2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
Stanford Graduate School of Business HP CEO Meg Whitman on Integrity & Courage in Leadership(全4記事)
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司会:ロン、次の質問は来ていますか?
質問者:ヒューレット・パッカード(以下、HP)の復活についてお話されたとき、あなたは創業者の基本的な理念に立ち戻ることと、技術革新に注力することについてお話しされました。技術革新を継続的に発展させるため、また従業員に変化への意識を持たせるために、実際にはどのような社内的改革を行われたのでしょうか?
メグ・ホイットマン氏(以下、メグ):まず私たちは、決定した戦略を可能な限り迅速に表明しました。そして、これらの戦略が、私たちがより良くなるためのものであることを理解させました。私たちはやるべきことを記したリストを作成したのですが、このリストにある項目を忠実に遂行していきました。
最初に、技術開発費用を増やしました。これは会社の費用構造を削減しながら行いました。ご存知ない方もいらっしゃると思いますが、私たちは2011年の秋から2012年の1月にかけて約5万5千人の人員削減を行なっております。本当に重要なことに投資するために、費用を切り詰める。簡単なことではありませんが、とても重要なことです。
次は、この会社の文化を再びイメージすることです。恐らくあなた方の多くはHP Wayのことをご存じだと思います。これは創業者であるビル・ヒューレットとデイビット・パッカードによって作られた、HPの文化を表す弊社の基本理念です。私たちはこの企業文化をさらなる高みへ押し上げていかなくてはなりません。
でも同時に、この会社をここまで育んできたものを捨てるわけにもいかないのです。ですので、私たちはこの企業文化をさらに押し上げ、それを新たなHP Wayと呼ぼうではありませんか。私たちは決して過去へ戻ることはできません。ですので、未来へ向けての改革が必要です。私たちはこの精神を会社の隅々にまで行き渡らせました。
そして、私たちは新戦略に対する奨励金を設定しました。これに関しては既に公表されておりますので、あなた方もご存じかと思いますが、特に大企業には、自身の行動に対して報奨金が支払われるかどうかに敏感な方が多いように感じます。
メグ:実際、私たちはトップセールスを記録した上位200名に報奨金を支払い、驚異的な売り上げを実現しました。また収支状況も驚くべき回復をみせました。わずか3年で、119億ドルの赤字から59億ドルの黒字に転じたのです。
そして、これは私たちがアルバやボルテージを買収することを可能にしてくれました。私たちが多くの買収を成功させることができたのはこの健全な収支状況のおかげなのです。ただ、私たちはお金の流れだけに囚われていたわけではありません。実際、HPの株価が11ドル62セントから40ドルにまで跳ね上がったのには様々要因があるのです。
現在、私たちは外国為替という試練に向き合っています。これは私たちの業界に限ったことではなく、アメリカの全ての大企業が抱える問題です。しかし、やるべきことは決まっています。最も重要なことに集中するのです。研究開発に注力し、技術者たちを鼓舞するのです。
そして革新を奨励してください。そして顧客や関連企業と向き合ってください。そして財務面でもその改善に最も効果が見込めそうな部分に注力するのです。これはいわゆる弾み車効果と呼ばれるものです。
もしあなたが改善された結果をだすことができれば、それが顧客、引いては従業員や世間からの信頼を得ることに繋がります。そして、それがさらなる売り上げ増に繋がるのでうす。こうしてどんどん状況が良くなっていきます。
実際、私たちの株価は11〜12ドルから40ドルに跳ね上がりました。時価総額にして400億ドルを生み出したことになります。これにより、我が社は人々らかの、提携企業からの、そして顧客からの絶大な信頼を得ることができたのです。
司会:キャロライン、ツイッターからの質問はありますか?
質問者:メグ、ツイッターからの次の質問です。あなたは再生するための革新について述べられ、そしてこの会場の卒業生や人々が新規事業に携わることへ肯定的な意見を述べられましたが、新規事業者は実際、どのようにHPと効率的に提携することができるのですか?
