2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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高野真氏(以下、高野):ありがとうございます。たった今、スタートアップ企業とのアライアンスについてうかがいしました。
しかし一方で、大企業よりも、スタートアップ企業やベンチャー企業で働くことをもてはやす風潮があります。大企業のCEOとして、どのように人々を惹きつけますか? つまり、社員がスタートアップ企業やベンチャー企業に転職することをどのように防ぎますか?
カルロス・ゴーン氏(以下、ゴーン):これは非常に大きな問題です。どのように若い人々を惹きつけるか。なぜなら、大半の若い人々というのは、大企業よりもスタートアップ企業やベンチャー企業に魅力を感じるからです。これは当たり前のことです。
私には子どもがいますが、みんな、ほぼ全員がスタートアップ企業に入社しています。大企業に入りたくないと言います。
高野:3人全員ですか?
ゴーン:そうです。4人の子どものうち3人がスタートアップ企業に入社しています。彼らをずっと観察してきたので、若者にとってなにが魅力的なのか理解しています。もちろん、スタートアップ企業と比較して大企業にも有利な点があります。
スタートアップ企業と競い合うことは、意味がないと思います。人々がある特定の分野に対して情熱を持って、自分の会社を起業したいと考えるのであれば、競い合うことはできません。
しかし、いくつかのケース。つまり、10社中9社のスタートアップ企業は成功できないということを忘れないでください。90パーセントです。わずか10パーセントのスタートアップ企業だけが成功するのです。
これが意味するところは、多くの人がスタートアップ企業で働き始めますが、すぐに職を失い、また別のスタートアップ企業に就職するか、スタートアップ企業での経験を持って大企業に落ち着くということです。
私たちがアピールするべきはこのような人々です。これはもっとも成功する例でしょう。
次にスタートアップ企業での働き方というのは大企業とは大きく異なります。
私の見る限り、スタートアップ企業では、日夜問わず働き続ける必要があります。休暇もなく、すべて1人で行わなければいけません。自分でコピーをとり、CEOとなり、顧客と話し、技術開発も行います。そして、初めは利益もとても少ないでしょう。成功して収入が入るまでは、待たなければいけません。
一方で、大企業はもっと安定しています。
つまり、異なる世界に住む、異なる人々なのです。だから、スタートアップ企業と競うという考えはありません。それは意味がないことだと理解しているからです。
しかし、スタートアップの経験を持つ人々を惹きつけ、大企業に入社してもらうことはあり得ます。
ときには、スタートアップ企業を買収することもあります。実際に起こったことですが、多くのコンピューター・サイエンティストや特定の分野の専門家が必要だからです。
スタートアップ企業を買収します。その代わりに組織のなかでスタートアップの自主性は維持します。これは人々に大企業に参加してもらう、もう1つの手段です。
高野:ありがとうございます。CEOとしての経験に話を移す前に、自動運転技術について、最後の質問をさせてください。EV(電気自動車)についてです。
日産は、日本で初めて100パーセント電気で走行する自動車を発売した自動車メーカーだと思います。6年か7年前ですよね?
ゴーン:そうです、7年前です。
高野:その当時、EVが成功するとは多くの人は思っていませんでした。
ゴーン:まさにその通りです。
高野:その当時はどうお考えでしたか? そして今は?
