2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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髙島宗一郎氏(以下、髙島):唐池さん。変わるもの、変わらないものという話がさっき出たんですけれども。
唐池恒二氏(以下、唐池):おっしゃるように、お客様がどんどん変わっていくといいますか、レベルが上がっていくんですよね。
同じラーメンを召し上がっても、お客様のほうがほかの店も食べ歩いてますから、比較して「ほかのお店のほうがおいしいんじゃないか」と。どんどんお客様が成長されているから、同じものだと実は続かないんじゃないかと思いますよね。
変わるもの、変わらないもの。6年前なんですけど、「ななつ星」をつくる時にデザイナーの水戸岡鋭治さんが最初に描いてきたイメージパースが、イタリアンモダンみたいな感じのデザインでした。天井まで総ガラス張りの、先頭車の形状が丸くなっているようなイメージの絵を私に見せられたんですね。
それで、あろうことか私は「先生、これは違うんじゃないか」と、超一流のデザイナーに対して文句をつけてしまったんですね。
髙島:失礼ですよね。
(会場笑)
いや、いい意味で。いい意味でですよ。
唐池:それはモデレーターとして失礼な気がする。
(会場笑)
それで、「どうしてですか?」と水戸岡さんがおっしゃるので、「いや、贅沢や豪華というのは、それまでのそれぞれ一人ひとりの経験とか価値観によって決められるんじゃないですか」「新しいモダンな斬新なデザインが、はたして豪華とか贅沢とか普通のお客様に思っていただけるかどうか」と。
例えば、過去に豪華なヨーロッパの宮殿に行ったことがあるとか、映画でものすごく素敵なシャンデリアを見てそれが豪華だと思っているとか、ゴージャスなソファに一度は座ってみたいとか、そういう思いがあるんですよね。
雑誌で見た、映画で見た、本で読んだ、あるいは自分でたまたま海外旅行でそれを経験した、そういう経験の上に成り立ってますから。「そういうものを無視して斬新なモダンなデザインが、これが贅沢な豪華なと、スッとお客様に入っていけるでしょうか?」と言ったんですよね。
水戸岡さんにはすぐわかっていただけまして、結局「ななつ星」はクラシックなデザインに。
聞きますと、デザイナーというのはクラシックなデザインが嫌なんだというんですよね。新しいもの、モダンなものを開発することこそ、デザイナーの生きがいらしいんですけど。
それをあえて水戸岡先生にはクラシックなものを。実はモダンなんですけど、クラシックな、誰が見てもこれが豪華だと思う、経験に照らしてもすぐ入っていけるような豪華な列車を、「ななつ星」をつくっていただいたんですよね。
髙島:まったく未経験なものではなく、少し咀嚼して消化しやすいところまで感動を持ってくると。ほう。
唐池:河原さんのところのラーメンも、もちろんどんどん進化してると思うんです。ただ、ベースとか提供の仕方とか、一番の「一風堂」のよさは店の中の元気さですよね。あれは維持しながらも、少しずつ改良されているんじゃないかと思うんですよね。
河原成美氏(以下、河原):ありがとうございます。
唐池:そういうことで過去の経験というのはやっぱり大事なんですよね。それを上回るものをということで、だから「ななつ星」もクラシックのまんまじゃないですよね。クラシック、プラス、水戸岡さんの全知全能を傾けたデザインに仕上がってるいんです。
髙島:なんともう残り10分しかお時間がないという、残念ですけれども。会場の中から質疑をお受けしたいと思いますので、手を挙げてください。じゃあ1、2、3でいきましょう。残り10分ですから、質問と答え合わせて3分ずつぐらい……。
唐池:(会場を指して)答えるんですか?
