CLOSE

GEジャパン×サイバーエージェント(全6記事)

ゼネラル・エレクトリックが“失敗”を採用した背景「大事なのは完璧なリーダーより、弱さを補えるメンバー」

真の働き方改革に必要なのは「制度」よりも「個人の強み」。では、社員一人ひとりの強みを見つけ、活かすにはどうすれば? FRESH!で放送されている「人事就活チャンネル」の中で、サイバーエージェント曽山哲人氏とGEジャパン谷本美穂氏の対談が公開収録されました。本パートでは、GEジャパンの社内文化を紹介。「失敗してもいい。学びが大事」と、ヒエラルキーより“失敗”を優先するようになった経緯を語りました。

GEジャパン×サイバーエージェント

曽山哲人氏(以下、曽山):さて、強みを活かす対談。今日はこちらにいらっしゃるGEジャパンの谷本さんにお越しいただきました。では、これからセミナーを始めたいと思います。改めてみなさん、よろしくお願いします。

(会場拍手)

では、あちら(奥の席)にお掛けいただいて。今日はこれから、GEジャパンの谷本さんと、私、曽山哲人で対談をさせていただきます。

谷本さんとは1回アポとしてお時間をいただいて、「本を出すことになったので取材に協力していただきたい、対談をお願いしたい」ってお話しをしたら、「OK」とおっしゃっていただいたのです。しかし、こんなに集客をするということははっきり申し上げてなかったのですが……今日はどうですか? 緊張してらっしゃいます?

谷本美穂氏(以下、谷本):こんなにもたくさんの方に来ていただいて、本当にうれしいですね。1対1の密室がこう(たくさんの人が座っている)なって(笑)。

曽山:ここでの説明になっちゃったんですけど、ちょっといろいろ誤解がありまして。まあ、簡単に言うと私の説明不足ですけれども、今日はよろしくお願いします。

谷本:よろしくお願いします。

曽山:今日の流れとしては、この「強みを活かすプロジェクト」について簡単にご説明させていただいた後、谷本さんからのプレゼンと、あと私からもライトニングトークのような10分程度のプレゼンをそれぞれさせていただいて、その後はパネルディスカッションというかたちで深掘りしていきたいな、と思います。

今日のFacebookグループでも、なにかご質問があれば遠慮なく投げかけていただければ、できるかぎり拾っていくようにしますので、遠慮なく声をかけていただければと思います。

真の働き方改革のための「強みを活かすプロジェクト」

では最初に、ちょっとだけプロジェクトをご紹介させていただきます。

まずは今、お手元にお配りした「強みを活かすプロジェクト」というリーフレットをご覧いただければと思います。これはなにかというと、これから日本のビジネスパーソンが生産性向上を上げていくためには、個々の強みを活かす社会が重要になると考え、そういう社会をつくっていくために、広くみなさんに力を貸していただきたいというプロジェクトになります。

もともとは、7月にPHP研究所から『強みを活かす』という本を出版することになり、その出版がきっかけとなって「この考え方を大きく広めていこう」と、こういったセミナーやイベント開催を企画したら、たくさんの応援をいただいております。

強みを活かす (PHPビジネス新書)

例えば神戸大学の経営学の金井(壽宏)教授。また『ワールドビジネスサテライト』でコメンテーターをしている入山章栄さんも、このプロジェクトに賛同していただいています。入山さんには、7月に行うイベント「ストプロ会議」に登壇いただくことになっています。

そういったイベントを通して「強みを活かすことが、生産性向上につながる」という考えをどんどん広げていって、働き方改革をしていく。長時間労働への対策ももちろん重要ですけれども、一人ひとりの才能を活かすという取組みを増やしていくことが真の働き方改革につながるのでは、ということで、ぜひそのプロジェクトに力を貸していただきたいなと思っています。ザッと宣伝になりましたが、書籍の予約もしていただけたらうれしいです。

ちなみに、今日は写真はたくさん撮っていただいてかまいませんので。「こんなことを曽山が言ってた」とシェアしていただいたら嬉しいなと。谷本さんも大丈夫ですか?

谷本:大丈夫です、はい。

曽山:シェアして大丈夫ということなので、資料やプロジェクターもぜひ撮ってください。また、今日のこの対談はまさにこの『強みを活かす』という書籍にも載る対談になります。なので、今日ここにいるみなさんもその参加者の1人として、ぜひサポートいただければうれしいなと思っております。

人事の原点は「がんばっている人を応援したい」

ということで、ここから本題に進めていきたいと思います。まず谷本さんのショートプレゼンテーションをしていただいて、その後、私からもご案内させていただくというかたちになります。谷本さん、よろしくお願いします。

谷本:はい、ありがとうございます。みなさん、よろしくお願いします。「ソヤマンとの強みを活かす対談」ということで、今日は楽しみにしてきました(笑)。

曽山:ありがとうございます(笑)。

谷本:このタイトルをいただいて、私自身もすごく考えさせられるいいきっかけをいただいたと思っています。

ちょっとみなさんに聞いてみたいんですけど、「強みを活かす」って聞いて、まず自分の強みが何かっていうことがわかっている方、どのくらいいらっしゃいますか?

