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ビアトーク ~”バリュー”が誰にも真似できない会社をつくる〜(全5記事)

「社内情報のオープン化」で得られる効果は? メルカリとヤッホーが“全部出す”と踏み切った理由

「メルカリ」を運営するメルカリと、「よなよなエール」などのクラフトビールを次々と生み出すヤッホーブルーイングによるイベント「メルカリ×ヤッホーブルーイング ビアトーク ~”バリュー”が誰にも真似できない会社をつくる〜」を開催。バリューにこだわる理由、紆余曲折を経て辿り着いた「強い組織を作る方法」などをビール片手に語り合いました。最終パートでは、両社が情報オープン化に踏み切った理由と、そこで得られた効果を語っています。

バリューはトップダウンで決めなきゃいけない

麻野耕司氏(以下、麻野):ほか、いかがでしょうか?

(会場挙手)

質問者2:お話ありがとうございました。小泉さんに2つほど質問させていただきたいです。

まず1点目に、採用に関して。各バリューに基づいて9つの評価があるとお話があったのですが、差し支えなければ、それをどう決めたかをおうかがいしたいです。

もう1点が、バリューを決めるときに、ポストイットを用いてアイデア出しを行ったというお話でしたが、そこに参画した社員は、どこまでの社員が参画したのかなという、この2点をお願いします。

小泉文明氏(以下、小泉):1点目は、ぶっちゃけ覚えていないです(笑)。今言われて、なんだっけなと必死に思い出しているんですけど、ちょっと思い出したら言いますね。

2点目で言うと、社員は入れていないです。役員だけです。会社の経営は、社員を巻き込んだほうがいいこともありますけど、トップダウンで決めなきゃいけないこともたくさんあると思っています。

こういうミッション、バリューは、確実にトップダウンで決めなきゃいけないことです。会社の未来を自分らでどうしたいのか。それを、浸透するタイミングではじめて、社員たちを巻き込んでいく感じです。僕らは、これを決めたあとに、翌月に全社合宿に行きました。

当時、25人くらいですけど、このバリューの浸透の合宿をやりました。最後、浸透させるまでが仕事。決めただけで経営陣は満足しちゃうけど、ずっと言ってるように、浸透まで責任を持つことがすごく大事だと思いますね。

社員は必要以上に絡ませなくていいと思います。それは経営陣たちの強い意志だと思っています。経営陣も、社員が入れば入るほどいろんな顔が見えちゃうので。そうすると、言葉がマイルドになっちゃいます。石が丸くなるみたいな感じで、結局つまらないものになる。

なので、基本的にはGo Boldみたいに、ある程度は強いメッセージを込めたほうがいいと思います。

質問者2:ありがとうございます。

ファンが愛してくれている3つさえ守れていればいい

麻野:ほか、質問ある方いかがでしょうか?

(会場挙手)

質問者3:井手さんにお聞きしたいです。たぶん2年前だと思いますが、キリン社との業務提携があり、そこでの生産が始まったと思います。顔が見えるとか、個性的な味の部分、バリューの部分、生産を外に出すという部分について影響があったのでしょうか?

もう1つは、御社からキリン社に業務提携をする中で提供するバリューについて、ネットマーケティングのノウハウ提供のお話があったと思います。そこは、バリューにかなり深く密接に関わる部分と思って聞いていました。そこで他の会社と一緒に仕事をするにあたって、バリューをどう扱っているのかをお聞きできればと思います。

井手直行氏(以下、井手):ご存知の方はいないかもしれないですけど、2年半前にキリンビールと業務提携をしました。当時はキリンビールの社長で、今のキリンホールディングスの社長の磯崎(功典)さんとです。

それで、私と記者会見をして、提携しますと発表をしたんです。その目的は単純に、お金的にも日数的にも我々の急成長を支える製造設備が間に合わないからです。

大胆にも、田舎の中小企業が日本を代表する食品会社の大手ビールメーカーに「うちのビールを造ってくれないか」と言ったんです。大胆にも(笑)。そうしたら、複数社から「ぜひやりたい」と言っていただいて、最終的には一番いい提案だったキリンビールさんを私は選んで業務提携をしました。

