2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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藤岡清高氏(以下、藤岡):カフェエイトの仲間集めはどうされてきたのでしょうか?
清野玲子氏(以下、清野):実際の経営に関しては川村と2人だけでやっているので、彼女との出会いがすべてと言ってもいいぐらいなんですが、スタッフに関して言うと、自然に集まってきたんです。
カフェエイトは、オープニングメンバーにとても恵まれていたんです。ほかの方には参考にならないと思うのですけど、運が良かったとしか言えません。
まずお店を始めようと決めたのが7月で、店のオープニングが10月頭。3ヵ月しか時間がありませんでした。
私自身まったく飲食の経験がないなかで、仕入れ先を探したり、内装とか厨房のことですとか、メニュー構成を決めたり、コンセプト決めたりということで、ほとんど人材採用に関しては手つかずに近い状態だったんですけど、いろんな人にとにかく言いふらして回ったんですよ。「こういうことをやりますから」って。
とくに人を探してると話したわけではなかったのですが、それを聞きつけておもしろいから働いてみたいんですという人たちが集まってきました。集まったのはほとんどが知らない人ばかり。
当時の東京は空前のカフェブーム。カフェが乱立していて、雑誌もほとんどカフェ特集といった状態でした。
うちがヴィーガンというまったく新しいコンセプトの店を始めると言うと、海外での生活経験があって日本でベジタリアンの生活をしているスタッフが集まってきたりと、自然とおもしろい経歴の人間が集まりました。実際にバイリンガルのスタッフが非常に多かったです。
それがお店のカラーになって、「なんか日本じゃないみたいですごくおもしろい」と評判になりました。忙しくて人材採用する余裕もなかったんですが、とにかく会った人と機会があればとりあえず話をしていました。噂が噂を呼んだのだと思います。
藤岡:ほとんどすべてのベンチャー経営者は人材採用で悩みを抱えていますが、これはとても示唆のある話だと思います。でも、おもしろいコンセプトを打ち出しさえすれば、いい人が集まるってものではないですよね。
清野:そうですね、やはり若いときに自分自身がおもしろい人間になっておくと、「あの人、何かやりそうだな」というのを周りがいつも見てくれる。何かをしようとしたときに仲間が力を貸してくれる。
いろいろな人に話をしたと言いましたけど、そんなに言ったわけではないんですよ。話をした人がさらに知り合いに話をして広がっていったんです。
20代のころにたくさん遊んでいたので、そのときのネットワークや、自分自身がそこで磨かれたという部分もあると思います。そうすると友達もおもしろくなりますよね。自分がおもしろいと当然周りにもおもしろい友達ができて、そのおもしろい友達に私の感覚的な言葉を投げかけると理解してくれてそれを誰かに伝えてくれる。
自然とおもしろいスタッフが集まったり、お客さんもおもしろい方たちが集まってきて……ということだったと思います。
事業を始めるときにきっちりした企画書があっても、そのままには絶対進まないので、若い人に伝えたいのは若いうちにとにかく自分を磨くためにとことん遊んだりとことん人に会ったりして、「なんかあいつおもしろいぞ」と思ってもらえるのが一番近道だと思います。
藤岡:「おもしろい人間になる」というのは本当に難しくて、勉強するより難しいことだと思いますけど、それを意識しておくかおかないかの差は大きいですよね。
清野:結局何かしようとしたときに自然とみんなが寄ってきてくれるかそうでないかで事業は大きく変わってくると思います。
私で言えば、「割烹清野」がいい経験でした。ほぼ毎晩宴会をしていて、本当にいろいろな方たちが集まってくださったので、みんな私の料理を知っているわけです。
そうすると、あの清野が店をやるというと、仲間がいろんな人に話をしてくれて。仲間集めというところではあまり苦労した記憶はないですね。
藤岡:事業をやると決めたときから人を集めたというよりも、素地というか地盤みたいに力を貸してくれる友達がたくさんいたので、いざ清野さんが動いたときに仲間がさっと集まった。
清野:そうでしょうね。決してそんなに親しいわけではない人たちもたくさんいたんですけど、あの人たちおもしろそうなことを常にやってると思われていたんでしょうね。
冒頭にお話したように、私と川村と2人で会社を立ち上げるときに、“Double Ow Eight”という会社は『007』のジェームス・ボンドのように、スマートだけどユーモアもあって、任務はキチンと遂行するけど遊びもあるという、そういう仕事の仕方をしたいという考えがベースにある。
女性が何かを始めるときって、男性から見たらダメな部分がたくさんあると思うのですが、とにかく「あの女2人はいつもわけわかんないことしてるけど、あいつらには敵わなそうだな、なんか楽しそうにしていて、女はいいよな」と思われるような仕事の仕方をしようっていうのは2人で話してました。
男性と同じ土俵に上ってしまうと、いろいろな面で頑張らないといけないところが出てくると思います。
体力もそうですけど、すごくロジカルにやっていかないといけない部分も出てきたり、そもそも女性って感覚的な生き物だと思うので、そうじゃない方もいますけど、私はその感覚の部分をもっと生かしたほうがいいと思うんです。
それを無理矢理兜で隠して男性の世界に行くよりも、女性は女性の感覚的な部分を最大限に生かしてこそ、女性が起業する意味があると思うので、傍から見て自分たちがどんなふうに見えてるかというのは意識するようにしています。
なんか辛そうな顔してないかなとか。実際そういう仕事を受けてしまうとそうなってしまうので、仕事自体もきちんと寄り分けるようにしていました。
「あの人たちに関わってると元気になるな」とか、「とにかくなんかおもしろそうなことを常にやってるから、一応つながっておこう」と思ってもらえるような遊び方だったり仕事の仕方っていうのは意識してきましたね。
