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プロデュースおじさんの組織論。(全8記事)

社員に自分と同等の熱量を求めてはいけない--ベンチャー経営者が率先して休みを取るべき理由

2017年11月21日、Tokyo Work Design Week2017のトークイベントとして開催された「プロデュースおじさんの組織論」。NPO法人グリーンズ所属のプロデューサー小野氏、人気ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコム代表の青木氏、発酵デザイナーの小倉氏が、働き方と組織論について本音で語ります。本パートでは、ベンチャー企業に勤める男性の育休取得に関する質問に答えました。

プロデューサーの仕事は、勝負どころの見極め

小倉ヒラク氏(以下、小倉):次の質問もいきたいんですけど、最後にプロデュースおじさん的にまとめてみると。だからと言って、戦略上間違ったことしちゃいけないよって話だけ、付け加えなきゃいけなくて。

ただ時間をかければいいんだ、みたいな話じゃなくて、戦略上、時間をかけることに意味が出せるマーケットであれば、とかくスピードにこだわる必要はないんじゃない? っていうのはありますね。

青木:そうですね。だからプロデューサーっていうことにかければ、たぶん一番重要なのって、勝てる勝負にかける、どの勝負が勝てる勝負なのかという、勝負どころの選択っていうのは一番だと思うんですよね。

映画であれば、プロデューサーが、この時代にこういう企画の映画をつくろうって言い出すのが映画のプロデューサーの仕事で。その企画に沿って実際にいい映画をつくってくれるのが、いわゆる監督の仕事じゃないですか。

そうすると、やっぱりどこが勝負どころなのかを見極める。どの勝負にどういうルールで乗っかるかを決めることが、ほとんど唯一と言ってもいいぐらい大事な仕事なので。その時間が自分にとって、スピードとか、例えばPDCAを早くまわすみたいなことが得意で、それができる環境としては、むしろそういう勝負に乗ったほうがいいし。

だから、自分たちが持ってる制約事項のなかで一番勝てる戦いって、どのタイミングのどの戦いなんだっけ、みたいなことだけが重要で。各リソースの問題はけっこう、自分が持っているものを活かしましょう、みたいな話に尽きてくるんじゃないですかね。

小野:勝てる、たぶん……次に出てくる質問のあるべき姿としては、じゃあそれをどうやって見極めるんですか? っていう話にぜったいなるじゃないですか。

小倉:でも、そうじゃない質問もあってもいいよね。

小野:そうなんですけどね(笑)。

小倉:まあでも、そっち……どうしましょ? そっちの話いきますか?

小野:やめときます……。

青木:やめとく、次いったほうが。

小野:じゃあ、次いきます。

(会場笑)

ベンチャー男子の育休の取りづらさ

小倉:どんどん次いってみよう。なんかこう、ちょっとリズミカルにいってみない? リズムあるおじさんになってみない? ね、はい。

小野:4泊5日いても5泊6日いても、だいたいこれぐらいのトークの早さで、ずっと喋り続けてる。

青木:ははは(笑)。

小倉:今日はもうちょっと、コンパクトにいこう。

小野:お願いします。

質問者5:はい。僕はベンチャーに勤めてて、育休をとるつもりで、今会社と話をしてて。ベンチャーで男子が育休とるの大変だなっていうのが、実感としてあって。男子の育休を、プロデュースおじさんたちはどうやってプロデュースするかなっていうのが。

小野:それは、どんな困難なんですか?

質問者5:ベンチャーだと、やっぱりリソースが限られているから、育休でフルタイムの人が減ると、そのぶんアウトプットが減るからつらいですよね、普通。

小野:差し支えなければ、どれぐらいの規模なんですか?

質問者5:30人ぐらいです。とはいえ、家の事情とかもあって、奥さんが里帰りで出産できないとかっていうのもあるので、(育休を)とるっていう。あとは純粋にとってみたいっていうのもあったんですけど。

小野:前例はあるんですか?

質問者5:僕が1人目で、前例はないです。会社でも1人目で、男子でも1人目です。

小野:社長さんはどんな方なんですか?

質問者5:えっと(笑)。

青木:それ知りたいよね(笑)。

小倉:これがね、小野ゾーンってやつ。

(会場笑)

粘着に聞いていくって。

質問者5:結婚してるけど、子どもがいない。

小野:うーん、何歳ぐらいの方ですか?

(会場笑)

質問者5:30歳ちょいって感じです。

小野:ご自身は?

質問者5:僕が36歳です。

小野:ああ、じゃあちょっと年下なんだね。

青木:年下なんだ。

質問者5:はい。そうです。

小野:はい、じゃあ答えられます。

(会場笑)

青木:整いました(笑)。ちなみに、どのぐらいの長さの育休をとろうっていうイメージなんですか?

質問者5:完全に仕事を離れるのも嫌ですし、僕も仕事をしながら育児もしたいっていう、欲張りな考え方なので。社長には、グラデーションをつけて、2ヶ月ぐらいが妥当かなっていう提案をしてる感じなんですね。

青木:みじかっ。

小野:うん。

社員が休めない会社はビジネスモデルに欠陥がある

青木:ああ、そんなもんでいいんだ。じゃあ別にね、それはなんでもないですよね? 2ヶ月、30人いて、例えばご主人がいないと会社が赤字になっちゃうとか、そういうことはあるんですか? 俺が売り上げつくんねえとやべえ、みたいなそういう状況なんですか?

