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テクノロジーが変える経営手法(全3記事)

「不正の温床」だった飲食店が変わった クラウド会計ソフト導入が果たした業務改革

飲食業界のリーダーたちと外食の未来を考えるカンファレンス「FOODIT」が2017年9月21日に開催されました。業界の今後のカギを握る「生産性」をテーマに、外食産業に今後起こるイノベーションについて第一人者が議論。本パートでは、マネーフォワードの辻庸介氏とCredo税理士法人代表の水野剛志氏が、クラウド会計でできる飲食店のマネジメント方法についてディスカッションしました。

飲食店専門の税理士が語る「目からウロコ」のお金の話

辻庸介氏(以下、辻):はい、みなさんこんにちは。

会場:こんにちは。

:マネーフォワードの辻と申します。本日はお忙しいところ、おいでいただきましてありがとうございます。

今日は「テクノロジーが変える経営改革」というタイトルで、飲食店経営のお役に立てるようなお金のことを、お話させていただければと思います。

僕は2週間ぐらい前に水野さんとお打合せさせていただいたのですが、本当に目から鱗のことが多くて、すごく勉強になりました。今日はぜひリラックスして聞いていただければと思います。

では、水野さん、最初に自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

水野剛志氏(以下、水野):弊社はCredo税理士法人と申しまして、飲食店専門の税理士法人です。飲食店の税務だけではなくて、お金のサポートをしたいということで、財務、資金調達、給与計算、またチラシやのぼりといった販促物の作成もやっています。

飲食店のお金に関する悩みであればどんなことでも対応できるような会社になりたいというところを目指して、サービスを行っている会社でございます。

:会計事務所でのぼりなどは作られているのはとても珍しいと思いますが、それはどういう思いから始められたのですか?

水野:会計事務所の場合、やっぱりアドバイスだけで終わってしまうのですよね。実際に、数値が出てきましたと。例えば「この売上をもう少し上げていきたい」というときに「では、どうしたらいいんですか?」と言われても「販促物などを作るといいんじゃないですかね。でも、うちでは作れませんが」とならないように。

「アドバイスだけで終わらない」というコンセプトでやっているので、それを実行するところまでサポートしたいと思っております。

複数店舗の飲食店が収益を上げるためのアドバイス

:コストの削減はアドバイスしやすいですけど、収益を上げるアドバイスは難しくないですか?

水野:そうですね。これはたぶん会計事務所の特性ですが、会計事務所がすべての業種をやろうとするからなんですね。そこのところをもっと踏み込んでいくとなると、やっぱり業種に特化していかないと無理だと思います。

:水野さんのところは飲食店に特化されていて、だいたい店舗数はどのぐらいのお客様が多いんですか?

水野:弊社ではだいたい3店舗から5店舗以下のところが多いですね。逆に10店舗などのお客様もいらっしゃいますが、その方とつきあい始めたのはもっと前、3店舗などのときからです。弊社はお客さんと一緒に上がっていくということでやっているので。

:なるほど。ちなみに、ご来場の方に、ご自分が経営されている店舗数をうかがいたいのですが。まず1店舗を経営されているよという方と、2店舗〜5店舗までやっているよという方と、6店舗以上やっているよという方、この三択で挙手いただければと思いますが。

まず、1店舗を経営しているよという方はどのぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

あ、1人いらっしゃる、ありがとうございます。では、2店舗〜5店舗を経営されている方、手を挙げていただいてもよろしいですか?

(会場挙手)

あっ、多いですね。では、6店舗以上の方、手を挙げていただいてもよろしいですか?

(会場挙手)

あっ、けっこういらっしゃいますね。なるほど、ありがとうございます。では、そういう方々にお役に立てるようなお話をしていければと思います。

簡単に僕のご紹介も。僕はマネーフォワードという会社をやっております。お使いの方もいらっしゃるかもしれませんが、個人向けの家計簿サービスと、中小企業向けのクラウドサービスをやらせていただいております。会計だけでなく請求書、給与、マイナンバー、経費、消込、ファイナンスといったようなバックオフィス業務全般を効率化するようなサービスを提供しています。

会計業務が自動化でして、キャッシュフローがすぐに見える、さらにそれを手元で見ることができるといったようなサービスを展開させていただいている会社でございます。

ほとんどの飲食店は会計事務所に丸投げ

:本題に入っていきたいと思います。まず、会計事務所とのつき合い方についておうかがいしたいです。飲食店の方は現場が忙しいので、会計業務をアウトソースしているケースが多いと思うのですが、その辺りについてはどう思われますか?

