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リクルート×サイバーエージェント(全6記事)

リクルート流「個の強み」を育てる3つの企業文化

メンバー一人ひとりの強みを見つけ、活かすにはどうすればいいのか。FRESH!で放送されている「人事就活チャンネル」の中で、サイバーエージェント曽山哲人氏とリクルートホールディングス瀬名波文野氏による対談が公開収録されました。各社で行われている「強みを活かす」人事とは? 本パートでは、リクルートホールディングスの企業理念や人事制度の1つである「ミッショングレード制」の内容が語られました。

「強みを活かすプロジェクト」とは?

曽山哲人氏(以下、曽山):瀬名波さん、今日はよろしくお願いします。

瀬名波文野氏(以下、瀬名波):よろしくお願いします。

曽山:ということで、お掛けください。瀬名波さんにはどれぐらい前ですかね、3、4ヶ月前におうかがいさせていただいて、御社に行きますってお話をしたら「サイバーのオフィスを見たいから行くね」って言われて、それが実はほぼ初めてお話をさせていただいたときなんですけど。お会いしたとき、瀬名波さんに「こういう企画を考えていて、対談もお願いしたい」って言ったら「ぜひ!」とお返事をいただいて、今日に至ります。

瀬名波:はい。

曽山:ありがとうございます。

瀬名波:とんでもないです。

曽山:今日はですね、後ほど自己紹介とお話をさせていただきますけども。瀬名波さんも写真を撮っていただいてまったく構いませんということなので、できればシェアしていただけるとなおうれしいです。ぜひご協力をお願いできればと思います。

最初に今日の流れをお話したいのですが、(スライドを指して)こちらにある3つのステップでいきたいと思います。

まず、そもそもこの対談のきっかけになった「強みを活かすプロジェクト」を簡単にご説明させていただいた後、瀬名波さんと曽山それぞれがプレゼンをさせていただきます。それぞれ10分から20分ずつお話をさせていただいて、強みの活かし方とか見つけ方をどうやっているかという事例をご紹介します。

その後、2人でパネルディスカッションします。みなさんからのご質問もお受けして、できる限りインタラクティブにできればいいなと思っておりますので、クエスチョンがあればメモをとっておいて、後で投げていただければうれしいなと思っております。

各業界のエキスパートから「強みの発掘」を聞く

最初にこの「強みを活かすプロジェクト」なんですけども、みなさんにご紹介、ご案内だけさせていただければと思います。

これはなにかと言うと、クラウドファンディングで新しい出版をしていこうと。その出版の中で、強みを活かすという考え方を社会に広めていきたいということで、クラウドファンディングを始めています。

クラウドファンディングでのみなさんからの支援のもと、『強みを活かす』という本を出版し、そしてさらに限定イベントを7月21日に渋谷で開催する予定です。ここにいろんな著名な方々を集めて、強みを活かす方法について対談をやろうと思ってます。

強みを活かす (PHPビジネス新書)

具体的に今参加予定の方々のお名前をご紹介すると、例えば、早稲田大学に入山(章栄)先生という教授の方がいらっしゃいます。この方は「ワールドビジネスサテライト」でコメンテーターをされている方で、経営学で非常に有名な方です。イノベーションとか強みとはどういうものかをお話をしていただく予定です。

あとはラグビーの日本代表U20の監督である中竹(竜二)さん。早稲田大学の監督として優勝に導いた方なんですけども、その方からスポーツにおける人材の発掘であるとか、強みの発掘についてお話を聞こうと思っています。

あとはウーマン・オブ・ザ・イヤーを受賞されたことがある、クックパッドの創業メンバーである小竹(貴子)さん。女性のリーダーとしてのお話や、いろんなかたちで強みを発掘するということのセッションを行います。よろしければぜひご参加いただければなと思います。

今日の瀬名波さんとの対談も『強みを活かす』という新しい本に載ります。みなさんも今日は本に載るイベントにご参加いただいているので、ぜひそれもチェックしていただければと思います。

ということで、ここからは瀬名波さんにプレゼンテーションをお願いしたいと思います。では瀬名波さん、改めてよろしくお願いします。

(会場拍手)

「私は人事のプロではない。けれど……」

瀬名波:みなさん、こんにちは。瀬名波でございます。最初に自己紹介をということだったので、どういう人なのかというのをざっと1枚にまとめています。

沖縄出身でして高校卒業まで向こうにいました。大学で東京に出てきて、アメリカとかマレーシアとかイギリスでちょこちょこやりながら、だいたい今までの人生の半分が沖縄で半分がそれ以外という感じでございます。

