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ユニーク人事組織に学ぶ、これからの『働き方』とは(全6記事)

「人事がリードしないほうがいい」ベンチャー経営者らが語った、進化する組織づくりのヒント

デジタル時代へライフシフトが起こる中、企業として働き方をどう設定していくべきか――。「IVS 2017 Spring」で行われたセッション「ユニーク人事組織に学ぶ、これからの『働き方』とは」では、“個性的”な印象を持つベンチャー経営者や人事担当者に加え、神戸市長も登壇。彼らはなぜユニークな人事制度を取り入れたのか。また、これからの働き方や組織づくりをどう考えているのか。

もし1年で2〜3倍の組織にする場合はどうすれば?

麻野耕司氏(以下、麻野):会場から質問を1つないし2つお受けできるかと思いますが、どなたでもけっこうです。質問のある方は挙手いただければと。

はい。1番前の方。ちょっとマイクが来るまで手挙げておいていてください。

質問者1:おもしろいお話をありがとうございました。楽天のキタガワです。みなさんにおうかがいしたいです。

ベンチャーでは、小さい段階からだんだん大きくなっていく過程があります。小さい間はどちらかというと責任範囲が、わりと被っているほうがお互いのことをカバーできたり、「結局なんでもやらないといけないよね」と文化の中でやるので、育ってくると思います。

スケールするにあたって、例えばこの1年間で、2倍3倍と組織を大きくしていけないとなったとき。その絵を描こうと思ったら、どうしてもスケールのようなかたちで描かないといけない。

そういうとき、わりとその責任分担や役割分担みたいなものをはっきりさせていかないとスケールできないことがあったかと思います。そのプロセスを何回か経験されている過程でどんなふうにやってきたか教えていただけるとうれしいです。

その経営は地方分権型か、中央集権型か

麻野:安部さんから、どうですか。

安部泰洋氏(以下、安部):我々はまだ100人そこそこの規模なので、まだ多くを経験しているわけでありません。ただし、私の中でのポリシーとして考えている組織の経営の2つのパターンがあります。いわゆる地方分権型の経営と、中央集権型の経営の2つです。これは事業モデルに連動します。

10個の事業の種を蒔いて、1つや2つが大きく当たって伸びていくような事業モデル。もしくはPDCA型といわれるような、1つのプロダクトや事業にリソースを集中させてスケールさせていく事業モデルの大きく2つに単純に分けられるとします。

その事業モデルを前提にして組織経営のパターンも定まってきます。つまり、好き・嫌い、いい・悪いではなく、どういう事業モデルだから、中央集権型の組織経営が合っているか。地方分権方の組織経営が合ってるかが、まず前提としてあると考えています。

例えばリクルートさんやDeNAさんのように、いろんな事業を多角的に、いわゆるコングロマリット的に展開されている事業モデルであれば、当然、事業の担い手はより多くいないといけない。その場合は権限委譲をどんどんしていく文化醸成をし、地方分権型の組織経営を早い段階からやっていかないといけません。

一方で我々もそうですし、例えば楽天さんもまさにそうかと思いますけど、楽天市場のような、中核事業がある場合。そのような事業モデルでは、リソースを集中させて高速でPDCAを回していく必要があります。

そうなったときに、どちらかというと、地方分権スタイルではなく、御旗を振っているリーダーがいて、そのリーダーの強くて速い意思決定を繰り返していくほうが、最終的な目標に到達するまでの時間が早まると思います。

自分たちがどういう組織経営がいいのか。つまり地方分権型がいいのか、それとも中央集権型がいいのかは、フェーズという切り方もできれば自分たちの事業モデルとどっちのほうがマッチするかを常に考えながらやってきました。

フロムスクラッチは、戦略や理念、思想のような大上段は私が決めて、あとはミドル層が組織の結節点として機能し、伝道師のように現場にしっかり伝えることを重視しています。

もちろん、上から下に情報を流すだけでなく、下から上に、つまり現場からマネジメントボードにちゃんとエスカレーションできるかも大切です。ただ、あくまでもこれらの話は、フロムスクラッチの事業モデルに合ったやり方なので、当然違うやり方もあると思います。

面白がる体質を作る=自分が会社を作る状態が必要

麻野:はい。柳澤さんいかがでしょう。

柳澤大輔氏(以下、柳澤):そうですね。今の話に追加して、第3の道があると言うか、カヤック自体がそういう状況になっていると思います。これは意図してやったことではないですが、代表取締役が3人いる上場企業はそんなに多くありません。3人いるので、1つの連帯責任みたいになっています。

この3人という体制に対して、カヤックに中途で入った人が混乱することがあります。誰がキーマンなのかわからず、どの人に根回しすれば物事が決まるのか掴めないという状況に陥るんです。そういう人には、カヤックは向いていない組織です。

あまり責任の所在がはっきりしてない組織なんです。つまり、権限委譲型でもなく、中央集権でもない。悪く言うと無責任で誰も責任を取らない組織。いい言い方をすると、全員が自分の責任だと考える組織です。

後者を狙おうと思っています。今日話した中では触れませんでしたが、ブレーンストーミング(注:集団思考)からそういう体質になっていったんです。

もともと面白がる体質にするためには、自分が会社を作る。この会社で起きている問題は全部自分の問題だ。そう思えば、どんどん楽しくなります。やっぱり人ごとだと楽しくならないですよね。

