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ビアトーク ~”バリュー”が誰にも真似できない会社をつくる〜(全5記事)

メルカリ小泉氏「PRをおろそかにする会社は、絶対に勝てない」ヤッホー代表と語る広報戦略の価値

「メルカリ」を運営するメルカリと、「よなよなエール」などのクラフトビールを次々と生み出すヤッホーブルーイングによるイベント「メルカリ×ヤッホーブルーイング ビアトーク ~”バリュー”が誰にも真似できない会社をつくる〜」を開催。バリューにこだわる理由、紆余曲折を経て辿り着いた「強い組織を作る方法」などをビール片手に語り合いました。本パートでは、両社が行う広報戦略を紹介しています。

PRをおろそかにする会社は、絶対に勝てない

麻野耕司氏(以下、麻野):バリューの浸透は、採用が大事ですよね。成長企業で組織が崩れる会社は、ほとんど、理由をさかのぼっていくと、バリューが合わないけど、スキルはいいから採った人が、組織を悪くしているという傾向があると思います。

逆に、すごくモチベーションスコアが低い会社が良くなるときも、このバリューに合わない人が会社を辞めると逆に良くなることが多いです。なので、そこの入口と出口の管理はすごく大事という感じはします。踏ん張ることが大事かなと。

最後の質問にしたいと思います。今日、広報の方もたくさんいらっしゃっています。先ほど1,000人の応募がある話がありましたけど、両社とも、すごく広報、PRがうまくいってると思うんです。組織のことも、この両社は組織文化が非常にいい、行動指針が浸透しているというイメージを持つくらいPRがうまくいってると思います。

ちょっと話の筋がそれますが、メルカリさんも、ヤッホーブルーイングさんも、PRが素晴らしいので、ぜひ、PRへの考え方について取り上げていただきたいです。そういう質問が来ていますので、お話いただければ。小泉さんから。

小泉文明氏(以下、小泉):けっこう酔ってきましたね。

(会場笑)

これからの日本の経営で、PRをおろそかにする会社は、絶対に勝てないです。会社をやる、サービスをやる、共感をどう得るかが、すごく大事です。結局、選ぶ手法なんて死ぬほどあって、サービスもたくさんある。なので、共感するポイントをどれだけ僕らから発信できるかです。

僕らの会社はたぶん、Wantedlyを使って採用ブランディングを強化した最初の会社です。途中、メルカンというオウンドメディアに変えました。

なぜ変えたかというと、今いろんな会社がWantedlyでやっている社員紹介的なブログを最初にやったのは僕らなんです。「セルフブランディングしていこう、自分たちでブランディンクを作っていこう」と、『Wantedly』であれをやりました。

でも途中から、それがあまりにもフローになっちゃったので、僕自身は貯めたいなと思った。ブランドというのは、中・長期で考えなきゃいけないので、オウンドメディアを作ろうとしました。

たぶん人事がマネジメントをしているオウンドメディアを持っている会社はうちしかないと思うんです。「メルカン」を作って、自分たちで発信をして、自分たちでブランディングを作ることをやっているんです。

等身大を見せないと響かない

結局、そのブランディングに対して経営として、放っておこうと思ったら、放っておけます。けれど、自分たちで作る。

自分たちが次のステージに行くために、どういう見られ方が大事なのか、それが主体的に考えられるかどうかを極めて大事と思っています。メルカリのブランディングは、かなり細かく、空気を扱うように見ています。

たまに、僕らの会社にありがちなのは、ちょっとプロフェッショナル色が強すぎてしまって、若手が来ないことが起きるんです。あと、女性が来ない。なんか、30代以上のゴリゴリの男性しか来ない(笑)。

(会場笑)

若いセンスがほしいけど、そういう子からすると「メルカリ怖い、強すぎる」みたいになっちゃうんです。

そういうときは、けっこう若手や女性を出して、実は、こういう活躍をしている人もいるんですよと。結局、等身大を見せないと、なかなか採用広報的なものは、響いてくれない。なのであの手、この手で、空気を感じながらやっているという感じです。

実は(社内では)広報が僕の目の前にいるんですけど、そのくらい、僕自身はすごく大事な存在として広報やマーケティングを見ています。

目に留めて、記憶にとどめ、クチコミしていく“知的な変わり者PR”

麻野:ありがとうございます。井手さんはいかがでしょう?

