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レアジョブ中村岳氏(全2記事)

乱立するオンライン英会話市場で「レアジョブ」が生き残り続ける理由

スカイプ(Skype)を使用した、マンツーマンオンライン英会話サービス「レアジョブ英会話」を運営する、株式会社レアジョブ・中村岳氏のインタビュー。中村氏は、レアジョブが個人だけではなく、企業・学校への導入を増やしている背景や、100〜200の競合サービスが乱立したオンライン英会話市場で、自社のサービスが生き残っている理由を語りました。※このログは(アマテラスの起業家対談)を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

オンライン英会話サービス「レアジョブ」の事業

——現在のレアジョブさんの事業概要について教えていただけますか?

中村岳氏(以下、中村):オンライン英会話サービスをメインの事業としつつ、英語学習のサービスを作り個人・企業・学校の3つの提供先に届けることで、日本人の英語力向上を図ることに努めています。

現在の顧客に占める割合としては、個人のユーザー様が一番大きく、次に企業、その次に学校がきています。法人事業は4〜5年前から始め、現在(2016年2月時)は約710社の企業に使っていただいています。

特に海外進出や外国人採用、研究資料の文献参照の関係で英語を使うことの多いメーカーやIT企業を中心に取引を伸ばしていると感じています。

スピーキングが授業や受験で用いられることがなかった学校については最も立ち上がりは遅いものの、小学校5〜6年生の英語授業や上智大学や早稲田大学の受験にスピーキングが入るなど、大学受験で4技能(聞く、話す、読む、書く)重視傾向の影響もあり、導入が増えています。

レアジョブ導入増の背景は「スピーキング力」の需要

——レアジョブさんのサービスが学校への導入が増えている背景についてもう詳しく教えてもらえますか?

中村:例えば大学入試でもGTEC、英検、TOEFLなどスピーキングが含まれる検定試験が合格基準となることが増えており、スピーキングの対策となると1人で学習するのが難しい現状があります。

リーディングや単語学習の場合は教科書を読むことで自習はできますし、リスニングについてはCDや音源があれば自習可能な項目です。ライティングに関しては、先生が宿題に出し添削してくれれば自習可能となります。

ただスピーキングとなると、先生と1対1の授業を行うのはクラスに数十名もいるともなれば時間の都合上難しく、1対多で行うとなると、文章をわずかに読むくらいしか時間は取れない。それではスピーキングはなかなか伸びない。

ですからレアジョブ英会話に登録し、それぞれの生徒がPC・スマホ・タブレットを用いて画面越しにフィリピンにいる講師の方々とレッスンをすることによって、英語を使って会話する時間を増やすことができる。

そして生徒は個人で登録すれば、自宅でも復習することができ、スピーキング力を飛躍的に伸ばしていけるようになる。これが学校でレアジョブ英会話の導入が増えている理由です。

——2〜3年後は個人・企業・学校のうちどの比率が一番高くなっていると思われますか?

中村:引き続き個人の比率は一番高いとは思いますが、法人・学校の比率が高くなっていくとは思います。

とくに学校の場合、導入までに時間はかかり現状では先進的な学校および自治体のみが導入していますが、いずれは文部科学省などの指導もあり、英語4技能を向上させるための施策を入れる必要が出てきたり、あるいは成功ケースがでてきたりすると導入は進むと考えています。

円安の影響とサービスの値上げ

——円安という市場環境に対してはどう対応していますか?

中村:2〜3年前のアベノミクスの影響で1ドル80円から100円、120円と値上がりしたときが最も苦しい時期でした。ペソとドルは連動しているため、原価の多くを占めているフィリピンの講師に対する人件費が1.5倍に膨れ上がってしまいました。

そのため、為替ヘッジの対応および価格の値上げ(新規ユーザー様の月別支払い金額を5000円から5980円に値上げする)によって対応しました。ただ最近1年(2016年1月時点)はある程度予想範囲内であった1ドル120円で落ち着いていることもあり、問題はなくなっています。

——値上げによって、どのような影響が出ましたか?

中村:値上げは新規ユーザー様を対象としていたため、過去の登録者の離脱についてはそこまで影響がでませんでした。

新規顧客の獲得には影響は多少見られるものの、週1〜2回でも月数万円かかる英会話スクールと比べればまだまだ安い価格で提供できていることもあり、それほど深刻な問題にはなっていないと思います。

乱立したオンライン英会事業

——オンライン英会話事業はここ数年競合が多数出てきているように思いますが、中村社長はどのように考えていますか?

中村:増えているというよりは、一時期より減っているかと考えています。理由は低価格を売りにしたオンライン英会話事業者の登場です。

4〜5年前ですと、オンライン英会話市場は100〜200もの小規模なサービスが作られていきました。

そうした小規模なサービスが低価格を売りにした会社の登場によりユーザーを取れなくなって軒並み先が見えなくなり、比較的大規模なサービスのみが残るようになった。その意味では競合が減った、競合企業が一部に絞られたといえると考えています。

良質なフィリピン人講師を確保できる理由

——フィリピンにて良質な講師を確保することが御社のサービスにおいては重要になると思われますが、継続して講師を確保できているのは何故でしょうか?

