
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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髙島宗一郎氏(以下、髙島):河原さんの経験の中で、今の唐池さんのお話、どう思います?
河原成美氏(以下、河原):いや僕ね、唐池さんの『鉄客商売』とか、新しく出されたご本で『やる!』というのを読んだんですけれども。その中にもあるけど、本当はね、社長じゃなくてもそういうことをよくする人なの。この人。
僕は、昨日読んで感心したのは、27歳で所長になってどこかの営業所に行った時の話。30年以上前の話だから保守的な国鉄時代。なにをするかというと、とにかく挨拶。27歳の若い人が、そこに100人いる会社に行って……俺のラーメン屋の話じゃないじゃないですが(笑)。
(会場笑)
でもね聞いて。非常に労使関係が悪かった。そこでとにかく朝早い時間に行って「おはようございます!」って回ったんだよ、10ぐらいあるセクションを。
……これ、あなたが自分から話すわけいきませんわな。
唐池恒二氏(以下、唐池):そうですね。
(会場笑)
河原:まあ、10ぐらいあるセクションを……。
唐池:私はこのあとで河原さんを褒めますから、大丈夫です。はい。
(会場笑)
河原:とにかくそういう感じで行って。10日して、やっと向こうからちょっと返ってきた。「やった!」と思って。それからは一番ボス級の人がやがて、「おいちょっと。おはよう」「まあちょっとお茶でも一緒に飲まんか?」っていうような話で。
髙島:へえ。
河原:とにかくもうやるって決めたらやる人なんです。まあ、僕もですけど。
(会場笑)
髙島:河原さんこそね、そういうラーメン屋の新しいコンセプトやりたいという時に、仲間集めってどうやってしたんですか?
河原:僕は、今でも「1人のお客様と1杯のラーメンから」と言うものの、最初の頃は1軒のラーメン屋とラーメン職人。とにかく「おやじになるぞ」と思って、本当にもう無我夢中でやりました。仲間があまりいなかった。僕自身は「天才河原」とか思ってましたけど、実は組織をつくるのが下手で。
僕は27歳の時に自分で独立したんです。30万ぐらいの資金で。それまでも、自分でよかれと思って4店舗ぐらいの店をつくって、その中にラーメン屋もあったんです。それで調子に乗っていた。
初めて自分で勉強を始めたのが44歳ぐらいの時だった。「これじゃあ本当のチーム、あるいは組織はつくれない」ということで。それまでは無手勝でしたね。だから、人の信頼を得ることがなかなかできなかった。
髙島:この中の方もたぶんそうだと思うんですが、プレイヤーとしてすごく優れている方が、今度は自分がマネジメントする立場になった時、社長になった時って、みなさんぶつかるところかなと思ったんです。
自分1人の力でできないほど組織が大きくなっていくなかで、組織として一番力を発揮できるような体制にしなきゃいけない、と。河原さんの場合は、自分が手の届く範囲内でリーダーシップをふるっていた時代と……今、店舗ってどれぐらいですか?
河原:今は200ぐらいですけど。夢は1,000店舗なんです。
髙島:200。海外はちなみにどれぐらいの?
河原:海外は今はまだ70店舗です。
髙島:70店舗。
そうなってくると、それこそ自分だけの力じゃいけない。どう組織をつくっていこうとされているんですか?
河原:自分で会社やってもう37年目、会社を株式会社にして32年目になるんですけれども。組織をつくるためにずいぶん変えてきましたね。本当に。
ちょうど今は、「まあこのぐらいだったら、500店舗ぐらいまではどうにかできるだろう」と思える組織ができてきたんです。まだサービスとかいろんな面で足りないところはいっぱいあるんですけれども。
2007年ぐらいに「もうこの組織では限界だな」と。2007年までの組織では世界に行けないと思って「5年間でつくり変える」と思って、人を変え、人を入れ、いろんなことをやって変えてきたんです。
5年でできるつもりが、震災などもあり、10年かかりました。やっぱりかたちにするのは、思うほか時間がかかるものですね。
髙島:その中で気づいたことや、組織づくりで大事だなと思ったことって、どういうことですか?
