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働き方改革(全5記事)

あの大企業は何のために働き方を変えるのか? 改革の旗手たちが語る、あえて困難に挑戦する理由

日本や世界の政治・経済・文化・技術・環境などを学び、リーダーシップを発揮するための知恵やネットワーク基盤を提供する「G1経営者会議2017」が開催されました。そのなかで行われた分科会「働き方改革」に、自ら働き方改革を推進してきたキーパーソンたちが登場。なぜ、日本社会には働き方改革が必要なのか? 企業が取り組むべき課題や、政府による政策のあり方について、それぞれの経験を活かして熱い議論を繰り広げました。

人材の最大の生産性の発揮

小室淑恵 氏(以下、小室):それではモデレーターを勤めさせていただいきます。ここからは働き方改革について始めていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

今日は冒頭のセッションで、世耕さん(参議院議員 経済産業大臣 兼 内閣府特命担当大臣)からも「競争するべきところでは競争すればいいけども、人事だとかそういったところではどんどん共有をして、世界的な競争力を持っていくことが大事だよね」というような話もありました。

そうしたなかでも、まさしくこの働き方改革については、今、企業における取り組みが、かなりバラけていると言いますか。進んでいるところはもうどんどん経営戦略としてやっていますけれども、「どうしようかな?」とまだ悩んでいるところもたくさんある。

というところで今日まさにここで4人の方に、情報をどんどんオープンにしていただきまして、大きなムーブメントになればと思っております。

さっそくなんですけども、最初にそれぞれ「なぜ働き方改革?」、そして「それは経営戦略なのか?」というところ。「どんなポリシーでここまでやってこられたのか?」、また「トップダウンなのか?」「ボトムアップなのか?」、そもそも何がきっかけでやることになりましたか?」なんてことを聞いていきたいと思います。最初に山口さん、お願いしてもよろしいでしょうか?

山口文洋氏(以下、山口):弊社は、リクルートマーケティングパートナーズといいまして、リクルートグループ国内主要7社の1社を担当しています。

もともと働き方改革については、2014年の10月から取り組んで、約3年経ちます。3年前を振り返ると、当時リクルートグループの中でいうと事業成長性が成熟、会社の成長が鈍化しつつありました。

そのなかで積極的な新規事業開発も含め、再度、中長期的で非連続な成長ができるような会社を作らなきゃいけない。という至上命題のなかで経営戦略の根幹として働き方改革を入れました。

非連続の事業開発もしくは既存事業を再生していくには、「人材の最大の生産性の発揮」というところが1つのコンピタンスになるのかなと。

人事制度とITインフラを同時で変革

山口:その点で言いますと、我々の会社は、結婚情報メディア『ゼクシィ』のサービスなどもあることから、社員の女性比率は65パーセントと大半を占めるため、1つは女性の活躍推進ができるようなインフラ、もしくは人事制度にしていくということ。

また、、弊社では多くのテクノロジーを使用した事業創造をしています。最近では、内製の社員エンジニアをどんどん積極的に雇用していく。そういう意味で営業中心の会社から、エンジニアのみんなも前向きに働きやすい環境を作らなきゃいけない。ということも踏まえこの3年間やってきました。

そうしたことで、3年経った今、効率的で生産性が高いということについては、一定の成果が得られたと思っています。次の春からは、第2フェーズの働き方改革に移行していきたいな、というところまで来ております。

3年間終わってみると、大事だったことは、どれだけ働き方改革を効率化できるか。その手段の1つとしてのITインフラの投資を行い、どこまで早急に、それを本当に使えるところまで早着するかということ。

あとは、そのようなITインフラを使ってもですね、人事制度や働く環境のルールが既存のものと変わらなければ、何も活かせません。全社員のリモートワークの推進も含めて、人事制度とITインフラを同時で変革したことが、今の結果に至っているのかなと思います。

次の中長期的な成長の土壌が整ったのか、というところでいうと、3年前の空気ですね。日々のルーティンワークの中で、なんかカオスになっていた社内風土から、断捨離も含めて、今は成長に向かって「じゃあ僕たちは何をしなきゃいけないか?」っていう、良い意味でのカオスな空気が流れている。そういうところまで、大きく空気と意識が変わったのかなと今、総括しています。

働き方改革に1年間、反対

小室:ありがとうございます。本当に初期の頃に、山口さんが働き方改革について、社員みなさんの前で語られたときは「僕自身も迷ってるんだ!」という話もしながら。ご自身もかなりフラットな感じで「でも思い切って飛び移るから、一緒に飛び移っていこうね!」とお話されていて。それが社員の方を動かしたのかなという印象がありました。ありがとうございます。

次に野坂さん。野坂さんからお願いしたいと思います。

野坂章雄氏(以下、野坂):よろしくお願いいたします。冒頭として「UQ」の紹介なんですけども。今、深田恭子さんとか3姉妹で「UQ!」と騒いでますが、あの会社のUQコミュニケーションズです。

今はスマホで有名になったんですが、もともとは10年くらい前からWiMAXといいまして、高速のモバイルデータ通信をやってきた会社です。KDDI系の会社です、ということで会社の紹介になります。

KDDIというのは非常に大きな会社なんですけれども、UQはかなりベンチャースピリットで少人数でやっていまして、ぜんぜん違う文化の会社なんですね。もともと10年前にWiMAXをはじめて、2年ほど前に「これからスマホもやろうか」っていうことを決めたんです。

そのとき同時に、今日も来てくれていますけども、人事部の女性スタッフが、小室さんの講演を聞いて「働き方改革というのが非常に旬である」「ぜひ我が社も先んじてやりたい」と言ってきたんですね。そこで実は、私は最初に反対をしたと。

