2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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小室淑恵氏(以下、小室):そうした働き方改革ということと、仕事における付加価値や成果。どういう関係なんだろうか? ということも聞いていきたいと思います。ぜひ山口さんからうかがえればと思いますがいかがでしょうか?
山口文洋氏(以下、山口):そうですね。今の話の延長までいってしまうと、このような状態になるので、婚姻組数の減少に関して取り組んでいるんです。
社内恋愛や合コンみたいな昔の文化もなくなってきて、若い子たちが出会えないという環境になってきています。僕らは『ゼクシィ』という結婚のメディアをやっているんですけど。最近で言うと安心安全にパートナーをみつけられるような出会い、もしくは婚活事業も行っています。また妊娠、出産、育児みたいなところのサービスも手広くやって、なんとかこの人口減少の抑制に至るようなことを民間でやっていきたいなあと思っています。
そんななか、そんなことを提供している事業だからこそ、僕ら自身がやっぱり、ちゃんと家族を形成して、豊かな生活を一社員として送っていこうよ。ということで、働き方改革をもう1段、ライフとワークを繋げてやるんですけど。
山口:今日みなさんに伝えたいのが、先ほどお話した働き方改革。1つは成功する階段を登ったのかなと自分たちでは思ってるんですけど。トップダウンとしてはITインフラと人事を同時に変えるか? ということがまずスタート段階です。ただ3年間やってきて1番成功したポイントは何だったのかって言うと。
1番は、そのインフラとルールを変えながら、ミドルマネジメントを巻き込んだことです。要は、いろんな事業部とか職種を含めて、働き方改革を「いっせいのせ!」でやろうぜって言っても、やっぱり置かれている職場環境は違うわけです。
その人たちに対してトップダウンで画一的に「これを使ってやろう」とか「こんなやり方!」とかって言っちゃうと、うちには合う合わないっていうのが出てくるんですよね。その時のポイントは「部」もしくは「グループ」。要は部長・課長に全部権限を委譲しました。
「君たちが半年ごとに、その部のグループのメンバーを巻き込んで、どこまで働き方の意識と生産性のアウトプットを上げるか」。そういうことは部とグループのメンバーと話し合って決めていこう、と。そして、半年ごとにちゃんと、アンケートみたいなアセスメントも含めて、1個1個、意識と結果が変わってきたか。ということを確認しながらこの3年間やり続けてきた。
だから「やらされ」じゃないんです。「自分たちで、自分たちの生活をよくしよう」「働く環境をよくしよう」という当事者意識をもってやってもらったのが一番の成功要因かなと思っています。そんななかで、小室さんの会社にもお手伝いをしてもらったんですけど。
3年間伴走していただいて。最初はこの働き方改革に対して、組織のコンディションが「2:6:2」って別れちゃうんですよ。最初はやる気が高い2割を伴走してもらいました。それですぐに成功体験というか成功事例として「こんなやり方あるんだよ!」というふうにして。
これが2年目、3年目になってくると、今、3年目の伴走は「2:6:2」の1番のテールですね。「うちらなんて無理だよ!」って言ってるところにコンサルで入ってもらって「そんな部署でもできるんだ」っていうことを事例にしています。
この「2:6:2」の意識と生産性の山を全体的に、横にずらしていくことができているので。やっぱり、現場をどう巻き込んでいく? っていうのがポイントかなあと思っています。
小室:ありがとうございます。本当にそのチームごとに「自分たちが残業している正当な理由」ってあるんですね。なので一律に来ると、自分たちの今までの成果まで否定されたような気持ちになるので、社内にたくさんの敵ができると。
そこを上手く、やり方自体は任せてやっていくということで徹底してやられたかなあと思います。野坂さんにもおうかがいしてよろしいでしょうか? 成果の部分と困難だったこともぜひ。
