2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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デービッド・アトキンソン氏:みなさん、こんにちは。小西美術のアトキンソンです。
私はもともとイギリス人で、京都大学の日本学部からスタートして、日本に一番最初に来たのが32年前になります。
10年ぐらい前までは金融マンで、ゴールドマン・サックスの東京支社に長年勤めていて、銀行のアナリストをやってました。10年ぐらい前に1回引退をしまして、3年ほどいろいろと遊んでました。
仕事にするつもりはなかったんですけど、たまたま軽井沢に別荘があって、その隣が小西美術の先代の社長の家だったということで、そのご縁で8年ほど前に「小西美術を経営してもらえないか」ということを頼まれて、私が社長になりました。
小西美術という会社は社員が75名ぐらいなんですけども、今年でちょうど380周年を迎えた会社で。栃木県の日光にできた会社で、日光東照宮ができた時にできて、380年間日光東照宮を中心に、漆塗り、彩色や飾り金具を主とする会社です。
明治から全国に展開をしていきまして、小西美術が、去年一昨年ぐらいだと思うんですけども、私が何回も現場を見たところをチェックしながら来たんですけども。
和歌山県ですと、広八幡さんですとか丹生都比売神社さんですとか。全国だと首里城も小西美術ですし、北海道神宮も小西美術ですから、皇居、伊勢神宮、出雲大社、住吉大社、伏見稲荷など、有名どころのだいたい8割ぐらいが小西美術の取引先といいますか、お客さまになります。
この会社は経営し出して2年ぐらい経ったころ、一応会社としてはこの業界の中で4割を占めていて最大手で、唯一の全国展開をしてて。でも2年ぐらい経ったところで、会社が2年前から、たぶん5年前とか10年前から(実質的に)倒産してたということがわかりました。
今の話とまったく同じなんですけども、日本経済の構造が激変する中で、それと同時に伝統技術に対する関心や需要が減る中で、かなり大きくダメージを受けて。残念ながらそれに対応していなかった結果、実質的に倒産していたんです。
ただそれと同時に、そのあと3年ぐらいかけて再建もしていったんですけども、それはのちほどご紹介したいと思います。だいたい5年ぐらいで、完全に腐っていた会社が見事によみがえることができましたので、今は健全な会社に戻りました。
ですから「伝統技術等々で将来はない」っていうことをよく言われるんですけども、それは努力しない人が言うだけの話であって、努力をすればそういう事実はないと私は思います。
地方創生ということになりますと、小西美術は伝統技術を、要するに国宝重要文化財を修理する会社ですので、この業界にはあまり発展性がないということをよく言われてました。とくに日本政府は伝統技術、文化大国だということを言ってるくせに、ほとんど予算も出さない。
それでどうしようもない状態になっていたところ、どうすればこの業界に元気になってもらえるのかということを考えたのは、今私が手がけてる観光立国の展開でして。
その関係で全国のいろんな地方に出かけることになりまして、政府の委員会を中心に、これから観光立国をどう実現していくかっていうところをやっています。
手前みその話なんですけども、今の地方創生大臣の山本幸三先生とは23年前からのお付き合いで。もともと山本幸三先生とは、日本の不良債権問題をともに解決した二人なんですけども。
あとになって、いきなり山本幸三大臣が自民党観光立国調査会の会長を務めるときに、私が文化財の会社の社長として観光立国はどうしますかということで、また2人のご縁が復活して。今、大臣と一緒に地方創生のことに努めているところで、たぶん今日はその関係じゃないかと想像しております。ありがとうございます。
(会場拍手)
岸上光克氏(以下、岸上):ありがとうございます。みなさんも、予習してこられたみなさんも、ちゃんとどんな方かというのがわかりました? わかりましたね。
