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リクルート×サイバーエージェント(全6記事)

リクルートが“褒める”にこだわり続ける理由「弱点の指摘は、似ている人を量産するだけ」

メンバー一人ひとりの強みを見つけ、活かすにはどうすればいいのか。FRESH!で放送されている「人事就活チャンネル」の中で、サイバーエージェント曽山哲人氏とリクルートホールディングス瀬名波文野氏による対談が公開収録されました。各社で行われている「強みを活かす」人事とは? 本パートでは、リクルートホールディングスのコアにある「価値の源泉は人」から誕生した制度や文化を紹介。そこには弱点の指摘より「褒める」が重要視される特徴がありました。

3年に1度、最大3週間の休み&30万円の支援金

瀬名波文野氏(以下、瀬名波):ちょっといくつか飛ばして。キャリアウェブはさっき言ったんですけど、基本的には社内のフリーエージェント制です。手を挙げて「仕事をやりたいです」という。

曽山哲人氏(以下、曽山):求人が載っているんですか?

瀬名波:載ってます。

曽山:これはいつ応募するんですか? いつもですか?

瀬名波:常時ある場合もあるんですけど、基本的には年に1回の大きなタイミングが多いですかね。

それから、「Recruit Ventures」は新規事業の提案制度で、基本的に誰でも提案できます。今の事業の多くがそういった従業員の提案から生まれています。

その下のステップ休暇という制度がおもしろくて。私も1度取ったことがあるんですけど、3年に1度、従業員は最大3週間のお休みがもらえるんですよ。当然、そのお休みはお給料も発生する。かつ、30万円の支援金が払われます。

これはなにかというと、「自分がこういうことに挑戦してみたい」がある時にお休みをとる。お給料も、支援金もいただいて、それを自分を磨くために使っていいですよという制度です。基本、誰でもとれます。別に挑戦じゃなくて、ゆっくりしてもいいんです。ちなみに私は丸々3週間、旅行に行ってました(笑)。

その下のフロンティア制度というのは退職金で、何年以上働いたみなさんは前年の年収1年分という制度があるんです。

ちょっと面白いのは、さらにそこに上乗せする制度もあったりします。

3年に1度とか、社内では「当たり年」と言われるんですけど。その「当たり年」がくると、さらに金額が積み増されて退職金として支払われる。

これはなにを意図しているかというと、リクルートグループの中にいても、退職して離れても、その人たちが自分の人生をかけてやりたいものがあれば、それに向き合って社会とつながることが一番いいと信じている。それを応援するよ、と。

そういう意味では、我々は退職のことを「卒業」と言うんですけど、明るく卒業してもらう。「卒業してもらって、本人がやりたいことで社会に貢献する」でいいじゃないってことを、明るくやっています。

「どのポイントを褒めるか」にこだわるリクルート文化

その下の「リモートワーク」は、物理的なロケーションに関係なく、どの場所にいても仕事してもいい制度です。

先ほども申し上げましたけど、いろんなラベリングに関係なく、意思がある人に身の丈以上の仕事を任せる。身の丈以上のことなので、だいたい多かれ少なかれ失敗する。その失敗からなにを学ぶかということに価値があると信じてます。

カルチャーの話とか制度の話とか、わりと人事っぽい話をしちゃいましたね。こんなこと言うと、人事のみなさんに怒られますけど(笑)。

ちょっとオフィシャル版の話をしましたけども、もうちょっと現場で見れば「褒める」「なにを褒めるのか」にこの精神は宿っているなという感じがあります。

例えば、ある営業マンに対して表彰するとき。うちの会社って表彰することが大好きで、いい仕事をしたら大勢の前でするのがけっこう多いんです。どういうポイントを褒めるかにすごくこだわるんですね。ちょっと細かいので全部お話できませんけど。

曽山:ある人が表彰を受けるときに、こんな要素で書かれているという例が知りたいですね。

瀬名波:賞状の構造をだいたい分けると、3つです。まず1つ目に、「どういう評価基準であなたを素晴らしいと言ってますよ」があります。

曽山:むしろ、じっくり見たいですよ。

瀬名波:じゃあ、かいつまんで説明しますね。この賞状は、リクナビという新卒学生向けの情報メディアの営業の表彰ですね。

基本的にこの事業は日本の企業さまに日本の学生を採用して日本で働いていただくという、なんとなくの前提があります。その中で、海外の現地法人が日本の学生を募集するというのをリクナビでやったケースがあります。それの表彰状なんですね。

海外留学や就職が少なくなっているとか、日本の若者は内向きだ、ということが当時こ世の中では盛んに言われていました。でも、本当に日本の若者は元気がないのか、と疑問に思っていた若い営業マンがいて。機会や情報を提供すれば、もっと大胆に挑戦したい若者はいるはずだと信じて、マーケットの常識を変えていったわけです。