髙島:(登壇者を指して)答えはこっち。(ツッコミながら)わかってて。
唐池:(笑)。
髙島:はい、どうぞ。
質問者1:よろしくお願いいたします。唐池会長と河原さんにぜひ質問させてください。
これまでのお話をうかがいまして、なにか事を成すとかやり遂げるには、リーダーの持つリーダーシップや情熱がすごく影響してるんじゃないかという感想を持ちました。それを踏まえて質問させていただきます。
お2人がトップリーダーとして大切にしていらっしゃいます、価値観や、哲学や、行動指針などがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
髙島:ありがとうございます。どうぞ。
質問者2:トップとして部下に任せるという話があったと思うのですが。トップではなくてラストマンとして、部下に対する、もしくは末端に伝えるためのメッセージがブレないためにはどうしたらいいか、心を配っていることがあれば教えてください。
髙島:ありがとうございます。最後の方、どうぞ。
質問者3:よろしくお願いいたします。ぜひ河原さんにおうかがいしたんですけれども。
27歳の時に3つのことを決められたということで、そのなかで「35歳で天職に出会う」というお話があったと思います。実は私も今27歳で、こういった3つのことをこの時に決めるというのは、ある意味、覚悟を決めるということと一致するかなと思ったんですね。
27歳で覚悟を決めた「その時の前の気持ち」と「覚悟を決められたきっかけ」など、気持ちの変化というところを教えていただければと思います。
髙島:ありがとうございました。では、今3人の方から出た質問に対して、答えられるところからどうぞ。
唐池:あの、まあ私じゃないんですけど。今までの歴史上著名な、優秀な経営者のお姿、行動を見てますと、この3つを挙げられるんじゃないかと思うんですけどね。トップとしての備えたい資質ですね。大切にしたい資質、力。
1つ目は、河原さんもおっしゃったように、「夢見る力」ですね。夢見る力がないトップは、たぶんどっちの方向に進んでいいかわからなくなるから、組織自体も動かなくなるんですよね。まず、夢、ビジョン、方向。これをトップが明確に描くことが大事じゃないかと。
2つ目が、「気を満ちあふれさせる」ということですね。トップは、その組織その組織の一人ひとり、あるいは職場全体、会社全体、店ならお店に、気を満ちあふれさせるんです。
気を満ちあふれさせるには、私はいつものように言ってるんですけど、4つあるんですね。1つはスピードあるキビキビした動きなんですね。2つ目が明るく大きな声なんです。3つ目が緊張感ですね。隙を見せない緊張感。
4つ目が、「もっとよくしよう」「もっとよくなりたい」「もっと成長したい」「もっとこの会社をよくしたい」。居酒屋なら「もう1本ビールを売りたい」「もう1皿注文を受けたい」。店長なら「もう1人お客様に来店してもらいたい」。そこの「もう少し、もう1つ」の貪欲さですね。
この4つがあると店なり職場なりに気が満ちあふれますね。気を満ちあふれさせるのがトップの仕事じゃないかと思います。「一風堂」を拝見しますと、まさに気に満ちた店で隙がないんですよね。それがいい店だと思います。
3つ目が、伝える力ですね。
孫正義さん。現代では最高の経営者じゃないかと思うんですけど。あの方はまず夢を見ましたね。1981年に当時、福岡でソフトバンクの前身の会社を創業されたんですよね。
その時に、みかん箱の上に立って、アルバイト2人を前にして、「みなさん、当社は5年後には100億、10年後には500億、そして30年後には1兆2兆と売上を、1丁2丁と豆腐屋のように数える会社にする」と。
髙島:2回言いましたね。はい。
唐池:1丁2丁と豆腐屋のように!