四方のお話をもうちょっと聞きたくないですか? その辺りをまた四方に、今度ブースが名産品6次産業化ということですので、商品とか自分の経営コンセプトなど、この辺りを中心に。
あと、せっかく和歌山で開催していますので、和歌山と経営コンセプトと名産品、この辺りをキーワードにしてそれぞれお話ししていただけたらと思います。前半はこの四方のポリシーだったり経営概念というのを、ひとまずみなさんにわかっていただけたらと思います。
では、和歌山が嫌いだった宇城さんからいきましょうか(笑)。
宇城哲志氏:うちの商品は今も、経営上は農作物の販売とジェラートのほうの販売ということで、二本柱になってまして。でもやっぱり売り上げで見ると、2割が農作物、8割がジェラートの販売というような分配になってます。
先ほども少しお話ししましたけど、今一番心がけていることっていうのは、野菜を作ってるときからそうなんですけど、食べ物を作ってるっていうこともありまして、食べ物というのは人にとって一番身近な幸せのもとなんだと思ってます。
やっぱりおいしいものを食べると、ちょっと気分が沈んでてもうれしくなるだろうし、1ヶ月環境が悪くて不幸のどん底にいても、ちょっとおいしいものを食べるとその時はやっぱりうれしい。
うれしかったり、ちょっと幸せを感じられるっていうのが食べ物だと思ってまして。なので野菜を作るときも、作る野菜に関してはおいしくないと嫌なんですよね。だから作ってみて、おいしくないと売りたくなくなっちゃう。
例えば、トウモロコシなんかは品種によって同じように作っても、味がけっこう違うんです。試しで作ったものがおいしくないと、売りたくなくなるとかそんな感じだったりするんですけど。
食べ物ってそれだけ生活に身近なものなんで、今、自分が一番コンセプトというか大きく重きを置いてるのは、いろんな食べ物をみなさんに知っていただいて、食べるってことを楽しんでもらいたいというのを、一番中心でやってます。
そうすると野菜とか、例えば山椒とか伝統作物であったり、普通にホウレンソウとかカボチャとかニンジンとか、ビーツみたいな洋野菜も含めていろんな野菜があるんですけど、そういうのをジェラートにしてます。
ジェラートにするっていうことはスイーツになるので、けっこう自由な食べ方になると思うので、今まで食べたことがなかったものをそういうところで食べてもらうと、お客さんも新たな発見があったりして楽しいんじゃないかなというのもありまして。
そういう食べるっていうのは本当にささやかなことなんですけど、そういうところで少しでも食の多様性が保てて、みなさんが食べることを楽しんでもらえたらなっていうのを一番でやってる感じですね。
あとはお客さんの反応を見てて一番思うのは、僕らからするとなにもないような環境でも、都市部から来られた方は虫を見つけて喜ばれたり、草木があることで喜ばれたり、「テントウムシがいる」とか言って喜んでたりするんですけど。
僕は和歌山という田舎にもいて、都市部にも少し住んだりとかしてるんで、都市部の公園でもテントウムシはいるんですけどね、と思っちゃうんですけど。たぶんそれは都市部の人が、都市部にいるテントウムシに気付かないのは、他にすることがいっぱいあって刺激がいっぱいあるからなんだろうなというのは感じてます。
そういう刺激がまったくないとこに来ると、ふだん見過ごしてたことにみなさんが気付くっていうのがあるんじゃないかなと思ってて。
そういうシンプルな環境でお客さんに来ていただくっていうことを続けていくっていうのは、そういう意味でも意味があるんじゃないかなということで、そんなささやかなことを大事にしながら商売をしてる感じです。
岸上:ありがとうございます。じゃあ、山本さん。
山本典正氏(以下、山本):わりとテーマが広かったので、どこからしゃべろうかと悩んでいるんですけど。1つ、経営のコンセプトということで言うと、日本酒産業にイノベーションっていうものを吹き込んでやりたいなと。
日本酒産業にイノベーションっていう片仮名がいきなり入ること自体が、けっこうおもしろいことだと思うんですけど。自分はベンチャー企業で働いていて、実家の酒蔵に戻ったんですね。僕自身は、どこかで経営者になりたいなって小さい頃から思っていて。