そういう体質になるにはどうしたらいいか? 答えは、一生懸命ブレストをやっていたらそうなったんです。それをやるとどういうことが起きるかと言うと、ブレストを日々やっているので、出てきたアイディアや成功の手柄が誰のものなのかさっぱりわからなくなります。

ブレスト思考になると本当にそうなるんですが、誰が言ってなにが当たったかの手柄がよくわからなくなります。その分、なにか問題が起きたときも「これ自分の責任だな」となる。

そういう第3の道をいけないかなと模索してきた中で、そういう文化の方向に進んでいるなという実感はあります。さっきの責任と権限の話でいくと、そういうチャレンジをしています。とにかく難しいチャレンジをするのが面白いと思うんです。

麻野:難しいことをやるからこそ、上手くいったときに、強力な差別化にもなるということですか?

柳澤:なりますし、「これが正解で効率がいいです」というチャレンジをするのは、成し遂げたとしても、大きな進化に繋がらないんじゃないかなという気がします。

「人事がリードしないほうがいい」「小さい規模で回したほうがいい」

麻野:ありがとうございます。本間さん、いかがですか?

本間浩輔氏(以下、本間):とても気持ちがわかります。スケールするときにどうするべきかの話ですよね? 

まず人事がリードしないほうがいい。組織を大きくするときに、人事にリーダーシップを取らせると、論点がぶれがちになる。それが1つ目です。

2つ目はスモールイズビューティフルです。どうしても規模を追いたくなるけど、そうするとどんどん見えなくなる。できるだけ小さい規模で回したほうが、僕はいいような気がします。もちろんバランスはよく見ないといけない。

3つ目は管理職。評価も含みますけど、管理職にどういう人材を置くかで、やはりそこのスケールができるかできないかは決まります。要は自分のことばかり考えて数値を上げる人を置くと、組織は崩壊していく。そのあたりはポイントになると思います。

麻野:ありがとうございます。久元市長もなにかコメントありますか。

久元喜造氏(以下、久元):自治体は成長することはありません。必ず職員を減らしていかないといけない。

麻野:市長、もう最高です(笑)。

久元:ちょうど終了時間になりましたと書いているから、私はお答えの材料がありません。すいません。

麻野:ありがとうございます。今日はもう市長の解説がすごくおもしろかったです。

シナジーが起きる=イノベーションが起きやすい

では最後にひと言ずつ、会場のみなさまにメッセージをいただいて、終了できればと思います。安部さんから、今日の感想などなんでもいいです。

安部:ありがとうございました。先ほどお話した通り、まだ我々はみなさまと比べてもすごく小さい会社です。

ただ一方で、小さい会社だからこそできる人事施策であります。時間を使うべき部分は、我々が1,000人、5,000人になったときに、今これだけ時間をかけたから良かったと思える時が当然やってくると思います。

これからも組織や採用に徹底的に向き合いながら成長していきたいと思います。本日はありがとうございました。

麻野:では、柳澤さんお願いします。

柳澤:さっきの話に少し付け加えたいことがあったので、それを最後の話にさせてください。

いろんな権限を委譲して事業を独立させていくと、たこつぼ化してきてなかなかシナジーも起きにくいですよね。さっきの僕が実践している第3の道をいけば、新規の事業は結局のところ掛け算なので、シナジーが起きる=イノベーションが起きやすいと僕は思います。

硬直化してくると、なかなか内部からイノベーションが起きにくいです。シナジーが生まれて、社内のある事業で起きていることを別の事業で生かすことでお互いの組織間が活発になればイノベーションも起きやすいです。

さっきお話ししたような無責任な組織にすることは、いろんな事業をやっていることが強みです。結果、戦略上は本来いろんなことをやっていると弱くなりがちですが、結果的には掛け算が起きやすくなる。そういう未来を描けないかなと思ってチャレンジしています。以上になります。ありがとうございました。

固定観念に捉われないで、とにかく新しいチャレンジをする

麻野:ありがとうございます。本間さんお願いします。

本間:繰り返しになりますけど、やっぱりその企業のトップがどういう人事観を持つのかが極めて重要だということが、今日の僕の学びです。

もしみなさんにシェアできる質問があるとすると、今日の神戸の話でいえば、なぜ二重就業してはいけないのか?という問いの答えを考える。そこにその人の就業観みたいのが出てくるんじゃないかと思いました。

麻野:ありがとうございます。では最後、市長お願いします。

久元:役所っていうのは、法令でがんじがらめになっている。しかし、今日お話を聞きまして、大変勇気をもらいました。やっぱりそれを前提に相当やれることがある。要するに、職員がクリエイティブに仕事ができる。全体の労働生産性を上げていくために、まだまだやれることがあるのではないかという気がいたしました。

特に、できるだけルールを少なくする。それから、固定観念に捉われないで、とにかく新しいチャレンジをしてみる。それから、人事当局に、あまり口を出させないことが共通していたかと思います。

人事当局の役割はすごく大事ですから。それはそれでしっかり役割を果たしていきたいと思いますが、とても今日は参考になりました。ありがとうございました。

麻野:ありがとうございました。市長もアウェーとおっしゃっていましたが、もう素晴らしい話をいただきました。Twitterにも、「神戸市長キレッキレ」と、今出ていました(笑)。

みなさん、どうもありがとうございました。

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