河原:やっぱり、これはもうみなさん勉強されているからご存知だと思いますけど、継続すること、続けること。そして、先に大きい光、夢、目標、志。これがないことには新しい組織はできあがらない。
あるいは、個人個人。人間は誰でも成長していきたいと思っていますから、そういう熱い人間が集まらないと本当に夢に近づいていけないので。その熱い人間に来てもらわなきゃいけない。そのためには、大きなビジョンがないとダメだなと思います。
髙島:じゃあ、河原さんがその先のビジョンというのを、社員にとにかく熱を持って伝えると。
河原:伝えていきますね。はい。
髙島:ありがとうございます。
唐池さん。当時「ななつ星」をまさにつくっている時のお話です。実はある停車駅で電車に乗せるお弁当の試食をした時、仕入れることがもう決まっていたのに、唐池さんが食べて感動しなかった。
それは、とても有名なお店だったんですよね。そこを断る。そこは社員じゃなくて「俺が断りに行く」っていって、実は中に乗せるはずのお店を断りに行かれてたんですよね。
トップとして、組織のプロジェクトを進めていく上での関わり方、もしくはチームとしての動き方というところで、気をつけていらっしゃることや思いがあったら、教えてもらえますか?
唐池:そうですね、その仕事の本質を見抜いて、今なにが一番大事な仕事なのか。そして、この仕事は自分が出るべきかどうか。この判断がありますよね、河原さん?
河原:ありますね。
唐池:任せていい仕事と、自分が出なきゃいけない仕事がなぜかわかるんですよね。まあ市長もそうだと思いますし。あの陥没した時のね、あの……。
髙島:陥没はいいですよ。はい、ぜんぜん。
(会場笑)
唐池:えー、脱線……。
髙島:自分が脱線してる。脱線しちゃいけませんよ。脱線は。
(会場笑)
唐池:ダメダメ。脱線はいけないですよ。
髙島:脱線はダメです。絶対に。お願いしますよ。
唐池:うちは禁句なんです。それはタブーなの。脱線はしない。
やっぱりそういう、トップとしてやるべき仕事がいくつかあるんですよね。それは自分でやろうと。
私は若い頃、船の仕事をしていたことがありましてね。博多港から釜山まで走っている「ビートル」という高速船があるんです。その航路をつくったのは私なんですけれども。その時にベテランの船長から教わったんですよね。
海には静かな海もあれば、嵐、台風のときの大しけ、高波荒波が渦巻いているような海にも出かけていかなきゃいけない。そういうときに、5万トンのタンカーであろうと、5トンの小舟であろうと、操船方法は一緒なんだって言うんですよ。
5万トンのタンカーでも、5トンの小舟でも、大きな高波荒波が向こうからやってきたら、怖いから逃げようとしますよね。そうすると横に舵を切って横に向けようとしたら、転覆します。横波を受けて船は転覆しますよね。
そしてもっと怖いと波から逃げようとして、後ろに180度、逆方向に進もうとしますよね。これは追い波と言って、必ず5万トンのタンカーでも転覆するんですよね。
ところが、荒波に向かって正面から、5トンの小舟でも真正面に向かうと……もちろん揺れますよ、こうやって(手を上下にうねらせる)。しかし、転覆しないんですよ。
そういうことを船長から教わって。とにかくトップは大事なときは正面からぶつかっていくということを教えられたもんですからね。これは人生とか大事な仕事をするときに、私の頭の中で浮かびますよね。
髙島:なるほど。だから一番嫌な仕事のときに自分が出ていってということで。
河原:今のものすごく勉強になりました。知ってる話ではあったけど、唐池さんからそんな話を聞いたら、なんかものすごく、俺もう帰っていいんじゃないかと。
(会場笑)
髙島:いえ、まだまだもう少しありますので。
河原:いや、本当ですよ。ものすごくわかりやすい話でした。
髙島:河原社長は組織が大きくなって、すべてのことに口を出すのではなくて、任せるところを任せていきますよね。河原さんはトップとして、どういう関わり方をされていますか?
河原:この変革の時代だから、3年ほど前から社長を若手に譲りました。自分自身が今、65歳を迎えようとしています。社長は43歳ですけど、組織が平均39歳ぐらいになっているんです。
関わり方は、まず会って話をしっかりすること、お互いに。まあ当たり前ですけど。仕事以外も含めて。仕事の話は密にする。
髙島:それは、重要な幹部に自分のスピリットを伝えていく、と?
