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【野球人として生きる!キャリアのつくり方】福田永将 × 福山敦士 トークセッション(全5記事)

「正しい努力をしない限り、練習は裏切る」目的達成のために必要な“逆算”の作法

中日ドラゴンズ所属のプロ野球選手で、昨年後半は4番も務めた福田永将氏。サイバーエージェント子会社取締役を経て20代で起業した株式会社レーザービーム代表・福山敦士氏。小学校・中学校の同級生で、元甲子園球児という共通点がありながら、今はそれぞれの道でプロとして活躍する2人が、野球の世界とビジネスの世界、それぞれに共通するプロフェッショナルとしての姿勢やあり方について語りました。

ベテラン選手はみんなメンタルが強い

司会者:(参加者からの質問)「モチベーション、集中力を高めるためにしていることがあれば教えてください」。

福田永将氏(以下、福田):一番大事なことだと思うんですけれども、好きで野球をやっているので基本的にはモチベーションも高いし試合前は集中しているので、やっぱり出られなくなってきたりするとどうしても起きるのが辛くなるし、朝起きてグラウンドまで行く時間が長くなりますね。なかなか家を出られなくなるので。

福山敦士氏(以下、福山):モチベーションは、どんな時落ちるんですか?

福田:やっぱり打てない時ですね。あと、守備のミスって意外に引きずってて、打てないのは自分の責任なのでいいんですけれども、守備のミスはピッチャーとか他の人に迷惑がかかってしまうので、守備を売りにはしていないですけれど気にするところありますね。

福山:逆に「この人メンタル強いな」って選手はいる?

福田:ベテランの人はメンタル強いっす。

福山:例えば?

福田:今だったら森野(将彦)さん、荒木(雅博)さん、その前にもベテランって言われる方いっぱいいましたけど、やっぱり切り替えがうまいですよね。直倫もうまいですね。オンとオフが。僕はどっちかというと全然ダメだった日は出たくもないんですけれども、みんなメンタルが強い人は関係ないですから。

福山:彼らはもともと強かったんですか?

福田:もともと強かったのかなぁ。わかんないですけれども、すごいですね、あの切り替えは。

福山:なるほど。質問した意図としては、僕もこう言ったモチベーションとか集中力の高め方を日々研究しているのですが、年代関係なく圧倒的な成果を出す人ってモチベーションっていう言葉をあんまり口に出さないと思っているんです。

すごく高い目標を掲げている人はモチベーション云々でなく、目標に対する進捗しか確認していなかったりとか、自分がやるべきことをやれているかっていう部分しか見ていなかったりしていて、モチベーション云々っていう話をしないなと思っています。

プロ野球界でも、いろんな雑音があるから難しいなと思いつつも、もともとモチベーションの保ち方が難しいと思っていた人が、どうやってうまく保てるようになったか話聞いてみるとそこに自分を高めるヒントがあるんじゃないかなと思って。荒木さんも森野さんの、モチベーション維持ができていなかった頃の話を聞くとそこにヒントがあるんじゃないかなと思いました。

福田:なるほど。ありがとうございます。

プロフェッショナルが心がけていること

司会者:「プロフェッショナルとして日々心がけていること。そして勝ち抜くために必要な要素とはなにか。厳しいプロの世界で生き抜くにはどのように自分を売りこんだら良いのか、お二方がプロとして生きる上で一番必要だと思うことは何か教えてください」という質問です。

福山:さっきの話の延長で、精神力と忍耐力の違いかなと思っております。プロフェッショナルは精神力がすごく強い方が多いと思います。精神力とは言い換えると「やると決めたことをやる力」だと私は思っております。忍耐力とは「やれと言われたことをやる力」だと思っています。

野球部の子とかはすごく忍耐力が強い子が多いです。意味もわからず素振りを何千本としたりとか。意味もわからず階段ダッシュをしろと言われてやったりとか。一方、圧倒的な成果を出すプロフェッショナルは、自分で目標を掲げて、ちゃんとやりきる。例え、雨が降っても体調悪くても、ヒット打っても打てなくても。結果に関係なく自分のやるべきことをやるというのが精神力です。プロフェッショナルは、それが強い人です。

「精神力とは自分がやると決めたことをやる力だと」と、高校時代の野球部の監督に教えてもらいました。練習時間が短いチームだったんですけれども、自主練で、自分で自分の練習メニューを決めて、自分が体力が足りないなと思ったらランニングしますし、筋力が足りないなと思ったらウエイトトレーニングする、という環境でやってきたのでそれはビジネスの世界でもちゃんと活かせているなと思います。

福田:そうですね、はい、そう思います。

(会場笑)

福山:この人プロフェッショナルだなという人いる?