実は、ヤッホーバリュー。これを考えたきっかけの1つは、「大手と提携したときに、我々のファンはどう思うのか?」です。いろいろな海外の事例や、うちの今のファンが我々を愛しているなど、いろんなことを調べました。

その上で私が決断したのは、この3つさえ守っていたらどこに造ってもらっても、本当に我々のことをわかっているファンは離れない。海外でもそういう事例があったんです。

もともとファンの声で「軽井沢で造っているから好き」「ちっちゃいから好き」「ちっちゃな会社が単独でやっているから好き」など、いろいろありました。けれど、本当に我々が押さえるべきはファンが信じてくれる理由です。

キリンビールで造っていようが、海外で造っていようが、大した問題じゃないと考えたんです。あと1つ勇気をもらったのは、世界の事例で「自分たちが造っていないから嫌だとは熱狂的ファンが言っていない」「ファンがずっと支持してくれている」というところがありました。例で言えばApple。いつもこの事例を例えると「ふざけんな」と言われますけど、私はAppleを意識しています。

Appleは、自分で(製品を)作っていないですから。なのに、ものすごくApple信者がいる。全部、東南アジアで作ってもらっていますが「これAppleが作っていない」なんて気にしませんよね。それは、嗜好品と工業製品の違いだと言われますけど、少なくとも私はそう思わない。

「革新的な行動」。ここがAppleにも通じると思っています。今ティム・クックさんだけど、ジョブズさんや個性的な製品。こういうところを守っていけば、キチッとやってくれる。だからキリンビールさんに委託しても、ここさえ守っていれば我々は大丈夫という判断です。

「情報を全部出す」ことで得られる2つの効果

あと、今キリンビールさんと提携していますけど、我々は常にオープンです。キリンビールさんに対してだけじゃなく、同業他社にも、すべてオープンにしている。だから、いろんな同業者の方が毎週のように見学に来るんです。「どうやってビールを造っているんですか?」と。レシピも全部開放して、ノウハウも全部教える。キリンビールさんにも全部教えるし、全部オープンなんです。

けれど、やれないんです。そういう問題じゃなく、カルチャーの問題なんです。ここに踏み込むかと言ったときに、我々は「いいんじゃない」とやるんです。でも、ほかの企業では稟議が10回くらいあって、我々みたいなことを提案したら絶対に経営会議で落ちるんです。そういうことがわかっているので、すべてオープンにしています。

けれど、「ビール市場を盛り上げようね」という磯崎さんとの固い男の約束があって業務提携をしています。キリンビールも、今はアサヒに次いで2位ですけど、長年ビールのリーダーだという自負があるんです。

ビール業界が廃れていくのは許せないと思っている。だから自分たちができないことをヤッホーさんがやってくれているから、2社で「日本のビールをもう1回盛り上げよう!」と、僕らの心がつながっています。けれど、実務的には我々は委託がほぼすべてです。

小泉:全部出しちゃうって、強いですよね。実は、全部出すことは大事だと思っていて。メルカリも「メルカン」で全部出しちゃっているんです。社内の情報がダダ漏れで、僕ら人事の制度も含め全部出しています。

全部出すと2つ効果があると思っています。まず「社員が自分の仕事に対してプライドを持つ」。社内の人たちが全部を開放することによって、社外の人たちが「すごいですね、こんなことをやっているんですか」と、そのフィードバックをもらって自分の仕事にプライドが生まれる。

そして、「もっと社会を驚かせたい」「もっと自分が新しい仕事を生んで、社会に対して気づいてほしい」と、どんどん、どんどん、セルフモチベートされて次の仕事を見つけにいくんです。

そこにGo Boldというバリューがあり、さらに難しいことをやろうとする。出すことにより、会社のアウトプットの質が上がると思っているのでメルカンにもどんどん出す。

もう1つは、(井手さんが)おっしゃっていたように、真似できないです。真似しても意味がない。会社の状況も事業も違うので、真似なんか意味がないし、されてもどうでもいいんです。ぜんぜん会社が違うので。なので、僕もオープンさはすごく大事にしています。

