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慶應義塾大学教授鈴木寛×DMM会長亀山敬司対談(全5記事)

DMM亀山会長「社会貢献は自己満足」アフリカで事業をする目的を率直に語る

元文部科学副大臣の鈴木寛氏が主宰する、慶応義塾大学の「すずかんゼミ」で、ゼミ生が対談を企画しました。スピーカーは鈴木寛氏とDMM.com 取締役会長の亀山敬司氏。2016年12月15日に行われた、この対談の内容を5回に分けてお届けします。今回は第3話。社会貢献について亀山会長が思うところを語りました。

合理化ばかり進めるリスク

亀山敬司氏(以下、亀山):実際、地方のアニメーション会社もやっていけてるじゃない。地方でも独自のコンテンツを持ってれば、なんとか生き残れるんじゃないかっていうこと。ただ、俺が思ったよりも長くビデオレンタルが残っているよね。

ウチもまだ1店舗だけ石川県でビデオレンタル店をやっているけど、そろそろ採算が危なくなって来た。ただ、どんな業界でも1位か2位を取っておくと生き残りやすいよね。TSUTAYAもゲオもいまだに業績が落ちてないのは30%ずつシェアを持ってて、残りの40%の他店から先に潰れていくから。

その潰れた分を吸収できるから、今でもTSUTAYAもゲオも業績は悪くない。もちろん、全部取り終わったあとには下がっていくっていう話なんだろうけど。これはビデオレンタルでも別の業界でも一緒で、衰退する時でも強いところは生き残りやすい。だからどんな業界でも1位か2位を取っておくと、思いのほか踏ん張りがきくのよ。

鈴木寛氏(以下、鈴木):「生き残り」っていうキーワードが何回も出てきていますけど、会長の中では家族や社員をしっかり食わせ続けることは大事なことですよね。アメリカなんかは、生き残るとか社員を食わせるとか、そんなことは全然考えてない(笑)。流行らなくなったら、会社は畳むという。

亀山:合理的って言えば合理的だよね。でも、大きな流れで言うと、あまり合理的過ぎても歪みが出てくる。アメリカでトランプが何であれだけ人気があるかと言えば、合理化に対する不満が出たわけで、合理化で弾かれた中間層が貧しいって感じはじめたから、「反乱だ!」という話になったんだと思う。

だから、会社でも社員の保護は必要。全部は無理でも、できるだけ古い業種から新しい業種への移行して、社員の仕事が続けられるようにしていかないと。

鈴木:本当に合理的過ぎるリスクはすごくありますよね。AIとかね。

亀山:10年20年も経てば、AIとかロボットがあれば人間は今の1割くらいしかいらないという可能性もあるからね。

鈴木:そうですね。

亀山:でも、合理化ばかりを進めると社会は逆行して、人々が「俺達はどうなるんだ?」と思いはじめて「ロボット使用禁止法」とかが出るかもしれない。

鈴木:過去にも1900年初頭のアメリカで、「大量ベルトコンベアシステム禁止法」が出ていますから、歴史は繰り返すんですよね。

亀山:トランプが「移民が仕事を奪っている」って言ってウケてるけども、本当はロボットが取っているからね。ロボット禁止令を出した方が仕事を作ることができるんだから、いくら移民を止めてもあんまり意味はない。

鈴木:意味ないですよね。

亀山:もし9割の人間の仕事がなくなったりしたら、選挙でロボット製造禁止令を掲げる候補者に投票するんじゃない。 ただ、そう言いながらも、ロボット化するところは進んでいくだろうから、「俺たち、行くところないから宇宙に出稼ぎに行くか?」みたいな話になっていくのかな。

社会貢献は自己満足

学生:私たち「すずかんゼミ」では、ソーシャルプロデューサーを目指しているわけですけども、社会的意義を追求し過ぎるがゆえにビジネスにならない部分があったりします。「食えるソーシャルプロデューサーになるには?」ということでご教授いただければと思います。

亀山:まず「社会貢献とは何ぞや」という話で、俺は「自己満足」だと考えてるんだ。社会のために何かしようと思う気持ちと、それが本当に社会のためになっているかは全く別の話だと思っていて。

例えば、アフリカの人のために井戸を掘ったとして、井戸から水が湧けば良いことかもしれない。だけど、その水を取り合って争いが起きる可能性もある。多くの人が「ITで世界を幸せに」とか言っているけど、実際ITが人を幸せにするかどうかなんてわからないよね。