福田:昔、何年か前は他球団の人と自主トレとかやっていて、練習もすごかったんですけど、毎日めちゃくちゃ(お酒を)飲むんですよ。めちゃくちゃ毎日飲みに行ってたんですけど、ある日親指かなんかを突き指したって言って、ちょっと腫れてたんですよ。そしたらあれだけ飲んで騒いでいた人が、お酒一滴も飲まなかったんですよ。1月中に。それですね。

(会場笑)

福山:お酒をやめると決めて、やめる。それも精神力ですね(笑)。切り替えというか。

福田:切り替え。やっぱり炎症があってお酒を飲んじゃうとちょっと腫れちゃうので、シーズン中とかもちろんそうなんですけど、「あんなに毎日騒いでいたのに、締めるところは締めるんだな」と思って、プロフェッショナルだなと思いました。

福山:福田くんが意識している自分なりのプロフェッショナルとは?

福田:そうですね、僕はもちろん野球が一番なので朝帰りとかは絶対しないですし、次の日のことを常に考えているので、当然かもしれないですけれども。いろいろな誘惑ももちろんあるので難しいところではあるんですけれども。あと、奥さんにも「野球をやっている限りは家のことはしない」と言っています。

福山:確かにやらないことを決めるというのも大切なことですね。

福田:申し訳ないとは思いますが、結婚する前からですね。家庭を顧みずに野球をやるって最初に宣言してから付き合って結婚してますので。迷惑はだいぶかけてますけどね。

福山:優先順位と役割分担ですね。福田くんと夜食事に行くときって、すごく集合時間が早くて、お店が混む前に出るっていうのを徹底しているなと感じます。プロ野球選手って、けっこう遊んでいるんじゃないかなって思っている人もいるんじゃないかと思うんですけど。

福田:そうですね、遊んでいる人はいますね。

福山:福田くんは?

福田:ここで「遊んでいます」とは言えないでしょ。遊んでないです。

(会場笑)

報われるためには正しい努力を

司会者:「努力すれば報われる、練習は裏切らないなど言われていますが、オリンピックの選手やプロ野球を見ていてとても共感します。でも時にはそれをなかなか感じられず挫折してしまったり諦めてしまいそうになることがあります。お2人はどのように夢を叶える気持ちを持ち続けていますか」。

福山:努力すれば報われるということと、夢を叶える気持ちを持ち続けること、わけてお話ししたいと思います。

「努力すれば報われる」正しい努力をしない限り、練習は裏切ります。例えば、甲子園に出たいと言ってずーっと素振りをしていても、それだけでは届かないし、達成できないですよね。どうすれば甲子園に出られるか? ブレイクダウンをする必要があります。「そもそも何回勝てばいいんだっけ」「どの県に行けば出られるんだっけ」と。逆算してやっていくと、進むべき道が自ずと見つかると思います。

ちゃんと逆算してやりきれば、基本的にできないことはないと僕は思っているので、そのなかで「このチームとこのチームとこのチームに勝たなきゃな」とか。神奈川県だと横浜高校、東海大相模、桐光学園とか強かったんですけれども、「そこに勝つためにどんな練習をすればいいのだろう?」とか。神奈川県の場合は、甲子園出場には7~8試合戦う必要があるので、体力が必要だねとか、きちんとブレイクダウンをして、そのための練習をしていたので、あまり努力に裏切られた経験がないです。

突き放した言い方になっちゃいましたけど、大学でも同じようなことがありまして、大学時代は学生監督みたいなことをやっていました。慶応大学の準硬式野球部だったのですが当時慶応、早稲田、法政、明治、立教、東大があったんですけれども、東大はあんまり野球が強くなかったので相手にしていなくて、早稲田、立教も普通にやれば勝てる相手だったので明治と法政にどうやったら勝てるかということを死ぬほど研究しました。

打者の打球傾向や、ピッチャーの配球とかを過去2年分洗い出して、このときエンドラン出すなとか、このバッターはこっちばっかり飛ぶなとか、きちんと洗い出して、勝利から必要な要素を逆算した練習をしてきました。ピッチャーの初球アウトコースのストレートを打とうと決めて、マシンをそこに設定してひたすらそれを打つとか。

それらを逆算してやっていくとあんまり無駄な練習がなくて、ランニングとかも、同じランニングなら、ペースランニングとか試合の成果につながることだけをやろうっていうことをしていたので、ちゃんと逆算をすれば報われないことはないかなと思います。

目的を見誤ると、練習がただの積み上げ型になってしまうので、成果に結びつかないのかなっていうのは野球もビジネスも同じだと思います。

福田:そうですね、おっしゃる通りだと思います。すればするほど下手になる練習も実際あるので。間違ったことをしたらいくらでも下手になれるので。

福山:例えば?