メグ:私たちはパスファインダーというプログラムを立ち上げました。これは提携の可能性のある新たな新興企業を探し出すためです。また、そういった新興企業への投資事業としての側面も担っています。
HPは自ら世界中の市場に赴き、確固たる成果を残しています。世界170カ国に進出し多くの売り上げを記録してきました。私たちは他に類をみないほど強力な営業力を持っていると言えるでしょう。
現在、私たちはシリコンバレーで建設的な提携関係を結べるベンチャー企業や新興企業を探しています。もしその会社が企業向けのビジネスを展開しているのであればHPエンタープライズと、3Dプリンティング関連のビジネス展開をしているのであればHP Inkと提携することになります。
どのように投資を行なうかを決め、そして市場に打って出るタイミングを決定します。私たちはそんなに多くの新興企業と提携するつもりはありません。確固たる利益を上げるには市場で多くの製品を売らなくてはならないからです。
しかし、私たちのビジネスにとって有益な力を持っている新興企業には協力を惜しみません。私たちの市場での販売チャンネルも積極活用してもらいます。以上このプログラムを通して私たちが考えていることの概要です。
最初の2、3年の間に、ペースや優先順位の面で方向転換をすることになります。これができるのは、ごく限られた企業です。HPと同じ規模の企業も例外ではありません。
もしあなたの会社が現在少数の重要事項に集中できてないのであれば、あなたの会社にこれは望めないでしょう。私がここに就任したとき、行ないたかったこと。それは文字通り、全員が一丸となって全力で少数の事案に取り組むことです。進行中に方針が変わることもありますから。
私たちはこの業界の収益構造にうまく入り込まなくてはなりません。それには今後、さらなる革新が必要になってくるでしょう。有機的な革新が理想的です。私たちはもっと自身の探求心を働かせるべきではないでしょうか。
司会:ミシェール、次の質問をお願いできますか?
質問者:メグ、貴重なお話をありがとうございます。私はクリスティーンといいます。私は現在スタンフォードビジネススクールの2年生です。先ほど、あなたは人がどのように他人からの支持を失うかについて例を挙げて説明してくれました。
そこで今度は、どのように他人からの支持を得られるかについてお話いただけませんでしょうか? また、卒業したての新人と役員レベルの方とではそのやり方は変わってくるのでしょうか? よろしくお願いします。
メグ:とても良い質問ですね。どのようにして他人からの支持を受けるのか? またどのようにして信頼される仲間になれるのか? その方法はあなたがCEOであろうが、新人であろうが全く同じです。
それはあなたがやるべきことを速やかに遂行する、ということです。私がHPに来た当初、私はPC部門をどうするかという判断を僅か1カ月で決定しなければならないという難題を突き付けられました。しかし、私はそれをやり遂げました。要は速やかに自分がやるべきことを明確にし、それを粛々と遂行するのです。
これは私からの皆さんへのアドバイスですが、自分がやろうとしていることを明言するのです。あなたが起業しようが、既存の企業へ就職しようが同じです。自分がやろうとしていることを表明し、それをやり遂げるのです。もちろん、自分の力で行なってください(笑)。
メグ:次に、これは政治に携わったときに学んだことですが、HPのような大きな企業からの信頼を得るときに有効なシンボリックバリューと呼ばれる方法があります。
ジェリー・ブラウン氏が選挙で勝利したときのこと覚えておいででしょうか? 彼がとった戦法は、最初は奇妙に思えても、後々その凄さがわかってくるという興味深いものでした。
あなたは彼が打ち出した、公務員の携帯電話数を半分に減らすという政策を覚えていらっしゃるかもしれません。これはカリフォルニア州の赤字予算を縮小するという名目で行われたものですが、正直なところ私にはとても馬鹿げた政策に思えました。
なぜなら、携帯電話にかかる費用は、カリフォルニア州の全体予算のうちわずか0.001パーセントにすぎず、大勢に影響を及ぼすとはとても思えなかったからです。
しかし、彼は有権者にこれを積極的にアピールしていました。そして見事、カリフォルニア州の人々に、ジェリー・ブラウンは経費削減に積極的だというイメージを植え付けることに成功したのです。
そう、ジェリーは先に述べたシンボリックバリューを有効活用したのです。多くの政治家がこの方法を使っています。大統領の一般教書演説でも使われています。
私もこれを活用しました。HPのCEO就任直後、私は、これから会社が変わって行くということを示す方法はないだろうかと考えました。それで、豪華な役員専用駐車場を廃止にしたのです。これで全社員が同じように通勤するようになりました。
次に私が行なったことは、役員専用エリアの木造の重厚なオフィスを廃止しました。そして全社員が、同じようにパーティションで区切られた席で仕事をするようにしたのです。このことは公に公表していないにも関わらず、驚くべき速さで全世界のHP従業員に知れ渡りました。
