2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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司会:ワールド・モード・ホールディングス社長兼iDA社長の加福真介様、リュックス・アドバイザリー・ジャパン社長、元LVMH人事本部長の遣田重彦様、『WWDジャパン』マネジングエディターの林芳樹より、「販売のプロはこんなにスゴイ」というテーマでお話をうかがってまいります。
それでは加福様、遣田様、林さん、よろしくお願いします。
林芳樹氏(以下、林):こんにちは、『WWDジャパン』編集部の林といいます。よろしくお願いします。4時限目は「販売のプロはこんなにスゴイ」と題しまして、ファッション業界における販売員の役割の重要性を掘り下げていきたいと思います。先ほどの3時限目では各社の販売員を経験したみなさんに登壇していただきましたけど、多くの新入社員が配属されるのはまず店頭だと思います。
これはブランド問わず、おそらくどこでも大方のアパレル企業はそうだと思うんですが。そこでどういう販売員が必要とされているか、販売員がどれだけ現場で重要であるのか、販売の現場をよく知るお2人に登壇していただき、そういったことを掘り下げていけたらと思っております。
まず、遣田さんなんですけれども、もともとルイ・ヴィトンなどを擁するLVMHの日本法人の人事部長をされていたキャリアの持ち主で、特にラグジュアリーブランドの販売についてのスペシャリストです。日本でいちばん詳しい方と言っていいんじゃないでしょうか。
その方にまず自己紹介を兼ねて、LVMHでどういう活動をされてきたのか、そもそもLVMHとはどういう企業なのか、その辺りに話を落としていきたいと思うのですが、よろしくお願いします。
遣田重彦氏(以下、遣田):遣田でございます。私は今は引退してるんですが、リュックス・アドバイザリー・ジャパンというコンサルティングの会社を立ち上げてやっております。
LVMHというグループに21年勤めておりました。みなさん名前ぐらいは聞いたことがおありになるかと思うんですが、一言で言うと高級ブランド品のコングロマリットだとお考えいただいていいと思います。
こちらはLVMHの簡単な組織図になりますが、大きく分けて5つの大きな事業分野になっております。まず、「ワイン&スピリッツ」というビジネスセクターがございまして、そこではみなさんの大好きなお酒ですね。シャンペンですとドンペリニヨンとか、モエ・エ・シャンドンとか、ヴーヴ・クリコ、それからヘネシーのコニャックですね。そういったものがそこに属しております。
それから「ファッション&レザーグッズ」という事業グループがありまして、これはみなさんご存知のルイ・ヴィトン、それからフェンディとかセリーヌとか、ロエベとか、クリスチャン・ディオールみたいな高級ブランドがそこに属しております。
それから「パフューム&コスメティックス」、いわゆる化粧品香水の事業部。これはディオール、ゲラン、ジバンシイのようなブランドがここになります。
それから「ウォッチ&ジュエリー」事業部、時計宝飾の方もございまして、そこにはタグ・ホイヤーとかゼニスとか、ショーメっていうのは宝石、それから最近買収したんですけれどもブルガリが入っているということでございます。
それからよくみなさんが沖縄や東南アジア、あるいはハワイに行かれてエンジョイされるDFS、それもLVMHのグループに属しております。
世界で2万人を超えるような社員が働いておりまして、売上も2兆円を超えるような、こんな大きな事業グループです。私は93年にこのグループにまいりまして、どんどん歳を重ねるごとに大きくなってきたわけです。
ひとつの方針としてはインターナルグロース、オーガニックグロースといいまして、それぞれのブランド一つひとつを大きくしていくということと、それと合わせて選択的にアクイジション、買収をしていくという事業戦略でこのグループは大きくなってきております。
それ以外にもケリングというグループ、あるいはリシュモンというグループがありますが、どうしてこういうグループができているかというと、ひとつは大きくなることによる相乗効果を上げたいということ。
これを最初にやったのはLVMHのグループなんですけれども、ケリングのグループにはグッチがいますし、ボッテガ・ヴェネタがあったりするわけですね。それからリシュモンのグループにはカルティエがありますし、ファッションですとクロエなんていうのも入ってますし。ヴァンクリーフなんかもリシュモンのグループです。
こういうグループをつくることによってさまざまな相乗効果が出てきます。例えば小さなブランドですと銀行からお金をたくさん借りることができない。でも大きなグループに属していると、その信用力で安い金利でたくさんのお金を借りることができる。
ロジスティクスなんかでも大きな倉庫を借りると当然賃料は下がりますし、ロジスティクスの運営そのものも非常に効率的になっている。
人材の分野でも、今日いらっしゃっている方々はみなさん新卒で入られることになるだろうと思うんですが、LVMH同様の大きなグループに入ると、グループのなかでモビリティといいまして、あるブランドから別のブランドに移って経歴を発展させることができると、このようなことがあります。
林:そのなかで、販売員の方の役割はどう位置づけられているんですか?