曽山:けっこう自信が必要な感じですね。

(会場挙手)

谷本:おー、少しいますね! じゃあ、今日来たのは強みの活かし方をみんなで探求してみたいというそういう興味からでしょうか。

まず、簡単に私の自己紹介をしますと、私は最初パソナという会社に3年勤めまして、新規事業のプロジェクトに関わっていました。ベンチャーな会社で、新しいことにチャレンジするという精神を学ばせてもらったと思ってます。そんな中で、「自分が長く働いていきたい、そのためにきちんとキャリアをつくっていきたい」と思って。人と組織が非常に好きだったので、事業会社の中での人事をやりたいということで入ったのがGEです。そこで早16年が経ちました。

人事業務の中では採用や、リーダーシッププログラムでは、コンペンセーションの担当、ビジネス担当人事など、いろんなことを経験させてもらいました。とくにここ5〜6年は組織開発、人材開発を主にやっていまして。その中でアメリカの本社で次世代リーダー育成プログラムの担当もさせてもらいました。

私の人事の原点となっているのは、「がんばっている人を応援したい」という気持ちです。これは役職や、どんな仕事をしているかに拘らずがんばってる人、努力してる人が好きなんですね。そういう人を応援したいという気持ちから、今の仕事を続けています。

(スライドを指して)この下の写真がうちの人事のチームでして、今日も何名か来てると思うんですけれども(笑)。

曽山:いらっしゃいますか? ありがとうございます。

GEが持つ「働き方を柔軟に変えていきたい」というミッション

谷本:ちょっとだけGEの宣伝をさせてください。どうでしょうか、GEという会社をご存知の方どのぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

あっ、ありがとうございます。よかったです(笑)。あまりみなさんの目に触れるようなものをつくっていないので、いつも聞くんです。

私たちははインフラ、エネルギー、医療を中心とした製造業の会社です。例えば、発電所にあるようなガスタービンとか、再生エネルギーの風力発電の風車であるとか。あとは医療機器、なかでも大きな画像診断機器など、大学病院にあるような機器をつくっています。

今一番力を入れているのは、GEデジタルという新しいビジネスです。私たちの大きな製品にはセンサーが付いていて、いろんなデータを取れるんですね。そのビッグデータを解析することによって、より新しい付加価値をお客さんに提供するソフトウエアサービス業へと転換するためにソフトウェア開発も盛んに行っています。

私たちが目指すのは、ハードとソフトを融合してお客様にトータルソリューションを提供できるデジタル・インダストリアル・カンパニーになることです。そのためには、まさにサイバーエージェトさんのようなIT系スタートアップ企業の働き方から学んで、私たちの働き方をより柔軟に変えていきたいというミッションもあります。

規模で言うと、社員数は33万人。180ヶ国でのオペレーションがあって、総売上高はだいたい14兆円ほどあります。営業利益率に非常にこだわりがあって、約14パーセントです。これは競合他社さんと比べて2倍以上の生産性をあげていますす。

(スライドを指して)それで、今日の「強みを活かす」なんですが、いくつか言いたいことを最初にまとめてみました。まず、改めてGEの仕組みを見てみると、人事の仕組み自体が個人の成果、成長を支援することを軸としていると思いますので、そこを紹介したいと思います。

次に、部下を持つマネージャーについて触れます。GEでは今年からマネージャーをピープルリーダーという言い方をしていまして、彼らがチームの成果を引き出すためにどういった行動が求められているかが変わってきています。その紹介をします。3番目には、自分を知るということです。強みを活かすうえで最も大事な第1ステップかと思います。自分の価値とは何かということ、みなさんは考えたことがありますか? そこについて考えを共有したいと思ってます。

そうすることで、みなさんが成果をあげ続ける人材になる、イキイキした自分になるという、組織、社会になっていったら本当にすばらしいなと思ってます。

リーダーシップの発揮=個人の成長と成果

では、まず仕組みからなんです。GEが基礎として大事にしていることは「リーダーシップ」です。しかも、全員がリーダーシップを発揮するということが求められています。

リーダーシップって「スキルですか?」とよく聞かれるんですけど、スキルではないと思います。「他の人に対してポジティブな影響を与えていますか?」という、日々の行動や考え方、自分の一つひとつの行いだと定義しています。

なので、スキルでもないですし、「人の上に立ちましょう」「会社の中ではやく偉くなっていきましょう」ということでもありません。このリーダーシップを発揮するということが個人の成長と成果につながる、と深く信じている会社です。