かなりのパワーを投じて、1年ぐらいかけて、最終的にかなりニュースやメディアでも取り上げられ、マーケットに一石を投じるいい仕事ができた。そして、「この新たな価値の創造は、リクルートの営業としての模範だと僕たちは思っているよ」という、判断の基準がまず提示されるわけですね。

構造の2つ目が、そのプロセス。このケースで言えば、顧客のキーマンに「ノー」と言ったり、反対する自分の上司を同僚の結婚式で説得したりして、このプロセスはあっぱれだねと、具体的なプロセスを書く。

ここで具体的に書ける上司は、いい上司です。このプロセスがのっぺりしている上司は、仕事してない上司です。表彰状が上手に書けない上司は、あんまりうちの会社で言うとアレです。

曽山:逆に言うと、書ける人はすごいいいところを見ている?

瀬名波:よく見ている。

曽山:ああ、なるほど。それは大事ですね。

尊敬・尊重よりも、面白がる

瀬名波:(スライド上の)3つ目の「教訓」とは、周囲への共有ポイントですね。

表彰状というのは、その本人に渡すだけのものではなくて、そこにいる人たちに共有するためにやっています。このプロセスから、みなさんになにをシェアしたいのかを上司が書くんです。「自分自身の日々の仕事で感じた小さな違和感に逃げずに向き合うことが、やがて大きな志となり、顧客、パートナーの心に火をつけました。リクルートらしい素晴らしい仕事~」といっているんです。

要するに、例えば可愛げではなくロジックで上司を説得できる強みとかが合致したときに、いい仕事ができたんだと、言語化している。表彰の基準、プロセスの素晴らしさ、周囲への共有ポイント。この3つが表彰状の構造で、できる限り多くの人がいる前で、徹底的に褒めるわけですね。

曽山:いいですね。徹底的に褒めるって。

瀬名波:そうなんですよ。中途半端にやるとこういうのはしら~っとするんで。わりと大げさに褒めるのを大事にしてます。いい仕事を表彰するイベントは、もはやお祭りみたいなとこがあります。

曽山:なるほど。

瀬名波:こういう文化とか制度のすべてにおいて、そのコアには「価値の源泉は人」という考え方があります。

人事的に言えば、人材マネジメントポリシーですね。人が他人を評価をしたり、人が他人の能力開発について議論したりするのは、とかく足りてないところ、弱いところを指摘しがちなんですよね。

曽山:なりがちです。

瀬名波:なりがちなんですけど、それをやりだしちゃうと足りないところに目がいって、それを補おうとする。そして、似ている人を量産することになりがちなんですよ。

うちの会社を見渡して、役員のみなさんとか当然ボードのみなさんを含めてですけど、やっぱりかなり変わった人が多いんですよ。公開するので、ちょっと言葉を選ばなきゃいけないなって今思いながら言ってますけど(笑)。

「変わってるよね」っていう人が多くて。それって代々の役職者たちが自分の下のジェネレーションの人たちを「こいつおもしろい!」って思って、おもしろがって身の丈以上のものを任せて失敗を許容して、そこから学ばせてというプロセスが脈々と続いてきているからです。大きな会社になりましたし、上場もしました。かなり個性の強い人たちが要職にいるというのが、このカルチャーを証明していると思っています。

お互いの違いを認識する、尊敬し合う、尊重し合うとかってよく言うと思うんですけど。尊敬、尊重っていうより、もうちょっと「面白がる」に近い感じなんですよ。

曽山:まさにこれですね。

瀬名波:「あいつ変わってて」の後がすごい大事。「あいつ変わってて……ちょっと面倒なんだよね」じゃなくて、「あいつ変わってて……すごいおもしろいんだよね!」って言えるかは、重要な違いだと思うんですよ。

曽山:差が大きいですよね。変わっているとは言え、それを伝えている人は笑顔なんですよね。

瀬名波:そう!「面白がる」は大事かなと思います。ということでございました。

曽山:瀬名波さんありがとうございました。

(会場拍手)

意思表明させる、決断経験をさせる、障害を排除する

曽山:もう聞きたいこと満載だと思いますが、この後このポイントを踏まえながら、私からも少し材料だしをさせていただければなと思います。自己紹介のシートでソヤマンという名前で情報発信していると紹介したのですが、Twitterとかでも発信してますのでぜひフォローをよろしくお願いします。

今日はですね、強みを引き出すために私やサイバーエージェントのリーダーがやってる習慣や具体的なアクションを、ここでご紹介したいなと思ってます。それがこの3つになります。