遣田:まずはブランドを扱っているということで、商品そのものがいい商品でなければダメだと思います。商品があって、それから売る環境、店舗にお客様がいらっしゃって、あるすばらしい環境のなかで買うという。この2つがまず前提条件になると思うんですけれども。
では、この2つだけあれば、自動的にモノが売れているのかというと、そういうことでは絶対なくて、いちばんキーになるのはやっぱり店舗において販売する方々の力なんですね。
非常に高い商品ですから、例えばルイ・ヴィトンのプレタポルテを買おうとすれば、スーツで50~60万円するわけです。こんなものを5分~10分で買う方はいませんよね。
まずお客様が入っていらっしゃったら、「1 to 1マーケティング」というような、CRMというのが非常に流行っているわけですけれども、販売の方々はお客様のプロファイルを知って、さまざまなお話をしていくなかで、その年の流行を語り、その方にお似合いの洋服を提供していくと。
お洋服を買うだけじゃなくて、お洋服を買われれば、それに合わせて靴をおすすめするとか。そういうさまざまな関連販売をしていく。これが仕事として非常に大事になるということなんです。
林:商品にクオリティが求められるように、販売員の接客サービスなんかにもすごく高いレベルのクオリティが求められるということですね。
遣田:おっしゃるとおりでございます。販売がキーですね。
林:そういった高級ブランドなどを中心に、販売員という人材を多く送り込んでいるのが加福さんの会社なんですけれど。どういった事業をされている会社なのかというのを簡単に説明していただけないでしょうか?
加福真介氏(以下、加福):加福です。よろしくお願いします。まずグループについて簡単に説明させていただきます。
5社で構成されるグループになっていて、いずれもファッションとコスメを専門にやっている会社なんですが、事業コンサルティング、プロモーション、戦略PR、店頭のデザイン、あとは出店のコンサルティング、販売員のマニュアルを作ったり、研修をしたり、そして採用事業として人材派遣、人材紹介をしています。
いちばん上にあるiDAという会社なんですけれども、こちらは私の父になるんですが、もともとLVMHグループ出身で、その時に「販売員の地位向上を」という強い思いを持った人が立ち上げた会社です。
今、全国の有名ブランドに人材を5,000人送り込んでいて、年に1,000名は有名ブランドの社員に転籍してもらうというかたちになっています。
林:社員登用をされて?
加福:社員に登用されています。
林:しかし5,000人のうち1,000人も社員になってしまって、いい人材がみんなブランド側に行ってしまったら、加福さんの仕事としては人手が足りなくなって困っちゃうんじゃないですか?
加福:たくさんの方に有名ブランドの社員として卒業していってもらうことで、たくさん優秀な人にファッション業界に入ってきてもらう。これがやっぱり業界としても、会社としてもいいことなので、そのようにしています。
林:1,000人も社員に登用されるということで、その人たちに実力がないとなかなか社員登用はされないと思うんですけど、そのためになにか特別なことをなさったりしているんですか?
加福:研修に力を入れています。セリングスキルであるとか、マネージメントスキル、これからですとインバウンドに対応するための研修を実施していたり、SNSを店頭の集客に活用するために使われているお店でしたらそのための研修というのを実際にしています。
林:そういった研修を重ねて、認められた販売員さんたちが社員登用への道が開けるという感じでよろしいんでしょうか。
加福:はい、そうです。
林:先ほど遣田さんの方から、販売員がブランドのカギを握っているというお話がありましたけれども。
もう少し踏み込みまして、今まで遣田さんがご覧になってきて、販売員がこんなに実力を発揮しているですとか、販売員の成果でこれだけブランドの成功や失敗が左右されてしまうんだという事例があったら教えていただけますか?