バリューが末端の社員までいくと、会社の競争力につながる

麻野:「真似できないのは、その文化が違うから」という理由が、今日のテーマには、非常にいい最後の話だと感じております。

話が盛り上がってきましたが、最後、お2人からメッセージをいただいて、このあと、懇親会に入ろうと思います。今日、ご来場いただいているみなさんに、小泉さんからメッセージをお願いします。

小泉:これってなんの会でしたっけ? 僕からは、心地よく終わったんですけど(笑)。

(会場笑)

小泉:実は、年末に宮根(誠司)さんの特番で、ニトリさんがたぶん29年間増収増益の会社ということで、似鳥(昭雄)会長がいらっしゃったんです。僕らは盛り上げ役みたいな感じでしたが、僕らのやり取りを見て広報同士が仲良くなったんです。それで「これ(今日の会)をやろう」と、広報同士が勝手に言っているんですね。

広報同士がなにを言ったかというと、たぶん、お互いに自分たちのバリューに対するプライドがあるんです。

自分たちの会社が好きだとか、僕らの会社が本当にユニークだとお互いの広報が思っているので、それを意見交換したら彼女たちが盛り上がっちゃった。「こんな僕らを見てください」ということが、たぶん今日の会の趣旨かなと勝手に思っています。

やっぱりそのくらい、会社のバリューが末端の社員までいくことが、会社の競争力につながると思っています。そういうユニークな会社が日本をどんどん元気にする、強くすると思っています。

たぶんここにいるみなさんも、会社経営や、会社の中で重要な役職に就いている方だと思うので、ユニークな強みを、もう1回見つけてもらえればと思います。僕からは以上になります。ありがとうございました。

(会場拍手)

大変な思いとともに、どん底から今日まで来た

井手:3つ言いたいことがあります。1つはこういう場で、酔っ払っていますけど(笑)。なにかみなさんの参考になり、刺激になりを得てもらえれば、来ていただいて良かった。

2つ目は今日、短時間でしたが、小泉さんと私はぜんぜん違います。彼はエリートで、 私はずっとパチンコをやって生活してたんです。浮浪者みたいな生活をしていた(笑)。

(会場笑)

本当は、こういうところに立っちゃいけない人間なんです。それでも急成長した。小泉さんもいろいろ経験をされて、大変な思いもあって、私もどん底から今日まで来た。それを本当に手短にしかお話しできなかった。

PRじゃないけど、後ろにある、私が去年『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』という本を出しています。そこにいろんな事例がいっぱい書いてるので、興味のある方はぜひ。

(参加者の反応を見て)あ、買っていただいた。ありがとうございます(笑)。あそこに手を挙げていますが、今売っています。ちょっと割引して売っていますのでよかったら買ってほしいなというのが、2つ目。

あと3つ目。これがね、一番大事なんです。よーく覚えといてください。今日、テーブルにあるビール。これね、ローソンで売っています。ローソン!

(会場笑)

覚えておいてください。ローソン、イトーヨーカドー、東急ストア、成城石井、あとどこだ? ちゃんと買ってくださいね! 今日は、みなさんが飲んだことのないビールもたぶんあったと思いますので、ぜひ!

小泉:試飲会だ(笑)。

井手:今日は試飲会なんですよ!(笑)。

(会場笑)

ぜひ買っていただければ。(スタッフを見て)……なになに? 醸造所見学ツアー? それは7月8日(土)から10月くらいまで醸造所を開放して、土日祝日、1日5コースで、1時間半くらい我々のファンが一同に集まる見学ツアーがあります。ビールをけっこう飲めちゃいます。

これの満足度が7段階評価があって、なんと上位2段階の割合が95パーセント! 業界が青ざめるくらいのすごい満足度のイベントをやっています。インターネットで申し込みをします。

会社も見られて、うちの社員がいろいろ話をしてくれて、エンターテイメント性を売っています。新たな気づきになると思うので、ぜひいらっしゃってください。今日はありがとうございました!

(会場拍手)

麻野:ということで、「メルカリ×ヤッホーブルーイング ビアトーク ~“バリュー”が誰にも真似できない会社をつくる~」セッションでございました。以上です。ありがとうございました!

(会場拍手)

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