野坂章雄氏(以下、野坂):そうですね。その前に本当は先ほどの「なぜ働き方改革」やボーナス・オーナス、人生100年の議論をしたいんですけど。ちょっとあとにしまして。いま山口さんがおっしゃたことに、「あ、同じなんだなあ」と思ったんですけど、我々も徐々に広げていったんですね。
「もともと反対派」として言うんですけれども、原点に戻ると、「8時に帰りなさい」とやることで、意外と思った以上に即効性があったことは確かです。とくに仕事のできる連中は「俺はもう十分やっているから、これ以上残業はなくならないよ」って言ってたんですけれども。
やってみたら、鉄を切ることによって、まだまだ詰めてできるということが体感できたんです。意外と、その反対していた連中が「社長、けっこういいですよね」っていう瞬間があったんです。要は、市場なんかを一生懸命にデータ分析しているんですけど、自分が1日どんな仕事をやっていたのかっていうのは意外と分析していないんです。だから朝のメールと夜のメールを見たら「あっ、そうか!」って気付きがあるんです。これは本当に目からウロコ。僕はこれを「個人パターン」と呼んでいます。
それからもう1つは「チームパターン」で。これはネット社会だと当然なんですが、仕事が「できる人」に集中するんですよね。ちょっと言い方が悪いですけれども、社長と担当とか、中抜きしちゃうんです。
でも、そうじゃなくて、もう1人。私は「ペアリング」って呼んでますけど、もう1人職場で、完全じゃないにせよ「できる人」をつくろうよって感じが出てきたんです。これはコンサルティングのおかげです。
僕らも最初は3チームから始めて。それから今は24チーム。来年は全部で72チームにしますが。やってみたら結局、「すごく仕事が偏っていたよね」ってことがわかって。切り捨てもしないように、必ずダブる人をつくるってことをやったら成果が出始めているんです。それを今度はもっと拡げていけばいい。グループ単位、部単位、部門単位、会社単位でもっとダブらせれば。
コンサルの方からは「意外と部間の連携が悪いよね」なんて言われてしまって。耳が痛いけど、「そうだな」と思う。だからまさに経営と同じことなんです。あそことあそこがちゃんと連携を取れていますか? ってことをやればいい。これは僕の実感としてあります。それで結果としては、売上は20パーセント上がって、残業は10パーセント減った。
と言って小室さんに使われちゃうんですけど、すごく心理的な抵抗感がありまして(笑)。本当は「そんな簡単じゃない!」っていうことがあります。僕らは働き方の改革のことを「スマートワーク」って呼んでいますが。
もう1つは、仕事のスキルに関することをやってまして。何かというと、モノの考え方や取り組み方について、課題の設定の仕方、認識の仕方あるいは伝え方。そういったことを今、非常に一生懸命、研修しています。
ファシリテーション研修やプレゼン研修。あるいは最近でいうとデザインシンキング研修とかですね。いろんなことをやるなかでいわば働き方改革だけではダメで。やっぱり仕事のやり方そのものをもう1回教える。それをもう1回みんなで共有する。
それよって成果が上がるっていうことです。まあ簡単に言っちゃうと働き方改革を一本槍でしていたら生産性は上がらないなっていうのが僕の実感です。ちょっと長くなりましたが以上です。
小室:ありがとうございます。属人化の排除。人に属している仕事を徹底的に排除していく。またスキルを改めて研修していくっていうことは、よく考えたら、以前からよく言われていたことなんですが。
労働時間をある一定内に収めなきゃいけないっていうプレッシャーを1回、ぎゅって与えたときにはじめて「本当に必要だね」ってなるんですね。実はそういったアプローチが本質的な仕事の業務改革っていうところに寄与してきているのかなあと思います。
先に会場のみなさんから質問をお受けして、また最後に少しパネリストに戻りたいと思います。ここまでのところでぜひ、みなさんに聞きたいことがありましたら、手を上げて聞いていただければと思います。いかがでしょうか?
