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リクルートの経営(全4記事)

“営業のリクルート”をどう変えるか? ITカンパニーに変貌を遂げるため、峰岸社長が打った施策

2017年12月13日に行われた「IVS 2017 Fall Kanazawa」のセッション「リクルートの経営」に、リクルートホールディングス の代表取締役社長・峰岸真澄氏が登壇しました。本パートでは国内事業の変遷などに触れました。「ITカンパニー」を目指すリクルート。峰岸氏がどのような施策を打ったのかを語ります。

国内のリクルート、2つのアジェンダ

峰岸真澄氏(以下、峰岸):直近5年ぐらいの海外展開のお話をさせていただいたのですけど、もう1つ国内のお話があります。「じゃあ、国内のリクルートどうするか?」というところでは、アジェンダが2つありまして問題設定しています。

当時5年前で1万人、今でもう2万人、倍ぐらいに膨らんでいるんですけども、国内のメディア事業、旧リクルート、この大企業をどうしていくのか? もう1つが、やはり営業のリクルート、デジタル、IT、クラウド、スマートフォン、その対応もある。それをどうしていくのか? 私にとって、これが2大アジェンダでございます。

この1つ目は、大企業のリクルートは分解すると決めて分社化しました。上から2つ目から5社が、事業会社になっています。(リクルート)キャリア、(リクルート)ジョブズ、いろいろあります。1980年代、先ほどご紹介した、売上100億円から4,000億円にいっている時のリクルートの規模になります。ここに、今まで事業部長だった人が社長になるということで、権限が渡されて、社長として経営ができるということですね。

それによって、事業の意思決定の速度も早くなりますし、事業開発の数も増えます。実際、経営者も育成されていく、いい面も出ました。課題を挙げればキリはないんですが、いい面も出てきたということになります。

先ほど、「ピッチコンテストやっています」と言いましたけれども、グループ内では1,000件を超えるような案件数。5~10件ぐらい、事業化のようなかたちで運営しています。

“営業のリクルート”をどう変えるか?

峰岸:もう1つは、これがなかなか大きな組織でやるのが難しいんですけども。しかも、とにかく営業主体の会社でしたので。今もそれは基本的には変わらないんですけど、それが強みという。これをどう変えていくかは、ゼロから作るのだったら簡単なんですけども、今100あるものを200に変えていくというのは大変難しくてですね。

やはりエンジニアにフォーカスするしかなくて、マネジメントをとにかくエンジニアができるようにしておくことがポイントであります。

できないことはできる人にやってもらうのがいいので、リスペクトする方を、データサイエンティストも含めて、採用して。その方々がすべて決めれるようにしました。楽しい仕事がアサインできるようにすると(笑)、そんなことをずっとしていたわけですね。

Google Researchからも、アロンさんという方を招聘して。これはこれで、シリコンバレーに研究所を作ってみました。国内では、今の事業の分野には、国内の方々もずいぶん入っていただけるようになりました。

エンジニアの数も、5年前から比べるとずいぶん多くなってきて、来年になったら2,000人以上になっていくのかなと思っています。こんな感じで、過去から今まで、ずっと経営していまいりまして、直近5年、本当に著しく変化をしてきた昨今であります。

「エンジニアをスターに」ってことで、自前の開発で、とりわけ営業という、我々の強みはそこだと思うので、エンジニアドリブンで開発したものを、営業からエンジニアと一緒にいって、顧客の課題を解決するようなエンハンスをしていったりとか。

営業がビジネスサイドでビジネスの課題・問題点を持ってきて、それをエンジニアと一緒に考えながら新しいサービスを開発していくと、そんなことができ始めて、2010年以降、新しいサービスも出てきたかなと思っています。

企業文化は変わらない

峰岸:このようなかたちで社長に就任して、4つのアジェンダでこの5年間、リクルートグループの中身を変えてきました。1つ、いろんなことを変えるためには、変えないことを置いているので、変えないこと以外、全部変えることができるわけなんですけども。

それ(変えないこと)は、企業文化でございます。リクルートの企業文化、手をつけなかったというか、変えなかったというか、強化してきたつもりです、この5年も、1960年創業以来。これは3つの言葉に代表されると思っていまして。1つは「起業家精神」。2つ目が「圧倒的な当事者意識」という言葉にしています。3つ目が「個の可能性に期待し合う場」としています。アントレプレナーシップです。

私も3年で辞めるつもりで入ってきたのですけども、そういうメンタリティを持った人材を採用しています。その方々をもっとストレッチしていただけるような、コミュニケーションとか仕組みで支える。その成果が出たら、さらに期待し合ってストレッチすると、ナレッジをシェアリングすると、褒めまくると、思いっきりやる気になってもらう。

「人に懸ける」ことの重要性

峰岸:この3つの仕組みが我々がこの57年間、ずっと変化し続けてきたポイントだと思っています。これが変わったら危機だな、と思っています。戦略ではなく「人に懸ける」ということだと思っています。

グループの戦略を考える時に、トップレイヤーでなにかグランドデザインを考えてここにいくということよりも、ある人が「この事業をやりたい」と言うことに、我々のヒト・モノ・カネをかけていくと。

その結果、グループとしての戦略全体の幅がどんどん広がっていったり、狭まっていったりするかもしれませんけども、その人がやりたいことにそうやって張っていくことが、やはり強みかなと思っていますんで、ここは変えずに、これからもやっていきたいなと思っています。