質問者5:僕の仕事で、そこまで直接売り上げにめちゃくちゃ影響出るっていうことではないと思うんですけど。なんだろうな、事業のモデル上、営業の人とか客先に出る人はめちゃくちゃとりづらいだろうな、みたいな雰囲気を持っている。

青木:なるほど。2か月社員が休んだら会社が傾くっていうのは、それは経営の問題ですね。

小野:あらー。

(会場笑)

青木:いやあ、本当にそれでしかないっていうか。そんなビジネスモデルかよ、みたいな(笑)。

小野:ははは(笑)。

青木:これたぶんね、傾かないんですよ。おそらく御社はそういうビジネスじゃなくて、実は傾かないビジネスなんですよ。30人もそこで食ってるって考えたら、実はそうじゃないんですね。じゃあ、なんで急ぐのか。

ようするに、それはたぶん、食えるか食えないか、生き延びられるか生き延びられないかの問題じゃなくて、どのぐらいのスピードでゴールにいきたいか、の問題と関わってると思うんですね。だから生きられるけど、あなたが2か月休んだら、そこ(ゴール)までいくのにちょっと遅くなるじゃん、みたいな。

じゃあ、なんで遅くなっちゃいけないのかっていうことを考えたときに、大きく分けて2つ理由あります、と。1つは投資家のプレッシャー。もしあなたの会社に外からお金が入ってるんだとしたら、それはもう当然プレッシャーがかかります、と。

小野:経営者の立場をね、代弁してると。

青木:はい。むしろ経営者がどうこうしたいというよりは、もうマイルストーンも設定されてて。

小野:その人も自分で決められない。

青木:決められない。経営者も決められない。なんとかそこまでにいかないと、次のお金が入ってこない。入ってこないと会社がつぶれちゃう状況であれば、これはもう……「なんで男が産休とんのよ?」みたいな話になるでしょう、と。

もう1つは、これはすべて、僕も関係あるようなことだと思いますけど。経営者にとって会社って、体みたいなものなんですよ、ある意味では。一心同体みたいな感じですから。そうすると、自分の頭で動いてるイメージと体の動きがずれてるときのことを、ちょっと想像してほしいんですよね。

自分は手を、こう挙げて走ろうとしてるんだけど、体がそれにぜんぜんついてこないときの気持ち悪さ。

小野:お父さんが運動会で転んじゃう。

青木:そうそう。

小野:プロデュースおじさんっぽくなってきたね、これね。

青木:昔はあんなに速かったのにっていう。その気持ち悪さってやっぱりすごいんですよ。

小野:そうですよね。

青木:これは本当に、なったことがある人にしかわからないから。でもたぶん、その感覚はなんとなく想像できると思うんですけど。すげえ気持ち悪いんですよね。その気持ち悪さを解消したいっていうのはただのエゴだから、それを正当化するために、例えば事業上こうじゃん、とか、ああじゃんっていう話をロジックで、後付けでしてくることはあります、と。

経営者自身が休みを取る大切さ

青木:でも、現実には生き残れます。軽微な影響はあるかもしれないけれども、大きな影響はありません。っていうことのなかで、例えば、ある程度は法的に保証されてる枠組みのなかで、休暇を要求してるっていう話が飲めないという可能性は、実はすごく低いと思うんですね、経営的に考えれば。

なんだけど、飲みたくないか、飲めない事情があるか。どっちかなのかな、という、まず相手方がなんでそう思ってんだろう? みたいな観点からはじめると、やっぱり、交渉事ってけっこううまくいくかな、みたいな。まずはそんな。

小野:やっぱり日本って、労働人口が減ってるじゃないですか。だからそうやって、働きやすい職場を整えていく。とくにIT企業なんてね、人間の脳みそとか労働力こそがっていう話だと思うので。でも、何か理由があるのかもしれないですね。

小倉:でもさ、そこはもう立ち入らないで、次いこうよ。

小野:ええ! ちなみに僕、そういう組織を運営しそうだな、と思ったんです。僕はすごい仕事が大好きで。基本、暮らしと仕事を分けたいってそもそも思ってない、と。しかも暮らしっぽい仕事もしてるし、仕事っぽい暮らしもしてるっていう話なので。あんまり分ける合理性がないと思ってるんですけど、この熱量で迫られたら、スタッフは苦しいだろうなっていうことぐらいはわかるわけですよ。

それで、僕はハネムーンで1ヶ月休むんですよ。

(会場笑)

小倉:聞いてないのに開示したな、今(笑)。

小野:これログミー入ってますね。

小倉:うん。

小野:まあ、そこはいいや。そこはね。なんですけど、僕は本当に、それこそIT企業のように、メディアの企業も人材こそ宝なので。人材以外に何も生み出さないじゃないですか。別に装置産業でもあるまいし、何か特殊な仕入れルートを持ってるものでもないって話なので。

やっぱりこの、一番正しそうな意思決定をする人が間違ってみるっていうのは、すごく大事だと思ってて。長く続けたいから。そうすると、「ハネムーンみたいな理由で1ヶ月も休んでんじゃねえよ」って思うじゃないですか。それがすごい大事っていうか。

だから、次に結婚した人って、1ヶ月は休みとれますよねっていう感じで要求してくるわけですよ。ナイス! みたいな。でも困る、みたいな。なんかこわい! みたいな(笑)。言いませんけど、でも普通にうちのスタッフ、1ヶ月休みますよ。

別に正当な理由なんかなくたって、有給消化しただけで1ヶ月休めるじゃないですか。権利ですよね。さっきのエチケットの話から言うと、権利っての運用って、すごく大事だと思っていて。だって、経営者側が守ってあげないとスタッフの側からは要求できないじゃないですか。

だからやっぱり、仮に、その会社がその人を大事にしてますって、言ってないかもしれないですけど。さっきのバーンっていくタイプかもしれないですけど。会社と自分のポリシーが合ってるかどうかをよく見極めて、人こそ宝だって言ってるんだったら、「権利なんで」って言って。普通にしれっととっちゃえば、その経営者も意外と、言ってくれてよかったなって、あとで思うかもしれないです。

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