DMMアフリカにも、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊から戻ってきて、社会奉仕をやりたいと言う若者がよく来てね。「もっといたいのに2年で帰らされたんです」とか「アフリカのためにもっと貢献したい」とか目を輝かせて言うわけよ。だけど、結局「人のカネで行ってるからダメなんだ」っていう話になる。

ビジネスはまずは自分たちが豊かになるためで、ウチに来るならちゃんと稼がなきゃいけない。今は投資としてカネや人を送るけど、社員には現地の人間たちと協力して会社を作れと言っている。初めは助けるけど、自分自身が金儲けを覚えて、現地の人々に金儲けを教えるのが大事。

結局何が言いたいかというと、「自活もできてねえくせに、社会貢献なんて言ってんな!」ってこと。親や国の世話になりながら、「俺はアフリカ人のために貢献する!」とか言っても、そんなの薄っぺらいじゃない。それなら、まず自分でメシを食えるようになって、彼女にプレゼントを贈ったり、家族を養ったりとかしてから。会社なら社員にメシを食わせることができてから、そのあとに社会貢献かなと。

でも、俺もこんなことを言いながらも若い頃は、ユニセフとかに「給料の1割を入れてみよう」とかやってたんだよ。だけど、はっきりいって何の実感も沸かなくてさ。時々、「またよろしく」っていう手紙は来るんだけど続かなくってね。「前に寄付した分も多すぎたかな」とさえ思うようになった。やっぱり無理はダメだね(笑)。

あんまり大きいことを考えすぎて漠然と貢献するよりも、身近にいる困った人たちに何かやってあげた方が、「俺、良いことしたな!」「俺ってかっこいい!」とか思って、またやろうと考えるわけ。その方が実感もわくしね。

楽しみながらやるから続くところがあって、ボランティアを献身的な気持ちだけで頑張っても、なかなか続かない。もし現地で自分のバックが盗まれたら、「俺、こいつらのためにいろいろやったのに、なんでこんな目に遭うんだ(怒)」とか、思うかもしれない。でも、自己満足のためにボランティアしたと思っていれば、それもしょうがないと思えるはず。

まあ、厳しいことばかり言ったけど、とりあえず誰かのために何かをするのはいいことだよ。少なくとも自分が幸せになれるからね(笑)。

今はとにかくアフリカで儲けることが一番

鈴木:僕も言葉に酔わないようにしようと、「平和」とか「社会貢献」ついては、「固有名詞で誰を幸せにしたいのかを決めないと、何もはじまらないよ」と口酸っぱく言うようにしています。

自活してその上での社会貢献っていうのはまったく同感なんですけど、資金をもっと利回りのいいところに投資することができるにも関わらず、アフリカに投資しているのは、社会貢献になるんじゃないですか?

亀山:やっぱり、単に良い人に思われたいんじゃないかな。

(会場笑)

あと、新しいことをやっているとカッコイイという自己満足(笑)。

それに「DMM.Africa」という名前だけど、実は「DMM.ミャンマー」でも「DMM.キューバ」でも良かった。わざわざアフリカにしたのはグローバル展開をやらなきゃと思っていた時に、「DMM.グローバル」にするとぼやけちゃうし、アフリカに行ける人間ならどこでも行くだろうという考えがあった。

実際に入った社員にも、「アフリカじゃなくてもいいですか?」って言われるし、別にアフリカにこだわりもないから「いいよ、どこでも」って言ってる。先進国ではない国の方が可能性はあるとは思うけどね。

社会貢献を考えているというより、名前でそそのかして優秀な人間をうまいこと言って入れてるって感じかな。やっぱり、社会のために何かやりたいっていう人間は良いヤツが多い。真面目で金も盗みそうもないし、誰かに愛を分けたいというユトリがある。ただ、「社会貢献への思いだけじゃダメ」っていうことかな。

実は良いヤツに稼ぎ方や強さを教えるほうが簡単だしね。反対に、野心むき出しで「稼ぐためには手段を選ばない」っていう人間に愛を教えるのは大変だからね。人が何かをやる理由が、善意であれ、欲であれ、悪意でないならいいんじゃないかな。善意も自己満足の欲だと思っておいたほうが気楽だし、自分自身に間違いも起きないような気がする。

だから、今はとにかくアフリカで儲けることが一番大事かな。中国が豊かになったのは、みんながビジネスをしたから。儲かると思ったから世界中から投資が増えた。みんなが「アフリカの人に愛を」って言うより、俺が「アフリカ儲かりまっせ! ウハウハでっせ~!」と言ったほうが、投資が集まり豊かになるよ。もちろん、豊かになることがアフリカの人にとって幸せになるとは限らないけどね(笑)。

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