井手直行氏(以下、井手):背景的になにが大事か定めていないですけど、今聞かれたので、3つ、本当に大事にしてることが思い浮かびました。

1つ目は、我々、知的な変わり者PRという手法がありまして(笑)。小さな会社なので、基本的にお金がないんです。お金がないし、誰も知らない。最近は、ちらっと知られてきましたけど、ほんの数年前までは、誰も知らないわけです。埋もれているわけです。

そういうところで生き残っていくPRは、本にいろいろ書いていますが、私は頭が悪いのでわからないんです。だから自分で3つ定めたんです。

まず、「消費者の目に留まる」こと。まず消費者の目に留まって、2番目に、「強く記憶にとどめる」。普通に記憶にとどめるのではなく、強く記憶にとどめる。3つ目が「口コミする」。シンプルにこの3つを、10年前からいまだに心がけてます。目に留め、強く記憶にとどめ、クチコミする。

たぶん、今日みなさんがここに来るまでに、いろんな看板をご覧になったと思いますけど、覚えている看板、1個もないと思うんです。これは、見えているけど、普通の看板は広告費のダダ流しでダメだと思っているんです。

例えば、「僕ビール、君ビール。続よりみち」がローソンに置かれているわけです。今、配荷率80数パーセントで置かれているので、2軒に1軒は絶対に置いている。明らかに浮いていますよね。

知らない人が見ると、「これなんだ?」と。目に留めて見ると、「なんだ、これ?」。飲んでみると、いっぱい(種類が)ある中でホップの香りがすごくて、うわ~っとなる。「なんかこれ、パッケージも変だ」と思って、強く記憶にとどめて、味とか、Facebookなどで口コミをする。製品で言うと、そんな感じです。

あとは、先ほどのGreat Place to Workの表彰式も、主催者の方に「過去10回やってるけど、あなたみたいな人は初めてです」と言われました。

(会場笑)

「こんなことやっていいんだ!?」と言って、受賞者から賞賛を浴びたんです(笑)。一緒に記念撮影していいですかって。その人たちのブログを見ると、僕のボーリングのピンみたいな写真が、日本中に出ているんですよ。

小泉:見た、見た(笑)。

井手:これなんですよね。僕、首相官邸のパーティーにも、あの歌舞伎の格好で行って、SPに逮捕されそうになった。

(会場笑)

それもPRがすごいわけです。そういう知的な変わり者PR。目に留めて、記憶にとどめ、クチコミしていくことを気をつけています。

1位になれる要素をマスコミや消費者にPRしていく

2つ目は、獲得優先。我々みたいにお金がない会社は、PRの話が来たら、なんでもやりますよ! 私は今、社内のミーティングを全部キャンセルしてやるので、毎日のように取材があるんです。

おかげさまで、去年の我々が獲得しているテレビや新聞のパブリシティは我々が把握してるだけでも、軽く10億円は超えるんです。お金をかけなくても10億円以上の露出が来ているわけです。そのためには、トップ自ら、そしてスタッフ総動員で、なにか露出の話があれば、真っ先にいくということです。

あとは……3つと言っても、酔って忘れちゃったなぁ(笑)。

(会場笑)

井手:なんだっけ(笑)。知的な変わり者と、獲得優先、もう1個大事なのがあって……思い出したら言います。すみません(笑)。

(会場笑)

麻野:ありがとうございます。私からおうかがいしたいことは以上です。

もともと、このあとは参加者のみなさんでディスカッションの予定でしたが、2人の話がおもしろすぎるということで、司会者から、会場からの質疑応答にしようという提案がありました。それでいきたいと思います。

司会者:テーブルに少し食べ物を配らせていただきましたので。

麻野:みなさん、食べながら。

司会者:質問を考えていただければ。ビールの補給が必要であれば……。

井手:思い出した!

(会場拍手)

先ほど、小泉さんも言いましたけど、マーケティングの法則に「1番手の法則」があるんです。一番にマスコミも全部集中するし、一番しか覚えていない。これは、マーケティングの法則にあります。

我々はクラフトビールの一番手、ダントツで最大手なので、こういうところにも呼ばれるし、スーパーにも引き合いが来るんです。クラフトビールは、まだまだ知名度低いですけど、「よなよなエール」がダントツに知られているんですね。

なんでも一番になったら、注目を浴びるんです。我々は、なにが日本で一番か? 一番になっているものと、一番になれそうな、ベスト3くらいに入っているものが、いろいろあるんです。

「軽井沢マーケットのシェア」「クラフトビールで一番手」「Great Place to Workも3年以内に1位になれそう」とか。あと、デザイン、ネーミングのクリエイティブなところも業界に注目を浴びている。熱狂的なファンマーケティングも日本でベスト3に入っている。