(会場笑&拍手)
髙島:ありがとうございます。
唐池:そういう夢を語って、そして夢の実現に向けて邁進する。そして実際に30年後には売上が3兆円になったんですかね。利益が1兆円ですから、もう夢をそのまま実現させた。そして気を満ちあふれさせてソフトバンクの会社をつくった。
孫さんはものすごくスピーチがうまいんですね。言葉の選び方が上手なんですよ。伝える力ですね。
河原さんも伝える力、プレゼンテーションもありますし、あるいはネーミングもありますし。「あすか会議」というこのネーミングもそうだと思うんですけど、その伝える力ですよね。これがトップに必要な資質じゃないかと。
髙島市長は、プレゼンテーションをさせたらたぶん今、日本の首長の中で、あるいは国会議員も含めて、政治家の中でたぶんナンバー1で、世界でも相当な……。
(会場拍手)
唐池:政治家としてはナンバー1ですよね。福岡では、まあ経済人も入れると2番目なんですけど。
髙島:自分が1番じゃないですか。それ(笑)。
(会場笑)
髙島:ありがとうございました。大きな拍手をお送りください。
(会場拍手)
髙島:河原さん、お願いします。
河原:ありがとうございます。最初は行動規範みたいなものですかね。それとブレないこと……。
若い頃「意志あれば道あり」という言葉に惹かれまして。この23年ぐらい、その言葉をよく自分の言葉としています。意志がないと、いろんなことは開いていかないので、意志あれば道あり。それともう1つは、「今いるところが最後の砦だ。そしてすべての始まりである」という言葉をよく思います。これももう長いこと、25年ぐらい。
それと、さっきの質問にもありましたように、目標設定というのが僕は大好きなんですね。1年、3年、5年、そして10年。この短、中、長ぐらいの目標設定を、PDCAでだいたい決めていっています。
僕はもう40年近く前に、ある人に言われたことがあるんです。「小人閑居して不善をなす」「小物というのは暇を持て余したらろくなことせん。河原、お前はあまり大したもんやないから、自分の行動を目標で縛り付けながら少しずつ成長しろ」という意味と思っていますけど。そういうふうに目標設定をよくしながら過ごしています。
それと、「意志あれば道あり」「今いるところが最後の砦や」と、会社の1つの理念にもなっている「変わらないために変わり続ける」ということ。
「一風堂」が継続して残っていくために「力の源カンパニー」という会社をつくっておるんですが。「一風堂」がなくならないために、この「力の源カンパニー」は、変わらないために変わり続けていくぞと。
実はこれ、本当は、一人ひとりの社員さん、あるいは自分自身への言葉でもありまして。河原大輔と河原千代の4男坊として1952年に生まれた河原成美として、「変わらないために、変わり続ける」。自分のことを変え続けていくぞ、という意志の表れでもあります。
すいません、最後の質問になりましたけど、天職。27歳の時、自分で商売を始めた時はなにせ僕、小物、小人ですから。閑居しないために「3年間休まない」ということを決めました。そして「35の時に天職に出会う」というのを決めたんですが、この天職に対する質問でしたけれども。
実は、天職にはその時は出会わなかったです。ほかの「3年間休まない」「店を変えていく」「収入をいくら」というのは達成しましたが。
35歳の時は郊外型のラーメン店を太宰府のほうに出しておりまして、仕事に追われて天職というのに出会うことはできなかった。そのうち、毎日の仕事に追われていきまして、忘れた。
そうしたら5年間に、たかだか4軒の店しかなかったのに、組織というのがわかってませんのでバラバラになって。生活も、もう自分でなにやってるかもわからないような状況に追い込まれました。
その時思ったんですね。「ああ、自分のような小物、小人は目標設定がなかったら、その時その時はいいけど、3年、5年経ってくるとボディブローみたいに自分がやられてくるな」と。
やっとそれに気づいて、新しい目標をつくりながら、無我夢中で。それこそもののけに取り憑かれたような目を……最後にいい? 1分間だけ。
髙島:どうぞ、どうぞ。
河原:もう立って話していい?
髙島:はい、どうぞ。
河原:すいません。みなさん、もう時間があまりないのでね。
(会場拍手)
河原:僕は思ってるんです。今もまだ、うまく仕事ができているわけではありません。倒れるまで。人間というのは、生まれた、生きた、死んだ。それだけです。この生きている時間をどれだけ、なんに向かってエネルギーを出していくかというのが大切だと思っています。
今からもうね、しっかりと僕もここに向かっていくと思います。が、大切なことがあると思うんですね。若い方たちに、とくに言っておきたい。
もののけに取り憑かれたように、あるいは、この言葉は言っちゃいけないかもしれないけれども、まるで狂人のような目で、働き通す。3年間、5年間。もう死ぬ気で働く。10年間。
これが本当にできる人は、どんなに世の中が変わっていっても、一角のものになっていく。自分が表現したい人生を表現できるんじゃないかと思っています。ですので、それをぜひ大切にしてほしいなと。
まとめるわけじゃありませんですけれども、そう思いますので。河原からの一言でした。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
髙島:ありがとうございました。河原さんに大きな拍手をお送りください。お時間になりました。熱いパッションと、そしてユーモアで、ぜひ一緒に新しい時代をつくっていきましょうね。
お2人に大きな拍手をお送りください。ありがとうございました。
(会場拍手)
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