藤岡:男も女もそうですが、常にイライラした顔した人とは一緒に仕事をしようと思いませんよね。とくに女性はそういう感性まで気持ちが行き届くというのはあると思います。
清野:そういう意味で自己プロデュースというのは女性のほうがやっぱり得意、上手だと思います。男性に比べると。
90年代までは今までのマーケティングで良かったと思います。相手を見て市場分析して数字を予測して、という。でも2000年以降はそんなことしてたらぜんぜん間に合わない。
相手を見てから物を作ったりアクションを起こしていたら間に合わないので、過去を分析するのではなくこれから先のこと、これが来るなというのをいかに素早くキャッチできるか。それができるのは女性だと思うんです。
私はそれを“感覚マーケティング”という言葉を使っているのですが、競合がまだ1社もいないなかで、「次はこれだ」ということをいかに見つけていくか、それは本当に女性の得意技だと思うのでそれをやっていったほうがいいと考えています。
先ほどのお話じゃないですけど、私がカフェ事業を始めるときに、男性全員にやめろと言われましたけど必ずしも理屈通りにはならなくて“感覚マーケティング”が勝つこともある。
結果的にはカフェエイトのヴィーガンのコンセプトは世間が後からついてきた形になって、今となってはオーガニックブームだったりヘルシーブームっていうのが来ました。
私たちがカフェエイトを始めるときに、「とにかく老舗を目指そう」と半分冗談で言っていたのですけど、5年たったときにもうベジタリアンの老舗と言われてました(笑)。
藤岡:“女性起業家・清野玲子”に憧れるような女性、起業に関心ある女性にメッセージをお願いいたします。
清野:私は1つ、何でもいいので誰にも負けない一芸、絶対的に自信が持てるということを身に付けることは非常に重要だと思います。それがどんなにつまらないことでもいいんです。
要するにオタクですよね。何かに対してオタクになるっていうことは、社会人になるとなかなかできないので若いうち、できれば学生のうちやったほうがいいと思ういます。
私の場合はそれが音楽と料理だったんですけれども、友達なくしても気にならないくらい没頭して、音楽をものすごい聞き漁ったり、料理はとにかく毎日実験のようにのめり込んだ時期がありました。
それがあったので社会人になったときに、音楽に関しては年齢も違う、職業もぜんぜん違う方たちと同じ共通言語で話せて、「なんで君、こんなミュージシャン知ってるの?」とか「わぁ、君おもしろいねえ!」とか、わーっと盛り上がれたり、ネットワークがそこでがーっと広がったり。それで私、DJや映画制作もやってたこともあるんですよ(笑)。
あとお酒も好きなんですが、食卓でお酒があっておいしい食事があるというのは、人のネットワークを作るのに一番いい場所なので、とにかくおいしいお酒、おいしい食事をたくさん体験することは人脈作りをするうえでは非常にいいと思いますね。とくに女性であれば、料理に没頭するというのはぜひお勧めしたいです。
私は社会に出たときに、今お話した音楽と料理という芸は持っていたんですけれども、それとは別にいわゆる酒の席にどんどん飛び込んでいって、いろいろな人たちに会うことができたっていうのはとてもおもしろかったですね。
自分より10歳ぐらい年上の人たちのところにポーンと飛び込んでいって、そういう人たちの話を聞くっていうのはそれ自体がマーケティングだと思います。
自分がおもしろいと思っている人たちが何を考えているかとか、まったく違うタイプの方たちともつながりを持って話を聞くと視野が広がるし、ダイバーシティ(多様性)に身を置くことはとてもよいことだと思います。
それと、私は日本では「起業」という言葉が大きすぎる、重すぎると思います。最近になって「起業家」と言われるのですが、そう言われてみればそうなるのかな、みたいな感じなんです。
好きなことをやってきただけで、気が付いたら一応「起業家」ということにはなっていますけど、例えば、3坪のお店を持ったって起業家なわけです。そこで自分の好きなアクセサリーを1日1時間売っても起業家なわけです。自分が焼いたパンケーキを1日10食出しても起業家ですよね。そういう発想でいいと思うんですよ。
本当に自分の好きなことで、少しでも人のためになる、これで喜んでくれる人がいるとか自分のこのスキルを必要としてくれる人がいるのであれば、ちょっとアクション起こしてみようかなっていうことでいいんだと思うんです。
藤岡:最後に清野さんの夢について教えてもらえますか?
清野:私は福島出身ですが、地方に雇用を生み出すことができたらいいなと思っています。日本は完全に東京一点集中型になってしまっていて、地方はみんなどこも同じ問題を抱えていますよね。商店街がダメになって大型店に全部持っていかれてしまって。
そうすると地元に楽しみがなくなって、みんな東京に出てしまう。日本は地方にこそいいところがあるはずなのに、このままだとそれがまったく生かされない状況になってしまう。
そして震災があったときに、東京に固執している理由は実はもうないんじゃないかと強く思いました。これからは分散していかないと。地方だってできることをやっていくことが重要だなと思っています。
私は田舎で育った経験があるので、田舎の人たちの体質はわかっているつもりです。それをわかった上できちんと地方に雇用が生み出せるようなことをやっていきたいなと。具体的には飲食事業を地方で展開したいと思っています。
今カフェエイトではヴィーガン料理に取り組むことで、アレルギーを持つ子供やそのお母様たちがお客様として増えています。
そういう子供たちのためのお菓子や食べ物を地方の工場で作り、工場にお店も併設し、そこで生産したお菓子を全国に卸して、ということもやっていきたいと思っています。
藤岡:とても社会的意義の大きな夢ですね、清野さんありがとうございました!
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