これらはとても些細なことです。木造の重厚なオフィスをなくし、パーティションの席にしたところで大勢には何の影響もありません。しかし、それは、これからこの会社がどのような会社に生まれ変っていくのかを示してくれます。
このように、シンボリックバリューはとても重要なのです。目に見える直接的な効果をすぐに得ることはできませんが、他人からの支持を得るという点では効果絶大です。他とは違うということをアピールすることで、得られるものはたくさんあります。
あなたはどういう会社にして行きたいのか示す必要があります。そして迅速な革新を奨励してください。HPでのことですが、ある重役と技術開発部を訪れたとき、私たちは素晴らしい製品を目にしました。そこで私たちはそこのスタッフたちを激励し、その製品を迅速に市場に出すことが出来たのです。会社方針転換をする際、大切なのは早い段階で結果を出すことです。
eBayがPayPalを買収した際、PayPalサイドには歓迎ムードはありませんでした。そこで私たちはPayPalの機能を世界最大規模の市場に組み込んだのです。当然、PayPalの業績は激変しました。会社の業績が急激に上がり、PayPalの社員たちの買収に対する態度も一変しました。
このことからもわかるように、早い段階で結果を出すことはとても重要です。現在私たちは、同じことをArubaに対して行おうとしています。今Arubaの社員たちはHPに買収されることをあまり良くは思ってないようです。しかし、PayPalのときのように早い段階で結果を出せば、これがどう変わるでしょうか。6カ月後が非常に楽しみです。
司会:メグ、最後にもうひとつ質問をさせてください。これはとても伝統的な質問です。実際、スタンフォードビジネススクールの選考試験でも毎回エッセイのテーマとして出題されています。メグ、あなたが最も大切にしているものは何ですか? またその理由も教えてください。
メグ:この質問には恐らく100通りの答えがあるでしょう。しかし、私が最も大切だと思っているものは、あなたにとっても間違いなく大切なものでしょう。それは家族です。そしてあなたの友人たちです。これらはとても重要です。ただ、大切なものが何であれ、それが大切なものだと意識することはとても意味があると思います。
2つ目は先の見通しです。これは脳神経外科医の妻になって得られた良いことのうちのひとつです。いいですか、私たちがビジネスをするうえで、これはとても重要なことです。当然、HPの社員にとっても重要です。ですので、やはり何が本当に大切なのかを考えることはとても重要だと思うのです。
では、ここで私がこれまで様々の機会にお話してきた友人の話をしましょう。彼女はハーバードビジネススクール以来の親友で、私の息子と同じ年頃の2人の息子さんに恵まれ、ロサンゼルスで素晴らしい生活を送っていました。しかし、あるとき24歳になる息子さんが軍の特殊部隊グリーンベレーに入隊し、6月にアフガニスタンで戦死してしまいました。
あなたが何か厄介な問題に直面したときは、自分はそんな本当に辛い境遇にはいないのだということを今一度思い出してください。私はあなた方に何が大切なことなのか、今一度思い出していただきたいのです。
仕事に没頭することは素晴らしいことだと思います。しかし、是非何が大切なのかを考えてみてください。州知事選に敗北したとき、すぐに先の見通しを立てることは困難でした。なぜなら、もし〜であったなら、〜すべきだった、と過去に引きずられていたからです。
しかし、結局、悲劇的なことは何も起こってないのです。確かに選挙には負けました。しかし、私の家族は無事で、私は何も大切なものを失ってはいません。あなたも何が本当に大切なのかを考えてみてください。
最後に、自分の見られ方についてお話しさせてください。あなたは常日頃の言動を通して、誠実な人物でなければなりません。そうあるためには、その都度、何が正しいことなのかを考え、それを実行してください。
確かにそれは難しいことです。なぜなら、正しい行いというのは文化によっても違ってくるからです。私は部下にいつもこう言っています。「確かに正しい行いは文化によって異なります。しかし、こう考えてみてください。あなたの両親や子供、あなたの愛する人がニューヨークタイムズであなたの行いを知ったら、彼らはそれを誇りに思うでしょうか? また会議でのあなたの行いを見たとき、彼らはそれを誇りに思うでしょうか?」
あなたがアジア出身だろうが、ラテンアメリカ出身だろうが、ヨーロッパ出身だろうが関係ありません。全ての文化に共通する倫理、何が許容されて、何がそうでないのかということを常に念頭に置いて行動してください。以上が、私があなた方に伝えたかったことです。
司会:メグ、本日はお越しいただき本当にありがとうございました。
メグ:こちらこそありがとうございました。
(会場拍手)
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