2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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真田哲弥氏(以下、真田):ということで、ここからが本日のメインディッシュです。
「会社の成長に伴い、このままの俺じゃこの会社は成長しないんじゃないか?」と思った瞬間というのが、あるんじゃないかなと思うんです。その出来事やエピソードなどお願いします。
「俺が変わらないとこの会社はこれ以上伸ばせないんじゃないか?」と思った瞬間。そういうエピソードがあれば。そして、それを自分としてはどう変えなくちゃいけないと思って、どんな努力をして、今に至るのか。
会社が成長する過程でそういうことがいっぱいあって、いっぱい変えないといけないことがあったと思います。ちょっとそういう話を、フリーにディスカッションしていこうかなと思います。話の流れを、まずは佐藤さんあたりに。
佐藤光紀氏(以下、佐藤):はい。さっき少し頭出ししちゃったんですけど、組織が大きくなってきて……。今日いらっしゃるスタートアップの方々の中にも、会社に人が増えてきたって会社さんもおられるかと思います。
ご多分に漏れず、人が増えてきて自分の見られる範囲に限界がきて、プレーヤー型で自分でなんでも関与して、自分で決めて。手出し口出し状態で、伸ばす限界みたいなのに直面したのが、事業を始めてたぶん5年目ぐらいで、社員数が100人とかの時です。
真田:それ、何歳ぐらいの時ですか?
佐藤:27とか8とか。
真田:20代。
佐藤:20代後半ですかね。その時に、声が出なくなりました。ハードワークを過ぎて自分の身体にも支障をきたすし、社員からは「みんながみんな、佐藤さんみたいにはできないんですよ」と言われ、組織のコンディションも悪くなってしまったんです。
その一方で、自分の中のフラストレーションでいうと「市場は伸びている、業績も伸びている、今ここでもっと勝負しないでどうするんだ!」って、どちらかというと外的な要因からの焦りみたいなものがすごくありました。
「なんでこの感覚がわからないんだ!」みたいな状態になり、心身ともにバランスを崩したときがありました。でも結局、ボトルネックってなんだろうなって冷静に考えてみると、「ああ、オレじゃん!」みたいな。という中で、やっぱり自分が変わらないと、もう会社は伸びないってことを心の底から実感した出来事がその当時にありました。
真田:ちょっといいですか? 自分が創業期プレーヤー型で、全部自分でやってしまう。あるいは、社員よりも自分の方がプレーヤーとしてできるから、自分でやった方が早いからやっちゃうっていう経験がある方が多いと思うんですけども。今日、登壇者のみなさんはそういう時期ありました? ……みなさん頷いてますね。
会場にいるみなさんはほぼ経営者のはずですけど、その経験をしている方、拍手してみてください。
(会場拍手)
全員かと思っていたら、そうでもないですね。ついつい自分でやってしまうとか、そこの部分をどう克服してきたか? あるいはそれでどんな問題が起こったか? ここにテーマを絞って、佐藤さん以外の方も、なにかあれば発言してみてください。
平尾丈氏(以下、平尾):僕、いいですか? 創業時も全部自分でやってて、経営者として今でもけっこう、自分の関わっている範囲は広い方だと思うんですね。さっきの事業計画を書く時とか。
真田:事業計画、500枚を自分で書いているんですか?
平尾:自分だけじゃないんですけど、全部見てますし、全部自分のペンを入れてます。一緒に作ってるんで、10事業部全部管掌するのは権限移譲ができていない組織なのかもしれないですけど。
真田:働きますねー。
平尾:働きますよー(笑)。その中で自分がやったのは、自分より優秀な能力。さっきの本田さんの話もありましたけど、「自分より怠惰なんだけど、この部分はすごいよね」という方の強みのところと、自分のそこの部分で戦ってみて、負けるなら譲るってことをやってきました。
会社の成長とともに反比例で、自分のバリュー範囲を削っていったことは、自分の中では成功事例だと思っています。ただ、そこの判断を間違えて失敗したことも何回かあります。
真田:その失敗したあたりの話を、ちょっと聞かせてくださいよ。
平尾:そうですね。たとえば、組織の構造。うちはもともと職種別のユニット制をとっていたんですけど、それを事業部制に変えるときもそうでした。事業部を縦軸、ユニットを横軸においた、マトリックス型組織で見たときに、どちらがより権限を持つのかっていうのを決めなきゃいけないんですよね。
どちらかだ、というときに自分は結局、事業部側をとったんです。しかし、本来は自分がやりたかったのはユニット側でした。最初はユニット側が強い組織にいったん振りましたが、変な方向に逆回転してうまくいかず、そうせざるを得なかったんです。
組織の方向性もそうでしたし、結果に対してもそうでしたし、かなり会社がかき乱されちゃって、手戻りが出てしまったかなと思ってます。とくにミドルの抜擢のときですね。このあたりは勉強になった部分も多くありました。
真田:なるほど、ありがとうございます。
本田謙氏(以下、本田):フリークアウトという会社は2回目の起業で。1つ前もアドテクの会社をやって2回目の起業だったんです。それでもまったくエンジニアが集まらない。
フリークアウトの最初の1年間は、社長である自分だけがエンジニアでした。つまりエンジニアが1人しかいない状態がずっと続いていたんです。営業の方はそれなりに採用はとれたけど。自分でコードを書いて、自分で運用してるって状態がずっと続いてたんですよ。
ところが、あるタイミングでエンジニアの人が入りだして、2人か3人目のタイミングで、僕が本番のコードに触るのを急に、完全にやめたんですよ。
その判断に至るまでが大変だったのがあったんですけど。いったんそれをやりだすと、大胆に人に任せられる。先ほど話した怠惰も関係あるかもしれないですけど、けっこうやれちゃうんですね。
良し悪しはもちろんあるんですけど、スタイルとして「まだこの時期なのにもうこの部分、社長は手放すんですか?」ってことを、わりとやっちゃってた方かなあと思っています。
佐藤:結果、伸びたんだと思うんですけど、なんでそのとき任せて伸びたんですかね? 実際組織は。
本田:僕がなんとなく関わるのが苦手だったから。ゼロかイチの関わりで、それぞれの仕事をやっちゃっていたのがあったんですよ。
良かった点は、それによって育った部分は大きかったかなと。特に、後に幹部になる人たちが育ったのが大きかったのかなというのがあります。一方で自分自身はそうやって手を放すことで追い込まれるので、立場上でも周りの人たちよりは一段上の仕事で、将来役に立つことをやらなきゃいけない。それはなにか? って考える方に追い込めているかなとは思っています。
良い面で言えば、そういうふうに働いた。とはいえ、「自分がこの段階で見なくなるんだ」ってことをやっちゃった分の悪い影響は、もちろんあったかもしれないですけど。スタイルとしてはそういうかたちで、良し悪しすべて受け入れてやってるというところですね。結果的に今も、日本を任せるかたちにして、僕は海外中心にやっているという感じです。
真田:自分がやってたことを任せていく瞬間というのが、経営者にとって一番難しい瞬間だと思うんです。常にどこまで口出しすべきか、口出しをしないべきか。という葛藤の毎日だと思うんですけども、任せたとき怖くなかったですか?