私のほうから、リクルートのお話をさせていただきました。この後、なにかご質問等とかあったら、お受けしてお話できればと思います。以上で終わります。どうもありがとうございました。失礼します。

(会場拍手)

思い出のエピソード

小野裕史氏(以下、小野):峰岸社長、ありがとうございます。

峰岸:どうも。

小野:大きな拍手をお願いいたします。ありがとうございました。

(会場拍手)

小野:いくつかQ&Aを私どものほうから用意させていただいております。その前に冒頭で、峰岸社長からご紹介ありましたけども、我々のファンドにもご協力いただいて。

峰岸:そうですね。ありがとうございます。

小野:その時の僕の思い出のエピソードを語らせていただければと思います。僕が初めて峰岸社長にお会いした時、我々のファンドのプレゼンテーションで、僕も創業人の1人であったグルーポン・ジャパンですね。

峰岸:あ、そうですね(笑)。

小野:「こんなに伸びております。我々のファンド、こんなに実績あります」と言った瞬間に、「うん。グルーポン・ジャパン、No.1じゃないから」と、ポンパレをやられていた峰岸さんが言われて(笑)。

峰岸:(笑)。

小野:この営業力というか、なんとしてもNo.1を取りにいく、その凄まじさというものをまざまざと感じて、非常に感銘を受けて。その後、しのぎを削りながらですね。

峰岸:そうですね。

小野:はい。ファンドとしては助けていただいたというのが、非常に思い出として残っております。

峰岸:懐かしい思い出になっちゃっていますけどね。

小野:そう、はい。一緒に中国でも、今、一緒に展開をさせていただいている状況なんですが、改めて私も、たくさん投資先を見てきていて、リクルート出身の方々が本当に多いですし。

峰岸:そうですよね。

リクルートの採用哲学

小野:今日のこの会場でも、リクルート出身者、もしくは、その会社に勤めている方々って、どのくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

けっこういますね。たぶん会場のなかにも、もっともっとたくさんいると思うんですが。最後に人、やはりそこに尽きるということなんですが。でも、これは簡単なことではなくて。

創業の経緯からもたくさんあると思うんですが、採用や教育の哲学が、資料のなかにも少しあったと思います。そのあたり、今たくさんスタートアップが採用に苦しんでいるなかで、ヒント、メッセージを与えるとすると何を大事にすればいいか、そのあたりをぜひ教えていただきたいと思うんですが。

峰岸:人の採用ですか?

小野:はい、採用と教育といったところ。

峰岸:やはり、今はエンジニアさんとかが入ってきているんで、そういう方々とビジネスサイドの人と、ちょっとポイントが違ったりはするんですけど、スペシャリスト。

やはり自分、採用の人自身が、これから採用する人の部下になれるかというのが、一番シンプルというんですかね。部下というか一緒のパートナー。「この人がCEOになったらすばらしいな」と思えるかとか(笑)。

小野:聞いてよければですけど、具体的な採用のステップや仕組みをお聞きしたいです。例えば、何人にどういうレイヤーの人たちが採用面談に臨むかとか、そのあたりとか。

峰岸:それは、かなりしつこくやっているんですけどね。場合によっては7回以上やるケースもあります。

小野:7回?

峰岸:ええ。ありまして。各現場の人から、そして、マネージャーに入ってもらって。ほとんど現場の人ですね。現場の人がやはり一緒に働きたいかどうか、というところがポイントですよね。

「教えない」がリクルートの社員を育てる

小野:なかなか力がある企業でないとできないことかもしれないんですが。一方で教育という面では、ひょっとしたらスタートアップでも、ヒントとして学べるところあるんじゃないかなと思うんですが。入った後の教育、文化という話もありました、その文化を保つためだったり、なかの人の教育、啓蒙というのは、どんな仕組みですか?

峰岸:我々の教育はやはりOJT中心なんですよね。だから、私たちの場合は結局、スタートアップに入る人たちなんかは結局、自分が起業したい人が多いと思うんですけども。自分がやはり何をしたいかというのが、明確にあります。

この企業のなかで、この仕事、このサービスしてみたいというのが芽生えるはずだと思うんですね。はじめは学ばなければいけないので。その学ぶところから、いろんな問い合わせ、質問が来ても、自分で考えさせると。その我慢が一番難しいかな、と思いますね。

小野:ありがとうございます。

峰岸:「教えない」という感じ(笑)。

小野:「教えない」ですか、なるほど(笑)。「自分で学べ」と?

峰岸:そうですね。例えば我々だと、中途もありますけども、日本だと新卒採用などが多いと思うんですけど、中途でも新卒でも、パッと企業に入っていく。企業のシステムや仕組み、ビジネスモデルとかがあると、ふと日常業務に入った人が疑問が湧く。隣の先輩に「これがこうなっているんですけど、どうしたらいいですか?」。

小野:聞きますよね。

峰岸:「どうしたらいいと思う?」って聞く、というですね(笑)。

小野:なるほど。返すわけですね。

峰岸:ええ、必ずそれを全階層で行う、というのがあります。

小野:なるほど。

峰岸:ちょっと時間かかるんですけど、それが一番、自分で自分の課題を設定して解決していく人間が生まれていく。ベンチャーだったら、みんなそうなるんですけど。

小野:そうですね。

峰岸:それを大きな組織でやっていくというのは、すごく難しいと思うんですね。全レイヤーでそれをやるというのが、ポイントかなと思います。

小野:ありがとうございます。

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