遣田:私が入った93年は、例えばルイ・ヴィトンを例に取れば、まだ本当に200億円ぐらいしか売っていない、社員もたぶん200人ぐらいしかいなかったんですよね。今はルイ・ヴィトンは1,700人~1,800人の社員を抱えていまして、売上も1,000億円を超えるんです。
私が入った当時は、デパートのなかのお店のことをショップインショップっていうんですけれども、ショップインショップのなかでは店長さんと副店長さんがルイ・ヴィトンの社員だったんです。それ以外は、デパートから派遣されて、ルイ・ヴィトンの店頭で働いていらっしゃる方だったんですね。
それを直営化といいまして、百貨店の社員を百貨店に返しちゃって、ルイ・ヴィトンの社員だけでやっていこうと、そういうプロジェクトを何年もかけてやったんですよ。
今はだいたい年間常時120人~130人の方々が産前産後休暇と育児休暇をルイ・ヴィトンでとっていますから、いつも加福さんにお世話になっているんですけど。それ以外の方々は、もうほとんどの方が社員になっている。
そうすることによって、販売効率がぜんぜん違うんですね。やっぱりブランドに対する思い入れのレベルが違ってくるんですよ。それから接客のスキルも違ってくるし、もちろん教育を提供してますから。ルイ・ヴィトンの現在の成功の礎はなにかというと、やっぱり直営化にあったと私は思うんです。
林:直営化して自社で社員として登用するようになった販売員さんですが、このルイ・ヴィトンを中心としたLVMHは、どういったところがほかのブランドと違って、販売スキルとして優れているのか。なにかLVMHならではの特性みたいなのはあるんですか?
遣田:多分、ルイ・ヴィトンで優秀な販売員は、グッチに行っても優秀な販売員じゃないかと思うんですけど(笑)。
林:どこに行っても通用すると。
遣田:ただやっぱりブランドにとっていちばん大事なのは、ブランドに対する思い入れだと思うんですね。そのブランドを愛していなきゃ、絶対いい販売員になれないと私は思っていまして。
ですから単に売るスキルだけある人じゃなくて、やっぱりそのブランドの持っているDNAのようなものを理解して、自分はそのブランドが大好きだという人。自分が好きだっていう熱意がお客様に伝わっていくなかで、初めて一流の販売員ができていくんじゃないかなと思います。
ですから、ルイ・ヴィトンからグッチに移ってもなかなか……。成功できる素質は持ってると思うんですけどね。
林:なるほど。みなさんに話を聞きたいと思うんですけど、まず入社をしました、その後ラグジュアリーブランドのなかではどういうようなキャリアステップが用意されているんですか?
遣田:基本は店舗ですから。ルイ・ヴィトンの場合は57店舗あるわけです、路面店も含めて。フリースタンディングストアといいまして、例えば表参道とか銀座のお店ですね、これはフリースタンディングストア。
大部分は店舗が主力ですし、私は人事をやっていたのでもちろんオフィスにいるわけですけど、やっぱりどこにアテンションを当てるかというと、販売員、あるいは店舗に当てる。キャリアステップとしては、大学を卒業されたみなさんがお入りになることが多いんですけれども、最初は店舗に配属されます。
林:そうですね。
遣田:まず「セールスアソシエイト」という一般の販売員からスタートして、徐々に「カテゴリーマネージャー」になりまして、レザーブーツならレザーブーツのカテゴリーマネージャーになったり、時計宝飾のカテゴリーマネージャーになったりしていく。
早い方ですと入社して10年から15年ぐらいで店長さんになるわけです。私は日頃から思ってるんですが、この店長という、こんなにもおもしろい仕事はないと思っていまして。
というのは、まずよくみなさんMBA、MBAって言いますよね。私もMBAは取ったんですけど、MBAを取って全員が成功してるかというと、必ずしもそうではないんです。
私はたくさん面接をしまして、マーケティングのマネージャーとかそういうポジションの方もずいぶん面接してきましたけれども、MBAを持っているからといって必ずしも高給取りではないです。もちろんうまくいく人はいます。何千万円という給料を取る人もいますけれども、すべてのMBAホルダーが全部うまくいっているわけじゃない。
それに対して店長さんというのは、やり方によって、その人の実力によって、ものすごい給料を取ってる人はたくさんいます。あまりこの席で給料は言えませんけれども。
林:それをみなさんいちばん聞きたいと思っていると思うんですけど……(笑)。
遣田:まぁ、本当にすごい給料取ってる人いますから。
林:役員と近いような?
遣田:例えば、私どものLVMHのグループは、ちょっと……規律上の問題があるので言えませんけれども(笑)。私が面接したある高級ブランドの路面店の店長さんは2000万円取ってましたね。
林:30代ぐらいですか?
遣田:もうちょっといってましたね。要するに、そのぐらい店長さんは給料が取れると。すべての人が2000万円を取れるわけじゃないですよ、誤解のないように。
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