
2025.02.06
ポンコツ期、孤独期、成果独り占め期を経て… サイボウズのプロマネが振り返る、マネージャーの成長の「4フェーズ」
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(会場拍手)
庵野秀明氏(以下、庵野):株式会社カラーの庵野です。
(会場拍手)
西村義明氏(以下、西村):スタジオポノックの西村と申します。よろしくお願いします。
(会場拍手)
西村:今日は司会がいませんので、僕が司会を回さないといけないんですけど(笑)。
一同:(笑)。
西村:みなさん、「でほぎゃらりー」ってたぶんわからないですよね? でほぎゃらりーって、この「株主鼎談」っていうふうなこと書きましたけど、庵野さん、そして川上さん、そして西村。
僕でですね、「1つのアニメーション美術会社を立ち上げよう」ということで立ち上げました。
さかのぼるともう、あれは1年半前ぐらい……、あ、2年前ぐらいですね? 一昨年の7月ぐらいでしたっけ。立ち上げたのはそのぐらいじゃないですか?
川上:けっこう前な気がしますね。もっと前じゃないですか?
庵野:もっと前な気がします。
川上:そうですよね。
西村:記憶が定かじゃないですね、みんな(笑)。
一同:(笑)。
西村:スタジオジブリのね。
川上:そうですね。
みなさん、てんでんばらばらになったんですけど、「やっぱりこの優れた背景美術を残すには場所が必要だろうな」っていうことで。
実は、『かぐや姫の物語』でアカデミー賞に同行して行ってた時に、最初に僕が川上さんとロビーで話したの覚えてます?
川上:あの時でしたっけ。
西村:あの時ですよ(笑)。
川上:(笑)。
西村:なんも覚えて……(笑)。ちゃんと話さなきゃいけないですからね、これ。
川上:大丈夫です、大丈夫です(笑)。
西村:その時に話したんですけど。
川上:そうですね。
西村:僕が「こういう10人ぐらい、美術会社作らないと、美術スタッフ集まんないと、優れたアニメーション映画っていうのはできないんじゃないか」っていう提案を川上さんにして。
で、(僕には)金銭的体力ありませんからね、川上さんに頼ったんですけど。そしたら、川上さんからあの時、「庵野さんに協力してもらいましょう」っていう。
川上:そうですね。
西村:その時、なんで庵野さんの名前が挙がったんでしたっけね?
川上:いや、でも、それはやっぱり、僕があの時聞いた話っていうのが、まあ、僕が受け止めた話なんですけども、1つはやっぱり、アニメ業界って正社員で雇ってるのはジブリぐらい……。
西村:そうでしたね、多くは。
川上:まあ、他にもありますけども。
西村:ほぼすべての工程をね、正社員で集めてたのは。
川上:すごいめずらしくて。美術スタッフとかって、あんまり会社に所属してる奴はいないらしいんですよね。
そうするとジブリがなくなった後に、じゃあ、通常のアニメの制作費の中でジブリの背景美術の人が抱えられるかっていうと、そこで雲散霧消してしまう可能性がある。
そういう話を聞きまして、「それで残したいんだ」っていう話を聞きまして。そうすると日本で言うとね、そのジブリの背景スタッフを実際に使う制作スタジオって、あとは庵野さんのところ。
庵野:あとは(スタジオ)地図とかね。
川上:はい、そうですね。
西村:スタジオ地図もね。
川上:ぐらいしかないので。「じゃあ、やっぱりその会社で、1個は協力して作るのがいいんじゃないのか」っていうことで、作ったっていうことですよね。
西村:庵野さん、お聞きした時に、すぐに賛同いただいたような気がするんですけど。
庵野:いや、西村くんの話がなかったら、カラーで美術部を作ろうと思ってて。
西村:あ、そうなんですか。
庵野:そう。串田(達也)とか抱えちゃってたのでね。そういうスタジオができるんだったら、そっちのほうがいいと思ったんで、「じゃあ、それでやったほうがいい」って。
西村:串田さんって、『エヴァンゲリヲン』の……。
庵野:美術監督とかをやってる。
川上:そうですよね。庵野さん自身も、「ジブリのスタッフが離散するのは、これは損失だ」っていうのをね。
庵野:手描きの美術を残そうとしてたところで、ちょうど3人そろった、と。で、そこに集める人もいたんで、「これはちゃんとやろう」と。
男鹿(和雄)さんも協力してくれて。でほぎゃらりーって、なんで「でほぎゃらりー」っていう名前なのかというと、これ、命名者は男鹿さんですよね。