ゴーン:1つお伝えしたいことがあります。もしイノベーションを起こしたいのであれば、誰もがうまくいくとは信じないアイデアを持ち込む必要があります。
いいですか? もし、みんながうまくいくと信じるアイデアであれば、あなたはイノベーションを起こすことはできません。誰か別の人がすでに行っているでしょう。
イノベーションを起こしたいのであれば、その成功を疑う人々に囲まれる覚悟が必要です。「そんなこと上手くいくはずがない」と言われるでしょう。イノベーターと呼ばれる人々は誰もがこれを経験しています。
成功するイノベーターとは、スタミナ、抵抗力、継続力を持ち、いくら批判的な意見を言われたり、懐疑的な人々に囲まれたりしたとしても、自分のアイデアを諦めない人です。これを乗り越えない限り、イノベーションは生まれません。
日産が2010年に電気自動車を発売し始めた当時は、多くの人が「上手くいくはずがない」と疑いの目で見ていました。ちなみに、未だに疑っている人はいますね。すでに販売実績があるにも関わらず、です。すでに成功している実績があっても、疑う人は存在します。
私たちは、EVが売れると考える理由はとてもシンプルです。イノベーションとは、常にとてもシンプルな理由から始まります。もし複雑な理由がないと成り立たないのであれば、そのイノベーションはうまくいかないでしょう。
自動車産業は、世界で毎年9,000万台以上の自動車を製造、販売しています。そして、毎日10億台以上の自動車が世界中で走っています。そしてその数は増え続けています。このままでは自動車産業の未来はありません。
つまり、このままゼロエミッション(排出ゼロ構想)を実現しなければ、私たちの自動車産業そして人間の交通手段という点では、間違いなく未来はないでしょう。
これは許容量を計算すれば、非常にシンプルな結論です。毎年9,000万台の車が製造され、毎日10億台の車が世界中で走っています。そして、中国、インド、ブラジル、アフリカといった国では、まだまだ車の所有率は低いです。
アメリカでは、1人あたり1台の車を所有しています。インドでは、100人あたり1台の車を所有している計算です。しかし、インドがこの先も100人あたり1台の所有率であり続けるのかどうか、誰も疑問には思わないのです。
100人あたり2台、5台、10台と増え続けるでしょう。この可能性は大いにあります。しかし、現状の排出ガス基準のままでは、この未来はありえません。だからこそ、電気自動車とゼロエミッション自動車は、人間の交通手段の未来にとって欠かすことはできない要素になります。
私たちは、これに対して解決策を見つけたので、それを実用化して販売した、それだけです。非常にシンプルです。そして、現状では、消費者が電気自動車の普及を推進しているのではなく、政府が電気自動車の普及を推進しています。
政府が年々厳しい排出ガス規制を設定することによって、自動車メーカーがその基準を達成するには、電気自動車やゼロミッション自動車を製造、販売するしか選択肢がない状況に追い込まれています。
もう1度お伝えしたいことは、イノベーションを起こしたいと考えるのであれば、周囲の同意など求めてはいけません。そんなものは存在しません。イノベーションというものは、常に困難、苦難、非難、懐疑などを潜り抜けた先に存在します。
イノベーションを望むのであれば、こういった障害に立ち向かい、乗り越える強さを持つ必要があります。
電気自動車は、そのいい例だと言えます。
高野:ありがとうございます。あと5分あります。グローバルCEOとしての経験について、お話をうかがいたいと思います。
「ルノー・日産アライアンス」が出来上がったのは、18年前と聞いています。ルノーがゴーンさんを日本に送り込んだ時には、誰もフランスと日本企業のアライアンスは上手くいかないだろうと考えていました。このアライアンスを成功に導いたポイントはなんだったと考えますか?