私たちの組織はジョブ型でできています。それぞれのジョブがプロフェッショナル採用であり、求められている成果が明確です。そして自分のキャリアは自分で決める仕組みになっています。

社内公募制といって、社内のポジションがオープンしたら、必ずポスティングがあがり、社員全員にフェアに告知されます。一部戦略的に、例えば営業部門はこちらから配置を考えたりすることもあります。しかし、それでも最後は「それにチャレンジしたい」という個人の意思をもって人を異動させることを大事にしています。

また、タレントレビューを大事にしています。これは過去に「セッションC」と呼ばれていましたが、今は「ピープルレビュー」と言っています。きっと多くの会社でも年に1回、タレントレビュー会議をやっているんじゃないかと思いますが、GEの場合のレビュー会議は評価決議会議ではありません。

レビューの中では一人ひとりがどういうリーダーシップをふだん発揮していて、どんなふうに周りの人から見られているか。その人のリーダーシップの強み、改善点のレビューと、成長に向けてのディスカッションをする。そこでアクションプランを立てて、それに周りのステークホルダーで合意してアクションをフォローをしていく。それがピープルレビューと考えています。

そして最後は、目標管理制度ですね。これは今年、大きく変えました。一人ひとりのジョブで求められている成果が明確にあるんですが、そこにたどり着くまでに今までは目標を「管理」しちゃっていたんですね。

そこを「管理」ではなく、「どうしたらその人のパフォーマンスをもっと促進できるか」にフォーカスした仕組みに変えました。今は目標を上司と部下で決めた後は目標達成のために上司と部下が頻繁に対話をしてフィードバックするように促しています。その人のうまくいっているところ、うまくいっていないところにタイムリーにインサイト、気付きを与えるということが成長支援になり、より早く成果につながると考えているのです。

そして、そうして1年が終わったときに成果を評価してレーティングを付けることをしていましたが、昨年からそのラベル付けをするということをやめました。このあたりは、また後でくわしくお話しますね。

「失敗してもいい。学びが大事」

では、こういった仕組みを使って、部下を持つリーダーのみなさんになにを期待しているかということについてです。

まず今は、「不確実な時代」というのが1つのキーワードとなっていますよね。変化の早い環境の中では、リーダーがいつもすべての答えを持っているわけではない。不確実な世の中で私たちの会社が勝ち残っていくためには、大きな変革とイノベーションが必要です。そこでは社員一人ひとりが自分の付加価値を考えて追究し、いろんな意見をお互いに出してぶつけ合うチーム作りが必要と考えています。

だからリーダーがいかにいいアイデアを持っているのではなく、チームをいかに、それこそ強みやダイバーシティを活かしてイノベーションにつなげていくかが大事ということです。

そのときにリーダーがいつも答えを全部持っていなくてもいいし、知らないことがあってもいい。自分の知らないこと、もしくは弱いところを補えるようなチームメンバーがいることは大事で、そういったダイバーシティをうまく活かすことが大事と思います。

その柔軟さを生むために、今はヒエラルキーというものをことごとくなくそうとしてるんです。

例えば従来のGEのリーダーシップ研修は選抜方式で階層別に行われてきましたが、最近はレベルや役職をあえて混ぜて行っています。しかも、その研修の場ではお互いに自分の役職を使って自己紹介する場はありません。隣にいる人が偉い人だったり、もしくはジュニアな社員だったりします。要は、ヒエアルキーに拘らない「いいアイデアはどこから出てきてもいい」という組織にしていきたいのです。

「失敗してもいい。学びが大事」という、この「失敗」っていう言葉が、実は今までGEの中ではあまり使われてなかったんですね。成長していく、成果をあげていく。その中で、失敗は見せないという文化がいつの間にかできていました。

でも、それこそITスタートアップ企業の上手なところは早くに失敗して、そこから学んで適応して前に進んでいく動きなんですよね。それがより顧客のニーズにあった結果を早く出す。そのアジャイル的な動きをもっと私たちのカルチャーに取り入れたいたいということで、「失敗してもいい!」と言っています。

そのとき、大事なのは信頼あるチームをつくること。「Trust」という考え方です。

Trustって難しくて、単に「この人に任せれば仕事ができるだろう」という信頼以上に、失敗やその人の強み、弱みも含めて、お互いが心理的安全性を感じられるようなチームであるかということです。

ピープルリーダーに一番期待をするところは、みんなが安心、安全、いろんなことを試すことができるチームづくり。そうして、一人ひとりの強みが引き出されるのです。こうしたエンパワーメントと信頼あるチームをつくっていくということが、求められています。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 実務経験ゼロなのにマネジメントを任される管理職 部下から信頼されるための2つのポイント

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!