水野:僕らがお付き合いしているお客様は、5店舗以下の飲食店さんが多いのですが、「記帳代行」といって、領収書を会計事務所に丸投げして、会計事務所が入力していくモデルがやっぱり多いですね。

ここがいちばん僕は問題だと思っているところなんですが、今までのモデルの場合は、会計データは会計事務所にあるのですよね。飲食店さんは、自分の会社なのだけど、会計データは会計事務所が持っている。

となると、会計事務所はだいたい毎月試算表という業績や会計データをまとめたものを送ってくるのですが、そこで「広告宣伝費が高いなぁ、今月なんでこんな高いんだろう?」と思っても、わからないのですよ。そこからの具体的な明細が、試算表ではわからなくて。それを持っているのは会計事務所なので、その具体的な中身がわからない。

領収書や請求書をしっかり探していけばわかることはわかるのですが、忙しい方が多いので、そこまでやる方はなかなかいないのですよね。実は数字を見てるのだけど、あまり見きれていないという記帳代行のモデルが多いですね。

目標を達成しているのは「PDCA」をうまく回す店

:毎日がんばって営業して、いいものを作る、お客さんを呼ぶ。そこにやっぱりすごくパワーを使いますよね。

ただ、決算や申告など、毎月の締めについてはやらざるを得ないのですが、「良きにやっといてほしい」というのがみなさんの本音なのかなと思うのですが。

経営をされている方にはいろんな目標があると思います。例えば、多店舗展開をもっとしたい、もっと利益を残したいなどがあると思うのですが、今、ご覧になられていて、顧問先さんでうまくやられているところ、そうでないところの差とは、どういうところになるのですか?

水野:やっぱり、うまくやられている方は、PDCAをしっかり回されている方ですね。店舗でのPDCAというのも、店舗ごとにしっかり分析してアクションを起こし続けているところというのは、うまくいっています。

PDCAというのは、Plan、Do、Check、Actionだと思いますが、Check(チェック)のところ、ここがしっかり構築できている経営感度の仕組みづくりですよね。そこができているところが飲食店さんでもどんどん突出して上がっていっています。

:そこはもともと、飲食店の経営の方は、別に会計のプロではありませんよね。もともとご興味がない方やあまり得意でない方も多いと思うのですが、具体的にチェックのところは、どういうことを日々やっておられるのですか?

水野:チェックにはいろんなかたちがあると思います。月次単位なのか、日時単位なのかなんですが。先ほど言ったように、月次単位で見るときに、記帳代行などではその辺りを見ることができないのですよね。

リアルタイムでのチェックを可能にする「MFクラウド会計」

水野:マネーフォワードの辻社長の前だからといって言うわけではありませんが、弊社のお客さんは全社、マネーフォワードさんのMFクラウド会計を使っています。それがかなり、好評なんですね。

というのも、記帳代行というモデルをやった場合に、先ほど言ったように、自社の細かいデータが見えていかない。でもデータが見えていかないと、実際にどこの店舗でどういう経費が出ていて、何に使っているのかがわからないと、打ち手はないじゃないですか。

それがMFクラウド会計を使うと、会計データがクラウド上にあるわけですよ。クラウド上にあるので、会計事務所内で入力したデータを、社長がいつでもリアルタイムで見ることができるわけですよね。

そうすると、さっきの広告宣伝費の話ですが、「今月ちょっと高いなぁ」と思ったときに、「どの店舗だ?」と見て。明細レベルで見ていくと「ここは今月、販促でDMを打っているから高いんだ」「『ぐるなび』に上げたんだな」といったことが具体的に見られて、それに対する効果も見ることができるのですね。

:なるほど。ちょっとMFクラウド会計の話をしすぎると我田引水みたいで、広告くさくなるのでよそうと思っているのですが(笑)。クラウドで入力された情報は、見られるのはオーナーの方ですよね?