ゴーン:今、多くの起業家、または将来の起業家のみなさんを前にお話ししていますが、人々が「それはあり得ない」と思うことにこそ、現状を打破するポイントがあります。
いいですか。最初は誰も、日産は復活できるとは信じていませんでした。1999年には、日産は復活しようがない、手放すべき企業だと誰もが考えていました。すでに再建プランが実施されていましたが、いずれも失敗に終わっていました。
多くの人が、またこの試みも失敗に終わるだろうと考えていました。それに、外国人が経営に参加するのはとても難しいと誰もが考えていました。
フランスと日本の企業である「ルノー・日産アライアンス」がどうすればうまく機能するのか。私は、多様性こそが強みであると信じています。多様性こそが強みなのです。
多様性というものは、もちろん困難も生み出します。しかし同時に強みでもあります。
例えば日本文化を持つ人が、アメリカ人や中国人、韓国人、フランス人、ドイツ人と仕事をするとします。もちろん、難しいです。しかし、同時により豊かな創造力を持ち、常識を超えていきます。習慣や伝統を超えたその先に到達することができます。
アライアンスにおいては、まさにこれが起こりました。
当時、現地の人々は「このアライアンスが上手くいくはずがない」と言いました。しかし、18年経った今を見てください。アライアンスが存続しているだけではなく、ルノーと日産の連携は非常に緊密になり、さらに他の企業もアライアンスに参加しています。三菱自動車がアライアンスに参加しています。
もっとも重要なことは、それぞれの企業が単独で強くなることです。日産が単独で強くなり、ルノーも単独で強くなり、三菱も単独で強くなります。この企業が提携するからこそ、はるかに強くなり、安定することができます。
もちろんアライアンスというものは、管理するのが難しいです。つまり、うまく機能させることには困難が伴います。
しかし、一方で、1度うまく機能すれば、はるかに大きな力を得ることができます。
人々に、「これは上手くいく、これは上手くいかない」と言葉で説得することはできません。人々を納得させるには、成果を示すしかないのです。企業にとって良い点は、非常に単純な指標で人々に提示することができる点です。規模の拡大、利益、キャッシュフロー。これらの指標を通して、事業が上手くいっているかいないのか、人々に示すことができます。
三菱自動車も含めた「ルノー・日産アライアンス」は、1,000万台の自動車を販売しています。そして今では世界トップ3の自動車メーカーとなりました。
もっとも重要なことは、私たちの成長率は他の自動車メーカーと比較してとても高いということです。これを生み出しているのが、アライアンスがもたらす多様性です。
高野:ありがとうございます。あと2分しかないので、おそらくこれが最後の質問になると思います。(ゴーン氏は)典型的なグローバルCEOと表現されています。CEOとして成功するということは、グローバルでなければいけないと言われています。
今日ここには、たくさんの将来のCEOが来ています。グローバルCEOとして成功するために、みなさんにアドバイスをするとしたら、なにを伝えますか? どのように考えればいいでしょうか?
ゴーン:そうですね……、現在グローバリゼーションに対する多くの抵抗が存在しています。保護貿易主義の声も高まっています。人々は境界を強固にしようとしている動きもあります。しかし、正直言うと、長くは続かないでしょう。
人類の歴史における傾向を考えると、補正が入ることがあります。私たちが今目にしていることは、あまり過剰にいかないための補正が起こっています。
しかし、グローバリゼーションの流れは途切れることはありません。若者たちを見てください。自分の国の枠内に閉じこもることは、もはやありません。若者たちは、当たり前にグローバルです。インターネットを通して、旅行を通して、知識や教育を通して、グローバルに生きています。
私のアドバイスは、自分自身を短い期間での進歩だけに制限せずに、長い目で大きな絵を描いてほしいと言うことです。短期的視点に捕らわれず、根本的な流れを見失わないでください。
根本的な流れとは、境界線は徐々になくなり、世界は1つの村になるということです。1つの世界市場として動き続けます。もちろん、いくつか制限もあるでしょう、しかし、あくまでも1つの市場です。これが第1です。
そして、第2に、結局のところ、CEOの成功とはなにかというと業績です。常に、自分自身を業績で図るようにしてください。あなたに期待される業績というものがあるはずです。スタートアップ企業の場合は、おもに会社を成長させて、最終的には利益を出すことでしょう。
根本的なことは、短期的に派手な業績を上げることではありません。中期的、長期的な業績だけが唯一重要なことです。長期的なトレンドを見据えて、意味のある業績だけを追求してください。辛抱強くなければいけません。うまくこれを続ければ最終的に、その成果は出ます。
高野:ありがとうございます。時間が来たようです。ゴーンさんはこのイベントに参加するためだけに来日しています。みなさん、盛大な拍手をお願いします。
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