福田:例えば、なんですかね。イメージの違いはありますけど。上から叩くとか。言葉のイメージが人によって違うかもしれないんですけれど、上から叩くのは僕は間違いだと思っていて。そういうことの練習とか。あと野球の長距離はあんまり意味がないんじゃないかなと思いますけどね。まぁでもこれはやめておきます(笑)。

福山:じゃあ夢を叶えるための気持ちをどう持ち続けるか? 福田くんの場合は10年目ですけれども、これまでなかなか一軍に定着できなかったけれども、打順が変わっても、スタメンを外されても、ちゃんと結果を出すために、どうやってそういう気持ちをキープしましたか?

福田:そうですね。本当に「試合に出たい」という気持ちが僕の中では一番なので、とりあえずスタメンでずっと試合に出たいという気持ちでおります。ファーム生活が長いんですけれど、(1軍に)上がった分だけ2軍に落ちてるので、その悔しさは……、正直なかなか説明しづらいですけれども、たまらない気持ちになるので、その気持ちを常に、今年(2016年)もそうですし、忘れないようにと思っています。

今年の最後はずっと1軍にいれましたけれども、あの悔しさは絶対忘れないと思って毎回やっているので。それがそうですね、悔しい思いをしたくないという気持ちですね。

いかにして“習慣”にするか

福山:その時の悔しい気持ちをどこかにメモしたりとか、映像に残したりとかしていますか。

福田:悔しい気持ちを映像に残す?

福山:映像に残すというか、形に残したりとかするのかなって。野球ノートとか。

福田:野球ノートはつけたり、つけなかったり。

福山:つけなかったり? 毎日つけてる?

福田:つけてないです。

福山:なるほど。野球ノートの話から広げようと思ったんですけれども、可視化と習慣の2点が重要かなと思っています。

夢を叶えるための気持ちは、目標を紙に書き出して貼り出すとかが、すごく有効だと思っています。やっぱりいつも目に触れるものがあると、自然と習慣として刷り込まれます。例えば「日本一」「甲子園出場」とかも、ビジネスで「売上いくら」「何件達成する」とかっていう目標も可視化するだけで、何かを決断するか迷った時に「もうちょっとがんばろう」っていうことができると思うので、可視化っていうのは重要かなと思っています。

もう1つは習慣だと思っていて、とくに成功体験の習慣が重要かなと思っています。これはプロスペクト理論ともいうんですけれども、いつも達成している人は達成しないことが気持ち悪いから頑張るっていう。

要は、達成したらなにかもらえるという未来に対する欲求ではなく、達成しないことが自分としては許せないという状態になると、自然と達成するための逆算だったりとか、最後の粘りっていうのは出てくるのかなと思っています。

例えば、朝ちゃんと起きるとか、集合時間に遅れないとか、仕事で言えば、この時間までに資料を提出するとか、すごく細かい目標設定なんですけれども、そういうのを達成し続ける人っていうのは自分との約束を守り続けるので、自ずと自信もつきますし、その約束を守らないことが気持ち悪くなってくるので自然と達成するような努力をしてしまうかなと。

野球ノートの話をしたのはまさにそこです。僕はブログを11年間続けており。高校野球が終わった翌日からブログを始めたんですけれども、悔しい気持ちとか、「絶対に野球以外の道でプロのなるんだ」っていうこの気持ちを忘れたくないなと思って、ずっと描き続けて今11年目です。

書き続けると書かないことが気持ち悪いからやるっていう、歯磨きするのと同じくらいの感じになってくると、自然と思考する習慣がつくかなと思っています。そういう意味で野球ノートを頑張って書いて欲しいなと思います。

福田:そうですね。

福山:それで引退した後に、「福田ノート」を出す。

福田:福田ノート。名前はどうだろう。そんな薄っぺらいノート……「悔しかった」とか。

福山:今からでも遅くない!

福田:今からね。今日ダブルブッキングするくらいだから。(笑)

福山:そういうのを書き残して、改善するためにグーグルカレンダーを使いましたとか(笑)。

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