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Stanford Graduate School of Business Simple Rules: How to Thrive in a Complex World(全2記事)

GoogleやKickstarterの例で学ぶ、シンプル・ルールの基礎知識

『シンプル・ルール戦略』などの著書がある、スタンフォード大学のKathleen Eisenhardt(キャサリン・アイゼンハート)氏が、Stanford Graduate School of Businessに登場。シンプルルール1.0、そしてシンプルルール2.0について解説しました。このパートでは、GoogleやKickstarter、Indiegogo、Airbnb、Weinstein Companyなど著名な企業の実例を挙げながら、なぜシンプルルールが必要なのか、具体的にはどういうものなのか、どういった状況に適用できるのかなど、シンプルルールの基本を語っていきます。

思考をシンプルにすることで、時間と労力をセーブする

キャサリン・アイゼンハート氏:まずはこんな話から始めたいと思います。エドウィン・モントヤという、ある軍曹の話です。彼はイラク駐在で、その日はクリスマスイブでした。デザートを食べようと並んでいると、突然大きな爆発が発生したのです。テロリストによる自爆テロで、軍曹は机の下に潜り込みました。やがて静かになって確認すると、なんとか彼は無事でした。

周りには大勢の負傷者がいました。軽傷から重傷者まで様々でした。医療班としての彼の仕事は、助ける人、助けられない人、自力で何とかなる人を見分けることでした。かれはまさに複雑な大混乱の中にいたわけですが、彼はそれをどう対処したのでしょうか?

ジャネット・イェレンからマーク・ザッカーバーグといった人たちも実践している、複雑な事象をシンプルにとらえるということを彼はやったのです。彼はトリアージを実践したわけですが、ジャネット・イェレンの場合だと、連邦制度、アメリカ経済、世界経済といった複雑なことを対処します。

金利にもシンプルなルールはあるのですが、レートを上げる前に、数字は2パーセント以上で失業率は5パーセント以下であるというものです。マーク・ザッカーバーグも複雑さに取り組んでいます。特に雇用についてのシンプルなルールがあります。

あとはコオロギ。何でという方もいらっしゃると思いますが、コオロギの人生は短く脳みそも小さいので、とてもシンプルに生きなければいけません。

(会場笑)

ではシンプルなルールとは一体何か? それは目的にフォーカスして思考をシンプルにすることによって、時間と労力をセーブするためのショートカット戦略です。要するに経験則によるルールですね。

とはいってもその程度のことは考えた方も多いと思うので、詳しく説明します。

シンプルルール1.0の3項目

こちらはシンプルルール1.0です。シンプルルールはシンプルなんです。それに尽きます。いつでも思い出せるような2〜3個のルールのことです。

2つめ、シンプルルールの内容は人によります。なので他人のものと互換性はありません。

3つめ、シンプルルールは特定の活動に関連するものです。なので「母に優しく」とか「お客様第一」とかいうような決まり文句ではありません。

これらについてもう少し詳しく説明しましょう。

シンプルルールはシンプルです。例えば、マイケル・ポランの、食に関する3つのルール。彼の本は有名ですよね。彼はカリフォルニア・バークレーの教授で、『the Botany of Desire』とか『The Omnivore's Dilemma』を書いた人です。

冷蔵庫とかによく彼のルールが貼ってありますね。「祖母が認知できるようなわかりやすい食べ物を食べる」「植物を食べる」「少量食べる」といった内容です。そのルールに則ったとしてもケール、ブルーベリー、魚、肉などなど、結構なものが食べられますね。制約は大したことはありません。

シンプルルールの内容は状況によって変わる

2つめ、シンプルルールの内容は人による。やせ形のこの男性がマイケル・ポランです。その他はスタンフォードのフットボール選手達です。彼らには彼らの食のルールがあります。

1つは朝食を食べること。彼らは学生ですから、夜更かししたり朝遅く起きたりして、朝食を抜くことがありますので。2つめは水分補給すること。活発な若者なので、健康のためにはかかせません。3つめは、好きなだけ食べること。食べられる限り食べても良しということです。

こうして見てみると、マイケル・ポランのルールと似てますよね。おばあちゃん達は食べられるものは食べますから、つまりはプロセスフードは食べないという意味ですが、それ以外は結構違います。スタンフォードの選手は食事量に制限はありません。彼らは植物を食べません。筋肉を増やし成長しているのでタンパク質が必要ですからね。つまり、シンプルルールの内容は状況によって変わるということです。

せっかくビジネススクールにいますので、ビジネス関連の例をお話しましょう。これらはクラウドファンディングの2つのプラットフォームの比較で、IndiegogoとKickstarterといいます。