河原:ああ、そうですね。
髙島:今から国内は人口がどんどん減ってきてマーケットが小さくなっていきます。マーケットはグローバルに考えていかないと、事業の拡大・展開はできないと思うんですけれども。
さっき「一風堂」に行かれたことがある方、たくさん手を挙げられたんですけれども。最近、赤丸の麺がカクカクになったって知ってますか? 知らないでしょ。
あのね最近、麺が変わったんですよ。お店に行ったら「あれ?」と思って、お代を払う時にお兄さんに聞いたんですね。「あの、麺が丸から四角になりましたよね?」と聞いたら、「はい、チャーシューも変わっています」って、いろいろ説明を受けたんですね。
「ああ、なるほど」と。「伝統というものはずっと変わらないということがすばらしい。『変わらぬ味、〇〇』っていいフレーズだな」と思ってたんですが。実はものすごくラーメンも変わり続けているんですよね。
河原:はい。
髙島:それはなんでですか? 例えば赤丸なら「赤丸でこの味」じゃなくて。
河原:そうですね、僕はラーメンつくって33年になりますけど。尊敬する師匠が東京の荻窪の「春木屋」というところの初代の創業者、今村五男氏なんですね。彼とはお会いすることはなかった。彼の息子さんとお会いして話すことはよくあるんですけど。
30数年前に読んだ本に、今村五男さんが「10年前のお客さんが自分のところへ来て『春木屋おいしいね』と言ってくれる。ところが『いつも変わらなくておいしい。また食べに来ようね』と言って帰るけど、本当は味は違う」ということを書いてたんですね。
もう30何年前ですよ。10年前と一緒の味を出してたら、自分のところなんかお客さん来てくれないと。お客さんが気づかない程度に少しずつ変えていく。時代の味というのがあるんだ、その時代の味に敏感じゃないと店は続かない、と。要するに継続できない。
だから、「味を変えていくことを恐れるな」というようなことを書いてて。それを僕はラーメン職人としては座右の言葉として置いているんです。だから変えていきます。
髙島:変わり続けていかなければ、逆に現状維持すらできないぞと。
河原:ただし、変えたときにはいろんなクレームというか、お客様たちから「前のほうがおいしかった」と必ず言われるんです。でも、半年、1年ぐらいするとそれも落ち着いてきて、やはりそれが当たり前の味になっていくんですね。
髙島:これからの展開ですね。もちろん国内に増やしていくというのもそうなんですが、海外展開も含めて、どういう構想を練っていらっしゃいます?
河原:手短に話しますと、国内は今130店舗ぐらいあるんですけれども、実はのれん分けというのを、6年ほど前からしています。社員さんたちにプレゼンしてもらって。
のれん分けというと離れるような感じですけれども、なお一層僕らの内側に入ってきてこの「一風堂」を一緒に経営しようよ、というのでのれん分けをやっています。
今、17人の仲間が27店舗ぐらいの「一風堂」を運営しています。これを100人、のれん分けの人たちを増やすのが、今の国内での目標。
国内は、もっともっとコミュニティがね。飲食店舗も、コミュニティとしての要素を持たないと。今、コンビニがこれだけ出てきて、みんなの食生活がいっぱい変わってますから。ただラーメンを食べる、ただお蕎麦を食べる、ただフレンチを食べる、というのは間違いなく変わるんです。
そういう中で対応していくのは、やっぱり1軒1軒、その地域地域に根ざしたものをつくれる人。そして、商売している仲間として、その思いが強い人たちの集まりじゃないと、僕は続かないと思ってます。だから、国内はそういうのれん分けの制度をしっかり。
海外は、あの……。
髙島:とんこつラーメンブームみたいね。今、ラーメンブームというので、いろんなところへ進出されてると思うんですが。
河原:そうですね。ラーメンブームですね。ずっとね。ええ。
だけど、いつも5年、10年、15年、20年後を見ながら仕事をやっています。だから、時代と少しズレることもあるんです。でも自分の信じていることを信じながら、と思っています。
海外も、アメリカとフィリピン、あるいはロンドンとマレーシア、インドネシアはみんな違いますから。経済成長率も、国民の嗜好も、バックボーンに持ってる文化も。
そこに合わせながら僕らはラーメンを出していきますけど、この2000年の歴史のなかから生まれた日本文化と一緒にね。そういうことが伝えられたらいいなと思いながらやっていってます。
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