これはずいぶん小室さんに宣伝をされていまして、「反対した経営者」というレッテルを貼られてイヤなんですけれども(笑)。

小室:1年間ずっと反対していたんですよ(笑)。

(会場笑)

働き方改革をやらざるを得なくなった

野坂:でも、本当にそうなんですよ。個人的には非常に賛成だったんです。だけども「会社でやるのは難しい。ましてや、UQが伸び盛りのときにこんなことをやってる場合じゃない」って言っていたんですね。ただ色々考えると、やらざるを得なくなって、判断をした瞬間がありました。

それから「朝型」や「残業は8時以降、原則禁止」をしてみたということが1つ。もう1つはコンサルティングを受けて、3チームですが、スモールでスタートした。これが全てだったと思います。

だから、いわば「1+1=2」になるところを、「1+1=1」にする方法を考えるという意味で、あまり僕らの方は、「働き方改革はなぜ経営課題なのか?」という意識はなかったんです。逆にラッキーだったんです。

やらざるを得なくなってやっちゃった。というのが案外、現実かなと思って、今日はそんな話を。先ほど控室で話をしていたときに、2対2で、僕はボトムアップ派にされちゃったんですが。まあ、トップとボトム両方だと思いますが、2対2でした。そういう点で、みなさんも同じ悩みがあると思いますので、今日はそんなことをお話できればいいかなと思っています。よろしくお願いいたします。

小室:すみません。勝手に反対派のブランディングをしてしまいまして(笑)。申し訳ないんですが。でも、下から1年かけて説得されて、急にスイッチが入ってから、そこからは徹底してブレずにやられたというのが素晴らしかったなと。

そしてなにより、ぜひいろんな方に聞いていただきたいのが「市場をものすごく攻めているときに残業を削減する」という一見して不可能に思えることが、むしろ成果につながっている。そういうところがすごいなと尊敬しております。

社員が疲弊していく管理手法

小室:では、千葉さんお願いいたします。

千葉太氏(以下、千葉):当社はオフィスビルや商業施設の運営管理をやっている会社です。4年前に、同じ三菱地所グループの2つのPM会社を統合してできた会社で、私は3年前に社長になりました。

社長になって最初に感じたのが、とにかくみんな質の高い管理をするんだということで、一生懸命に仕事をしてくれているんですけれども。ただコストのことをぜんぜん気にしないで「とにかくテナントさんのために一生懸命やればいいんだ!」みたいな。昔からの伝統的な管理手法を、確実にやっていくことに生きがいを感じているようなところがあって。

実は、これは本当に無駄が多いなと。要は、新しい仕事を受注しても、またそこに沢山人をつぎ込んで、そこでまた一生懸命に仕事をするから、結局は利益が薄い。そして社員もどんどん疲弊してゆく。これじゃあ本当に健全な成長は望めないなということを強く感じました。

感じたというか実は、若い頃からずっと「おかしいだろこれ!」と思っていて。思っていても若い頃は、いくら言っても「いや、これが三菱地所グループの管理のやり方なんだ」という、こういう錦の御旗のもと、ずーっと続けられていたんですね。

これはもう変えなきゃいけない! ということで社員に対しては「とにかくみんなで新しいアイデアをだして効率化してこうよ」と。「どんどんチャレンジしてくれ!」って、こんな話しをしたんですけれども。実態としては、日々のルーティンの業務に追われていて、新しいアイデアなんか出てこないし。

成功事例の共有で社員の意識も変化

千葉:チャレンジするとしても、まあいい意味で言えば、余裕が無いんですね。これじゃあまずいなっていう強い思いを感じたっていうのが最初の一つです。もう一つは、当社は女性が働くフィールドが多くて。重要な役割を担ってくれている女性がたくさんいるんですけども。

それゆえに出産とか育児とか、そういったことをしっかりとサポートする。その制度は作られていたんですが、これがあまり機能していないなって感じたんです。それは、やっぱり周囲がその意義を理解していないからで。だから遠慮しながら制度を使うし、その制度もすごく硬直的だなって感じるところがあった。

これもなんとかしないと! と思ったときに、ちょうど小室社長の講演を聞く機会があって。「これだ!」と。まさに我が意を得たりということで、これは本当にやるぞ! と、みんなに働きかけました。最初はですね、「PM会社で在宅勤務なんてありえないだろう」「サービスの質が落ちてテナントさんが出て行ってもいいのか」「事故が起きていいのか」と、そういう声ばっかりで。

それで、「いいわけないだろう! だから知恵を出すんだろう、工夫するんだろう?」と。こういうことを繰り返しやっていました。すると、いくつか成功事例が出てきて、それに対して「ここはこんなことやったぞ!」「ここは素晴らしい!」って言うと、だんだん社員の意識改革も進んできて、「俺んところも、ちょっとやってみるか」という動きが出てきました。この一年前くらいから、本当に業務効率化やコスト削減、新しいビジネスのチャレンジみたいなものが、いろんなアイデアが出てきて。本当にいい循環に入ってきたかなと今、思ってます。

会社を統合したときに、2023年になるんですが、10年後の姿として、営業利益の目標を掲げたんですけれども、たぶん今、4年前倒しで2019年……。もしかすると来年度に達成できるかな? という状況ぐらいまで来ていて。非常にありがたいなと思いつつ、まだまだ課題もある。そんななかで今日ここで、みなさまにお話するのはまだまだ僭越なんですが、どうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

小室:ありがとうございます。最初はいわゆる「三菱地所グループの掟」というか、こういうものだ! というところを、グループ会社の1つが破っていくということは非常にハードルが大きかったのかなと思います。

今や三菱地所グループから「ちょっと教えて」というように、聞かれるようになってきている。そういうところに、グループの中の1つからグループ全体を変えていくこともできるんだなというイメージをもっております。

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