中村:過去からずっとやってきている先行者メリットが大きな強みになっていると思います。ネット上で仕事をするビジネスモデルなので、働き手(講師)からすると本当にお金が入ってくるのかという不安感があります。

しかし周りにやっている人がいて、ちゃんとレッスンすることでお金が入っているという実績が見えていれば、始めやすい。このメリットが口コミを通じて拡大しているのが講師確保のうえでの強みになっていると思います。

——フィリピン人のマネジメントに関して、気をつけていることがあれば教えていただけますか?

中村:きちんと相手の話を聞き、不誠実なことをしないということが一番大きな注意点だと思います。相手の意見をきちんと聞いて、相手のことを理解し、そのうえでこちらも意見をしていく。対等な立場での議論をして信頼関係を築くこと、適正な手続きに乗っていくことが重要ではないかと思います。

それができていないと訴えられてしまいます。そして訴えられると外国企業は弱いため、現地の講師・スタッフとの信頼関係をどれだけ築くかが重要だと思います。

——単に賃金を上げるだけで良い講師を維持できるというわけではないということですね。

中村:そうですね。給与待遇次第で動く講師の方もいらっしゃいますが、どのくらい高いのかにもよりますし、高いレベル度合いがどれだけかにもよります。また支払いの継続や労働環境など様々なもので判断されます。ただ単純に賃金を上げればいいというものではないなとは感じています。

ブラジル市場への参入

——直近のレアジョブ様のIRを見ていると、売上は伸びているものの、利益が伸び悩んでいる状況です。なにか投資をしているのでしょうか?

中村:今年度の第二四半期にTVCMを打ったことやオフィスを移転した点、ブラジルでの展開を行ったという意味で投資を行っています。この中でもとくに大きな投資案件となっているのがブラジル進出です。

フィリピンからブラジルに対して英会話を提供するビジネスを2015年10月より開始しています。ブラジルでは英語が話せるか話せないかで賃金が倍くらい違ってくることもあり、ニーズは多いと感じています。

国全体で見ても人口も多く、GDPも延びており、公用語が英語でないことから英語を話せない人も多いとなると日本以上の成長市場になる可能性が高い。

そうなると中国、メキシコ、ロシアなどが候補にあがりますが、市場競合性や参入障壁を検討した結果ブラジルを選びました。

今後も他国への展開を行う可能性はありますが、今はブラジルに集中しようと考えているところです。そのような投資案件を抱えた結果、今期は投資のフェーズにしようと考え、費用が一時的に増しているという状況です。

上場後の変化

——上場後大きく変わったと思うことは何ですか?

中村:上場前と上場後というわけではないですが、上場にあたりいろいろなワークフローを整えたため、内部統制が取れるようになったということが変わったと思います。

上場したことで、未上場時には審査基準上取引をしてもらえなかった法人や学校からの問い合わせが増えたという面でビジネス上でも大きな影響がありました。

——上場後に人材採用は変化がありましたか?

中村:上場前でも上場後でも優秀な人材はある一定は採れていると思います。ただ面接に訪れる人材の性格は大きく異なると思います。

創業初期の場合だと、ゼロイチが好きというか、ぐちゃぐちゃしているなかで手探りで回答を探っていくことが好きな人が入る傾向がありましたが、大きくなってきた後だときちんと整理してやっていこうとする人が多いかと感じています。

社員40〜50名段階での人事システム

——人材の性格の変化に伴い、マネジメントの方法なども変わってきましたか?

中村:上場前のときからになりますが、社員が40〜50名を超えた2012、2013年の段階で人事システムを導入するなど、組織的な運営を担うようになりました。そのきっかけになった問題として2012年に個人情報漏洩の疑いの発生がございました。

この問題の背景には、システムのある部分が個人に依存しているかたちになっていて、誰がどこを見てどのようなセキュリティを担保するのかという点や、システム側とマーケティング側で牽制しあう形を作るという点など組織的なシステム運営がなされていなかったことにありました。

そのときは1ヶ月ほどサービスを停止しプログラムをすべて変えたのちセキュリティ的に問題ないものにしたあと、他の企業でいろんなシステムを作ったことのある経験者に1年近く代理CTOとしての役割を担ってもらいシステムを立ち直らせていきました。

その後組織的に戦えるような仕組みにしようと考え、コンサルを入れて人事の改革も進めました。

そのなかでリーダークラスの意見を取り入れながら、リーダークラス、幹部クラスで意思統一していくかたちにしていって、新たな人事システムを入れていきました。

——具体的にどのような人事システムを導入したのですか?

中村:人事システムという面ではMBO(目標管理制度 Management By Objective)のチャレンジシートを入れ、社員一人ひとりの目標を設定しどれだけ達成できたかを可視化するようにしました。

それまでは従業員がなぜ自分が評価されていないのか、がわからない状況でした。運用面では大変でしたが、評価内容が見える化し納得感がでるようになったという点で大きな成果を出せたと思います。

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