それは何でかっていうと、お金のやり取りをする、働くっていうことってすごく尊いことじゃないかなって、小学生ぐらいから思ってたんです。
幼い頃に働いてる父母を見て、お金をいただいて製品なりサービスなり人にさせていただいて、お客さんは喜んでくれるしこっちはこっちでお金ももらえるし、次にまたつながっていく。こんなええことないな。だから僕の幼い頃の夢っていうのは金もうけしたいみたいな、そんな感じだったんです。
そんな自分だったので、中、高と上がっていくときに経営者になりたいと。ちょうどはからずもITバブルが始まった頃で、ベンチャーブームだって言い始めて、またなんか金融ビッグバンとかいって外資系証券が出てきたりとか。
そういう環境の中で中学から高校、大学って進んでいったときに、ベンチャー企業の経営者になるって男としてすごくかっこいいんちゃうかな、人間としてかっこいいんちゃうかな、そんな人になりたいなって思ったんですね。
なので、ベンチャー企業に就職しました。ただ、ベンチャー企業で働いてみて、自分には0を1にする力はないんちゃうかと。そのときはちょっと早くジャッジし過ぎたような気がするんですけど、そんなんで実家の酒蔵に戻ったと。
実家の酒蔵に戻って最初はもちろん楽しかったんですけど、ふと思ったのが、「このまま僕は和歌山の1つの酒蔵の経営者として終わるのかな」と、ちょっと悲しくなったんですね。東京でバリバリと会社を起業させてなんて思ってた自分が、和歌山の片田舎に来て中小企業の社長で終わるのかなと、なんかすごいさびしくなったんです。
ただ、そこから、日本酒という業界にそういうイノベーションを吹き込んでやろうって言ってる自分っていうのは、そこからすごい自分の中でも考え方が変わってきたところがあって。
イノベーションって、はっきりいって陳腐な言葉ですよ。「イノベーションに関して話してください」とか言われることもあるんですけど。1つは製品上のイノベーションということがあって、これは日本酒業界で比較的行われていることなんです。
ちなみに、みなさんの中で日本酒を飲むって方、今回どのくらいいますかね。
(会場挙手)
けっこういてるじゃないですか。ありがとうございました。
(会場笑)
お隣でも挙げていただいて。
岸上:ほんまですか? 今、なんか山本さんが言うたから手を挙げたとかないですか?
山本:こんなに飲むんですか。僕的にはちょっとうれしいんですけど。2、3しか手が挙がらなかったら「ああ、そうでしょう」と言いやすかったんですけど。すごいうれしいな。うれし過ぎてちょっと困ったな(笑)。
あまり(手が)挙がらんということを想定しての話でいきますと、日本酒って今、すごく味が変わってきてるんですよ。さっきの話なんですけど、じゃあなんで売り上げが3割になってるか。7割吹っ飛んでるんですね。
なんで7割吹っ飛んだかっていうと、実際問題、もちろんいろんな理由があるんです。いろんな理由をつけれます。実は僕も戻ったときに、いろんな理由を聞かされました。例えばビールとかワインとか、日本人の生活様式が変わってきて飲酒状況も変わってきた。
いろんな理由があるんです。でも、一番下がった理由っていうのは端的にいうと、いい酒がなかったんですよ。いい酒じゃないから7割吹っ飛んだんです。人口減よりまだ減ってますから。生活様式よりまだ減ってますから。
3割になったということは、逆に言うとええもんつくったらお客さんたちはみんな飲んでくれるんちゃうかなと思ったんですね。
なので、戻って7年はいい酒をいかにつくるかっていうこと。それから、いい酒をつくるためには杜氏や蔵人たちに、いかにいい酒をつくりたいっていうモチベーションを持ってもらえるか、やりがいを持ってもらえるか。そのことが大切やと思ったんです。
それが製品上のイノベーションで、実際みなさんが今日本酒を飲んでいただいてるっていうのは、おそらく私の仲間である全国にいる若い酒蔵の仲間たちがつくってくれてる、いい日本酒に接していただいているからじゃないかと思うんですね。
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