2006年にリクルートに新卒で入りまして、最初の配属が経営企画だったんですね。役員の直下部隊で2年事業開発系のことをやりまして、その後に、ちょっと後で出てくるんですけど、自分で手を挙げて異動希望を出して、営業現場に異動させていただいたと。

営業では人材関係の提案営業ですね。ソリューション営業を4年ほど国内でやりまして、クライアントは主に大手多国籍企業、採用とか育成とか。それから当時、ちょうどリーマンの後のタイミングもありましたので、代謝みたいなことをどう考えるかというような、人事テーマ全般をお手伝いしました。

その後、これまた手を挙げまして。ちょっと大きなきっかけがあって一念発起しまして、社内の公募制度でロンドンに移りました。ロンドンの買収直後の人材関連の企業、だいたい260人くらいの従業員で350億円くらいの売上規模ですかね、そこに赴任したんです。

日本人は最初から最後まで1人だったのですけど、現地のメンバーと一緒に数年かけて会社を大きく立て直して帰ってくるというのをやりました。そして去年、日本に帰国。R&Dをやって、今は人事です。

これ、立っていたほうがいいですか? すみません、ルールがまだわからなくて。

曽山:すみません。座っていただきましょうか。

瀬名波:最初にみなさんに断っておきたいことがあります。ざっと経歴を見てわかると思うんですけど、私は人事のプロではないんですね(笑)。たぶんみなさんわりと人事にお詳しいと思うし、しかも曽山さんとの対談でもありますし、緊張していますが。

現場の営業、そして海外子会社の経営から人事に移って1年ぐらい経っているという状態で私が今感じていることなど、大事にしてをお話ができればと思います。

それから、みなさんもステージの上に来ていただくとわかると思いますが、これだけの眼に見つめられて、あまり自分の得意と言っていいかどうか微妙な人事の話をするというのはなかなか緊張感が高くて。

わかったら「わかってるよ」と頷いたりシグナルを出していただいたり、わからなかったら「うーん、ちょっとわからないです」という顔をしてくれないと不安になるわけです。なのでシグナルをくださいね。

曽山:みなさん、リアクションを高くとりましょうね。

瀬名波:ありがとうございます。

「起業家精神を大事にしている」だけではなにも起こらない

曽山:どうぞ座ってください。ちょっとこれ、私がいじった方がいいかな? (スライドの)Forbes Japan「世界で闘う日本の……」

瀬名波:次にいきまーす!(笑)。

曽山:あれっ!?(笑)。 聞きたいですよね?

瀬名波:いや、私の話はいいですよ!(笑)。

(スライドを指して)さてさて、1枚目はリクルートグループの経営理念のページにしています。「私たちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す」。これは、リクルートグループがずっと大事にしている理念です。

理念というと、社長室とか役員室とかにあって、かっこいいフレームに入ってるけどほこりかぶってる、みたいな印象があるかもしれないんですけど。うちの会社ではこの理念を大事にしていて、ここに共感する人たちが集まって事業が、そして経営が推進されているいます。

これからお話するいくつかのことのルーツというか、真ん中にあるのはこういうことだったりするので、1枚目でご紹介をしています。

今日は、強みを活かすというテーマをいただいているので、企業文化という視点と、それから具体的な人事制度ですね。その両方の視点から光を照らして、リクルートでは「強みを活かす」がどう行われているのかをお話できればと思います。

まず最初に企業文化なんですけど、大きく3つあります。

1つ目は「起業家精神」というものでございます。これはなにかというと、こんなプロダクトやサービスを出して世の中をこうしたいというアイディアを持つということ。

……ちょうど先週の金曜日に決算発表が終わっているんですけど、連結売上で1兆8,000億を超えていますが、今、国内の市場でナンバーワンになっている事業のほとんどが、従業員のアイデアから生まれてるんですね。

個人のビジネスアイデアが、仲間が増え事業になり、それが市場のシェアを席巻してナンバーワンになるというありがたいプロセスを踏んで、ほとんどの事業が事業として成り立っている。そういう意味でも「起業家精神」をすごく大事にしています。

「大事にします」というだけだと実はなにも起こらなくて、「起業家精神」を持った人に若いうちから大きな仕事の機会が与えられて、より大きく成長するというこのセットで1つです。

曽山:ここがポイントなんですね。

瀬名波:はい。

常に「あなたはどうしたい?」が真ん中にある

それから2つ目が「圧倒的な当事者意識」なんですけど。これはなんのことを言っているかというと、なんのために仕事をするかということに近いんです。させられているからするということではなくて、自分はこれをこうしたいとか、会社をこうしたい、カスタマーをこうしたい、クライアントをこうしたい社会をこうしたい。

