2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):僕は、コミュニティについてすごく考え出したきっかけが2つあります。
まず、「パズドラがなんですごく流行ってるのか?」というのを聞きに行ったというのがあります。パズドラって操作性が気持ちよくて。「スマホでの指の感覚がどこまでも気持ちいいのを徹底した」ということをインタビューでよく見かけていた。
ガンホーってもともとは、ソーシャルゲームの運営会社なんです。韓国のものを受託して運営していて、そこのゲームのコミュニティを「もっとこういうゲームだったら熱せられるのに」とすごく思っていたんです。
とはいえ、ゲームに文句を言っても受託しているゲームで変えられない。「だったら自分たちでゼロから開発しちゃおう」というふうにして、コミュニティをしっかりつくって運営しやすいゲームにしているんですよ。
それからモンストも、運営元のミクシィがもともとコミュニティサイトなんで。モンストも、ゲームのなかでどういうふうにしてコミュニティをつくるのか、コミュニケーションをするのか、というのでチームゲームになっています。
「人ってなにか話題があったほうがしゃべれるし、それを限定しちゃったほうがいいよね」「なにも堅い話だけするのがコミュニケーションじゃないよね」というので、両方とも設計されていて。だから、パズドラもモンストも両方とも、リアルイベントが混んでいて大人気なんですよ。
村上浩輝氏(以下、村上):なんか苦情、炎上しましたもんね、混み過ぎて。
佐渡島:そうです。混み過ぎて、というぐらい両方ともリアルイベントが超充実していて。ゲームをやってる人たちが「会って話したい」となっている。
だから、あの2つがほかのゲームと違って長期間人気がある。欧米のソーシャルゲームと違うのは、コミュニティ運営がされてるからなんですよ。ソーシャルゲームの肝って、ガチャの仕組みよりもコミュニティだなと思っています。
佐渡島:もう1つの例は、ミクシィの掲示版です。
知り合いがミクシィ掲示板の日ハムファンのオフ会をやっていたんです。日ハムファンを集める掲示板なんだけど、そのオフ会が盛り上がりすぎる。そのオフ会で、何組も結婚する人が出た。その理由がおもしろくて。
例えば、合コンすると自己紹介するじゃないですか。自己紹介するときに、会社名を話して、どんな仕事をしてるのかを言って、出身、学校、部活、好きな映画を言っていく。
なんとか興味がピンポイントになるところを探して、盛り上がればその後うまくいく。でも、2〜3時間だとそこに行く途中で終わっちゃって「あー、今回もいい人がいなかったな」ってなる。
でも、日ハムのオフ会って、ちょっと遅れて行っても、そこで選手の話を誰かがしていたら急に加わっていきなり盛り上がれる。すごく盛り上がって、「あ、そういえば、お名前は?」と、会の間、1回も相手の仕事とか会社名を聞かずに会話が楽しくできちゃう。
親密になってから自己紹介が始まると、恋愛がむちゃくちゃうまくいくというのが、なるほどなと思ったんです。
それで僕は、こういうのを試していこうというふうに思って、『宇宙兄弟』のオフ会をやり出したんです。年末に、『宇宙兄弟』なのにあえてみんなで焼肉を焼く。というので、忘年会で焼肉を食べる。
これには、作家の小山宙哉も来ないんです。来るのはファンだけなんだけど、そこにいる50歳を超えているおじさんと20歳の女子大生がむちゃくちゃ仲よくなったりしていて。
(会場笑)
それが終わったら、カラオケへ行ったりしたんですよ。
(会場笑)
そのオフ会には、焼肉を食べにわざわざ北海道などの遠方から来てくれる人もいるんですよ。
大ヒットで100万部売れていても、クラスに1人が買っているくらいなんです。さらに熱く話せる人となると、なかなか会えないから、「こんなに『宇宙兄弟』についてしゃべれて嬉しかった」と満足していて。みんな、仲良くなっているんですよ。
この様子を見て、「コミュニティ管理って人を幸せにするな」と思って。自己紹介とか履歴書とは違う軸でお互いを語れるようにしたほうが、人間って幸せになると思って、コミュニティに興味を持ちだしたんです。
コルクは、もともとは「クリエイターのマネージメント」としか言ってなかったのですが、「クリエイターのマネージメントと、コンテンツのマネージメントと、コミュニティのマネージメント。この3つのCをマネージメントする会社です」と定義するようになりました。
井上英明氏(以下、井上):作品を広めていくには、コミュニティをつくってあげなきゃいけないということですよね。「コミュニティプロデューサー」という言葉をつくられて、これからご自身もなられようとしているんでしょうし、そういった人を育てていきたいということなんですけれども。
井上:今度はリアルな場のほうにも話を。みなさんもこれから働かれると思いますので、働く環境というところも話していきたいなと思うんですけれども。
実は私、もう10年ぐらい前から年に1ヶ月ぐらい会社に行かないんですね。雲隠れ月間と言って。なんで始めたかというと、僕が思ったのは「トヨタは社長が怪我してもなにしても車の生産は止まんないよな」と。
うちの会社は、僕がいないとうまくいかないというところがボトルネックになっている。そこは強化しないといかんなと思って。「集中治療室に入ったと思え」って言って1ヶ月、急に会社に行かなかったんですね。ルーティンはなにも起こらなかったんですけれども。
それでよくわかったのは、1ヶ月会社に行かないと、自分がものすごく仕事ができるんですよね。社長ってけっこうアウトプットすることが多いんで、インプットがないと同じことばっかりになる。
「去年も同じこと言ってたね」じゃつまんないんで、インプットしてアウトプット、インプット、アウトプットって繰り返さなきゃいかんなと思ったときに、やっぱり集中的に1ヶ月ぐらい雲隠れすると非常によかったんです。そのあと2ヶ月にしてみたりとか。2〜3年前は4ヶ月は会社に行かなかったんで……。
(会場笑)
村上:すごいすね。
井上:そうすると、さすがにこれ、やりすぎだとわかったんです。
(会場笑)
井上:去年は2ケ月、今年も4月は行かなくて、今度は10月に雲隠れしようと思ってるんですけれども。そうやってみると僕は自ら会社にいたってあまり仕事にならないと思うんですよね。
報告を受けたり、銀行さんに挨拶したりというのは、ほとんどクリエイティブなことをやってないんで。僕はクリエイティブなことをやろうと思っている人間は、絶対、オフィスにいるよりも公園に行ったり、プールサイドやビーチとかのほうが圧倒的に仕事ができるんじゃないかなと思うんです。
井上:これからみなさんが働く空間も、どんどん変わってきていいんじゃないかと思うんですけれども。これからの働く場というものは、どういう動きになってくると思われます?