男鹿和雄さんっていう、スタジオジブリの作品の、もう本当ずっとやられてきた方で。『となりのトトロ』とか、『もののけ姫』とか、『おもひでぽろぽろ』とか、美術監督やられてますけれども。その方が「でほぎゃらりー」っていう名前をつけてくれて。
あの時に、「じゃあ、名前どうしよっか?」っていう話を川上さんがされてた時に、「男鹿さんに決めてもらいましょう」って。
川上:あー、そうですね。
西村:ね。
川上:……あー、そうそうそうそう。
西村:……全部覚えてないですね(笑)。
川上:いやいや、覚えてますよ。
西村:覚えてます?(笑)。
川上:覚えてますよ。いや、それ、ぜんぜん。
西村:大丈夫ですか(笑)。
川上:やっぱり男鹿さんと武重(洋二)さん、この2人が美術の人のキーになるので、「やっぱりこの2人に協力してもらわないと求心力生まれない」っていう話で。
で、「どうしようか?」っていう時に、「まず名前をつけてもらって、逃げられないようにしよう」という、そういう作戦が最初あったんだと思います(笑)。
西村:(笑)。わかりにくいかもしれませんけど、アニメーションの美術スタッフなんかは絵を描くのが仕事で、こういう会社に所属して、それこそマネジメントみたいなものに関わるのって、本当嫌がる方が多いんですよ。
で、男鹿和雄さんも美術監督っていう仕事を、本当にある時嫌がっていて。監督業務って1人じゃできないもので、いろんな美術スタッフ、それこそ10名~20名の美術スタッフをまとめあげて。
それをチェックして、あるいは人生相談乗って、っていうことをやり取りするんですよね。それが嫌で、男鹿さんなんか、ちょっと離れた山里に暮らしてるんですけど。それで、「参加してもらうためには、もう逃げられちゃ困る」っていう話が。
川上:そうですよね。それで協力してもらえて、良かったですよね。
西村:ありがたかったです。
川上:それも、もともと男鹿さんが、「自分でもしスタジオを作るんだったらこの名前にしよう」と思ってた名前をもらえたんですよね。それが「でほぎゃらりー」。
西村:「でほぎゃらりー」っていうのは、男鹿さんの故郷の……。
川上:秋田の方言ですよね。
西村:「でほぎゃ」っていうのが、秋田弁で「適当」って意味らしいんですよ。これ、けっこう大事なコンセプトかなと思うんですけど、手描きの背景の中で「適当」っていうのは。
全部、アニメーション背景っていうのは一つひとつが美術品みたいな価値があると僕らは思ってるんですけど、ただ一方で、少ない期間で1本の映画を仕上げなきゃいけない。
『メアリと魔女と花』なんかは1,282カットか1,283カットか忘れましたけれども、それぐらいの背景美術を20人弱の人間たちが。そうすると、時間ないわけですよね。あるところはちゃんと描いて、あるところは手を抜くんだっていう職人の気持ちっていうか、そういうのがあるんですけど。
ただ一方で、ちょっと今日お聞きしたかったのは、川上さん、それこそドワンゴっていう会社でデジタルやられていて。庵野さんの作品はデジタルと手描きというか、ご自身で実写映画撮られる時なんかも、デジタルのCGだけじゃなくて特撮なんかも利用されていて。
デジタルと手描きっていうものって……。手描き背景の美術スタッフを集める。でほぎゃらりーってそうでしょうけど。それに関して、なにかの思いっていうのはあったんでしょうかね?
庵野:手描きはこれからどんどん、まあ、状況的に厳しくなっていくと思うんですよね。やっぱりデジタルのほうが効率がいいし、儲かるんで。
ただその中で、こういう伝統工芸みたいなものはなるべく残していきたい。だから、でほができた時も、「とにかく新人を採ってほしい」っていう、これだけは要望したんですね。
新人が毎年3人でも5人でも入って、それが10年、20年残ってくれれば、また次の年にも、次の年にも。で、小さいながらも、それが継続してくれるかなと思ったんですね。だから、手描き背景という技術とその良さというのは、なるべく残していきたいな、と。
廃れてはいくと思うんですよ。どうしても主流にはなっていかないんだけど、もう。デジタルのほうが主流になってきてるんで。その中でも、そういうところで手描きっていうものにちょっと抗ってほしい。それは作画にもよりますけどね。
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