たくさん1位になれる要素があって、そこに特化してPRを取っていこうと。マスコミの方たちに、そこのポイントを強烈に売り込む。一番、もしくは一番になれるものを、PRとしてマスコミの方、消費者の方にPRしていく。これを徹底していますね。

すみません、中断して。

「毎年、バリューを見直している」

麻野:なるほど。では、会場から質問をお受けします。

質問者1:一番になる戦略は、GEが取っていた戦略なのでおもしろいなと思ってうかがいました。2人の掲げているバリューの順番が似ていると思ったんですが、上から1、2、3と並べているのは、自分の中で優先順位をつけて並べてらっしゃるのでしょうか?

小泉:うちは完全にこの順番です。実は、左寄せなんですけど、センター寄せにすると、末広がりです。なので、目に入って、すごく形がいいんです(笑)。半分冗談です(笑)。

井手:すごい。

メルカリ社員:初めて知ったんですけど(笑)。

(会場笑)

小泉:あと、社員には話したことがない理由ですけど、経営がどうコミットするか、作ったときに1人ひとり担当役員を持っていました。

ビジョンは代表の山田。当時、役員3人いたので、USをやっていた石塚がGo Bold、僕はAll for One、プロダクトのヘッドをやっている富島がBe Professionalで、全員が1個にコミットしてやっていくことにしたました。

そのくらい、バリューを大事にしています。けれど、やっぱり自分たちの事業が成功するために、なにが一番大事かを考えていったら、勝手にこうなった感じかもしれないです。

実は、毎年見直しています。毎年、このバリューを見直して、当然そのフェーズ、事業の環境によって違うことがあるので、1回作ったら、変えることはしないというわけではないです。毎回、見直しています。ただ、ビジョンは普遍的であるべきだと思っていますので、変えるつもりはぜんぜんないですけど、バリューは、どう考えるかを毎年やっています。

質問者1:それは、石塚さんが一番いい意見を出したという理解であっていますか?

小泉:本当に最初は強気のファイナンスの交渉をやっても、集まらないんです。何とか資金調達をして、テレビCMをサービスローンチ1年未満、売上ゼロ、まだ200万ダウンロードくらいのときにやるんです。それでCMがあたって成功して大きくいくわけです。

でも、そのくらい僕らのビジネスは、勝たないと意味がないと明確なんです。なので、資金調達もCM制作も危機意識とともにやっていました。そのくらい、Go Boldはすごく大事にしてます。

質問者1:ありがとうございます。

日本語は文脈があるので、けっこう長くなりがち

麻野:もう、お金の印象しかない。ポケットからお札が出ていますよ、大丈夫ですか。

(会場笑)

井手:すみません、「インドの青鬼」を1つ持ってきてもらってもいいですか?

今日、本当に小泉さんと意見が合って、同じ考えなんだなと思いました。でも1個、相反することがありました。僕は、ヤッホーブルーイングを愛しているので、死ぬまで、死なない限り、人生を懸けます! そこだけがちょっと違いますね(笑)。

(会場笑&拍手)

井手:それはさておき、この順番です。末広がりに対して、お気付きですか? 全部5文字なんです。

小泉:僕、それ気になっていました。

井手:すごいでしょ!? なぜ5文字か、私も今気が付きました。

(会場笑)

井手:たまたまです(笑)。メルカリは末広がりというから、うちはなんだろう? と思ったら、正方形だと(笑)。たまたまです。

上から順番に大事にしていて、「革新的行動」は、会社の社風、ビールの味、ビールのもともとのコンセプトからです。コンセプトを決めて、味、デザイン、ネーミング、プロモーション、社風、いろんなことを全部革新的にやろうと。

これは本当に、長い間ずっと市場が縮小している古い業態のアルコール、とくに、ビール業界の中に風穴を開ける。もっとビール業界を新しくして、新しい楽しみを我々が作っていこうという思いもあります。本当にこの順番でやっています。

小泉:短いのがいいですよね。人間、覚えないですよ。長いのは。たぶん、5文字以上だと覚えられないです。

質問者1:拝見していて、上から3つ、同じ性質のことを言っていると思いました。

井手:5文字でいいですか?

小泉:日本語は文脈があるので、けっこう長くなりがちなんです。なので、僕らはテクニック的に英語を使ったという話です。人間、覚えられないですから。覚えられるって、やはり大事なことかと。

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