Indiegogoは、どんなプロジェクトなら扱えるかという部分に関してのルールがあります。ルールはいたってシンプルで、合法なら何でもOKです。なので自分の根幹だったりヨーロッパ旅行だったり、ビジネス、映画、ジャマイカのボブスレーチームだったり、何でもいいのです。

それに対し、Kickstarterのルールはもう少し多いです。特にプロジェクトのカテゴリーにフィットしなければなりません。13あるのですが、提示されたプロジェクトのうち、25パーセントがスタートしています。そして利益を求める実際の人間にキュレートされています。

ではここでのポイントは、クラウドファンディングプロジェクトを選ぶという同じ活動なのにルールが違うという部分です。なぜルールが違うか? それは創設者のバックグラウンドが関係していると私は考えます。

Indiegogoはバークレー出身者によって設立されており、平等主義という理念に基づいてます。本質的にこのアイデアは、「インターネットで誰が何してもいい。インターネットは万人のための場所であり、誰にでもチャンスはある」というものです。

それに対し、Kickstarterのバックグラウンドはアートであり、創設者の内の1人は、特にアートに対するファンドを考えていました。アートのキュレーションもデルの理解があるのです。以上が、IndiegogoとKickstarterの両者が同じプロセスでも違うルール、違う人間であるという内容でした。

シンプルルールは、繰り返し行なう行動に関連する

最後に、シンプルルールは、繰り返し行う特定の行動に関連します。例えば食べ物というのは毎日選ぶものですよね。KickstarterやIndiegogoだと、プロジェクトを毎日選びます。それらはよりフォーカスされた毎日の活動なのです。

では何がそうでないか? 例えば結婚相手といったことに関してはシンプルルールは適応できません。人生に1〜2回、まあ3回くらいしかないことですしね(笑)。毎日繰り返さないのでね。

(会場笑)

シンプルルールは大々的で平凡なものに対するものではないのです。なので飢餓をなくすとかいうことに対するシンプルルールはありません。特定の活動にフォーカスしたのがシンプルルールなんですね。

シンプルルール2.0とは?

それでは次に、シンプルルール2.0ではルールの種類についてお話しします。異なる種類のルールがありましたが、これらはいくつかの理由により関連しています。

1つめ。ルールには、簡単なものと難しいものがあります。2つめ。皮肉なことですが、難しいルールはパフォーマンスに優れています。あらゆる種類のルールを学ぶべき最後の理由は、レパートリーが多い方が、1つしかないことより優れているからです。それでは説明していきます。

まずはバウンダリー・ルールについて。これはイエスとノーの判断において人が使うものです。裁判官が保釈を決定するときなんかがそうです。多くの選択肢から1つを選ぶ時なんかもそうです。つまり、等しく重要な選択肢や、多すぎる選択肢から1つを選ぶためのものです。

Googleの例ですと、まだそこまで複雑な会社ではなかった頃、製品開発のプロジェクトの素早い遂行や検索などにまつわる問題がいくつかありました。どうすればより早く製品を開発できるか、組織改編をすべきかなどのアイデアがありました。

その結果、彼らの歩みを遅くするものは雇用にあるということがわかりました。そこでキーになったのは、トップコンピューターサイエンティストをいかにより早く採用できるかということでした。なぜなら、トップコンピューターサイエンティストは、そうではない人と比べて遥かに生産的だからです。

そこでいくつかのルールを彼らは思いつきました。1つは、最高峰の学校で最高レベルの成績の人間を捜すということでした。そしてもう1つはちょっと違いました。風変わりな人を探すというものでした。一輪車に乗っている、6ヶ月ヒマラヤに行く、主夫など、いわゆる普通とは違う人達のことです。主夫は今やそう珍しくもありませんが。

要するに、人がやってないことをしている人たちを探したわけですが、そういった人たちはよりクリエイティブで、そんな人が欲しいという思いがこのアイデアの根底にありました。

Googleの採用の際のルールとは

2つめのルールは好意に関するもので、他のグーグラーから参照された人たちでした。グーグラーは未来のグーグラーを参照するのです。つまり、グーグラーは良質なグーグラーを知っているということでした。そういう人たちはよい情報源になるからです。

3つめのルール。履歴書に不明確なものが1つでもあれば不採用というものでした。完璧な人たちを求めていたからです。それらのルールに沿っていれば誰でも雇えますが、フォーカスする数はかなり削減できます。そのようにして、本当に求めている人間にフォーカスしていったのです。

また別の例としましては、我々も一緒に仕事したことのあるFrontier Dentalという会社についてです。彼らには歯科関連のイノベーティブな商品があります。商品はいいのですが売り上げがよくなかった。100人の歯科医に声をかけて話せるのは2〜3人で、1人買えばいい方という感じでした。なので彼らは、商品を売ることに時間をかけすぎていました。