村上:まずデザインということから言うと、2010年ぐらいからオフィスらしくないオフィスの潮流がけっこうできているなと思っています。だから、働く場所と定義されるような、働く場所にしか見えない場所じゃなくて、一見カフェのようなオフィスっぽくない場所で働くとか。
「むしろここに来たほうが帰ってきた感がある」と社員が言ってくれるような、そんなオフィスをつくり始めてる会社が増えてきたなと思っていて。USの事例でGoogleの中にジムがあったり、福利厚生ばっちりしてたりしますよね。そういう流れを受けてというのもあると思うんですけれども。
僕らのクライアントで言うと、メルカリさんやアカツキさんなどがいらっしゃいます。特にアカツキさんは、バリスタが常駐してたり、緑をオフィスの中にガンガンと入れたりだとか。一昔前だと考えられなかったことを、ごく自然にみんなやりだしたな、と。
特に20代30代の社長のIT企業は、そういうところに投資をし始めた。オフィス環境の、機能じゃなくてエモーショナルな部分に投資をし始めたなと、すごく感じています。
あとは、コワーキングスペースが増えてきてるのもそうですけど、在宅ワークやテレワーク、そういうのも間違いなく進んでいくんだろうなと思ってまして。ただ、僕の持論としては、テレワークが進めば進むほど、会社のアイデンティティとしてのオフィスが重要になって来るんじゃないかなと思っています。
要は、まったく集まらないと意外と意思疎通が非効率になったりする。一見、効率よくどこにいても仕事ができるよね、ということをやっているんだけど、コミュニケーションの非効率性が出てたりするんです。そういう揺り戻しがけっこうありそうだなと思っています。
僕らとしては、新しい働き方を実践していく会社でありたいとは思ってるんですけれども、会社のテレワークは基本的にやってないです。お子さんがいるとか、そういう事情があるときだけで、基本的には集まってやる。
オフィスは、ふだんはいいんですけど、集まるときは集まる。そのときの自分たちの会社のアイデンティティを表現するためのオフィス、という感覚ですね。
井上:佐渡島さん、クリエイターの方との交流の場として、会社は物理的な場じゃなくて「会社とはなんぞや」といったときに、今まではなんとなくそこに行くイメージだったかもしれないんですけど。
これがどんどん変わってくると、「会社ってなんなの?」と言われたときにどう思われます? 会社ってなんですか?
佐渡島:会社ってなんなのか、本当に悩んでいて(笑)。先ほど言ったようなことがコミュニティについて考えるきっかけだったんですけど、もう1つやはり大きなきっかけが「ホリエモンサロン」なんです。
堀江(貴文)さんのサロンで編集学部というのがあって、そこの教授になってくれと言われて。僕、編集学部の教授になって、ホリエモンサロンの人たちにいろいろ教えてたりして接していたりします。
ホリエモンサロンの人たちって、みんな月額1万円を払って活動しているんですよね。その人たちに、課題というかプロジェクトを渡すと、みんな自分の会社の仕事もあるんだけど、そのあとのプライベートの時間を使って、むちゃくちゃしっかりやってくれるんです。
それって、もうやりたくてやっているから、やりすぎてくれるんですよ。
井上:給料を払ってないんですよね?
佐渡島:ないんです。逆に言うと、1万円払ってるんです、その人たちは堀江さんに対して。僕の場合、社員に給料を払っていて「これ、やって」と言うと、「忙しいんですけど」と返ってきちゃうわけですよ。
(会場笑)
会社だと社員がやりすぎるように持っていくのがすごく難しいんですね。
先ほど言ったコルクラボの人がたまたまうちで管理してる作品を読んで、すごく感動して「これの読書会をしたい」と言い出したんです。その人は自分の本業があるのに、すごく立派な読書会をやって。Tシャツも読書会用につくるわ、看板はつくるわ。
順番が違うって、すごく重要だなと思ったんです。うちの社内だと、読書会をやるとなるとまず集客なんですよ。集客ができてからイベントのコンテンツを詰めるんですね。となると集客は済んでるから、コンテンツに対して詰めまくるメリットってほぼないんですよ。もう集まってるから。
それに対して、コルクラボの人って、読書会をやりたいんですよ。超おもしろい読書会をやりたい。だから、読書会を練りに練って、演出の道具を買ってきたりとかいろいろいっぱいやっていて。「集客大丈夫?」と聞いたら「忘れてた」という感じなんだけど(笑)。
でも集客はそんなにできなくても、1回読書会やるじゃないですか。そうすると読書会のスタイルが更新されてるんですよ。そっちのほうが長期的に見るとすごい価値で。
人の「やりたい」という気持ちが強くある状態をつくるってすごく重要なことなんですよね。
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