逆に、任せてしまって上手くいった事例もあると思いますけど、任せてしまって上手くいかなかった事例っていうのはないですか? そのあたり、たぶん経営者にとって本質的な問題だと思いますので、ちょっとその辺もなにか、こういうことがあったみたいな話があれば。どなたでもけっこうです。
家入一真氏(以下、家入):あれ、僕なにを言おうとしたんだっけ(笑)。任せられるか否かですよね。
これは経営もそうだと思うんですけど、恋愛とか友情もそうで。「お前のことを信用してるんだから」という言葉で任せても、結局は見返りを求めているケースってすごくあると思うんですよ。
僕とか人間的にすごくひねくれているので、すぐ誰かに嫉妬するわけです。例えば「これだけ好きって言っているのに、なんで僕のこと好きって言ってくれないんだ」って。見返りを求めちゃうんですよ。
そうやって見返りを求めるから、最終的に自分が苦しくなってしまう。なので、なるべく見返りを求めずに、周りの人を信用するように心がけて生きてきたんです。結果的にそれも経営に生きていて。「信用したのに結果を出してないじゃん」「なんでちゃんとやれないの?」と、そうやって見返りを求めてるんですよ。
本当の信用って、そいつが逃げようが、失敗しようが、数字が下がろうが、それを含めて背負う行為だと思うんですよ。それを背負えないのであれば、信用してるなんて言うべきじゃないし、背負える覚悟があるなら、任せたらいいと思っていて。……合ってます?
(会場笑)
真田:合ってますよ。
(会場拍手)
家入:見返りを求めると、僕自身がすごく辛くなってくるんですよね。社員に対しても。だから求めないって感じですかね。
真田:ちょっと待ってくださいね。でも会社っていうところは、個人に対して見返りを求めないって話じゃなくて。会社って売り上げ計画、経営計画があって目標設定があって。
目標を各部署なり役員なり部長なりに割り当てて、「さあこの目標達成してください」を求めるような経営の仕方を僕はしていますが、そういう目標設定を与えてってことはしてないですか?
家入:いや、それはしてますね。見返りを求めてましたね(笑)。
真田:求めてましたね(笑)。
家入:まあでも、仕事である以上、目標はあったとしてもその失敗や至らない部分も受け入れるってことですかね。その責任はすべてぼくが背負うってことだと思います。伝わってます?
佐藤:すごくわかりますよ、感覚的には。
家入:あ、本当ですか?
佐藤:家入さんのコメントを拾う感じになるんですけど。経営の要諦として、マネージメントでとても大事だなと思うのは、自分が全部できているとはもちろん言わないんですけど、上手くいったら社員の手柄、上手くいかなかったら自分の責任、というのを自分に言い聞かせながら人と接するっていうことですね。
真田:わかる。ついついその逆で、「俺のおかげだろう」「俺のせいじゃねえ」と思いたいところをグッと我慢して、言い聞かせないとついつい逆になっちゃう。そこは僕も何度となく自分に言い聞かるってことをやりましたね。
佐藤:僕は家入さんのニュアンスはすごく同感で、なんとなく非言語で感じ取った部分が今あったんだけど。結局、僕はそれは愛と感謝だと思うんですよね。相手に「手柄を持っていっていいよ」って。上手くいかなかったら、自分がなにとかする。それが100パーセントできたなら、それは愛と感謝を持った人なんだろうと。
そういう人になりたいなと思って、日々ちょっとずつ努力しています。3歩進んで2歩下がるみたいな経営を日々繰り返して少しずつ学習する中で、いつも自分に言い聞かせる言葉があって、それはたまに人にも言ったりするんですけど。「無能、未熟、不徳」。いかに自分が能力がなく、成熟しておらず、徳がないか。
「自分は有能で、成熟していて、人徳がある」と、どうしても勘違いしがちになる。心理状態で言うと、それを制御するための言葉をいつも自分の中に語りかけないと、無軌道に変な方向にいっちゃう。
やや精神論的な話になるんですけど。概念として、そういうのをすごく強く意識してふだん接すると、今の愛と感謝のマネージメントになるんじゃないかと考えます。
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