そこで何をしたか? まず誰が購入して使っているかに着目しました。そして理想の歯科医について考え、いくつかのルールにたどり着きました。

最初のルールはそんなにいいものではなく、35歳〜50歳をターゲットにしていましたが、歳がいくつかなんてそう簡単にわかることではありません。そこでシンプルな答えにたどり着いたのです。革新的なWebを持つ歯科医に注目したのです。なぜならそういった歯科医は前向きだからです。なので良質のWebをもつ歯科医を探すようにしました。

次に彼らが考えたのは、クレジットスコアに注目するということでした。過去1年で2つチェックがあればその歯科医のことは忘れる。つまり、革新的で、ちゃんとお金が払える歯科医を選ぶことにしたんですね。

(会場笑)

仕事を処理する基本ステップについて

最後の例はWeinstein Companyについてです。後ろの方見えてますか? この写真は、映画「イミテーション・ゲーム」からのものですが、Weinstein Companyは過去に「The Artist」「The Talented, Mr. Ripley」「Chocolat」「Pulp Fiction」「Silver Linings Playbook」といった、ハリウッドのトップ作品を発表しています。クリエイティブで儲かっている会社として知られています。テック界のニルヴァーナみたいなものでしょうか。

全てのルールには言及しませんが、1つ面白いのは、全ての映画の主人公は皆、欠落があるのに共感できるということです。Alan Turingもそうです。映画をみた人はわかると思いますが、彼は人間としてクズなんですが、観客はつい共感して好きになってしまうのです。

「Silver Linings Playbook」でも同じことが言えます。ロマンチックに惹かれ合うカップルの話なのですが、どちらも精神に病を抱えている。難しい人間なのですが、気になってしまう。映画がすべてそういう風ではなく、「The Gone Girl」「Birdman」には、好きになりそうな人物がでてこない。つまりこのアイデアは、欠陥があるのに好きになってしまうということなのです。

そろそろ別のルールに行こうと思います。ハウツーについてです。仕事を処理する基本ステップについてです。

Airbnbを利用した方は多いと思います。空気マットとベーグル付きでアパートの部屋を貸し出した後、1年半程苦戦していたのもご存知でしょうか。モデルの理解に苦しんだのですね。Y Combinatorと合併し、ビジネスを構築すべく、ついにはニューヨークに行きました。

初期に生まれ、また最も重要なルールの内の1つに、ホストにフォーカスするというのがあります。次に、ホストは物件の本格的な写真が必要というのがあります。少し本格的な写真にすることによって、Home AwayやVacation Rental by Ownerなどの類似サイトからの見た目を少しよくして差別化できたのです。その、ちょっとマシというのが、ちょっと利用したいとなり、Airbnbはうまくいきました。

クリエイティブには、少しの制約が必要

もうひとつのルールというのが、全てのホストが何らかの助けを提供しなければいけないということでした。地元の市場についてや、地下鉄の情報や、ミュージアムのチケットなどです。ホテルとの決定的な違いは、個人的で、利用者のためのサービスですよという部分にあったのです。ローカルな体験という違いがそこにはあったのです。

今度はツイッターから。ここにいる人達も起業の幹部などでしょうから、ミーティングに時間をとられすぎるということはあると思います。そこでツイッターはこんなことを実践しました。

その内容はちょっと私にとっては皮肉なのですが、それは、パワーポイントを使わないということでした。あとは、ミーティングには絶対出席するということでした。

なぜパワーポイントがだめか。なぜなら、それはパワーポイント作成に時間をかけすぎているという理由からでした。ではミーティンングについてはどうか。もしミーティングが4、5人で、1人でも現れなかったら、他の人に時間を無駄にしたことになるからです。

そして最後の例です。こちらはThe White Stripesというアメリカのバンドです。彼らは写真で見えるほどにルールに縛られた人たちではなく、このスライドのポイントは、多くの人が創造性を欠いてルールに接しているということです。でも私はそれは違うと考えています。

多少のルールは何も無い状態よりクリエイティブです。うまくやるためには多少の制約が必要です。このバンドだと、それはアルバム制作なのですが、彼らは10日で18曲制作しました。そこにあったのがいくつかのルールでした。ソロ無し、カバー無し、ブルース無し、ギターソロ無し、ベース無し。それが以外は何をやってもいいというものでした。クリエイティブには少しの制約が必要なのです。

型にはまらず考えろとはいいますが、真実は、自分の型を設定して、その中で実行せよということなのです。クリエイティブはそこから生まれるのです。

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