタルトランスフォーメーションは戦略でやってほしいです。4Pの中で良い物を作って、値段をそこそこにしてプロモーションして売れるではなくて、実は4Pの中の最後のP(Promotion)、一番適当なPが意外と重要になってきています。ということで一旦私のお話は終わりにしたいと思います。どうもありがというございました。
(会場拍手)
井手桂司氏(以下、井手):はい。奥谷さんありがとうございます。ちょうど25分間でして、もうプロだなと(笑)
奥谷:いやいや、朝なのでまだエンジンの掛かりが悪いですけど(笑)。
井手:最初の「Amazonをぶっ飛ばす!」みたいな写真があるじゃないですか、奥谷さんがチャーミングに写っているやつ。
奥谷:いやいや、ぜんぜんチャーミングではないです。ぶっさいくなやつです(笑)。
井手:あれは鉄板ネタでいつも使っているやつなんですか? 写真をどこで撮ってきてくれたんだろうと思って。
奥谷:あれは早稲田大学のビジネススクールで、僕の恩師の守口先生と内田先生に本を渡しに行ったんですけども、私の先生の守口先生は、非常にスケジューリングにルーズな方で、だいたい遅れるんですね。
その時は真面目に小田急線が遅れたから遅れたんですけども、時間があるから、何かつまらないなと思ったとか言ってましたけど。
岩井さんに写真撮ってもらって、この本のもともとの目的は、ちょっと「かかってこんかい!」的だと書いてて、「これ出たらスピーチでウケけるんちゃうか?」「じゃあ、作ろう!」と言って早稲田大学が勝手に作った。
井手:すごいおもしろい画像を選んできたなと。
奥谷:こんなことを言っているとAmazonに転職できなくなるので(笑)。
(会場笑)
奥谷:別に転職しないですけど(笑)。
井手:ここから次にAmazonに転職されたらすごいですよね。
奥谷:ないと思いますけどね。
井手:わかりました。
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