(会場挙手) ありがとうございます。目の前のヤマシタさんお願いします。
質問者1:ヤマシタコーポレーションのヤマシタと申します。お話ありがとうございます。千葉さまに質問させていただきたいんですけれども、当社のビジネスのなかにリネンサプライというビジネスがありまして。
いわゆるクリーニング工場なんですが、かなり定常業務を行っているメンバーが多いんです。いわゆる時間に対する賃金を払っているメンバーですね。それで、我々としてはこの働き方改革を進めていくうえで、従業員にはより企画的な仕事をしてもらって、生産性を上げていきたいと思っているんですが。
今現状として、どうしても定常業務がある。そのなかで、彼らの時間あたりの賃金を上げてしまうと、今より明らかなコスト増となってしまう。ただ一方、残業をおさえていってもらわなきゃいけない。というなかでやっていることは、お客様への売値を上げていくっていうこと。
それからほかのところの生産性を高めて、その分のコストをそちら側に回す。そういうことをやっています。おそらくビルマネジメント業務のなかでも、かなり定常的な業務をやられている方が多いと思うんですが。そんななかで彼らの納得性を持たせながら、どのように進められたのか? っていうところの話がもしあれば、お聞かせいただければと思います。
千葉太氏(以下、千葉):そうですね。お答えになるかわからないですけど、定常業務ってどうしても、必ずその時間のなかでやらなきゃならないことが決まっていて、それを短くすることはできない。
じゃあ、そのなかで何ができるの? という部分。要は決まった時間、簡単に言っちゃえば、今まで10やってたことを、その間に20できないの? と。例えば、ビルの監視・管理でも、その間にほかの作業もできないの? そうすることによってほかの業務の効率化ができないの?
こういうところで、アイデアはいくつかあったんですが、今おっしゃったように、なかなか定常業務を単に短くしていくっていうのは難しいかなと。そこでやっている業務にどこまで付加価値をつけていけるかっていうのが大事かと思います。ちょっと答えになってるかわかんないけど。
小室:ありがとうございます。じゃあ、お隣のヤマシタさん。
質問者2:あの、弟でして(笑)。兄弟でやっているんで、ヤマシタコーポレーションのヤマシタと申します。山口さんに質問させていただきたいんですけれども、弊社は先ほど言ったリネンサプライの事業と、介護用品レンタルのビジネスと両方ありまして。
介護用品レンタルのビジネスの方で、ITへの積極投資をしてまして、事業基幹システムから会計システム、DBIまでを効率化して作り直すと。それで、事業のプロセス自体を全部変えてやってくというプロジェクトを、この前リリースし終わって、今まわしている最中です。
そういったプロジェクトを進めていこうと思うと、きちんと全体の業務をわかっている人がプロジェクトメンバーにアサインされるので、その人たちの能力は非常に高いんですが、逆に言えば属人化してしまうと。
ペアリングを作ろうと思っても、その人たちは本当に選ばれた社内のメンバーたちなので、同じ頭の回転と業務知識っていうのを、中途やプロパーの人で代替するのが非常に難しい。
今後も継続的にそれをやっていこうと思うと、彼らにどんどん負荷がかかっていって、後継者を育成するといっても2年くらいはかかるかなと思ってるんです。それを加速的にITインフラを投資して生産性を上げるっていうイメージは湧いているんですけど。
それを早くやったり、属人化しないように工夫されたことがあれば、ぜひ教えていただきたいなと思います。よろしくお願いします。
山口:これも答えになっていないかもしれないですけど。リクルートって会社で言うと、人材が回転していくので、すべての業務において属人化させない。ということが前提なんですね。
だからITを使ってのBPRしていくなかで、そもそも属人化していたものを属人化させないっていう方向性にもっていくことが大事だとすると。今やられていることって、それによって逆に一部、属人化しちゃっている。
それは、僕からすると「あれ? 逆の考え方だな」と思ったので。サステナブルを考えると、属人化を排除していくのがやっぱりリクルート流かなと思ったんです。もちろん、すべての会社に当てはまるとは思わないんですけど。ちょっと答えになってないかもしれないんですけど、逆の発想でした。
千葉:先ほど、適切な答えができなかったので、今考えていたんですけど。管理をやっているとき、警備や清掃とか、やっぱり定常的なものがあるんですけど。ここでは現場から、今までこれだけの人数をかけてやっていたところを、こういう工夫することによって1人減らせる、2人減らせる。こういうこともすごく出てきました。
だから同じ定常業務でも、やる人をうんと減らして「ここを機械化しよう」あるいは「このことはやらなくてもいいじゃない?」とか。いろんなことで減らしたってことはあったかと思います。すみません、ちょっと補足で。
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