水野:オーナーですね。

:オーナーですよね、店長じゃなくて。

水野:そうですね。そこはあとでお話をしようと思ったのですが、店長さんに見せたいデータは、その店舗のみのデータなんですよ。現時点では部門別の権限を設定する機能がまだないので、実際に会計データを見ているのはだいたい社長さんだけですね。

店長が現金売上を貯め込むリスク

:社長さんが毎日、各店舗の売上をPOSレジと連携させたデータを会計ソフト内で見ている。そういう感じですね?

水野:それもありますが、管理というところでいうと、現金の入金管理などにも非常に使えますよね。

僕らがクラウド会計を選んだ理由の一つは、銀行口座への入金がリアルタイムで把握できるからです。一日の現金売上は、翌日、店長さんが銀行口座に入金するのが一番望ましい流れなんですが、なかなか入金してくれないんですよね。社長に「どうなっているんですか?」と聞いて調べてみたら、店長が2週間分の現金売上を持っていたと。それってリスクでしかないのですよ。

:怖いですよね。2週間分の現金を持っている。今までだと入金のチェックは通帳に記帳をする以外、チェックする方法がなかったのですね。忙しい社長さんの場合、そこがやっぱりどうしてもできない。

ところが、そこで例えばMFクラウド会計を使うと、スマホのアプリ内で各店舗の銀行への入金情報を全部見ることができる。そうすると、店長さんたちが翌日入金しているかどうかというのは、社長はスマホからパパッと見て、確認できるんです。

入金されていない店長には「どうなってるんだ」と注意する事で店長さんも「これやばいぞ」と、3日以内には必ずやろうという流れになっていきますね。

現金を「3つに色分け」することが不正防止につながる

:では、水野さんがおすすめされている店舗のオペレーションは、現金部分は毎日店長さんが銀行に入金することなんですね?

水野:そうです。この現金の管理は、税務調査で一番狙われるところです。現金の管理で僕らがおすすめしているのは、「現金を色分けすること」です。現金を「現金売上」と「レジ現金」と「小口の現金」に分けるんです。それがグチャッとなると、わからなくなるのですよ。

:普通でもなりますよね。

水野:そうすると、もう不正の温床なんですよ。

:あぁ~。

水野:そうなんですが、そうやって3つに色分けしていくことで、それぞれのあるべき残高というのがわかるようになるのですね。そうすると、現金売上だったら、その日のうちにちゃんと銀行口座に入れていれば「ちゃんと残高合ってるね」ということがわかります。レジ現金はお店によってレジに残すべき現金は決まっているので、その金額を残します。

そして、小口現金についても、小口補填、現金管理補填を作っています。領収書を発行して現金の残高を入れていくと、理論上の残高が出てきます。それで実際の現金の残高と合わせていくと、どこでズレているのかがわかりますよね。

:なるほど。みなさんも現金で悩まれることは多くないですか? 僕の友人の経営者も「なんか減る」と。疑いたくないけど、なぜか合わなくて「きっとお釣りを間違えたのかな」と言っていて。でも「本当か?」などと言ってビデオを設置したら、現場が映っちゃって……。僕の友達は見なかったふりをしていたのですが。

どんどん減っていくので、仕組みで抑えないとしょうがないという話をしていたのですが。僕の友達がそれを知っていたら、そうした悩みもなかったなと思いまして(笑)。

水野:本当にその通りだと思います。うちのお客さんのところでも、やっぱりそうしたことが起こっていて、実際にやっぱり不正が出ていました。それで、現金の色分けをしっかりしていく中で、現金自体はお店の現金からは抜かれなくなりました。まぁ、店長さんのお財布から抜かれていたのですが……(笑)。

:えっ?(笑)。

水野:お店の現金を色分けするようになったから、抜けなくなった。

:そこの金額と合わせるから抜けなくなったのですね。

水野:そこで、じゃあ次はどこから抜いたかというと、店長さんのお財布から抜いていて(笑)。

(会場笑)

水野:それで社長激怒というようなことが。

:すごいですね。みなさん、店員さんを怪しむわけではありませんが、お財布にはぜひ気をつけてください。

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