この3つの全部やどれかを相手や仲間に向けて実施すると、その人の強みが引き出る可能性があるというものです。

まず、1つ目は「○○はどうしたい」という、先ほどの瀬名波さんの言葉にも近いですけど、「意思表明をさせる」を大事にしていることです。自分の思い、考え。それをどうやったら出せるようにハードルを下げるか。これをまず1つ、大事にしているというのがあります。

そして2つ目、「決断経験させる」。これはサイバーエージェントの人事戦略の中で重要視している考え方です。決断の経験。決断って聞くと、ちょっと重いんですけど、決断の内容はライトなものでもいい。営業であれば、この提案資料を持っていくとか、こっちの商品を提案しよう。それぐらいからでも決断と言えます。

日々の小さいものでもいいですね。このクライアントに電話をしてみよう、これも決断。小さくてもいいですけど、決断はまず量が大事。大量の決断をすると、それが自然と慣れや学習をうむんです。

結果的に量が増えてくると、今までできなかったことができるようになり、それが質の向上になる。決断の量を増やしていくと、その質が上がる。そうすると、今までできなかった新しいイノベーションや新規事業が生み出せるようになるというのが、「決断経験をさせる」です。

そして3つ目は意外に盲点で、やってるリーダーとやってないリーダーで差が出てるのが、「障害を排除する」という考え方です。

これは具体的になにかというと、例えばある仕事を誰かに任せるとき、「じゃあこのプロジェクトよろしくね」と言って、私がよく聞くのは、「このプロジェクトを進めて行く中でどんな障害が起きるかな」「障害はどんなものが起きる?」というハテナを投げかけます。これはなにかというと「障害のイメトレ」と自分は呼んでます。

自分が先輩で、メンバーが後輩だとすると、私のほうが経験がある。なので、私からすると「こういうトラブルが入るだろう」「こういうミスをするだろう」が容易に想像がつくんですね。

ですが、まだ経験が浅いメンバーだったり、新入社員だとぜんぜんわからない。その時に「こういう罠があるから気をつけて」と先に言ってしまうと、本人が考えることがなくなってしまうんです。

なので、できる限りどういう障害が起きるかを想像してもらう。最初はほとんど出ないです。ですが、一生懸命考えて出たものを「あっ、それは確かにありえそうだね」、足りないようだったら「こういうトラブルも起きそうだけどどう?」というふうに障害を一緒に考える。そうすると、本人が展開してからの対応が早くなり、成功確率が上がるんです。

仲間の強みを引き出す際に、この3つのどれかを意識するように私はしています。

キャリアの選択肢を広げる9つのブロック

意思表明という切り口の中で、1つワークシートをご紹介したいなと思っているのですが、具体的に「キャリアで悩んでます」という声って、人事だったり上司だったりすると聞くと思うんですよね。その時に「このシートを使って書いてきて」と言ってお願いしています。

それはなにかというと、キャリアオプションという考え方です。この時で言うキャリアとは、仕事とかキャリアの経歴になります。オプションというのはなにかというと、選択肢という意味です。これはキャリアの選択肢を考えようというワークシートになっているんです。考えられるキャリアの選択肢を、本人に意思表明させるというものになります。

例えば、このような9ブロックになります。

先週、GEの谷本さんとお話したときも、この9ブロックを使って別の切り口でワークシートをご紹介しました。このキャリアオプションマンダラートという9ブロック。9つのブロックの真ん中に名前を書いて、もし曽山が自分のキャリアの選択肢の幅をもっと広げるとしたら、この8つのマスをなにか考えて埋めてきてというのを、メンバーにお願いしています。

なぜこのようなものを考えたかというと、私が人事になって12年、たくさん面談に乗っていると「キャリアのデザインができません」「キャリアプランニングはどうしたらいいですか?」とすごい聞かれるんです。

ただちょっと。乱暴なことを言うと、私からしてもわからないよね、と。今頷いてくれてうれしかったですけど、自分でもわからないのに、人がわかるわけない。これが本音なわけです。

「そんなのわからないから頑張って目の前のことをやればいいよ」と言いたくなるんですけど。それを言っちゃうと、言われた本人は梯子を外されたように感じるんですよね。ということで、思いついたのがこれです。「とりあえず8個埋めてきて」と伝える。

例えばですけど、営業から人事に移動した28歳の曽山くんという人がいるとしてですよ。営業出身なので、左上には「営業をさらに伸ばす」というオプションがまず1つあります。人事にきてたまたま採用をやってるとすると、「採用をやってるので採用」と書いている。

人事に展開するとしたら育成もできるだろうし、労務を強化することもできるし、人事のコンサルをやることもあるかもしれない。人事から経営者になるパターンもあるかもしれないし、管理部門のプロフェッショナルを究め、経営本部とか経理とかにいくという手もある。

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