なんでもいいんですけど「こうあるべきだ」という論をそれぞれが持っている状態を理想として置いている。なので、「圧倒的な当事者意識」を大事にして、それを育むためにフラットにコミュニケーションをするとか、情報をちゃんとシェアしてみんなが同じような情報を持った上で、論を持つことができるようにしてます。

3つ目が、「個の可能性に期待し合う場」。これは互いに相手の可能性に期待し合う。それは別に上司と部下という関係だけじゃなくて、同僚でもいいし、むしろこういった仲間でもいい。

みんなが遠慮しながら同じような方向に意見をすり合わせていくと中庸な結論になっちゃう。もっともっとオリジナルの、その人の意見やアイディア、個の可能性に期待し合うということが、大きな成果を生む原動力になっているのではないか。

ちょっと堅い話をしちゃったんですけど、よく社内でどんなコミュニケーションがされているかというと、例えば今日うちのメンバーも何人かきているんですけど、「中島はどうしたいの?」「優子さんはどう思う?」と聞くわけです。私も上司にこの10年、11年の間に、「お前はどう思う?」「瀬名波はどうしたい?」と問いかけられたことがたぶん、何十回、何百回とあって。

曽山:何十回、何百回ですか?

瀬名波:わりと頻繁にありますね。「どうしたい?」「こうしたいです」がコミュニケーションの始まりだし、「こうしたい」って強く思うほどの論を自分で考え抜いて持っていることが、1人前の基準みたいなところがある。「あなたどうしたいの?」という言葉が真ん中にあります。

「あなたの今の仕事を通じて成し遂げたいことはなんですか?」

ここまでが文化の話で、もう少し人事っぽい話もしたほうがいいかなと思っていくつか特徴的な人事制度をここに挙げているんですけど。やっぱり一番大きいのは「Will Can Mustシート」だと思っています。

「強みを活かす」の前提として個人の思いとか意志とか、そういうことを大事にする会社なので、「あなたの今の仕事を通じて成し遂げたいことはなんですか?」というWillを問うわけですよ。

「この仕事で」という時間軸と、「2、3年後にどうありたいですか?」という2つの時間軸でWillを問うたり。それは本人も「自分はこうありたい」と書くし、上司の側も「あなたにこの仕事を通してこうなってほしいけど、2、3年後にはこうなってほしい」という風に両方で書くんです。

曽山:今と2、3年後ですね。

瀬名波:そうです。上司も部下も。それを半期に1回、全従業員がこれをやっています。

メンバー一人ひとりに光をあてる、ミッショングレード制

それからその下のミッショングレード制というのは、お願いする仕事の成果がどのぐらい期待されるかということによって、ミッショングレードという数字が決まって、そのグレードによって、緩やかに報酬と結びついたテーブルがあるわけです。

なにを意図しようとしてこの制度を入れているかというと、年齢とか性別とか、当然宗教とか肌の色とかセクシャルオリエンテーションとか、そういうことに関係なく、やりたいと思う人、お願いしたいと思う誰かに対してその仕事をアサインして、期待成果をフェアに報酬と結びつけるためにミッショングレード制があります。

それから、人材開発委員会はこだわりを持ってやっていて、

例えばあるメンバーがいるとします。そのメンバーの能力や今後やりたそうなこと、まさしく強みとか、時には弱みとかを、その本人がいない場で議論するんですけど。どう行うかというと、私が課長だとするじゃないですか。

そうすると課のメンバーのAさんについて、課長である私と横の課の課長。その人は別に私の課のメンバーをマネージしてないわけですけど、彼ともう1つ課があればそこの課長と、さらに1つ上の部長ですね。

といった、上司レイヤーの横とその1個上の上長が入って、メンバー1人について、「この人の強みはなにで、今後こういうところを開花させたいと僕は思っていて」を議論しながら、どう能力開発するかを議論をするんです。

なんで横のマネージャーも入れているかというと、私にわかるこのAさんの強みとか、いいなと思うところと、横の課長が思ういいなと思うこととか、強みだなと思うことってやっぱり違ったりするんですね。

なので複眼的に、ある人の強みとか弱みとかを見極めながら、どういう仕事をアサインしてその能力を最大限に発揮させるかこだわるというのを、全従業員分年2回やってるんですよ。

曽山:年2回ですか。

瀬名波:上長は大変なんですよね。たくさんの人をコメントするということがありますので。けれど、ここで横のマネージャー同士もけっこういい緊張感があって、ちゃんとメンバーのことを見ているかとか、おもしろがっていろんなところから光を当てられるかみたいなことやってます。

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